著者
渡邊 豊英
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.480-491, 2010 (Released:2010-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

一般財団法人日本特許情報機構は,「産業日本語」の策定とその普及に関する調査・研究を推進している。「産業日本語」とは,産業・技術情報を人に理解しやすくかつコンピューターにも処理しやすく表現するための日本語である。そして,「産業日本語プロジェクト」とは,「産業日本語」のわが国産業界への導入を支援する仕組みを作り,その普及シナリオを策定・実行するプロジェクトである。本稿では,産業日本語プロジェクトについて,検討の背景,主な取り組み,今後の展望等を交えつつ,その概要を紹介する。
著者
小原 由美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.8, 2002 (Released:2002-04-01)
参考文献数
40

ニコルソン・ベイカー著『ダブル・フォールド』は,議会図書館はじめ多くの米国の図書館が,19世紀後半以降の新聞原紙をマイクロフィルム化後廃棄していることに端を発し,図書館の資料保存政策全般を痛烈に批判した書である。マイクロフィルム化・デジタル化よりも現物資料の保存を最優先するよう訴えるベイカーに対し,図書館側は,資料の内容保存と利用者の利便性を考えると,媒体変換は必須であると反論した。その一方,図書館情報資源振興財団(CLIR)は「図書館資料の現物保存タスクフォース」を公表して現物資料の重要性を見直す提言を行った。日本でも書庫不足により現物資料廃棄を行わざるをえない状況にあるが,国立大学図書館協会や医学図書館協会では,廃棄基準の設定や資料の共同収集・分担保存に取り組みつつ,国立保存図書館の設立を模索している。
著者
須田 義大 青木 啓二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.809-817, 2015
被引用文献数
7

現在,2020年までの自動運転の実用化を目指して日本,米国および欧州において技術開発が進められている。自動運転は人間に代わり認知,判断,操作を行う必要があり,高度な情報処理や走行制御が求められる。このため自動運転として,数台の車両が車群を構成して走行する隊列走行システムが開発された。この隊列走行システムを通じ,白線に沿って自動操舵する車線維持制御技術や車車間通信技術を用いた車間距離制御技術が開発された。隊列走行システムの後,現在一般道での自動運転を目指した技術開発が行われており,キー技術として,制御コンピューターの故障時における安全を確保するフェイルセーフ技術や障害物を確実に認識するためのローカルダイナミックマップ技術およびAI化を中心とした自動運転アーキテクチャーが開発されている。
著者
杉野 博史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.157-165, 2017

<p>2014年3月より,NTTデータはバチカン図書館の保有するマニュスクリプト(手書き文献)のデジタルアーカイブ事業を開始した。NTTデータはその中で,長年にわたって蓄積してきたデジタルアーカイブや検索に関する技術・ノウハウを活用することで,バチカン図書館のデジタル化された資料の唯一のポータルとなるデジタルライブラリー(DigiVatLib)を構築した。構築するにあたり,新たに長期保存に関する国際標準であるOAIS,画像データの長期保存に適したフォーマットであるFITS,画像を相互に閲覧する規格であるIIIF等の機能を組み込むことで,長期保存のみならず,利活用にも優れたプラットフォームを提供した。本稿ではその詳細について寄稿する。</p>
著者
相原 健郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.743-754, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
7

本稿は,携帯電話や位置に基づくサービス等で取得される動体データを用いて,その解析に基づく観光動態把握と活用に関して,分析事例なども交えて概説する。まず,観光分析の観点を整理したうえで,携帯電話基地局における動体データ,スマートフォンアプリケーションを用いた動体データ,および,SNSデータ等の性質などを紹介する。次に,観光庁の訪日外客の動態調査で行われた分析事例を紹介する。加えて,分析における問題も指摘する。さらに,目的地性指標を用いた動体データの分析結果を示し,人間の行動モデルの一つであるLevy Flightモデルと一致することを紹介する。
著者
松原 徳和
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.493-501, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
14

現在,全国の地方公共団体は観光分野に力を入れている。観光客や訪日外国人の傾向,人の流れを把握し分析するために,携帯電話やスマートフォンを用いたビッグデータ分析が注目されている。本稿では,NTTドコモが提供する「モバイル空間統計」による「動態人口」をテーマに取り上げ,これまでの国勢調査等による静的な人口把握を概観しながら,動的な人口の見方,「アウェイ人口」という考え方を提示する。具体的に,静岡県,東京都府中市,埼玉県の例を挙げ,「アウェイ人口」を把握することの意義と可能性,今後の行政運営の中での活用に向けた提言を行う。
著者
岩野 和生 高島 洋典
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-834, 2015-02-01 (Released:2015-02-01)
被引用文献数
2 3

サイバーフィジカルシステムとモノのインターネットについて解説する。両者は似た概念であり,物理世界とサイバー世界を融合することに特徴がある。それらの概念と,効果などについて述べ,技術課題として,アーキテクチャーとセキュリティーについて詳述する。アーキテクチャーとしては,情報,システムなどのレベルでの検討が必要である。また,サイバー世界に比べて,物理世界が直接的に脅威にさらされるため,より注意が必要である。さらに,社会システムとして長期間にわたって利用されることも考慮しなければならない。最後に,国内外における技術開発動向について述べる。
著者
三上 喜貴
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.271-274, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
2

インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。第2回は各言語のWeb上におけるプレゼンスを計測する「言語天文台」の構想について,言語間デジタル・デバイドについて,情報伝達における「母国語」の役割と多言語社会について考える。
著者
堀 浩一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.250-258, 2015
被引用文献数
3

人工知能の研究が再び注目を集めるようになっている。人工知能の能力が人間を完全に超えてしまう技術的特異点に関する議論も盛んになってきている。人々が人工知能に対して抱く不安も高まってきているように見受けられる。本稿では,人工知能がどのように進歩する可能性があるかではなく,人工知能をどのように進歩させたいかという問題について議論する。抽象的な不安に対して抽象的な回答を返すのではなく,人工知能を今後どのように作っていくかという設計の指針をいくつか提示することを試みる。