著者
玉置 雅彦 江幡 守衛 田代 亨 石川 雅士
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.653-658, 1989-12-05
被引用文献数
3

穂揃期窒素追肥ならびに登熟温度が米質に及ぼす影響について, 米飯のテクスチャー, タンパク質, アミロース, 結合脂質 (fat-by-hydrolysis) 含有率の点から検討した。窒素追肥により, 白米タンパク質含有率は増加した。米飯のテクスチャーのうち, そしゃく性値は, タンパク質含有率の増加にともない増加した。粘着性および食味指数値は, タンパク質含有率が8.5%のときに最も高くなった。アミロースおよび結合脂質含有率は, タンパク質含有率と関係が見られなかった。以上から, アミロースおよび結合脂質含有率の変化が小さいときには, 米飯のテクスチャーは, タンパク質, 特に難溶性タンパク質に強く影響されることが示唆された。一方登熟温度処理により, うるち米は低温ではそしゃく性値が顕著に大きく, 粘着性および食味指数値は顕著に小さくなった。もち米では, これらの傾向はみられなかった。アミロースおよび結合脂質含有率は, うるち米では低温ほど高まったが, もち米では変化が見られなかった。タンパク質含有率は, うるち米, もち米とも低温では減少した。登熟温度がうるち米米飯のテクスチャーに及ぼす影響は, アミロースおよび結合脂質含有率の変化によるものであり, タンパク質含有率には影響されなかった。しかしながら, もち米米飯のテクスチャーは, 登熟温度に影響されなかった。
著者
山田 一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.58-60, 1958-10-01

The movement of the protoplasm in pollen tube is generally streaming accompanied with rotation. The movement was able to be observed at first when pollen tube reached 30YAMADA〜35μ in length for 5 minutes after setting of pollen on the media. The rate of protoplasmic streaming (μ/sec.) was measured under microscope from that time. It was found that the initial rate of streaming (5〜10 minutes after pollen setting) was very high in Japanese varieties, but it became low as the time went on. In foreign varieties, on the contrary, the rate was very low during the whole course. These results are shown in Figure 1. The results obtained under various temperature conditions are given in Figure 2. According to those, the rate of streaming increased as the temperature rose to some extent. The maximum streaming rate was recognized only at 30℃ among all plots for 5〜10 minutes after pollen setting. The rotating movement of the protoplasm ceased at 40°〜45℃, and the streaming also at nearly 10℃. Changes of the streaming rate with time under different temperature conditions were examined by using two Japanese varieties (Figure 3). At 30℃ the initial rate of streaming was very high, but it was then slowed down and ceased. Under 15°and 20℃ conditions, the rate were always low during the whole period of the experiment. However when the temperature rose to 38℃, the rate fell between those of 30°and 15℃. In the case of 25℃ condition, the intermediate values between 30°and 38℃ were obtained.
著者
福岡 峰彦 岩間 和人 実山 豊
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.57-67, 2006-01-31
被引用文献数
1

陸稲品種間のかんばつ回避性の差異を, 大気飽差(VPD)が比較的小さい日本の圃場条件下において, 群落表面温度(T_c)から気温(T_a)を引いた値である葉気温較差(ΔT)を用いて推定できるかを検討した.主に根系の到達深度の違いから, かんばつ回避性が大きく異なることが想定される陸稲品種群を, 降雨を遮断し, 2001年には潅水および無潅水の, 2002年には無潅水のみの土壌水分処理をそれぞれ行った畑圃場において供試した.両年とも出穂までの約1ヵ月間に各6日, サーモグラフィー装置で測定したT_cと, 気温計で測定したT_aからΔT(T_c-T_a)を得, ほぼ同時にポロメーターで測定した気孔コンダクタンス(gs)との関係を調査した.また, 2002年には収穫期に測定した根系の到達深度との関係も調査した.2001年には, 測定期間中の平均値でみた品種の順位関係は, それぞれの土壌水分処理区において, ΔT(低い順)とgs(高い順)とで完全に一致していた.しかし, 潅水区におけるそれらの順位は無潅水区とは異なっており, かんばつ回避性を説明するものではなかった.2002年には, 全ての測定日および測定期間中の平均値で, ΔTに有意な品種間差異が認められ, 深根性の品種ほどΔTは低く, gsは高かった.以上のことから, 無潅水条件下におけるΔTは, 日本の圃場条件下において, 陸稲のかんばつ回避性を推定評価する指標として有効であると結論した.
著者
堀内 孝次 小木曽 健次
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.52-53, 1989-04-01

稲わらとともに腐熟促進剤や石灰窒素を土壌(砂壌土, 埴壌土)に混入した場合の稲わらの分解程度と土壌生産力について検討した.
著者
法邑 雄司 鈴木 忠直 條 照雄 安井 明美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.36-40, 2005-03-05
被引用文献数
5 2

産地の明らかな日本産10点, 中国産5点の黒大豆「丹波黒(新丹波黒の突然変異種1点を含む)」計15点の種子をマイクロ波試料分解装置により酸分解し, 1%硝酸により試料溶液を調製したのち, 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS法)によって9元素(Al, Mn, Ni, Cu, Zn, Sr, Ba, Rb, Cs)を定量した.日本産, 中国産の産地の違いを反映し, 濃度に有意差があった7元素(Al, Ni, Cu, Sr, Ba, Rb, Cs)の含量組成を階層型クラスター分析(Ward法)及び主成分分析で解析した結果, 日本産と中国産が良く分離し, 無機元素組成の差異によって「丹波黒」の産地表示の信憑性を検証できることが示唆された.
著者
稲田 勝美 薮本 陽一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.689-694, 1989-12-05
被引用文献数
6

制御環境下での植物生産に好適な環境条件を明らかにするため, 連続照明下での光質, 恒温下での日長, および連続照明下での変温の影響を調べた。光質については, 赤色光/遠赤色光 (R/F) 比が著しく高い場合を除けば, 赤色光の光量子量が多いほど, また赤色光/青色光 (R/B) 比が大きいほど生長は促進された。日長は長いほど生長は旺盛となり24 h日長 (連続照明) で最大となったが, 乾物生産に対する照明効率は20 h日長で最も高かった。連続照明下で, 日平均20℃, 高低差5℃とした変温を与えると, 恒温下に比べて生長は促進され, レタスでは21.7℃, 16 hと16.7℃, 8 h (16 H/8 L), ハツカダイコンでは20.8℃, 20 hと15.8℃, 4 h (20 H/4 L) または16 H/8 Lの変温下で最も効率が高かった。ハツカダイコンでは, 変温によって増大した乾物はもっばら貯蔵根に分配された。本研究から, R/B比10またはそれ以上, R/F比1〜2の光質をもつランプで日長を20 h前後とし, これに変温を組合せた条件が植物の栄養生長の促進に有効であろうと結論した。