著者
丸山 信之 有馬 邦正
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.992-995, 1987-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
4

症例は86才女性で, 77才ころより「陰部の盛痒感や, 皮膚がムズムズすることで虫が体内に入つたことがわかる」と執拗に訴え, 不眠, 被害的になつたため, 昭和51年(79才)当所に入院. 入院後死亡するまでの7年間, 寄生虫妄想は断続的に出現し, その他にも被害, 被毒妄想, 年金や生命線に関する妄想が相次いで出現した.一方痴呆症状は入院当時捉えられなかつたが, 入院後1年目ころから痴呆化が目立つてきた. 本症例における妄想を中心とした長期にわたる症状の経過と転機については, 脳障害それ自体のほかに性格, 生活史, 発病状況などを総合しての心的力動のほかに, 家族歴にみられる負因や神経病理学的所見にみられるAlzheimer原線維変化, 老人斑の出現及び神経細胞脱落などの形態学的変化が, 軽度であることなどが関与していると考えられた.
著者
吉村 正 米倉 猛
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.597-603, 1963 (Released:2011-10-19)
参考文献数
6

The samples of this paper are selected and not representating all the patients.Moreover, these activities of leisure are made by memory, ability, and good will by our patients. I am sorry that there is no other group of patients to compare. As leisure is vague and can not catch, it is difficult to investigate strictly by scientific measure.If we presumed to both wheels of a car as to work and to play, we were inclined to work extremely until tody. By the rationalization of industry and automation in future, a human being will be able to amuse a lot of leisures, and then it must be important to study for us how to play. The ages from 25 to 44 and unmarried patients are majority in this paper. They are unemploying in order to be hospitalized for long times. A great number of patients are schizophrenics. More than half of these patients answered that they had amusement and recreation before admitting mental hospital. Almost all of their religion is Buddhism. As only 7% of patients is attending regularly to temple, we may talk over trifling of religious idea for psychiatric patients. A considerable member of patients like viewing the television, but dislike reading the book. A lot of patients are loving their dogs and cats at their homes.While 90% of all the patients answered they had no drinking habit, and no social drinking, but the index of smoking habit were higher. We discovered some defects of fostering in jevenile days for 700 of patients. How to pass one's leisure depends upon one's own intelligence, economic status and enviroment. It is irrational to put in force to amuse one's own work for the all people although it is desirable. Great number of people are influenced by the surrounding. Especially females can be influenced by marriage, pregnancy, and child care.We must emphasize the device and investigation of leisure so that our mind may flow to easy direction.
著者
勝木 弘美 野辺 薫 山田 洋子 竹井 久美子 吉永 繁彦 有井 真弓
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1133-1136, 1986

脳卒中患者に対するデイケア効果についての報告は極めて少ない. そこで国立療養所福岡東病院のデイケア患者のうち, 評価を行つた脳卒中患者43例についてデイケア開始時及び6カ月後の評価を比較し, デイケア効果を検討したので報告する.<br>評価項目は身体機能, 行つているADL, 患者の行動範囲, 復職または家庭での役割, 日常の過ごし方, 生活に対する意欲の6項目である. すべての項目において43例の90%以上が維持または改善を示したことから, 現時点においてはデイケア効果があるといえ, 脳卒中患者に対するデイケアの必要性を示唆している.
著者
湯尾 明
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.231-238, 1999-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
37

ヒトの好中球は外部からの刺激に反応して活性酸素を産生し放出するが, まず最初に産生される活性酸素はスーパー・オキシドである. この反応は, 好中球の細胞膜で行われ, 細胞内のNADPHから電子を受け取って細胞外の酸素に受け渡す電子伝達系であり, NADPHオキシダーゼとも呼ばれている. この反応にかかわる酵素は7種類の蛋白からなる複合体であり, その構成要素はそれぞれgp91Phox, p22Phox, Rap1A, p47Phox, p67Phox, p40Phox, Rac1/2と呼ばれている. これらの分子の間での結合様式などが詳細に研究されてきた. また, 細胞膜上の受容体からこれらの活性酸素産生系に至る細胞内刺激伝達においてはMAPキナーゼファミリーのp38が重要な役割を果たすと考えられている. 一方, 様々のサイトカインは好中球の活性酸素産生を直接惹起するよりもむしろ, 他の刺激物質による活性酸素産生を増強する作用(プライミング)を有し生理的にも重要であるが, その機序に関してはほとんど解明されておらず今後の重要な研究課題である.
著者
柳内 登
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.383-385, 1984-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
4

過去10年間に国立療養所晴嵐荘病院で行つた肺結核, 膿胸の手術例は267例で, 48年を境に減少の傾向にあるが, 外科療法を必要とする症例が存在することも事実である. 手術例のうち興味あるものにつき報告する.1)結核性気管支狭窄例: 6例に手術を行つた. このうち4例は気管支形成術を行い, 下葉の機能を温存することができた. 狭窄部末梢肺に不可逆性変化の生ずる前に気管支形成術を行うことが重要である. 2)膿胸: 肺切除後17年(2例), 22年(1例)目に発生した気管支瘻膿胸に手術を行い治癒せしめた. 結核の手術は長期間の監視が必要である.3)塗沫陽性培養陰性菌(SPCN)を2年間続けた例に切除術を行つた. 病巣の菌を0.5%NaOHで前処理したところ培養陽性であつた.4)化学療法に期待したため病状が悪化, 手術の機会を逸し死亡した症例がある. 再発結核例は積極的に手術を行つた方が良いと考える.
著者
大田 豊隆
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.36-37, 2005-01-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
4
著者
中島 孝
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.370-375, 2005-07-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
14

ALSなどの神経難病のアウトカム評価としてQOLは重要だが, 評価する方法はまだ確立していない. そのなかで, SEIQoL-DWはQOLドメインを病気の進行とともに動的に変えることができるため今後期待されうる患者個人のQOL評価方法である. QOLとは病態と関係性の下で動的に変化する患者の価値観の産物であり, 難病ケアでは根治療法が不可能なため, その向上が目標とされている. 多専門職種ケア(multidisciplinary care)とNarrative based medicineの導入が有用である. 緩和ケアは根治療法のない患者の自律と生命を支えるケアであり, 功利主義的価値観ではなく, 生命の尊厳(Sanctity of life, SOL)にもとづくものであり, QOL向上が目標である. 緩和ケアは消極的安楽死ではなく, 難病患者の生きる意味の崩壊をくいとめ, 尊厳死意識の解消をめざすものである.
著者
大沼 丈男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, pp.674-679, 1955 (Released:2011-10-19)
参考文献数
7

In order to study the term of existence of tubercle bacilli in excrements, the author coducted model experiments on 51 materials, by means of Kudo's culture method. Tubercle bacilli which were put in the excrements lost their living power gradually, the number of the bacilli decreased as times went off and finally they disappeared entirely. The experiments were conducted at room temperatures of different seasons. The term of existence of the bacilli in the experiments which started in December was of 231 days at the maximum, the one started in March was of 136 days at the maximum, the one in May was of 72 days at the maximum, and the one in August was of 167 days at the maximum. Therefore, it was found that by seasons there were differences in the term of existence and the bacilli seemed to have the tendency to live longer in cold weather, whereas they seemed to exist for a shorter period in hot weather. The author does not intend to say that the results of his experiments give directly the data for the longevity of tubercle bacilli in patients' sputa that appear in the excrements of receptacle, however, it may be considered as one of the basic facts, through which the longevity of the bacilli can be infered.
著者
長尾 圭造 奥野 正景
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.271-277, 2004-05-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
28

目的:近年の戦争形態とその犠牲について主に子どもの立場から概観し, 精神的影響への背景を明らかにする. 方法: 戦争と子どもに関するこの30年余りの文献・資料から, 主に子どもに関する戦争の生活・発達上の被害や精神的・身体的健康被害を中心に取り上げた. 結果: 武器・戦略など戦争形態の変化により被害・犠牲の内容が異なるので, その犠牲を武器の種類により2つ(通常の戦争, ハイテクノロジーによる戦争)に分けた. また特別な形態としてロー・インテンシブ・ウォーズを述べた. 戦争被害は個人の生命危機・身体損傷から, 地域・家族の大量虐殺, 生活の源となる衣食住の貧窮, 教育・医療・保健などの社会的インフラ基盤の破壊や感染症増加, 戦争関連精神障害の発症など子どもの全生活領域に及ぶ. 考按: 子どもの戦争被害の減少・防止を, 戦争開始後の犠牲の抑制, 戦争終結後の犠牲防止, 戦争回避に分けて述べた.
著者
井上 卓也 清水 幸雄 鍛治 徹 高崎 眞弓
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.556-558, 1992-07-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
7

麻痺性貝毒による呼吸筋麻痺の1例を経験した. 59歳の男性. ホタテ稚貝を知人よりもらい受け, 30~40個食べた. 1時間後より口唇, 両手足のしびれ感が現われ, 2時間後には呼吸が停止した. ただちに気管内挿管を行い, 人工呼吸管理を行った. 6時間後より徐々に筋力が回復し, 15時間後には自発呼吸が回復した. 2日後には四肢の麻痺は完全に消失した. 後遺症もなく退院した.
著者
中村 善紀 宮沢 健 井口 欽之蒸 北原 昇 松尾 俊彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.351-359, 1979-04-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
25

高山病は適切な処置をとれば, まことに治りやすい急性疾患であるが, 処置を誤れば死に至る疾病である. 昭和46年から昭和53年8月まで当院へ入院した19例の高山病患者について臨床的観察を行つた.対象患者は男17例, 女2例で, 年令は29才以下18例, 52才1例であつた. うち死亡2例であつた. 登山歴のあるもの11例で, そのうち5例は高山病を経験していた. 高山病をおこした山岳は槍ヶ岳(3,179m)が最も多く7例, 次いで穂高連峰(3,000m)5例であつた. 高山病19例の入院した季節は夏山シーズン14名, 冬山シーズン4例で, 死亡者2例は夏山にみられた.高山病発症時の症状と入院時の症状はかなり異なつておる. 一般に本症は低地に移送すれば症状は軽減するからである. その症状を大別すると脳症状, 呼吸器症状, 眼症状である. 低地に移すと脳症状は急速に改善するが呼吸器症状と眼症状は残るので, 高地性肺水腫や網膜出血として観察される.高所反応が現れたら可及的速やかに低地に転送すべきであつて, 脳症状が固定すると死の危険がある.
著者
李 鳳春 牟田 耕一郎 崔 承日 長野 光之 後藤 達郎 鵜池 直邦 小鶴 三男
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.17-19, 1997-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
6

当科を受診した骨髄異形性症候群(MDS)患者27名の臨床検査所見を, 再生不良性貧血(AA)患者の検査所見と比較検討した.MDS症例では, AA患者と比較して, 貧血の程度に差を認めないにもかかわらず, LDH値の有意な増加を認めた(P<0.01). これは, MDS患者でみられる貧血の原因として, 無効造血が存在することを示唆するものである. 無効造血の原因として, 細胞のアポトーシスが近年注目されている. MDSの場合も, 赤芽球系の細胞が骨髄内でアポトーシスに陥っている可能性が考えられる.
著者
岡部 正人 江上 寛 並川 和男 高城 克義 由布 雅夫 光野 利英 川村 亮機 荒木 昌典 堀江 二郎 大塚 宗臣
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.933-938, 1981

骨盤内臓器全摘, 回腸導管造設術を6例に行つた. 原疾患は直腸癌が3例で, S状結腸癌, 直腸癌局所再発, 子宮癌再発後のIrradiation necrosisが各1例であつた. 男性4例, 女性2例で, 年令は39~75才であつた. 骨盤底会陰部を含む臓器全摘を5例に, 骨盤底会陰部保存臓器全摘を1例に行つた. 尿路変更は回腸導管で行つた. 術後早期の重篤な合併症はなかつたが, 会陰瘻孔, 開腹創感染, 骨盤底感染, 直腸吻合部のminor leakageが各1例ずつあつた. 合併症に対してはそれぞれ瘻孔切除, 感染創開放, 中心静脈栄養を行い良好な結果をえた. 手術死亡はなく, 生存は現在3例で, 1例は術後4年6ヵ月, 他の2例は術後4ヵ月経過している.<br>死亡3例の死因は1例が癌性胸膜炎による呼吸不全で, 2例が肝転移であり, それぞれ術後6ヵ月, 7ヵ月, 1年6ヵ月で死亡した.
著者
青河 寛次 山路 邦彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.208-216, 1966-03-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

The treatment of threatened abortion has been performed almost always by means of hormone therapy centering around progesterone although effectiveness of this approach is doubted by some workers. It is hard to determine whether the given case of threatened abortion is indication of the hormone treatment, however, at the present time in consequence of absence of better therapy, we have to employ this hormone therapy. Chlormadinone acetate shows the strongest luteinizing hormone activity with little side effects, that is suitable for clinical use against threatened abortion. It has been abministered in doses of 6 to 12mg daily for 10 days by the oral route. The following results were obtained by clinical use:Hemorrhage from the genitalia improved in 8 out of 17 cases by days after the onset of treatment. Hypogastric pain disappeared in 5 out of 9 cases by 5 days. Pregnancy could be maintained in 10 out of 14 cases whose B. B. T. had been elevated or consistently high.Urinary pregnanediol levels in all cases with the progression abortion were as low as 3mg/day or less, while the said levels tended to rise gradually in the cases maintaining pregnancy. Pregnancy was maintained in all the cases whose vaginal smear showed the pyknosis coefficient of 15% or lower.After all, the administration of Chlormadinone led to improve the abortive symptom in 12 out of the 17 cases. The drug produced no side effect in the pregnant women and their fetuses.
著者
近藤 忠亮 井手 武朗 江草 国之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.558-562, 1983-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

肝疾患における血清総胆汁酸, cholylglycine, 血清総, 直接ビリルビン, 一般肝機能検査成績をその変動より検討した. 無症候性HBVキヤリアーでは血清総胆汁酸, cholylglycine濃度はいずれも正常範囲にあつた. 血清総胆汁酸とcholylglycine濃度とは慢性肝炎ではよい相関にあつたが, 肝硬変症では一定の関係はなかつた. 血清総胆汁酸, cholylglycine濃度とも慢性肝炎より肝硬変症で高値を示した. 肝硬変症と肝硬変症+肝癌との間にcholylglycineでは有意の差がみられた. ビリルビンと胆汁酸との間には直接ビリルビンが低下傾向の場合により相関がみられた. また慢性肝炎で直接ビリルビンと胆汁酸濃度は相関した. 胆汁酸, ビリルビンの変動とGOT, GPT, ChEとの変動との間には一定の関係はなかつたが, A1-Paseが上昇する際に胆汁酸の変動が総ビリルビンの変動を上回ること, その逆も同様であることが認められた.
著者
照屋 勝治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.153-158, 2004-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
8

今後, SARSは不可避な院内感染として国内発生する可能性が考えられ, 現場の医療従事者がSARSの可能性をいち早く認識し, 適切な感染対策を開始することが重要である. 医療従事者はSARSの犠牲者となるリスクがもっとも高く, かつSARS制圧においてももっとも重要な役割を果たす. SARS対策でもっとも重要なのは院内感染対策なのであり, すべての医療従事者は, 良くも悪くもSARS制圧の最前線にいるのだということを忘れてはならない. 飛沫感染が主要な感染経路であると考えられており, 感染力はそれほど強くないと考えられている. 正確なトリアージを含む, 適切な感染防御対策により2次感染をおこすことなく診療が可能であることを示すエビデンスが集まりつつあり, 各施設が十分な対策を行って慎重かっ冷静に対応することが望まれる.
著者
猪狩 忠 菅原 正信
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.8, no.10, pp.622-625, 1954 (Released:2011-10-19)
参考文献数
2