著者
小黒 浩司
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.2-12, 2005

満鉄が沿線附属地で経営した小学校の読書指導・学校図書館担当者の研修組織として,1934年度児童読物研究会が発足した。この研究会では,新刊・既刊の児童図書の推薦,学校図書館運営指針の作成,指針に基づいた学校図書館経営の実践と検証などが行われた。
著者
川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.174-188, 2019-09-01 (Released:2019-10-25)

第2次大戦後にアメリカ図書館協会が採択した1948年版『図書館の権利宣言』は,新たに2つの条を設け,検閲に反対するとともに,検閲には関係団体と協力して対抗すると宣言した。図書選択の原理を示した従来の『権利宣言』を乗り越え,憲法が保障する表現の自由の擁護を打ち出したという点で,1948年版は高く評価されてきた。1948年版の原案作成者はヘレン・E. ヘインズだが,ヘインズの原案から削除された部分があった。それは少数者の権利を重視するという内容の文言であり,この文言は1939年初版に盛り込まれてもいた。本稿は1948年版の作成過程を追求し,検閲にたいする明示的な積極面とともに,黙示的に広範な社会的問題を捨象したことを指摘することで,1948年版の理解に厚みを加える。
著者
福田 都代
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.274-292, 2005-01-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
2

現在,日本もアメリカ合衆国(以下,アメリカとする)も財政難の折から人件費や資料費の削減が図書館界における大きな問題となっている。日本の公共図書館は公的財源に依存し,代替的な財源を求めるような活動に積極的に取り組んでいない。しかし,アメリカの図書館では館種を問わず,財政危機を乗り越えるため,非営利団体が従来行ってきた資金調達活動(ファンドレイジング)の手法にならい,さまざまなアイデアや手法を考案してきた。本稿ではアメリカの公共図書館と大学図書館における具体的な事例をとりあげ,ファンドレイジングの手法と新たな傾向について概説する。
著者
薬師院 はるみ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-12, 2004-05-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
2

本論は,専門職に関する基礎的研究を,司書という文脈において再検討し,司書職制度実現の阻害要因を探る試みである。司書は,専門職ではなく,準専門職であるといわれてきた。だが,準専門職の特徴,中でも,専門職化を阻むとされる要因は,司書に対しては,必ずしも該当しない。司書の専門職化を阻んでいるのは,図書館という組織に所属することでもなければ,図書館が官僚的に組織されていることでもない。問題は,図書館が自律的な官僚的組織として形成されておらず,全体機構に組み込まれた下部組織としてのみ存立している点にある。
著者
藥師院 はるみ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.190-202, 2000-11-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

図書館司書に関する諸問題は,しばしば専門性や専門職などの概念を軸にしながら展開されてきた。本論は,この議論自体を総体的に分析する試みである。その際の着眼点は,図書館関係者が専門職という言葉で指示する対象と,いわゆる既成専門職との間には,本質的な隔たりが存在するという事実である。これまで反復されてきた諸議論は,専門職や専門性という言葉の呪縛によって,この隔たりをまたぎ越すことができず,むしろ議論すればするほど,司書に関する問題に対して,既存の専門職概念を持ち込んでしまうことになっている。
著者
仲村 拓真
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.240-254, 2019-11-01 (Released:2019-12-09)

1933年の改正図書館令による中央図書館制度の再解釈を試みるため,成立当時の雑誌記事,会議録等を史料とし,成立及び運用をめぐる関係者の意見を分析した。結果として,代表となる図書館が他館を指導する考え方は図書館令改正運動が初出ではないこと,成立の経緯では,日本図書館協会に比べ,青年図書館員聯盟では大きな関心事とならなかった可能性があることなどを明らかにした。運用については,①活動内容の問題,②活動条件の不備,③図書館間の関係性,④中央図書館の実態把握,に関して,批判や問題点の指摘があったことが判明した。
著者
中戸川 陽子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.16-29, 2010-05-01 (Released:2017-05-24)

本稿は,相模女子大学附属図書館を事例として,大学図書館における貴重書指定基準制定に関わる問題点を明らかにすることを目的とする。相模女子大学附属図書館では,1991年度より貴重書指定基準策定の試みがなされてきたが,2009年度まで制定にいたらなかった。18年間にわたる貴重書指定基準制定の経緯を考察することによって,図書館と教員の貴重書に対する考え方の差異や図書館と教員のかかわりの重要性が明らかになった。
著者
吉田 右子 Yuko YOSHIDA
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 = The library world (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.189-203, 2019-09

本稿では公民館設置の基点に立ち戻り,公民館を発案した寺中作雄の言説を中心に,公民館構想における図書館の位置づけを検討した。占領期公民館構想においては既存の図書館との関係や公民館内の資料提供サービス機能が提示されつつも図書館界と公民館界による領域横断的な議論はなされず,両者の一体的運営に向けた方向性は示されなかった。両者の関係性は図書館と公民館での個別的連携にとどまった。個別法を持つ図書館と社会教育法に規定された公民館の制度上の複線構造により,図書館と公民館は分離して論じられ今日に至っている。
著者
竹中 園子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.485-500, 2018-09-01 (Released:2018-10-12)

神戸女学院において図書館学講習会が行われたのは,昭和11・12両年度であった。本稿は,この講習会の立案者であり神戸女学院図書館の初代館長であった横川四十八と,彼が招請した森清をはじめとする講師たちについて述べることにより,図書館員養成と女性図書館員,あるいはまた戦前期の時代の様相を反映する読書の自由,開架制等をめぐる横川の図書館観について考察するものである。