著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.83-112, 2005-08-31

本論文では,国際人権法の近時の研究動向を「文化」という切り口からレビューする.(1)国際法研究において「文化」を語る意義がどこにあるか,(2)国際人権法とりわけ人権条約研究において「文化」を具体的にどのように語りうるか,という2つの課題を軸に近時の諸研究を概観することを通して,国際法学において「文化」概念が持ちうる可能性と問題点とを探究する.具体的には,これまでの国際法学・国際人権法学において,どのように「文化」が捉えられてきたか,従来の研究に批判的検討を加えた上で,「文化としての人権」や「文化としての条約」といった人権条約の重層的構築の様々なレベルに位置づけながら近時の各種研究を整理する.これらの作業を通じて,本論文は,「文化としての国際法」を語りうる方法としての文化概念,すなわち,国際法実践と国際法学を通じた法的世界像の構築を1つの地理的・歴史的な文化的営為として把握しうる再帰的な文化概念を近時の研究動向に見出し,今後の国際法研究に繋げることを試みる.
著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.83-112, 2005

本論文では,国際人権法の近時の研究動向を「文化」という切り口からレビューする.(1)国際法研究において「文化」を語る意義がどこにあるか,(2)国際人権法とりわけ人権条約研究において「文化」を具体的にどのように語りうるか,という2つの課題を軸に近時の諸研究を概観することを通して,国際法学において「文化」概念が持ちうる可能性と問題点とを探究する.具体的には,これまでの国際法学・国際人権法学において,どのように「文化」が捉えられてきたか,従来の研究に批判的検討を加えた上で,「文化としての人権」や「文化としての条約」といった人権条約の重層的構築の様々なレベルに位置づけながら近時の各種研究を整理する.これらの作業を通じて,本論文は,「文化としての国際法」を語りうる方法としての文化概念,すなわち,国際法実践と国際法学を通じた法的世界像の構築を1つの地理的・歴史的な文化的営為として把握しうる再帰的な文化概念を近時の研究動向に見出し,今後の国際法研究に繋げることを試みる.
著者
吉江 悟 高橋 都 齋藤 民 甲斐 一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.522-529, 2004 (Released:2014-08-29)
参考文献数
19

目的 行政保健師は,介護保険が実施される以前から高齢者介護サービス提供に携わるなかで,高齢者ケアマネジメントの経験・知識を蓄積してきた。原則としてその役割が介護支援専門員へ移管された介護保険施行後も,様々な対象からの相談対応を行っている。本研究では,高齢者在宅介護における対応困難事例のうち,これまであまり焦点の当てられなかった同居家族が問題の主体となるものに焦点を絞り,行政保健師の視点からみてどのような状況が対応困難と認識されているか明らかにし,具体的内容の類型化を行うことを目的とした。方法 人口67,000人,高齢化率約19%の長野県 A 市の平均経験年数10年の行政保健師に対し,同居家族が問題の主体となる対応困難事例の具体的内容を探る目的で,約90分のフォーカスグループインタビューと,1 人平均約60分の個別インタビューを実施し,インタビュー内容を質的に分析した。フォーカスグループインタビューには 6 人の保健師が参加し,個別インタビューはフォーカスグループインタビューの参加者 4 人を含む計 5 人に対して実施した。結果 同居家族が問題の主体となる対応困難事例について,「生じている介護の問題」と,その背景要因としての「同居家族の背景」の 2 つの大カテゴリーに関して,その具体的内容が分類された。 「同居家族の背景」に含まれるカテゴリーとして「1)精神・知的障害がある」,「2)介護意欲が低い」,「3)人間関係が悪い」,「4)他人が家に入ることに抵抗がある」,「5)金銭面の問題がある」が抽出され,「生じている介護の問題」に含まれるカテゴリーには「a)家族による介護量の不足」,「b)サービスの受け入れ拒否」,「c)介護における逸脱行動」が抽出された。結論 同居家族が問題の主体となる高齢者在宅介護の対応困難事例について具体的内容の類型化を行った。今回挙げられたような背景を同居家族がもつ場合には,将来対応困難となる可能性を考慮することが重要である。
著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.41-80, 2003-03-31 (Released:2008-09-19)

冷戦終結後,国際政治学・国際関係論において規範の重要性が見直されてきた.これとともに,北米を中心に国際政治学・国際関係論と国際法学の相互接近が試みられ,一定の研究成果が出されてきている.そのような研究動向の中,従来,国際法学において「ソフト・ロー」と呼ばれてきた各種の「非法」規範についても,新たに研究が進められてきた.本稿は,このような国際規範研究の最新動向の現状と課題について,国際法学の見地から,「遵守」研究の問題点,「法」と「非法」の区別の問題等を論じる近時の諸業績に検討を加えたうえ,大沼保昭の提唱する「行為規範/裁判規範」概念の国際規範の基礎理論としての可能性を探究し,「法」と「非法」の区別の実態を分析するための理念型として,「適用」/「援用」/「参照」という規範使用・作用の三類型を提案するものである. This article reviews current interdisciplinary research on international norms by international lawyers and international relations scholars, focusing especially on how "non-legal" norms should be dealt with in international legal studies. Major issues discussed include the problems of "compliance analysis" for studying international norms and the distinctions made by various actors between law and non-law. Having examined the notions of "norms of conduct" and "norms of adjudication" as a potential basis for the future research on how various actors distinguish legal and non-legal norms, the author proposes additional subcategories to analyze different types of law-related behavior ; "application", "invocation", and "reference".
著者
齋藤 民徒
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.41-80, 2003-03-31

冷戦終結後,国際政治学・国際関係論において規範の重要性が見直されてきた.これとともに,北米を中心に国際政治学・国際関係論と国際法学の相互接近が試みられ,一定の研究成果が出されてきている.そのような研究動向の中,従来,国際法学において「ソフト・ロー」と呼ばれてきた各種の「非法」規範についても,新たに研究が進められてきた.本稿は,このような国際規範研究の最新動向の現状と課題について,国際法学の見地から,「遵守」研究の問題点,「法」と「非法」の区別の問題等を論じる近時の諸業績に検討を加えたうえ,大沼保昭の提唱する「行為規範/裁判規範」概念の国際規範の基礎理論としての可能性を探究し,「法」と「非法」の区別の実態を分析するための理念型として,「適用」/「援用」/「参照」という規範使用・作用の三類型を提案するものである.