著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.808-818, 2012 (Released:2012-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

東日本大震災で被災した博物館・美術館,図書館,文書館,公民館への支援活動を行うsaveMLAKの活動を,図書館に特化して紹介する。saveMLAKはWikipedia等で用いられている共同編集ソフトMediaWikiを用いた被災・救援情報のまとめサイトであり,情報の集約と共有による情報支援・間接支援・中間支援である。また,集約・共有した情報に基づき,宮城県図書館と共同して実施している被災地の図書館支援の事例を紹介する。これまでの活動の経緯と課題を示すとともに,saveMLAK以外の図書館支援活動に対する建設的な批判や提言をあわせて展開する。その上で来るべき大災害に対応するために,平常時から非常時への備えを行う恒久的な機関・機能を常設することを提案する。
著者
岡本 真
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.124, no.4, pp.38-62, 2015

&emsp;本稿は、従来大内氏の独占時代とされてきた寧波の乱後の遣明船派遣の実像を明らかにするため、史料上に「堺渡唐船」と記される遣明船について、関係諸勢力の立場、搭乗者と派遣目的、歴史的位置づけの三点を究明した。その結果明らかになった事柄は以下の通りである。<br>&emsp;まず、関係諸勢力については、『天文日記』やその他の古文書等に見られる遣明船が、いずれも「堺渡唐船」を指すことを確認したうえで、同船の派遣を中心となって推進したのは、細川晴元と堺商人だった点を論証した。また、本願寺や土佐一条氏は協力者に過ぎず、大内義隆や畠山稙長は同船の派遣を阻止しようとしていた点を指摘した。<br>&emsp;次に、搭乗者と派遣目的については、その解明に先立ち、新史料である『活套』所収外交文書二通を紹介し、同書の収録内容や文書末尾の年月日をもとに、これらが「堺渡唐船」関連文書であることを明証した。そして、これを根拠に、従来の遣明船と同様に朝貢使節としての形態を整えたうえでの派遣が図られており、正使は忠叔昌恕という禅僧で、ほかに医師半井明英も乗り組むことになっていたことを指摘した。また、派遣目的は、寧波の乱の際に明側に留められていた前回使節の朝貢品の献上、同使節の遺留品の返却、収監されていた宋素卿の送還、新勘合および新金印の下賜、半井明英の明医学伝習の許可などを要請することだった点を解明した。<br>&emsp;それから、歴史的位置づけについては、寧波の乱後に足利義晴・細川高国が明側とおこなった交渉の延長上に「堺渡唐船」があることを明らかにし、従来の研究では存在が確認されていなかった嘉靖准勘合に関する考察をもとに、状況の推移を論じた。また、大内義隆の経営した天文八年度船と同船を比較すると、寧波の乱の際の遺留品の返却や新勘合の獲得などが、両者に共通する派遣目的だった点を指摘した。<br>&emsp;そして、以上を踏まえて、これまで大内氏の独占時代とされてきた寧波の乱後においても、それ以前と同様、遣明船をめぐる同氏と細川氏の抗争が継続していた点を明らかにした。
著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.632-643, 2007 (Released:2007-02-01)
参考文献数
8

「Web2.0」時代における学術情報発信のあり方について展望と課題を示す。まず「Web2.0」の理解の仕方を説き,続いてブログにおける学術情報発信の実例に基づいて「Web2.0」が学術情報発信にもたらす価値を説く。特にユーザー参加の拡大と参加拡大のためのデータ開放の意義を強調する。同時にユーザー参加による学術情報発信の活性化を阻む要因の存在を指摘し,現時点におけるブログを中心としたWebでの学術情報発信におけるコミュニケーションモデルの限界を示唆する。最後に課題を解決するための方策として,学術情報発信組織が有する大規模データの開放を提案する。
著者
岡本 真 大向 一輝
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

2008年7月から3ヶ月ごとに全国各地で開催しているARGカフェ&ARGフェストを題材に、業種、職種、専門といったバックグラウンドが異なる人々、特に未知の人物同士が多い人々の間のコミュニケーションを促進し、コラボレーションへの発展を促す仕組みを論じる。
著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.753-763, 2009 (Released:2009-01-01)
参考文献数
18

創刊10年を迎えたメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)のビジョンやミッション,これまで果たしてきた役割を振り返る。同時に過去10年の学術ウェブの動向を個人によるブログ活用と機関リポジトリ等の組織の取り組みを中心に総括する。以上を踏まえて,今後の学術ウェブのあるべき姿を論じる。特に研究者や実務家,プロフェッショナルやアマチュアが相互に与え,与えられる双方的な関係を築けるような学術ウェブの必要性を説く。そして,その実現のためには学術ウェブ向けに設計された新しいプラットフォームが必要であることを主張し,ARGの役割を述べる。
著者
キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する調査研究班 吉崎 和幸 岡本 真一郎 川端 浩 水木 満佐央 川上 純 正木 康史 矢野 真吾 井出 眞 宇野 賀津子 八木 克巳 小島 俊行 水谷 実 徳嶺 進洋 西本 憲弘 藤原 寛 中塚 伸一 塩沢 和子 岩城 憲子 古賀 智裕
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.97-107, 2017 (Released:2017-03-17)
参考文献数
75

キャッスルマン病は原因不明のリンパ増殖性疾患で,適切な治療を行わなければQOL低下や生命予後の短縮をきたす。しかしながら,その希少性のためにこれまで明確な診断基準や重症度分類が定まっていなかった。これに対して厚労科研・難治性疾患等政策研究事業の調査研究班では,本疾患の診断基準と病型分類,重症度分類の案を策定した。診断は,病理診断と臨床的な除外診断を併せて行う。組織型は硝子血管型,形質細胞型,および混合型に分類される。臨床的病型は,単中心性(限局型)と,HHV-8関連の多中心性,HHV-8陰性の特発性多中心性に分類した。重症度は主に臓器障害の程度により分類した。難治性とされる特発性多中心性キャッスルマン病は,重症度等に応じてprednisoloneやtocilizumabを用いて治療を行うこととした。今後,本疾患に関するエビデンスを集積し,本診断基準や重症度分類の妥当性を検証するとともに,質の高い診療ガイドラインを策定していく予定である。
著者
岡本 真希子 Makiko Okamoto
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.1-28, 2021-08-31

植民地初期(1895~1899年)の台湾における行政官と司法官の制服について,可視化のツールとして制服が制定されるまでの政治過程を検討した。第2章では,主に文官服制調査委員会の議論に焦点をあてながら,策定過程における諸案の変化を台湾社会との相関関係とともに検討した。第3章では,法服の策定過程を本国の法服と台湾人法院通訳の不可視化を視野にいれながら検討した。
著者
岡本 真希子 オカモト マキコ Okamoto Makiko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The social sciences (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.225-254, 2020-02

論説(Article)本稿は,日本の植民地統治下台湾における法院通訳の使用言語について,統治前半期(1898~1918年)に焦点をあてて検討し,北京官話への依存と脱却の過程を明かにする。第2章では台湾社会における言語使用状況を,1905年の臨時台湾戸口調査を用いて確認する。第3章では法院通訳の使用言語(官話/「土語」)に関する論争を,通訳制度(複通訳制度/単通訳制度)のあり方とともに検討する。第4章では,高等官法院通訳の合計10名の個々の経歴を用いて検討する。その際には,江戸時代から明治時代への移行期における北京官話学習者との関係に着目し,開国以降の近代日本の北京語学習者の軌跡を台湾からとらえかえすことも試みる。
著者
岡本 真
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-47, 2021-01-12 (Released:2021-02-24)
参考文献数
7

COVID-19を受け、その多くが施設としての休閉館に追い込まれた図書館の実情を整理するとともに、その結果、露になった図書館の課題を説明する。それらを受けて、これから図書館に求められる役割を論じる。特に課題として日本の図書館は来館利用型のサービスに偏してきた点を、脆弱性と片面性としてとらえ、従来からすでに存在した潜在的な課題が顕在化したことを指摘する。こうした課題に対する対処として、saveMLAKや、「図書館」(仮称)リ・デザイン会議の活動を紹介したうえで、さらに図書館として取り組むべき活動としてCOVID-19のアーカイブ活動への貢献を挙げる。
著者
徳永 健太郎 尾田 一貴 岡本 真一郎 右山 洋平 川口 辰哉 蒲原 英伸 山本 達郎 藤井 一彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.517-521, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
17

背景:抗菌薬適正使用として狭域経口抗菌薬が処方できる環境を整えることは,耐性菌出現を抑制するために重要である。目的:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況を明らかにする。方法:時間外処方せんに薬剤師が対応していない施設を対象とし,郵送によるアンケートにより調査した。結果:配置薬がある14施設のすべてにおいて,「AMR対策アクションプラン」で削減すべきとされた広域の経口抗菌薬である第3世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬が配置薬に含まれていた。一方,『抗微生物薬適正使用の手引き』で使用が言及されていたペニシリン系薬および第1世代セファロスポリン系薬の配置は,それぞれ9施設(64.3%),3施設(21.4%)に留まっていた。結論:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況は,抗菌薬適正使用を推進するために改善の余地があると考えられた。
著者
岡本 真一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.4-16, 2001-03-30

本研究ではmatched-guise techniqueを用いて,名古屋方言の使用が話し手の評価に及ぼす影響を検討した.実験1では男性話し手については,共通語のはうが方言よりも知的で積極的であり,話し方や外見も優れているとされたが,社交性の評価は方言条件のほうが上回っていた.女性話し手は共通語のほうが方言よりも大半の側面に関して望ましい評価を得た.実験2では話し手(男性)の出身地を愛知県内であると明示した上で,使用言語を共通語,方言に操作した.活動性や見かけでは方言条件のほうが共通語条件より,また話し方や知性に関しては共通語条件のほうが方言条件より望ましく評価された.
著者
菊池 拓 森 毅彦 清水 隆之 森田 伸也 香野 日高 中川 健 三ツ橋 雄之 村田 満 岡本 真一郎
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.345-349, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
15

症例は64歳,男性。急性骨髄性白血病に対する非血縁者間同種骨髄移植後に進行した慢性腎不全に対して生体腎移植が施行された。術後合併症のため中心静脈栄養が行われた。腎移植3ヶ月後より,進行性の正球性貧血(ヘモグロビン7.9 g/dl)を認めた。網赤血球0.2%であったが,白血球数,血小板数は正常であった。血清鉄,ビタミンB12, 葉酸は正常値であった。骨髄検査では環状鉄芽球の増生および一部の赤芽球系細胞の細胞質に空胞化を認めた。巨核球数およびその形態は正常であった。骨髄所見はWHO分類で環状鉄芽球を伴う不応性貧血と合致したが,骨髄系細胞にも細胞質の空胞化を認め,銅欠乏も疑われた。血清銅(33 μg/dl), セルロプラスミン(11 mg/dl)共に低値であり,経口摂取で1 mg/日の銅補充を開始したところ,急速に網赤血球は上昇し,1ヶ月後にはヘモグロビン値は正常化した。骨髄中に環状鉄芽球の増生を伴う進行性の貧血の原因として,銅欠乏性貧血を鑑別疾患の1つとして挙げるべきである。
著者
三津石 智巳 外崎 みゆき 河村 俊太郎 中塚 寛幸 愛宕 翔太 岡本 真 清田 陽司
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.508-513, 2012-12-01
参考文献数
11

Ref.Masterとは,国立国会図書館が提供するレファレンス協同データベースを活用して開発された,レファレンススキル向上のためのツールである。ゲーム感覚で遊びながらレファレンススキルを学習することができる。また一方で,Ref.Masterは人が遊んだ副産物として,計算機では困難な処理がなされるゲーム「GWAP(Game with a Purpose)」のアプローチを利用することで,レファレンス協同データベースに登録されているデータの品質向上に貢献することも企図している。本稿では,利用者のモチベーションを保ち継続的に学習を続けてもらうためのゲームと,新たなデータ生成という別の目的を持つゲームであるという2つの側面をもつRef.Masterの開発背景や機能のほか,運用から得られた知見についても述べる。