著者
中村 文胤
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.475-486, 2009 (Released:2009-11-01)
参考文献数
6

近年,世界的に臨床試験情報の登録・公開が求められている。代表的な臨床試験登録・公開サイトであるClinicalTrials.govを対象に,登録数の推移,実施機関,実施国,対象疾患,試験のフェーズについて調査,分析を行った。さらに,その中から被験者登録が終了した試験(Closed Studies)に限定し,リファレンス情報の収録率およびPubMedへのリンク状況を調査した。その結果,2005年を境に,私企業および大学等を実施機関に含む試験の登録が著しく増加していること,フェーズ情報が収録されていない試験が3分の1を占めること,登録された試験の3分の2以上が欧米で実施された試験であることがわかった。また,Closed Studiesでは,約2割にリファレンス情報が収録されていること,リファレンス情報を持つ試験では,90%以上がPubMedへのリンクを併せて収録していることがわかった。
著者
山室 真知子 野原 千鶴 飯田 育子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.759-770, 1994-12-01 (Released:2008-05-30)
参考文献数
16

大学や病院の多くの医師は, これまで慣例のように文献検索, 文献の入手および学会等のスライド作成などを, 製薬企業の医薬情報担当者 (MR)のサービスに依存してきた。このサービスが平成5年 (1993) 4月より, 製薬会社242社が加盟する「医療用医薬品製造業公正取引協議会 (公取協)」が定めるサービス提供の制限を超えるものとして, そのサービスの自粛が行われた。その結果, 多くの病院図書室ではオンライン検索の端末機やCD-ROMによるコンピュータ検索が新たに導入され, 文献入手の依頼が集中することとなり業務上大きな戸惑いがみられた。その状況を把握すべくアンケート調査を行い, 262機関より回答が得られたので報告する。
著者
石坂 憲司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.207-215, 2009 (Released:2009-07-01)
参考文献数
5

信州大学附属図書館医学部図書館(当館)では,地域医療支援活動の一環として,平成20年6月より長野県内の信州大学研修医・研修生派遣病院に対し,次の新サービスを開始した。(1)JDreamIIのコンソーシアム契約による特別価格での提供,(2)Web申し込み方式による文献複写物の提供。次に,平成21年5月より信州大学医学部附属病院内に患者図書室が開設され,当館からは医学系図書の受入,各種情報提供を行うこととなった。本稿では,新サービスの開始に至る経緯と現状,および信州大学医学部附属病院患者図書室の概略を報告する。これらの活動により,関連病院の医学文献の入手,および病院患者に対する医学文献提供が格段に向上するものと期待される。
著者
野添 篤毅
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.580-593, 2007 (Released:2007-12-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

本稿は米国国立医学図書館(NLM)が作成するMEDLINEデータベースを中心とするNLMの医学情報サービスについて,1960年代から現在までを歴史的に概観する。医学文献データベースの創成期であるMEDLARSの時代から,MEDLINEのオンライン時代,飛躍的に利用の伸びた今日のWeb版のデータベース・サービスPubMed,従来の医療関係者中心から一般市民への健康情報提供へと転換したMEDLINEplus,そして一次文献のデジタル・アーカイブPubMed Centralまでを時系列的に追跡していくとともに,NLMの情報戦略についても触れていく。特に筆者が受けたMEDLARS索引・検索研修の経験から,索引作業の実際,そしてMEDLARSのバッチ処理検索プロセスの実務についても詳細に述べる。
著者
溝口 理一郎 古崎 晃司 來村 徳信
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.361-371, 2015-08-01 (Released:2015-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

有用な情報をいかにして手に入れるかという問題は古くて新しい問題である。異分野交流の典型であるバイオミメティクスではそれが顕著に表れる。バイオミメティクスでは,生物が実現しているさまざまな機能を模倣することによって,これまでにない有用な機能を革新的な方法で実現することを目指している。しかし,生物学に不案内な工学者が生物に関する有用な情報を入手することは容易ではない。本稿では,そのような工学者を支援するための新しいシソーラスであるOntology-Enhanced Thesaurus(OET)に関する概要を解説する。OETは,オントロジーという一般的で抽象度の高い概念群を従来のシソーラスの上位に位置付けることによって,異分野間に存在するギャップを埋めることを目指している。オントロジーやシソーラスの解説も含めて,OETの構成やキーワード探索自体を支援するツールに関してわかりやすく説明する。
著者
下田 博次
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.715-723, 1988 (Released:2012-03-23)

コンピュータ, OA機器から産業用ロボットの普及に伴ってテクノストレスと呼ばれる心身の疲労, 健康障害が問題視されるようになった。このテクノストレスは, マスコミがつくり出した心理不安であるとか, コンピュータが直接のストレス発生原因ではないという人もいる。だが一方では多くの症例報告とプログラミング作業から発生するストレス調査もすすんでいる。テクノストレスはコンピュータ関連労働の種類によってその表れと原因が違い, きめ細かい対応が必要である。しかし最終的には, 個人のライフスタイルと企業風土の問題に帰するところが大である。
著者
大木 洵人
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.234-242, 2014
被引用文献数
2

本稿では,情報技術を駆使した聴覚障がい者向けサービスを紹介する。日本の聴覚障がい者が直面している社会課題を取り上げ,その解決に情報技術がどのように役立つのかを著者が代表を務めるシュアールグループの事例を中心に説明する。(1)聴覚障がい者や手話に対する理解の低さ,(2)聴覚障がい者と聴者における機会提供の格差,(3)聴覚障がい者に向けたサービスの限界などの社会的背景から,(1)手話通訳者の不足,(2)手話から引く辞典の欠如,(3)手話による娯楽の不足といった社会的課題に直面している。これらの課題を解決するために,シュアールでは,(1)遠隔手話通訳,(2)手話キーボード,(3)手話ガイドアプリ,(4)手話ポッドキャストの4つのサービスを提供している。これらすべてのサービスは近年の情報技術の発展がなければ生まれなかったものであり,まさに情報技術が社会課題の解決に寄与する実例である。
著者
小山 順一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.144-154, 2007
被引用文献数
1

学術雑誌を中心に,表紙にISSN番号が表示された逐次刊行物が増えてきている。本稿では,このISSN(国際標準逐次刊行物番号)の一層の普及に資することを目的として,逐次刊行物の刊行形態と書誌データへの影響,識別のための固有のコード番号の必要性,ISSNのデータを登録・維持する国際組織であるISDS(現ISSNネットワーク)の設立経緯,その活動内容と最近の動き,ISSN日本センターの発足と歩み,国内のISSN付与状況と課題,JIS X 0306: 1999に規定されているISSN規格の内容,日本センターでの付与作業の実際と登録申請時のFAQについて述べ,最後に国内のISSN付与に関する最近の話題を報告する。
著者
新井 紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.12-19, 2009

情報・システム研究機構国立情報学研究所では,研究者向けサイエンス2.0基盤サービスResearchmap.jpを公開する。本サービスは研究者に対して,研究ホームページを公開するための領域である「マイポータル」のほか,バーチャルなデスクトップの機能を果たす「マイルーム」,他の研究者と共同研究や委員会活動をするためのコミュニティーを提供する。マイポータルには研究者履歴(Curriculum Vitae)を公開するためのテンプレートのほか,研究ブログ,資料配布用キャビネット,動画配信ツールなどが備えられており,研究者はその中から自分を表現するためのツールを自由にチョイスし,効果的に情報発信を行うことができる。
著者
小原 由美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.8-21, 2002

ニコルソン・ベイカー著『ダブル・フォールド』は,議会図書館はじめ多くの米国の図書館が,19世紀後半以降の新聞原紙をマイクロフィルム化後廃棄していることに端を発し,図書館の資料保存政策全般を痛烈に批判した書である。マイクロフィルム化・デジタル化よりも現物資料の保存を最優先するよう訴えるベイカーに対し,図書館側は,資料の内容保存と利用者の利便性を考えると,媒体変換は必須であると反論した。その一方,図書館情報資源振興財団(CLIR)は「図書館資料の現物保存タスクフォース」を公表して現物資料の重要性を見直す提言を行った。日本でも書庫不足により現物資料廃棄を行わざるをえない状況にあるが,国立大学図書館協会や医学図書館協会では,廃棄基準の設定や資料の共同収集・分担保存に取り組みつつ,国立保存図書館の設立を模索している。
著者
辻丸 光一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.544-552, 2002 (Released:2002-11-01)

バイオテクノロジーの分野では,ヒトゲノム解読が終了し,現在はタンパク質の構造と機能の解析にステージが移行し,ポストゲノムの時代となった。ゲノム・ポストゲノム研究の進展に伴い,知的財産の重要性が高まっているが,それとともに新たな問題が生じている。ゲノム・ポストゲノム研究では,遺伝子の配列やタンパク質の三次元構造座標データ等の情報が重要であるが,現在の特許制度では保護できない。また,ゲノム情報を用いた医薬品開発(ゲノム創薬)では分業化が進んでおり,これに伴いライセンスの問題もある。本稿では,ゲノム創薬と特許の関係を説明し,新たに生じている問題に言及する。
著者
松永 幸大 朽名 夏麿 桧垣 匠 馳澤 盛一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.217-221, 2013-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
2

生物医学画像データを自動分類できる能動学習型ソフトウェアClustering-Aided Rapid Training Agent(CARTA)を開発した。CARTAは,自己組織化マップによる画像のクラスタリングを介して,専門家の意見を繰り返し学習することで,研究や検査目的にあった的確な分類基準を自動的に検討して選択する。判別が難しい2種類のがんについて核磁気共鳴画像法で画像を取得し,CARTAを用いて分類したところ,2種類のがんを由来別に,高精度で分類することができた。CARTAは生物学,医学,数学と情報科学が融合した学際的な次世代ソフトウェアであり,今後,生物医学画像の自動分類や定量解析の有力な支援ツールとなる。
著者
久米川 正好
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.400-407, 2012

アナログ時代のフィルムは,劣化,散逸し,死蔵されている。われわれはアナログ時代の貴重な科学映画作品を収集し,高度な技術でデジタル復元し,保管している。この映像をWebで国内外に広く提供することにより,記録映画界の発展に寄与するとともに,日本の文化,科学,産業の継承と発展に貢献しようと,2007年4月1日「NPO法人科学映像館を支える会」を設立した。その活動の意義,5年間の収集,保管と提供に関する実績を紹介する。またその間に生起されたさまざまな課題,特に作品の劣化と資料の散逸および著作権処理問題などを明らかにした。今後,映像遺産を守り,どう生かすべきかについても触れた。
著者
高橋 しのぶ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.145-154, 2010

経済協力開発機構(OECD)は世界最大のシンクタンクとして,他の国際機関に先駆けて,充実したオンライン・ライブラリー・サービスを提供している。このたび,OECD iLibraryという名称で一新したオンライン・ライブラリーと,統計データベースOECD.Statの効果的な使い方を,OECD東京センターに寄せられた質問を例に挙げながら示すとともに,実際にご購読いただいている日本とアジアの大学でOECDのデータベースがどのように受け止められ,利用されているかを紹介する。