著者
東田 盛善 佐竹 洋 張 勁
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.203-213, 2011
被引用文献数
2

南西諸島の13島(種子島,屋久島,中之島,奄美大島,徳之島,沖永良部島,与論島,沖縄島,久米島,宮古島,石垣島,波照間島および与那国島;24°N~30°N)の地下水試料(134)と一月毎に採水した石垣島於茂登トンネル湧水の同位体組成を測定した。それらの島々の地下水のδDおよびδ<SUP>18</SUP>O値の平均値は-31~-20‰および-5.8~-4.5‰の範囲にあり,その値は緯度が高くなるにつれて減少した。δ<SUP>18</SUP>Oについての緯度効果は-0.14‰/N(deg.)と推定された。南西諸島地下水のδ<SUP>18</SUP>Oについての緯度効果は,本州よりも小さかったが,それは南西諸島に降水をもたらす気団に亜熱帯海域に起源を持つ水蒸気が持続的に補給されているためである。δ<SUP>18</SUP>Oについての温度効果は0.20‰/℃と推定された。また,採水高度によって求めたδ<SUP>18</SUP>Oについての高度効果は,九州最高峰の宮之浦岳(1935m)を擁する屋久島において0.10‰/100mであった。一月毎に採水された石垣島於茂登トンネル湧水のδDおよびδ<SUP>18</SUP>O値は,観測期間にはほとんど一定であったが,降水が地下水面に浸透する間によく混合されているためだと思われる。南西諸島の夏季降水のd値はほとんど同じ(約10)であるが,冬季には北部に位置する種子島,屋久島および中之島のその値(>25)は,それら以南の島々の値(<22)に比べて高くなることが推定された。

1 0 0 0 OA 1 歴史

著者
野田 真永 村田 和俊 中野 隆史
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.367-369, 2015-06-15 (Released:2015-06-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

X線の発見から本年で120年経つが,その間,物理工学面の技術革新により放射線治療は格段の進歩を遂げた。粒子線治療は,速中性子線治療から始まり,現在では陽子線・重粒子線治療が世界で計57施設にて実施されるようになった。この粒子線治療の発展には1940年代以降の粒子線加速器開発技術の進歩が大きく関与している。
著者
川端 祐司
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.199-206, 2008 (Released:2008-03-31)
参考文献数
30
被引用文献数
1
著者
中村 充孝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.93-99, 2017

<p>粉末試料や非晶質などといった等方的試料のダイナミクスを研究対象とする場合,チョッパー分光器による中性子非弾性散乱測定は,定常炉の三軸分光器と比較して圧倒的な優位性を示す。特異な物性を発現する新規物質を発見した場合,研究の初期段階にあっては,単結晶を育成することができず,粉末試料しか得られないことも多いが,J-PARCの強力なパルス中性子ビームを用いることで,早々とダイナミクスに関する研究を展開することが可能である。すでにJ-PARCで稼働中の3台のチョッパー分光器は,今もなお装置高度化や新規解析手法の開発を継続しており,今後,革新的な研究成果を創出しうるポテンシャルを十分備えている。</p>
著者
市川 有二郎 井上 智博 内藤 季和 田中 勉 高橋 良彦
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.521-533, 2015
被引用文献数
2

降雨による土壌中の放射性セシウムの移行状況を確認するために,2013年度の梅雨期前後と台風後の千葉県柏市内の土壌を対象に調査した。本調査は,福島原発事故から約2~3年後に行われたが,地表面から深さ5cm以内に95%以上の放射性セシウムが含まれ,降雨による放射性セシウムの鉛直方向への浸透はほとんど進行していないことが示唆された。水平分布については,同一敷地内でも最大で2~3倍程度の差があることが確認された。本調査では,放射性セシウム濃度が明確な粒径依存性を示さなかったが,関東ロームの特異性が影響している可能性がある。
著者
前田 正敏 二本松 博子 川腰 利之 庄司 美樹 本田 昂
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.308-315, 1992-06-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
27

放射性核種標識モノグローナル抗体 (MoAb) 17-1Aの生体内動態をヒト膵臓癌HuP-T4担癌ヌードマウスについて検討した。MoAb17-1Aは, 免疫組織化学的にもHuP-T4細胞に対し親和性が認められた。125I-MoAb 17-1Aの静脈内投与72時間後, 腫瘍では膵臓に比べ約3.9倍高い取込みが見られた。111In-MoAb 17-1Aは, 125I標識体より高い腫瘍への取込みが見られた。以上より, MoAb 17-IAは膵臓癌に対して放射免疫学的な画像診断あるいは治療への応用の可能性が示唆された。
著者
滝澤 行雄 山下 順助 石郷岡 清基
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-12, 2014
被引用文献数
2

日本酒のX線照射マウスに対する放射線防護効果を検討した。供試の日本酒は米と米麹のみで醸造した純米酒(アルコール濃度10.5%)で,9週齢雄性C57BL/6JJms系マウスに純米酒0.6mL/匹を経口投与し,その約30分後にX線7.8Gy(照射線量率1.078Gy/分)を照射した。また,純米酒0.2mL/匹を7日間反復経口投与後30分後にX線を7.8Gy照射し,引き続き同様に7日反復経口投与を行った。対照マウスには普通酒(アルコール濃度15.0%),純エタノール(10.5%)及び生理的食塩水を経口投与した。なお,普通酒は米と米麹に,醸造アルコールを加えている。<br>X線照射マウスに対する放射線防護効果は30日間の生存率で評価した。その結果,大量1回投与(0.6mL)において,純米酒投与群の生存率は80%でエタノール投与群よりも高かった。生理食塩水投与群では26日目に全頭死亡した.純米酒投与群と生理食塩水投与群との間に有意差(p<0.01)が認められた。少量連続投与(0.2mL)においては,純米酒投与群の生存率は普通酒投与群より高かった。純米酒投与群の生存率は生理的食塩水投与群より有意に高かった(p<0.05)。日本酒はアルコ-ル飲料の中でもアミノ酸が多く,特にアミノ酸総量では純米酒(1771mg/L)が普通酒(932mg/L)の約2倍高であり,放射線防護効果にアミノ酸の寄与が思考される。純エタノ-ルにも防護効果はみられるが,日本酒に比べ低かった。以上,唯一日本酒のみの特徴といえるアミノ酸類に放射線防護効果があることが示唆された。
著者
佐藤 至 松坂 尚典 西村 義一 品川 邦汎 小林 晴男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.289-292, 1993-05-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
11

In order to estimate the availability of zeolite, one of the inorganic ion exchangers, as an eliminator for the incorporated radionuclides, wholebody retention of intraperitoneally administrated 54Mn and 65Zn was measured in mice fed a zeolite-added diet at 10 per cent. Wholebody retention of 54Mn and 65Zn was decreased significantly faster than control, and the biological half-life of them was also reduced to 11.3 and 12.7 days, respectively, from 14.1 and 16.8 days in controls. The results suggest that oral administration of zeolite is effective to eliminate the incorporated 54Mn and 65Zn, and if it is used in combination with the chelation therapy of DTPA, it will be more effective.