著者
石井 保志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.647-653, 2004 (Released:2004-01-01)
被引用文献数
1

現代の図書館は,いわゆる伝統的な図書館で扱う冊子体資料に加えて電子媒体の資料を駆使するという,いわゆるハイブリッド形態の図書館環境にある。こういった環境下で図書館利用を促進するうえで,従来からのやり方に加え,どういう方法が考えられるか,また実際に行われているか,図書館マーケティングが注目されている。ライブラリー・マーケティングについてピッツバーグ大学図書館長のミラー博士へのインタビュー記事に続き(Vol.46, No.6, 2003年9月号),本号では東京医科歯科大学でのマーケティング実践例を中心に同図書館の石井保志氏にインタビューを行い,貴重な話を伺った。なお,本インタビューは,2003年9月9日,東京医科歯科大学附属図書館で行われた。
著者
米澤 誠
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.788-796, 2012 (Released:2012-03-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

東日本大震災以降に体験したさまざまな復旧・復興活動を回顧するとともに,その活動を4つに類型化する。この類型化によりそれらの活動は,対内的か対外的か,単独活動か連携活動かという観点で分類される。そして対外的な連携活動に,支援・受援のパラダイムを超えた新たな図書館連携を見出す。対外的な連携活動として個人が参画する活動は,言い換えるとプロボノ活動である。この社会的・公共的な目的のために,図書館員としてのスキルや知識を提供するボランティア活動の意義は,支援という言葉のニュアンスとは大きくかけ離れている。そしてこの新たな図書館連携活動は,この大震災からの復旧・復興に際して,これからも大いに必要とされるであろう。
著者
寺沢 基子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.819-824, 2012 (Released:2012-03-01)

2011年3月11日の東日本大震災は広範な地域に甚大な被害をもたらした。これは被災地にある病院図書室においても例外ではなかった。当院においても蔵書の多くを失い,またネットワーク環境の損傷等によって一時利用不能に陥ったコンテンツもあった。このため震災後,医療活動を継続するにあたって,かなりの不便を強いられることになったが,この時,大きな支えとなったのは,被災地に向けてのデータベースやジャーナル等へのフリーアクセス支援をはじめとする各種の情報支援であった。またこれらの支援に関する情報を入手するにあたって,Twitterなどのソーシャルネットワークを介して,多くの医療関係者・図書館関係者の協力をいただいた。
著者
柳 一美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.632-638, 2012 (Released:2012-01-01)
参考文献数
1

株式会社日立製作所システム開発研究所は,3か所に分散していた研究拠点を2010年8月に戸塚に集約した。研究拠点の集約に伴い,2か所にあった図書室も移転統合した。移転統合は蔵書構成見直しのよい機会ととらえ,整理作業を地道に遂行した。大量の資料を効率的に移転させるため,作業時間の短縮と誤りの最小化を図りつつ,時期をずらして段階的に行った。利用者への影響を最小にするため,移転作業中もできるだけサービスを継続した。快適利用環境の提供と使いやすさ向上のために,図書室の設計には各種工夫をこらし,案内表示を徹底し,コーナーの統一整備を行った。地震対策は書架の固定に加え,書棚にシートを敷いたり,並べ方を工夫したりと資料落下防止を重点にした。
著者
根岸 正光
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.233-242, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
7
被引用文献数
2

筆者はトムソン・ロイター社の引用索引関連データベースを用いて,2003年に2000年時点におけるわが国の学術論文の海外誌への掲載状況等の調査を行った。そこでは「海外流出率約80%」という結果が得られ,国立情報学研究所ではその「回復」のための事業を展開してきた。今般この種の指標に関する,より大規模な統計調査分析を実施し,1994年~2009年の16年間にわたる各種時系列値を得ることができた。その概要はすでに報告したところであるが,さらに深く検討するべき種々の課題が浮上してきている。そこでまず本稿では,わが国の学術論文の品質の動向に注目し,論文数の変動と合わせて,いわば質と量の両面から分析して現状を点検し,今後検討するべき論点の抽出を試みる。なお,品質指標としては,「インパクト・ファクター」に統計的処理を加え,不偏で比較可能な品質指標を編成し,国別,分野別に時系列的な質と量の趨勢を明らかにし,各々の特徴について考察する。
著者
村瀬 菜都子 若林 宏明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.135-143, 2011 (Released:2011-06-01)
参考文献数
8

ラクオリア創薬株式会社は,2008年7月の設立当初よりリンクリゾルバを利用してきた。リンクリゾルバ導入により電子資料へのアクセスは飛躍的に効率化されたものの,情報検索ツールの検索結果から複数の論文について所蔵を確認する際には,1件ごとにリンクリゾルバのアイコンのクリックを繰り返す必要があるなどの改善すべき点があることがわかった。さらにアグリゲータ系電子ジャーナルを多く購読している環境では,閲覧禁止期間に該当する割合が高くなり,この問題はより顕著になる。この課題を解決した一括所蔵確認システムを中心に,ラクオリア創薬でのリンクリゾルバを用いて効率化した情報サービスについて報告する。
著者
藤原 隆弘 西 啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-72, 2011 (Released:2011-05-01)
参考文献数
1

学術分野で広く利用されている電子ジャーナルは,インターネットやPDFの発展によりビジネス化されたが,一般の電子書籍市場はそれだけでは成功できなかった。Amazon社のKindleなどが電子書籍市場を形成できた要因と,Kindle以降に出現した電子書籍サービスを具体的に紹介し,サービスの構成要素を電子書店や文書フォーマットの特徴とともに解説した。その結果,現在の電子書籍市場がデバイス主導によって進んでいる事実を報告した。最後に,現在の電子書籍ブームによって変化がもたらされた,個人,出版社,製作者等の現在の状況と,電子ジャーナルが今後変化していく方向について論じた。
著者
大山 敬三 時実 象一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.544-553, 2011 (Released:2011-01-01)
参考文献数
18

科学技術情報流通技術基準(SIST)のうち1985年に制定された「SIST 07:学術雑誌の構成とその要素」および1986年に制定された「SIST 08:学術論文の構成とその要素」の改訂を行った。改訂の動機となった電子ジャーナルの普及や国際的基準の整備などの背景と,改訂の主要な内容について解説した。
著者
加藤 信哉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.743-752, 2009 (Released:2009-01-01)
参考文献数
11

図書館で購読する電子ジャーナルなどの電子情報資源が増加するにつれてライセンス契約は図書館と出版社の双方にとって大きな問題となっている。NISO (National Information Standards Organization) のSERU(Shared E-Resources Understanding)は著作権法と購入発注書に依拠することにより,ライセンス契約を結ぶ代わりに出版社と図書館の共通理解に基づいて電子ジャーナルの利用を行う代替手段である。本稿では,SERUの背景,成立の経緯,概要および現状について紹介する。
著者
林 和弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.198-206, 2009 (Released:2009-07-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

日本の学術出版におけるオープンアクセス活動の状況について,日本の学協会ジャーナルを中心に紹介と考察を行う。日本化学会ではオープンアクセスオプションを採用した結果,オープンアクセス選択/非選択によって,ダウンロード数には明確な差が表れた。被引用数にも一定の差が見られたものの,審査期間の影響が強くオープンアクセス化の影響とは言い難いことがわかった。また,その他欧米のようなオープンアクセス対応を行っている学会は日本では少なく,多くが電子ジャーナルを無料で公開しており,機関リポジトリに対する方針を決めていないところも多い。この状況は日本の特殊な論文誌事業体制に由来すると考えられるが,欧米のように論文誌出版活動で大きな利益を得ていないことが,オープンアクセスの実装を本格的に試すには好条件であることを認識し,状況に応じて出版関係者は研究者とともに積極的に活動すべきである。