著者
石垣 一彦 矢加部 茂 竹尾 貞徳 前川 宗一郎 吉田 康洋 池尻 公二
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.325-328, 1986-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
10

精神障害者同士の結婚例12組について, 主として社会適応面から調査し報告した.1) 病名は夫婦とも精神分裂病である組合せが7組で, 12組のうち11組の両方あるいは片方の患者は分裂病者であつた.2) 結婚の様式は恋愛結婚6組, 見合結婚5組で, 見合結婚の経過が良好であった.3) 結婚の動機として, 男性では長子, 祭 主宰者としての役割を期待され, 女性では親の老令化, 同胞の世話になりたくないため結婚している者が多かつた.4) 社会適応状況は男性より女性の方が良好であつた.5) 結婚から現在までの経過は安定型, 不安定維持型, 挫折型の3つに分類出来た.
著者
伊藤 綏 加藤 督介 三宅 良彦
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.445-451, 1975

胃液酸度に関する研究は多いが, これに比べ胃液ペプシンについては基礎的なものの歴史は古いけれど, その臨床的研究はごく最近になつてからである. この原因は多くの研究者が指摘してきた通りペプシン測定法にあつたことは確かである. 我々は比較的簡単な操作で多くの検体を処理し得るSamloff-KleinmannのRadial diffusion法の今村氏変法を用いて胃液ペプシンと消化器疾患との関係を研究した. 目的は胃液酸動態の研究から最近では消化性潰瘍発生の主因はペプシンに移つていることと, 肝, 膵, 腸疾患にみられる消化性潰瘍の発生病理に対する従来の胃酸による説明は不可能であり, どうしても消化管ホルモンとそれに密接な関係を有するペプシン活性が問題となつてくるので, この点を解明することに重点を置いて研究を進めた. 今回は各種酸度を呈した胃炎, 胃潰瘍, 十二指腸潰瘍, 胃癌, 肝炎, 肝硬変症, 胆石症計78例について酸度とペプシンとの関係を観察した.
著者
永井 英明 池田 和子 織田 幸子 城崎 真弓 菅原 美花 山田 由美子 今井 敦子 遠藤 卓 大野 稔子 河部 康子 小西 加保留 山田 三枝子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.628-631, 2008

Human Immunodeficieny Virus (HIV)感染者の中で, HIV感染症は安定しているが中枢神経系の後遺症のために長期療養が必要な患者の増加が予想されている. 彼らを受け入れる可能性のある施設として, 介護老人保健施設, 特別養護老人ホーム, 療養型病床保有施設, 障害者施設等入院基本料の施設基準取得病院の4施設に対してHIV感染者の受け入れについてのアンケート調査を行った. 11, 541施設中3, 723施設(32.3%)から回答が得られた. HIV感染者を受け入れる基準を決めている施設は1.6%にすぎず, 75.5%は受け入れを考えていなかった. 受け入れられない主な理由としては, 院内感染のリスク・不安, 診療経験がない, 職員不足, 設備・環境が整っていない, 医療費の問題などが挙げられた. HIV感染者の受け入れを可能にするためには, 職員に対する積極的な研修活動が最も重要と思われた. さらに診療報酬の面からの支援および医療面での拠点病院の支援が必要であることが明らかになった.
著者
阿部 憲男 清水 博
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.98-101, 2006

国立療養所岩手病院は, 医師の名義を借りて診療報酬を不正受給したことにより平成12年6月1日に保険医療機関取消処分を受け, 3ヵ月後に再度保険医療機関として指定されたものの, 5年間にわたって, 標榜科と病床数の制限を受けた. 病院の存亡の危機に直面した時期に院長として務めたわれわれは, 職員の士気の昂揚を図り, 各人の意識改革を行うことに主眼をおいた. 岩手病院の存在の意義を明確にするために職員として何をなすべきかを明快で具体的な内容からなる「病院の目標と基本方針」を策定した. 一連の不祥事に学び, 「情報の共有」の重要性を認識し, 情報の共有の場として「診療支援委員会」を毎週1回開催した. また, 広大な敷地の環境美化を図り, その作業を通じて職員間の意思疎通を図ることを目的とした各職場の代表からなる環境整備の日を毎週1回1時間設けた. さらに, 従来の公務員像から脱却し職員の意識改革を行うために, 情報の共有, プラスα, 現場主義等のキーワードを盛り込んだ職員の行動指針として「十訓」を定めた. 以上の4つを, すべてに優先して病院運営の基本的な4本柱とした. その結果, 重症児(者)病棟では, 全国の国立療養所に先駆けて1週間の入浴回数を2回から3回に増やすことを実現し, 夕食の喫食時間の繰り下げ, 病棟配膳から中央配膳への変更, 在宅重症児(者)の短期入所の著明な増加, 食形態の見直し等へと繋がっていった. 病院全体としては, 独法移行後に労務系職員が本来業務を超えて職種横断的な機能的単位である「サービス班」を形成して, 班全体として院内清掃, 洗濯物の整理, 環境整備, 建物設備の補修等に当たる業務へのスムースな移行が可能になった. 看護業務を軽減するために, 看護課への各職場の協力体制が出てきた. 今後は, 国立病院機構の掲げる質の高い医療を遂行するためには, 病院を変えるリーダーとなりうる医師の確保こそが最大の課題である.
著者
鈴木 紘一 小尾 和洋 北洞 哲治 横田 曄 森 忠敬 宇都宮 利善 桐原 陽一
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.152-157, 1984

抗生物質起因性偽膜性大腸炎の成因として, 腸内嫌気性菌であるClostridium difficileの産生する毒素が重視されている. 同菌の検出及び毒素産生能を検索しえた症例を呈示し, 主として合成ペニシリンによる急性出血性大腸炎との対比検討を行つた. 症例は47才女性. 化膿性子宮内膜炎にて子宮内容掻爬術を施行後, FOM, ABPC, CEX, CETなどの抗生物質を持続的に投与中, 腹痛, 下痢, 粘血便, 裏急後重を来した. 大腸内視鏡検査にて直腸より下行結腸にかけて大小様々の黄白色を呈する偽膜と炎症性粘膜を認め, 糞便よりC. difficileを検出した. 同菌の培養濾液及び糞便濾液につき細胞傷害試験及び血管透過性因子をみる家兎腸管ループ試験, 皮内反応を行い毒素の存在を証明した. C. difficileは炎症消退後の固型便より再び検出されたが毒素産生能はみられなかつた. 急性出血性大腸炎とは異なる病態であり, 両疾患の相違につき言及した.
著者
飯野 京子
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.410-414, 2001

国を挙げてのがん対策が功を奏し, がん患者の早期発見, 治癒率の向上などがん医療は著しく進歩した. しかし, 現在でもがんは死因の1位であることには変わりなく, 死に至る病として恐れられ, がん告知, 精神的ケアなどの問題をかかえている. また, 治療自体が侵襲的であることから, 患者のQOLの向上のために看護職の果たすべき役割は大きい.<br>近年, がん医療において看護婦が専門的な役割を担えるようになり, この分野で急速な進歩が見られている. 特に日本がん看護学会が臨床と教育の架け橋を行ってきたこと, がん看護研究の優先性が明らかにされたこと, 看護研究が進歩してきたこと, がん看護専門看護師・認定看護師などがん分野の専門的な看護職が育ってきたことが大きな要因と考えられる.<br>本論ではこれらを概観して, これからのがん看護の課題を論ずる.
著者
中道 静郎 秋元 義巳 五十嵐 勝朗 黒沼忠 由樹 小出 信雄 大竹 進 成田 俊介
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.751-754, 1988-08-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
3

DMDの3症例を紹介する. 発病年令は2~3才, 入院時年令は4~9才, ステージV到達年令は9~10才, ステージVよりVIIまでの到達期間は平均8年であり, 身長, 体重とも健常男子に比すると著しく低下していた. 肺活量(VC)は末期に610±25ccまで低下し, 2例が気管切開を受けた. CPK, LDH, アルドラーゼ, GOT, GPTなどの血清酵素は入院時非常に高く, 病勢の進行とともに漸減していつた. PaO2の低下とPaCO2の上昇が末期に顕著で, 血液は呼吸性アシドーシスとなり, 意識混濁, 頭重, 失見当識の状態になつた. 頻回の喀痰喀出困難のため体位ドレナージ, バイブレーター, タツピングなどにより排痰を図つた. 3例はそれぞれ呼吸不全, 肺炎, 気管無名動脈瘻よりの大出血で死亡した.
著者
湯浅 龍彦 根本 英明 木村 暁夫 吉野 英 山田 滋雄 西宮 仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.601-605, 2001-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16

慢性硬膜下血腫除去術の直後に発症したCreutzfeldt-Jakob病(CJD)を経験した. これはきわめて特殊な経過であり, 術前にはもちろん, 術後においてもCJDの診断を下すことは困難であった. そのなかで, 進行性に悪化する臨床症状に加えて拡張強調MRIがCJDの診断の糸口になった. つまり, 脳波に未だ周期性同期性放電(PSD)の出現していない発病初期の脳MRIにおいて, T1強調画像やT2強調画像にほとんど変化がみられないのに対し, 拡張強調MR画像に明瞭な病変がみられたことは特異なことであった.また, 本例においてはCJDの初期の臨床症状は明らかな左右差をもって発症しており, かつ, 同時期の脳MRIの病変分布にもまた著しい左右差が見られた. これは先行した慢性硬膜下血腫がCJDの脳病変の発現経過に影響を与えたものと推論され興味深いことであった.さらに本例は, CJD患者が外科手術を受ける事態が現実に起こりうることを示すものであり, CJDの診療に当る施設においては, 感染防御対策の面からだけでなく, 手術を受け入れるために必要な整備と具体的な手順書を早急に整えるべきであろう.
著者
山内 豊明 吉川 博子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.677-681, 2002-11-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

Creutzfeldt-Jakob病は比較的まれな神経疾患であり, 亜急性の経過で痴呆, 精神症状, 錘体路・錘体外路症状, 小脳症状などさまざまな中枢神経症状を呈する. 症状が進行するにしたがいミオクローヌス, 高度痴呆, 無動性無言の状態となり, 通常発症後2年以内に死に至る. 孤発性, 遺伝性, 感染性に大別され, 感染性の場合は, ほとんどが医原性の感染であり, 患者に常時接している家族にCJDが発症したという報告はない. しかしながら感染性の疾患である本疾患に対しての, 病室, 手洗い, 器具の扱い, 身体清潔, 食事, 汚染物の扱い, などに関する正しい感染防止の知識は不可欠である. その一方で, 過剰な感染対策にならないよう, 感染性そのものについて十分に理解して対応することも重要である. 本疾患については, 疾患概念ならびに患者やその家族などの立場を理解し, かつ医療従事者や他の患者に感染させないことが鍵となる事項であろう.

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著者
橋口 茂
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, pp.365-367, 1951 (Released:2011-10-19)
著者
足立 克仁 川井 尚臣
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.38-41, 2008

本文では当院における神経・筋疾患のセカンドオピニオン外来の概略を示す. 当院の患者は介護を要する肢体不自由者が多いため介護者にも配慮し休日でも対応できることが望ましいこと, 平日では医師の配置がしにくいことなどの理由から土曜日に開設した. また神経・筋疾患患者は病気が長期にわたるため, 主治医とのつながりが強く, 紹介状を持参できない場合が多いこと, 本疾患の診断は問診と診察が重要で紹介状がなくても病状把握ができることが多く, 検査資料のみでも疾患の理解に役立つことが多いこと, などの理由から紹介状の有無にかかわらず受け付けることが望ましいと考えた. また, 経過観察も重要であることが多いので期間を置いて複数回相談の必要性が高い. このため相談医の人選はローテート医は不向きで経験豊富な専門医, 可能なら少人数複数が望ましい. 料金の設定には取り扱う疾患や地域の特殊性などに配慮を要する. さらにほかに神経・筋疾患の専門施設が少ないため, 当院での精査の必要が生じることもある. 本疾患は慢性に経過し治療が困難なため放置されやすいので, 機会ある毎にセカンドオピニオン外来をアピールし患者の要望に応える必要があると考えている.
著者
中村 伴子
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.318-323, 2007-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

国立病院機構, ハンセン療養所, ナショナルセンターに勤務する作業療法部門の業務実態とチーム医療の実態についてアンケート調査を行った. その結果, チーム医療に関してはチームアプローチに困難さを感じている施設がきわめて多く, 問題なしという回答施設は少なかった. チームアプローチの困難な理由は人員配置の少なさや専門性の理解不足, 必要な専門職種の配置の不足が指摘された.また, 作業療法士がチーム医療を実施している主な疾患は神経・筋疾患, 脳血管疾患, 骨・運動器疾患が多く, その専門的役割としては日常生活活動, 上肢機能回復訓練, 遂行障害評価訓練などが多くみられた. さらに, チーム医療に問題を感じながらもカンファレンスの実施や患者主体の工夫が考えられ, 困難事例についての症例検討会も多くの施設でチーム全体にて取り組まれていた.今後はチームの成員一人ひとりがチーム医療の実施者として独自の専門領域を持った上で, 自律的に協働して, 患者のニーズと願望に即した患者中心の医療が望まれる. それを実現するためにはまずチーム医療体制における必要な職種や人員の配置, まとめ役や調整役を据えた民主的な運営のもとでカンファレンスや症例検討会, 勉強会を重ね複数職種の相互理解が必要と考えられる.
著者
小沢 隆昭 宮崎 久義 外山 あつ子 江崎 公明 垣内 康之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.235-239, 1989-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

経尿道的前立腺切除術(TUR)中に損傷された前立腺静脈洞からの灌流液吸収によると思われる重症の低ナトリウム血症を経験した. 患者は89才の男性で脊麻下にTURを開始した. 手術開始後1時間ころより血圧下降, 意識レベルの低下がみられた. 瞼結膜は蒼白で, この時点でのヘモグラムはHb 5.6g/dl, RBC 184×104, Ht 17.4%であり, 血清ナトリウム値は109mEq/lであつた. 聴診上胸部全肺野にラ音を聞きPaO2 57.4mmHg, PaCO2 39.6mmHg, pH7.270 BE-8.2であつた.ただちに酸素吸入, 昇圧薬, 高張ナトリウム液を静脈注射し, 出血に対する輸血を開始した. 血圧は回復したが胸部ラ音は次第に強くなり, 胸部X線写真で肺水腫像を呈した. 計測された血清ナトリウム値の最低値は93mEq/lであつた.病棟帰室後も酸素吸入, 血圧, 腎血流維持のためのドパミン持続注入, 利尿薬, ナトリウムの負荷, 輸血を継続した. 術後1日目には各種検査値は正常化し, 2日目には胸部X線写真も術前の状態まで回復した.TUR中の低ナトリウム血症は, その発生の予防とともに早期発見が大切である.
著者
倉田 さつき 金谷 誠久 水内 秀次 永禮 旬
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.121-125, 1993-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
3

重症心身障害児者(以下重心)病棟において一括して施行するハブラシの洗浄消毒方法について検討した. 入院患者歯磨き後のハブラシを水道水流水, 0.5%グルタルアルデヒド, 0.1%次亜塩素酸ナトリウム, 85℃高温乾燥機, 70℃流水でそれぞれ洗浄, 消毒し, 好気性菌について残存菌数を比較した. また種々の細菌をハブラシに付着させ, 同様の洗浄, 消毒後の残存生菌数を比較した. さらにハブラシに残存した細菌群をより短時間で除菌する目的で, 電子レンジによるマイクロ波照射を湿潤状態, 乾燥状態の歯磨き後のハブラシに対して行い, 残存菌数の測定を行った. ハブラシに付着した細菌の除菌についてはグルタルアルデヒドと70℃の流水がそれぞれ充分な除菌効果が得られたが, 前者は毒性が残留するため, 湯を用いての洗浄が重心病棟で日常行いうる有効な方法と考えられた. 電子レンジでは, ハブラシの湿潤, 乾燥にかわからず, 5分の照射で充分な殺菌効果が認められた.
著者
堀 秀史 中倉 滋夫 酒井 喜久雄 宇佐 利隆 矢野 裕 井上 健 野元 域弘
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.431-437, 1998-07-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
8

携帯型自動血圧計(ABPM)を用いた24時間血圧の測定が可能となり, 従来の随時血圧の測定ではわからなかった白衣高血圧, 早朝の急激な血圧上昇(morning surge)や夜間血圧におけるdipper型およびnon-dipPer型の存在が明らかになった. また, 24時間血圧は心血管系疾患や臓器障害の発症・進展と密接な関係にあることがわかってきた.今回, 本態性高血圧症患者21例(平均年齢63.6歳)を対象とし, αβ遮断薬塩酸アロチノロールの血圧日内変動におよぼす影響をABPMを用い検討した. 本剤の服用により, 24時間を通じ日内変動リズムのパターンに影響をおよぼすことなく良好な降圧効果が認められた. また, dipper型とnon-dipPer型に分けた検討において, non-dipper型でより良好な降圧効果が確認された. これより, 本剤は血圧日内変動に悪影響をおよぼさず安定した降圧効果を示す降圧薬であると考えられた.
著者
佐々木 昌弘
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.175-181, 2005

新潟県中越地震では, 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で教訓とされた初動体制について, 政府としては地震発生から4分で首相官邸に対策室を設置し, 緊急参集チームが召集された.<br>以降, 新潟県や関係機関と連携をとりながら対策を講じていくこととなるが, 医療面については, 国立高度専門医療センターや国立病院機構が, 急性期から亜急性期を経て地元の医療機能が回復するまでの期間を継続的に支援するなど, 比較的大きな問題もなく対応することができた.<br>この間の政府が担った役割について医療を中心に整理するとともに, 政府が具有すべき機能について考察する。