- 著者
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杉浦 美砂
青木 昭子
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.4, pp.415-420, 2015-10-25 (Released:2015-12-24)
- 参考文献数
- 19
- 被引用文献数
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両肩関節炎を呈したことから一時リウマチ性多発筋痛症(PMR)と診断した慢性結節性痛風の症例を報告する.85歳の男性.高血圧,狭心症,不整脈,糖尿病など複数の疾患を有し,複数の診療科が処方した多数の薬剤を内服中であった(多剤併用;ポリファーマシー).X年8月両下腿の腫脹,発赤,疼痛と発熱が出現し,下腿蜂窩織炎の診断で入院した.抗菌薬を投与され解熱し,下腿の症状は改善したが,1週間後に両肩の疼痛と可動域制限が出現した.血清CRP高値,リウマトイド因子,抗CCP抗体陰性,全身ガリウムシンチグラフィーで肩関節を含む多関節部に集積が認められ,PMRと診断した.プレドニゾロン(PSL)10 mgにて症状は改善し退院したが,退院直後に左肩と左膝の疼痛のため,続いて右前腕と手指の疼痛と腫脹のため,1カ月間に2回入院した.左母趾基部に小結節が見られたため穿刺したところ,白色ペースト状物質が吸引され,偏光顕微鏡で針状結晶が認められたことから痛風結節と診断した.約30年前に痛風発作の既往があり,以後アロプリノールを継続服用していたが,2年前の入院後にその処方が中断していた.さらに,肥満,飲酒,糖尿病,脂質異常症,うっ血心不全,不規則な服薬,利尿薬内服など痛風の複数の危険因子を有していた.アロプリノール中断の理由と高齢者のポリファーマシーの弊害について考察を加え報告する.