著者
RABIE Raafat K. MATTER Mohamed K. KHAMIS Abd-El-Maksoud MASTAFA Mostafa M.
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.155-161, 1986
被引用文献数
3

食用ソラマメの生育と窒素含有量および収量に対する土壌塩類, 窒素施肥の影響をポット条件下で調査した. 塩類濃度は, 乾土当り 0.18, 0.30, 0.45, 0.60%の4水準を設け, 0.18%のものを対照区とした. 窒素施肥については, 1ポット4 kgの土壌に対して窒素成分として 0, 25, 50, 75 mg添加の4水準を設けた. 得られた結果は次の通りである. 1. 乾物重, 窒素含有量, 子実収量, 茎重, 個体当り莢数, 個体当り子実蛋白量は, 塩類濃度0.30%は促進的であったが, その他の塩類濃度では, 濃度が高まるにつれて抑制的であった. 百粒重, 子実蛋白含有率に対しては, 対照区に比べて全ての塩類濃度が抑制的に作用した. 2. 個体当り子実収量, 百粒重並びに開花前期と英形成期における乾物重については, それぞれの平均値が窒素施肥によって増加した. 3. 植物体窒素含有量, 個体当り莢数並びに子実蛋白含有量は, 窒素施肥によって増加し, 莢充実期と成熟期では 50mgの窒素施用が最も促進的であった. 4. 開花前期と莢充実期の植物体乾物重は, 最終子実収量と有意の高い正の相関が認められた. 5. 子実生産の効率は, 窒素施用量の増加にともなって高まった. これらの結果から, a) 塩類濃度 0.45%は, ソラマメの生育にとって限界濃度であり, b) 根粒菌種子接種に併用する窒素施肥は, 可給態窒素含量の低い土壌で最大収量を得るために有効であると結論された.
著者
齊藤 邦行 木村 麻奈 黒田 俊郎
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.337-341, 1998
被引用文献数
3

ダイズのシンク形成過程における花蕾数と結莢率の変動を明らかにするため, 圃場栽培した個体の特定節位に着目して(主茎第12節), 開花始に第12節直上で摘心し, 第11節以下すべての複葉, 葉柄, 花器を切除した孤立区を設け, その後の開花・結実課程を対照区と比較した.孤立処理により花蕾の分化・発育が助長されて開花時間は延長し, 花蕾数は対照区の10に対して, 36と多くなった.花蕾数の増加は, 孤立区で7次花房まで花蕾の分化・発育が促進されたことに加えて, 高次位花房のうち複葉を伴う椏枝の節数が増加したことに起因した.結莢率は処理直後に開花した1次花房で対照区48%に比べて孤立区76%と高くなったが, 高次位花房では明かな相違は認められなかった.その結果, 孤立区では莢数, 100粒重が大きくなり, 子実収量は対照区の3倍近くになった.以上の結果, 各節は潜在的に通常栽培条件下の3倍以上の花蕾を着生する能力をもち, これには椏枝の発生が重要な役割をもつこと, さらに, 開花数が決定している1次花房では結莢率の向上により莢数が増加したが, 高次位花房の結莢率は顕著には高まらなかったことから, ダイズのシンク調節機能においては結莢率よりも花蕾数の方が優先することが明らかになった.
著者
齊藤 邦行 木村 麻奈 黒田 俊郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.337-341, 1998-09-05
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

ダイズのシンク形成過程における花蕾数と結莢率の変動を明らかにするため, 圃場栽培した個体の特定節位に着目して(主茎第12節), 開花始に第12節直上で摘心し, 第11節以下すべての複葉, 葉柄, 花器を切除した孤立区を設け, その後の開花・結実課程を対照区と比較した.孤立処理により花蕾の分化・発育が助長されて開花時間は延長し, 花蕾数は対照区の10に対して, 36と多くなった.花蕾数の増加は, 孤立区で7次花房まで花蕾の分化・発育が促進されたことに加えて, 高次位花房のうち複葉を伴う椏枝の節数が増加したことに起因した.結莢率は処理直後に開花した1次花房で対照区48%に比べて孤立区76%と高くなったが, 高次位花房では明かな相違は認められなかった.その結果, 孤立区では莢数, 100粒重が大きくなり, 子実収量は対照区の3倍近くになった.以上の結果, 各節は潜在的に通常栽培条件下の3倍以上の花蕾を着生する能力をもち, これには椏枝の発生が重要な役割をもつこと, さらに, 開花数が決定している1次花房では結莢率の向上により莢数が増加したが, 高次位花房の結莢率は顕著には高まらなかったことから, ダイズのシンク調節機能においては結莢率よりも花蕾数の方が優先することが明らかになった.
著者
山本 由徳 濃野 淳一 新田 洋司
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.p601-609, 1994-12
被引用文献数
3

約1/1000aポットに直播栽培した水稲主稈の第2節から第11節の範囲で, 下位, 中位, 上位節に1次分げつを1節のみ, 2節あるいは4節残存させ, 株当り分げつ穂数を20本とし, さらに残存節数が同じ区では, それらの次位別構成を同一とした条件下で, 主稈の節位別, 次位別分げつの子実生産力について検討した. 1) 主稈の生育, 収量(穂重)は, 残存節数が少なく, 残存節位が上位であるほど優った. 2) 同一残存節数区の1次分げつの平均1穂重は, L位>中位>下位節の順に優った. 2次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>上位>下位節の順に, また4節残存区では上位=中位<下位節の順に重くなった. 3(4)次分げつの平均1穂重は, 1節および2節残存区では中位>下位>上位節の順に, また4節残存区では中位=上位>下位節の順に重くなった. これらの結果, 全分げつの平均1穂重は1節, 2節および4節残存区でそれぞれ中位>下位>上位節, 中位>上位>下位節, 上位>中位>下位節の順に重くなり, 分げつの子実生産力は出現時期が早く, 栄養生長量の優る下位節ほど優るという傾向はみられなかった. 3)1次分げつの1穂重は穎花数と密接に関係し, 1穂穎花数は茎の生理活性をより直接的に示すと考えられた葉鞘からの葉身抽出速度(cm/日)と非常に高い有意な正の相関関係を示した.
著者
小野 良孝
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.p708-714, 1990-12

サトウキビの節間生長経過に見られる特徴と, 主茎に分化した各節の節間長, 節間径の季節変化について解析した。3品種 (F 161, NCo 310, 読谷山) における特定の1節間の伸長, 肥大生長は, 当該節に着生した葉身が完全に展開した日から10日目までの間に急激に行われ, 20日目までにほぼ終了した。しかし, 節間乾物重の増加は, 読谷山では葉身展開後70日目まで, 他の2品種では100日目まで漸増的に推移した。また, 成熟度の指標である節間の含水量の減少, ブリックスの増加は葉身展開後約100日目まで継続的に見られた。約1カ月間隔で周年的に値付けたF 161の主茎の各節における節間長, 節間径には, それらの生長時期に対応した顕著な季節変化が認められた。節間生長における季節変化を明らかにするために, 各植区の主茎基部の第11節位から各10節間を対象に, 節間の生長量と生長期間の気象要素間の関係を解析した。その結果, 節間長と3気象要素との間にいずれの節位においても正の単相関が認められた。しかし, 互いに他の2要素の影響を排除した節間長との偏相関は, 平均日射量と最も高い正の関係を, 次いで降水量と正の関係を示したが, 平均気温とは負の関係であった。節間径と3気象要素との単相関では, 第11〜30節位の節間径と平均気温, 降水量との間には負の有意な相関が, 一方, 第31節位以上の節間径と気象3要素との間には正の相関が見られた。各節位の節間径と気象3要素との偏相関は, 平均気温と負の高い関係を示し, 次いで平均日射量, 降水量と正の関係を示した。
著者
小野 良孝
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.708-714, 1990

サトウキビの節間生長経過に見られる特徴と, 主茎に分化した各節の節間長, 節間径の季節変化について解析した。3品種 (F 161, NCo 310, 読谷山) における特定の1節間の伸長, 肥大生長は, 当該節に着生した葉身が完全に展開した日から10日目までの間に急激に行われ, 20日目までにほぼ終了した。しかし, 節間乾物重の増加は, 読谷山では葉身展開後70日目まで, 他の2品種では100日目まで漸増的に推移した。また, 成熟度の指標である節間の含水量の減少, ブリックスの増加は葉身展開後約100日目まで継続的に見られた。約1カ月間隔で周年的に値付けたF 161の主茎の各節における節間長, 節間径には, それらの生長時期に対応した顕著な季節変化が認められた。節間生長における季節変化を明らかにするために, 各植区の主茎基部の第11節位から各10節間を対象に, 節間の生長量と生長期間の気象要素間の関係を解析した。その結果, 節間長と3気象要素との間にいずれの節位においても正の単相関が認められた。しかし, 互いに他の2要素の影響を排除した節間長との偏相関は, 平均日射量と最も高い正の関係を, 次いで降水量と正の関係を示したが, 平均気温とは負の関係であった。節間径と3気象要素との単相関では, 第11~30節位の節間径と平均気温, 降水量との間には負の有意な相関が, 一方, 第31節位以上の節間径と気象3要素との間には正の相関が見られた。各節位の節間径と気象3要素との偏相関は, 平均気温と負の高い関係を示し, 次いで平均日射量, 降水量と正の関係を示した。
著者
斎藤 邦行 柏木 伸哉 木下 孝宏 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.255-263, 1991-06-05
被引用文献数
13

早生,中生水稲計5品種を用いて,1988,89年の2ヵ年にわたり乾物総生産量,収量および収穫指数の比較を行い,その相違する要因を穂への同化産物の分配から解析した. 出穂期以降の穂,葉身,茎の部位別乾物重の推移を品種間で比較したところ,茎葉重は出穂期以後全品種で減少し,登熟後期には再び増加することが認められ,これには明らかな品種間差があった. 茎葉重の減少は,葉鞘と稈から穂への貯蔵同化産物の移行により,茎葉重の再増加は,稈への出穂後同化産物の再蓄積によっており,以上の乾物重の変化は,全糖濃度,デンプン濃度の変化に対応していた. 以上の検討の結果,早生品種の南京11号はアキヒカリに比べて,出穂後の乾物生産はやや小さいものの,出穂前貯蔵同化産物が多く,そのほとんどが大きいシンクヘ移行することにより収量が多く,収穫指数も高いこと;中生品種では出穂前貯蔵同化産物量には大きな違いはなく,むさしこがねは日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が高いことにより収量が多いが,シンクの容量を越えた多くの同化産物が程に再蓄積することにより収穫指数が小さいこと;密陽23号は日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が多いことに加えて,その大部分が穂へと移行することにより,収量,収穫指数が高いこと;密陽23号はむさしこがねに比べ出穂後の乾物生産はやや小さいが,シンクが大きく出穂前貯蔵同化産物,出穂後の同化産物の大部分が穂へ移行することによって,収量,収穫指数が著しく高いことが明らかになった.
著者
丹羽 智彦 堀内 孝次 大場 伸哉 山本 君二
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.105-110, 2001-03-05
参考文献数
12
被引用文献数
1

炭化汚泥は脱水汚泥に比べて,減量化,無臭化の特徴を有しているが,土壌改良資材あるいは肥料素材としての施用効果については研究例が殆どない.本研究では,下水道脱水汚泥を岐阜市と高鷲村から1998年3月と8月に採取した.炭化汚泥は,脱水汚泥を300~700℃で炭化処理して作製し,各汚泥の物理・化学特性を測定した.その結果,炭化汚泥の全窒素濃度,EC,C/N比などは,汚泥採取場所,時期,炭化処理温度によって異なった.例えば,全窒素濃度は3~7%までの幅があった.さらに,炭化汚泥に関しては岐阜炭化汚泥に比べて,高鷲炭化汚泥の硬度は2倍,密度は1.5倍であった.この結果,岐阜炭化汚泥は,高鷲炭化汚泥よりも多孔質であることが推測された.また,炭化汚泥の肥料効果を検討するために,1/5000aワグネルポットに,岐阜炭化汚泥と高鷲炭化汚泥を施用して陸稲を育てた.施用量は,両汚泥とも全窒素量が3g/ポット,6g/ポットとなるよう調節した.その結果,出芽後30日目の地上部乾物重とSPAD値は,炭化汚泥を多施用した区の方が高い値となった.また,高鷲炭化汚泥を施用した区よりも,岐阜炭化汚泥を施用した区の方が,地上部乾物重とSPAD値は高くなった.このように,全窒素量が同量となるように施用したにもかかわらず陸稲の生育が異なったことは,炭化汚泥の空隙率の違いが原因していると考えられた.炭化汚泥は,成分量や密度,硬度に差があり,これらの要因が土壌施用時に肥効に影響することを明らかにした.
著者
前田 英三
出版者
日本作物學會
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.249-253, 1977 (Released:2011-03-05)
著者
犬山 茂
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.226-231, 1980-06-30

This experiment was conducted to evaluate the effect of the amount of irrigation water on growth and grain yield of grain sorghum during drought stress period and to make efficient use of irrigation water under four treatments : 0, 1, 2 and 3 irrigations per week. Twenty millimeters of water was applied at each irrigation time. Irrigation water was applied from July 12 to Augllst 2, when grain sorghum was heading time through milk stage. Leaf water potentials measured by pressure chamber (Daiki Rika K.K.) were affected by the quantity of irrigation water and lowered by less amount of irrigation water. The recovery of leaf water potential by irrigation was 2 to 3 bars and the difference of leaf water potential between well irrigated treatment (3 irrigations per week) and others was enlarged when drought stress was accelerated. Two irrigation treatment never became lower than - 19 bars which is a critical point of grain sorghum when stomata close. Leaf diffusive resistance measured by porometer (Lambda Instruments Corp.) was high in no and one irrigation treatments. However, it was low in two and three irrigation treatments and no difference was recognized between them. Top growth of grain sorghum was slowered and stopped by drought stress and its recovery after drought was small. Stressed top growth was mainly due to slow development of grain head and decay of lower leaves. Grain yields decreased as the amount of irrigation water decreased, but no statistical difference was recognized between well irrigated and two irrigation treatments. Reduced grain yields were attributed to low 1,000 grain weight. From the results of grain yield and difference between evapotranspirations and the amounts of irrigation water during drought stress period, drought damage will be reduced by irrigation of about 40 millimeters of water a week.
著者
杉本 秀樹 黒野 真伸 高野 圭子 河野 靖 佐藤 亨
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.24-30, 2000-03-05
参考文献数
15
被引用文献数
3

北条市の水田で(瀬戸内平野部)1997年に緑肥レンゲをすき込み夏ソバを栽培したところ, 気象条件に恵まれ無施肥で250g / m^2を越える比較的高い収量が得られた.1998年には北条市と本匠村(九州中山間地)の水田で, 冬季休閑した休閑区とレンゲをすき込んだレンゲ区とを設け夏ソバを栽培した.北条市では, 播種期前後の多雨のため苗立ちが揃わず, 全般に生育も阻害され収量も低かった.この傾向は休閑区で特に著しく, 同区の収穫は皆無に近かった.しかし, レンゲ区では112g / m^2と前年の47%の収穫があった.本匠村では開花期以降の降水量が平年の2.76倍にも達し, 粒数不足のため収量は低く, レンゲ区で219g / m^2, 休閑区ではさらに低く143g / m^2であった.北条市のように生育初期段階に, あるいは本匠村のように開花期以降に土壌過湿仁おかれた場合でも, 夏ソバの生育阻害ならびに減収の度合いはレンゲ区の方が休閑区より少なかった.以上の結果は, 緑肥レンゲの作付けとすき込みが, 夏ソバ栽培にとって有効であること, 夏ソバの湿害を軽減する効果があることを示唆するものである.
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.189-193, 2000-06-05
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年, ソバは転換畑で栽培されることが多くなったが, その栽培上の問題点の一つに湿害がある.ポット栽培した普通ソバ品種キタワセソバを供試して1葉期, 開花期および登熟期に, 畝間に水が溜まった状態を想定した湿潤区(地下水位5〜7cm), 圃場に水が溜まった状態を想定した湛水区(地上水位2〜3cm)ならびに対照区を設け, 処理日数を変えて土壌の過湿処理を行い, これらが収量, 収量構成要素および茎の諸形質に及ぼす影響について調査した.処理による子実重の低下は, 湿潤区, 湛水区とも生育段階が早いほど, 処理日数が長いほど著しかった.湿潤区においては, 1葉期および開花期では3日以内, 登熟期では6日以内の処理なら子実重の低下は10%以内にとどまった.一方, 湛水区においては, 1葉期では1日処理でも, 開花期および登熟期では3日以上で子実収量は顕著に低下した.湿潤区, 湛水区とも1葉期ならびに開花期における子実重の低下は粒数の減少に起因したが, これは植物体の矮小化, とくに分枝の発達不良, ならびに1分枝当たり開花数の不足による分枝開花数の減少が主因であった.湛水区・登熟期処理による子実重の低下は千粒重の低下に起因した.結実率は過湿条件下でも低下せず, 減収要因にはならなかった.
著者
原 貴洋 照屋 寛由 塩野 隆弘 生駒 泰基 手塚 隆久 松井 勝弘 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.151-158, 2008 (Released:2008-05-23)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

南西諸島に適した普通ソバ品種の導入,開発に資するために,沖縄本島の名護市において国内の普通ソバ5品種を11月上旬,12月下旬,3月上旬の3時期に播種して栽培し,成熟期に農業関連形質を調査した.いずれの作期においても,150粒 m-2 とした密播処理区の子実収量は50 粒m-2 とした粗播処理区に比べて1.3~3.4倍高かった.主茎長,初花節位,主茎花房数,花房あたり開花数は,日本の他地域での試験栽培で報告された値に比べて少なく,その一因として,栽培期間中の短日条件の影響が考えられた.主茎長,主茎花房数,花房あたり開花数,千粒重についての品種間差は,日本の他地域での試験栽培で報告された順序とほぼ一致していたため,他地域において認められる形質の品種間差は南西諸島においても類似していると考えられた.生育期間中に極度の短日条件が続く11月上旬播種,12月下旬播種の作期においては,子実収量と,主茎花房数および個体当たり花房数との間に有意な正の相関が認められた.
著者
徐 銀発 大川 泰一郎 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.42-50, 1997-03-05
被引用文献数
9

最近育成された多収性品種タカナリと日本晴を用いて, 1991年から1994年の4年間にわたって収量及び乾物生産量を比較し, タカナリの多収要因を収量構成要素, 生長解析及び受光態勢を通じて検討した. 10 a 当たり収量は, 日照時間が少なく天候不良であった 91 年と 93 年では, タカナリは528〜642 kg で, 日本晴に比べて約 100 kg 高く, 日照時間が多く天候のよい 92 年と 94 年では, タカナリは 817〜888 kg で, 日本晴に比べて約 230 kg 高かった. 収量構成要素についてみると, タカナリは日本晴に比べてm^2当たり穂数は少ないが, 一穂穎花数が多いことによってm^2当たり穎花数が多く, 特に2次枝梗着生穎花数が著しく多いにもかかわらず登熟歩合が高かった. この要因はタカナリの乾物生産量と収穫指数ともに日本晴より著しく大きいことにあった. 乾物生産についてみると, 天候のよくない 91 年では出穂期以降, タカナリの個体群生長速度 (CGR) は日本晴に比べてもっぱら純同化率 (NAR) が大きいことによって大きく, 天候のよい 94 年では最高分げつ期以降, タカナリの CGR は NAR と平均葉面積指数 (LAI) がともに大きいことによって大きかった. タカナリの NAR が高い要因は, 幼穂形成期以降, 吸光係数, 個体群内の葉の配列, 穂の位置からみた受光態勢が日本晴より良好であることにあった. またタカナリの収穫指数が高いことには出穂後の穂重増加量と茎葉に蓄積された同化産物の穂への転流量を表す茎葉重減少量の大きいことが関係していた.
著者
吉永 悟志 境谷 栄二 吉田 宏 山本 晶子 若松 一幸 菊池 栄一 本間 昌直
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.445-449, 2007-07-05
被引用文献数
1 2

水稲の湛水直播栽培では,播種後の落水管理の普及による出芽・苗立ちの安定化にともない,酸素発生剤(カルパー)の種子への被覆量を減量する事例が増加しつつある.本報告では,東北地域においてカルパー被覆量と苗立ちとの関係を播種後落水条件で比較した試験事例を収集,解析し,寒冷地の湛水直播栽培におけるカルパー減量が苗立ちに及ぼす影響について検討を行った.ガルパー無被覆条件では,播種後落水条件であってもカルパー被覆条件と比較して苗立ち率の変動幅が増大するとともに苗立ち率が顕著に低下した.一方,カルパーの乾籾2倍重(標準条件)と乾籾1倍重(減量条件)被覆種子の苗立ちを比較すると,カルパー減量による苗立ち率の低下は供試データの平均値で約4%であり,カルパー減量の影響が小さいことが示唆された.しかしながら,播種深度や出芽期気温の影響について検討した結果,出芽期気温の低い条件ではカルパー減量による苗立ち率の低下が認められた.このため,播種後の日平均気温が15℃を下回るような低温の継続が予想される地域あるいは播種時期においては,播種後落水を行う場合でもカルパー減量の判断は慎重に行う必要があると考えられた.また,カルパー減量を前提とする場合には,標準被覆量で播種する場合よりも播種時期の気温条件に留意して播種目の設定を行う必要があるとともに,低温条件での出芽促進技術の導入を図る重要性が高まることが示唆された.
著者
中野 敬之 大場 正明
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.331-336, 1998-09-05
被引用文献数
3

中, 低級茶の価格が低迷しているため, 上級茶の原材料である一番茶の良質・多収化が益々重要になっている.そこで, 一番茶を多収にする前年二番茶の収穫方法を明らかにするため, 二番茶収穫の時期と摘採位置が翌年一番茶に及ぼす影響を三番茶不摘採園において調査した.その結果, 二番茶を早期に収穫すると, 翌年一番茶は新芽数が減少し, 減収した.また二番茶の摘採位置が高いと.翌年一番茶は新芽数が少なく, 生育が遅れて減収した.収穫時期および摘採位置の交互作用については, 早期に摘採位置を上げて二番茶を収穫すると秋に徒長枝と着蕾数が増加したが, 翌年一番茶への影響は認められなかった.三番茶不摘採園では, 新芽数が少ないことが一番茶の減収要因になりやすいので, 二番茶を晩期に摘採位置を低く収穫した方が翌年一番茶の増収をもたらすと結論された.
著者
伊藤 亮一 玖村 敦彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.109-114, 1987-03-05

ポット栽培したダイズ(品種農林2号)を用いて, 葉の生長を葉の"伸長性"(葉片に錘りをかけたときの, 葉片の単位時間あたりの伸び量, Ex)と, 圧ポテンシャル(P)との両面から検討した. 得られた結果の大要は, 以下の通りである. 1) 給水を停止すると, 土壌水分含量は低下し, それに伴ない葉の生長速度は低下して, 土壌水分レベルが45%(対圃場容水量)に達したとき, 葉の生長は完全に停止した. その後, 土壌水分レベルを45%に保ったところ, 葉は再び生長を始めた. このことから, 葉の生長において乾燥への馴化がおこると考えられた. しかし, 生長再開後の葉の生長速度は十分に給水した対照区(土壌水分レベル80%)の葉と比べて, 小さかった. 2) 給水停止後, 葉の生長速度が低下したときには, PとExの両者が共に減少した. その後Pは, 対照区のレベルにまで回復し, このことが葉の生長の再開を可能にしたと考えられた. Pの回復は, 浸透ポテンシャルの低下, すなわち浸透調節によりもたらされた. いっぽう, Exは, 低い値にとどまり, 回復しなかった. 低水分状態が維持されたときに, Pが完全に回復するにもかかわらず, 生長の回復が不完全な程度にとどまるのは, Exが低い値にとどまることによると考えられた. 3) 植物体を低水分下に置いた後, 十分給水すると葉の生長は回復するが, 対照区にはおよばなかった. 乾燥処理後の再給水により, Pは十分回復したが, Exの回復は不十分であり, このことが, 生長回復の不十分さの基礎となっていると考えられた. またこのことから, Pはその時々の条件に応じすみやかに変化しうるが, Exは低水分条件により, かなり不可逆的な減少をきたすようであった. 4) 本実験の結果の全体をみると, 葉の生長速度は, P, Exの両者と正の相関を示したが, 後者との間の相関のほうがより密接であった.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000-09-05
参考文献数
23
被引用文献数
5

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.