1 0 0 0 OA 病院の再構築

著者
阿部 憲男 清水 博
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.98-101, 2006-02-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

国立療養所岩手病院は, 医師の名義を借りて診療報酬を不正受給したことにより平成12年6月1日に保険医療機関取消処分を受け, 3ヵ月後に再度保険医療機関として指定されたものの, 5年間にわたって, 標榜科と病床数の制限を受けた. 病院の存亡の危機に直面した時期に院長として務めたわれわれは, 職員の士気の昂揚を図り, 各人の意識改革を行うことに主眼をおいた. 岩手病院の存在の意義を明確にするために職員として何をなすべきかを明快で具体的な内容からなる「病院の目標と基本方針」を策定した. 一連の不祥事に学び, 「情報の共有」の重要性を認識し, 情報の共有の場として「診療支援委員会」を毎週1回開催した. また, 広大な敷地の環境美化を図り, その作業を通じて職員間の意思疎通を図ることを目的とした各職場の代表からなる環境整備の日を毎週1回1時間設けた. さらに, 従来の公務員像から脱却し職員の意識改革を行うために, 情報の共有, プラスα, 現場主義等のキーワードを盛り込んだ職員の行動指針として「十訓」を定めた. 以上の4つを, すべてに優先して病院運営の基本的な4本柱とした. その結果, 重症児(者)病棟では, 全国の国立療養所に先駆けて1週間の入浴回数を2回から3回に増やすことを実現し, 夕食の喫食時間の繰り下げ, 病棟配膳から中央配膳への変更, 在宅重症児(者)の短期入所の著明な増加, 食形態の見直し等へと繋がっていった. 病院全体としては, 独法移行後に労務系職員が本来業務を超えて職種横断的な機能的単位である「サービス班」を形成して, 班全体として院内清掃, 洗濯物の整理, 環境整備, 建物設備の補修等に当たる業務へのスムースな移行が可能になった. 看護業務を軽減するために, 看護課への各職場の協力体制が出てきた. 今後は, 国立病院機構の掲げる質の高い医療を遂行するためには, 病院を変えるリーダーとなりうる医師の確保こそが最大の課題である.

1 0 0 0 OA 集談会記事

出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.994-999, 1995-11-20 (Released:2011-10-19)
著者
青木 昭子 瀬沼 昭子 中村 満行 泉二 恭輔 服部 英行 長岡 章平
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.128-131, 1998-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

経口抗アレルギー薬オキサトミドを内服中に肝障害を発症した57歳男性を報告する. 内服35日目に嘔気と黄疸が出現し, 入院となった. 血液生化学で胆汁うっ滞型肝障害を認めた(総ビリルビン7.44mg/dl, 直接ビリルビン6.71mg/dl, GOT163, GPT232, ALP1502). 腹部エコー, CTにて肝腫大を認めるも肝内胆管の拡張は認められなかった. 各種肝炎ウイルスマーカー(HB抗体, HCV抗体, IgM-HA抗体, HB抗原)は陰性であった. 白血球増多, 好酸球増多がみとめられたことから, オキサトミドによる薬物性肝障害を疑った. オキサトミドはケミカルメディエーターの放出と効果を抑制し, 抗ヒスタミン作用を有する抗アレルギー薬で, 各種アレルギー疾患において安全性と効果が証明されている.しかしその投与期間中には肝障害の可能性を考慮する必要があると考え報告した.
著者
石松 春代
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.436-443, 2001-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
5

看護学生3年次の卒業期に事例研究を課し, その前後での学生の認識の変化を検討した. 事例研究の直前・直後・論文作成後に62名の学生について, 思考力・自己教育力についての同一の質問紙に回答してもらった.思考力は, 研究直前・直後よりも論文作成後に有意に上昇した. 自己教育力の平均値は, 全体平均得点では研究の時期による差がなく, 項目別で[看護の工夫]が上昇した. また, 学生の[向上・成長状況]の記述から「文献検索と活用ができるようになった」「多くの文献から多様な考えを知り, 知識を深めた」と述べており自己教育力への動機づけができたと推察された. 一方, 教員による論文評価は, 70%以上を到達点と考えると61.3%の学生が該当したことから, 3年生に事例研究を実施することは, 有効であったと考える.今後さらに学生の入学の初期から文献検討や文章表現力の強化に努めたい.
著者
木村 哲
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.637-640, 2005-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
4

日本ではいまだにHIV感染者とエイズ発症者が年毎に増え続けている. とくに後者の増加は先進国としては異例のことであり, 対策の遅れが目立っている. その最大の原因は, HIV感染症に対する社会の無関心と, 抗体検査の普及の遅れである. マスコミを含めたさまざまな啓発活動の促進, 学校等における性感染症教育の充実, 保健所での自発的抗体検査体制の見直しなど課題が多いが, 医療機関の果たすべき役割も大きい. それはHIV感染症やエイズの見落としと誤診を少なくし, 患者教育を充実させる点である. 患者の予後改善・救命と感染拡大を防ぐには早期診断が重要である.