著者
谷本 洋一郎 松根 彰志 黒野 祐一
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.257-263, 2009 (Released:2010-11-01)
参考文献数
15

初診時の急性進行性の視力障害より鼻性視神経炎も否定できず、緊急手術を行った Miller Fisher 症候群 (以下 MFS) の 1 例を報告した。MFS は本症例のように症状や画像所見より鼻性視神経炎を必ずしも否定できないことがある。その他、本疾患はめまい、ふらつきを主訴に耳鼻咽喉科を受診する可能性もあり、耳鼻咽喉科の日常診療において留意すべき疾患であると思われる。
著者
西川 拓朗 岡本 康裕 河野 嘉文 大堀 純一郎 福岩 達哉 西元 謙吾 黒野 祐一
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-4, 2009 (Released:2012-11-20)
参考文献数
7

症例は 5 歳 2 か月の男児。5 歳 1 か月頃から,誘因なく右頬部の圧痛と腫脹が出現した。近医での MRI 検査で右頬骨体部を破壊し右上顎洞および右眼窩内に浸潤する腫瘤性病変を認め,当院に紹介となった。Ga シンチでは同部位に異常集積を認めたが,他部位に異常集積は認めなかった。生検組織所見により CD1a, S–100蛋白陽性細胞の増殖を認め,ランゲルハンス細胞組織球症(LCH),Single-system, Single-site と診断した。腫瘤は眼窩内に進展していることから全身化学療法を行った。開始 1 週目で右頬部の圧痛・熱感・腫脹は消失し,治療終了後12か月後の現在も再燃なく寛解を維持している。LCH の限局性病変の治療については自然軽快する例も多く,一定のコンセンサスが得られていない。本例では,眼窩内に進展しているため,中枢神経浸潤や後遺症が残る可能性を懸念し化学療法を選択した。LCH は頭頸部に症状が出るものが多く,小児耳鼻咽喉科疾患として注意を要する。
著者
松根 彰志 黒野 祐一 砂塚 敏明 大久保 公裕 吾妻 安良太 藤倉 輝道 後藤 穣 吉福 孝介 大堀 純一郎
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マクロライドは本来抗菌薬としての作用があるが、慢性副鼻腔炎治療の分野では抗炎症作用としての働きが期待され、近年「マクロライド少量長期投与療法」が確立された。しかし、鼻茸や副鼻腔粘膜に好酸球浸潤が著明に認められ、アスピリン喘息を含む気管支喘息の合併が高頻度に認められる成人での難治性、易再発性の慢性副鼻腔炎には効果がない。経口ステロイドの漸減療法や長期使用に頼らざるをえないのが現状である。一方マクロライドには、過剰な免疫反応の抑制、調整作用やあることも分かってきていることから、直接の治療効果がなくてもステロイドのいわゆる増強する作用(primingeffect、プライミング効果)が期待でき、本疾患治療におけるステロイド使用の減量が期待できると考えられた。手術で得られた鼻茸粘膜の培養系や、術後症例に対するマクロライド少量長期投与とステロイド点鼻の併用効果から、期待されたプライミング効果はすべての症例に対して認められたわけではなかったが、程度の差はあるものの症例によっては認められた。どのような症例で認められるかについては今後の検討課題である。ただし副作用の点などから、術後の内服ステロイドの30~40mg/dayからの漸減療法2週間終了後、マクロライドの少量長期投与にステロイド点鼻(鼻噴霧用ステロイドよりはベタメタゾン点鼻)の併用でとりあえず様子を見ることは意義のあることであり、今回の重要な研究の成果と考えられる。更なる症例の蓄積による検討が必要である。
著者
坂口 勝義 宮脇 正一 永田 順子 山崎 要一 岩崎 智憲 松根 彰志 黒野 祐一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

成長発育期の小児における睡眠障害の実態を解明し、顎関節症状、消化器症状、社会心理学的な問題行動などの種々の関連因子との相互関係を明らかにするため、小学校児童を対象に、消化器症状、日中の活動中の眠気、睡眠状態、問題行動について質問紙を用いた調査を行った。睡眠に異常を示す群(睡眠障害群)と正常群に分けたところ、小学校児童の一般集団において睡眠障害を訴える者は30%弱にのぼった。睡眠障害群では、授業中に眠くなる、日中にしっかりと起きていない、日中に疲れたと思うこと、イライラなどの行動的特徴、睡眠時にいびきをかく等に加え、食後におなかのあたりが気持ち悪い、げっぷなどの胃食道酸逆流の症状を示唆する項目、不安や攻撃性などの問題行動が見られた。また、問題行動に関する質問紙調査の結果から分けた問題行動群と正常群について、睡眠障害、胃食道逆流症状を比べたところ、問題行動群では正常群に比べて、睡眠障害と胃食道逆流症状が有意に多く認められた。