著者
齊藤 俊樹 元木 康介 高野 裕治
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第19回大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2022 (Released:2022-04-20)

コロナウィルス感染対策により、マスク着用が世界的に普及している。これまで、マスクをした顔に対する感情認知は困難であることが示されているが、この影響が文化(国)によって異なるのかは明らかではない。本研究では、感情表出・認識に重要となる情報が文化によって異なるという表情認知の文化学習理論に基づき、マスクが感情認知に与える影響の文化差を検討した。日本人209名、アメリカ人203名の参加者は顔画像を見て、その顔の感情状態(感情カテゴリーと感情の強度)を判断した。顔画像は、表情が6種類(笑顔、怒り、悲しみ、恐怖、嫌悪、真顔)、マスク着用の有無が2種類の計12種類であった。その結果、笑顔表情の認知がマスクによって阻害され、その影響はアメリカ人でより大きいことが分かった。この結果は、表情認知の文化学習理論を支持するとともに、マスクによる表情認知への影響が感情や文化によって異なることを示すと考えられる。
著者
齊藤 俊樹 大谷 昌也 金城 光
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2014 (Released:2014-10-05)

視線のカスケード現象とは,好きなものを選ぶ判断(選好判断)の際に,選択決定よりも時間的に先行して選択する刺激へ視線が偏るという現象のことである (Shimojo et al., 2003)。これまでの研究でカスケード現象は知覚していない記憶上の刺激に対しても生じることが報告されている。本研究では,記憶上の刺激に対してもカスケード現象が起こるのか,記憶保持時間によって視線の偏りの強さが変化するかを実験1で検討した。先行研究ではカスケード現象が選好判断以外でも生じる可能性が示唆されており,実験1において選好判断と選嫌判断での視線の動きに差がみられなかったことから,実験2では判断条件を増やしカスケード現象の違いを検討した。その結果,選好判断以外の判断でも最終的に選択した刺激への視線の偏りが認められた。本研究より,視線の偏りが好意判断に特別に影響していない可能性が示唆された。
著者
齊藤 俊樹 大谷 昌也 金城 光
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.463-472, 2015-09-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
12

When we are shown pairs of human faces and instructed to decide which face is morepreferred, our gaze is gradually biased toward the face that we eventually choose. Shi-mojo, Simion, Shimojo, and Scheier (2003) coined this effect as the gaze cascade effect.In this study, we investigated whether the gaze bias could be observed in various judg-ments other than the preference judgment. In Experiment 1, we showed participants ahuman face and asked them to memorize it. Then we showed them another human faceand asked to do two kinds of judgments: the preference judgment where they had tochoose which face they liked more and the dislike judgment where they had to choosewhich face they disliked more. We found the gaze bias for memorized stimuli in bothjudgments. In Experiment 2, we showed other participants two human faces and in-structed to select one depending on each specific criterion for five different judgmentsincluding the preference judgment. The gaze bias was observed in all judgments, most robustly in the similar judgment where participants instructed to decide which face wasmore similar to themselves. Contrary to findings by Shimojo et al. (2003), our resultssuggest that the gaze cascade effect might be involved in the process of visual decision,not limited in preferential formation.
著者
金城 光 石井 国雄 齊藤 俊樹 野村 信威 濱田 明日也
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.7-20, 2017-04-20 (Released:2019-11-15)
参考文献数
16

高齢者の医療・健康情報入手状況(内容,程度,メディア)と課題を明らかにするために,東京都(A区)と長野県(B市)のシルバー人材センター会員650人に質問紙を郵送配布し,計521人から回答を得た.医療・健康情報の内容別入手程度と主観的健康評価の相関分析では,健康評価の高い人は複数の情報をより多く入手していた.入手メディアでは,TV,友人や家族,新聞が多く,インターネットは14%で,メディア利用には地域差がみられた.情報入手得点の関連要因を探る重回帰分析では,居住地域を含む基本属性は関連がなく,情報希求得点やeヘルス得点と関連がみられた.情報入手過程で多くの高齢者がさまざまな不満をもっており,情報入手得点の低い人ほど,どこから情報を得たらよいかわからないという不満が強かった.高齢者が医療・健康情報の入手で感じる不満は複数のプロセスで生じている可能性があり,さまざまな現実場面での情報入手についての調査が必要である.