著者
土屋 深優
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.160-176, 2022-09-01 (Released:2022-10-01)

本研究はアイデアストアを事例として,社会的包摂概念に基づく公共図書館再編の意義と再編後の変化の検討を目的とする。研究方法として文献調査とインタビュー調査を用いた。調査の結果,アイデアストアは地域住民の社会的包摂を目的として,住民の要望が反映された図書館再編を実施したことが明らかとなった。再編後,図書館への訪問数が増加し,社会的包摂サービスの前提となる来館と図書館サービス認知の効果が示された。再編後も,アイデアストアは地域の実態に合わせて,サービスの内容を継続的に改善していることも明らかとなった。
著者
大島 真理
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.224-235, 2004-11-01 (Released:2017-05-24)

戦後日本の占領軍支配下において作られたCIE図書館に,多くのアメリカ人女性図書館長を見出すことができる。CIE図書館の利用者の書いた資料から,実際的なCIE図書館の姿を分析すると同時に彼女らの業績を調査した。さらに来日の背景の分析,日本の図書館界に及ぼした影響などについて考察する。
著者
千葉 孝一
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.15-27, 2021-05-01 (Released:2021-06-18)

本論は「書誌レコードの機能要件」(FRBR)と「日本目録規則2018年版」(NCR2018)の議論の根幹にある「著作」「表現形」「体現形」「個別資料」について,できる限り理系の用語を使わずに,文系の視点で捉え直す試みである。このグループは,「同一性」と「差異性」によって把握することができ,図書館以外の分野にも適用可能だが,「著作」と「表現形」に関する具体的な運用ルールは各分野で異なるローカルルールとなる。FRBR は図書目録にパラダイムシフトをもたらしたのである。
著者
米谷 優子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-35, 2019-05-01 (Released:2019-06-14)

学校図書館は,児童文庫等と呼ばれていた過去から,戦後には「学校図書館」と呼ばれるようになってきた。しかし,現在でもなお公的文書で「図書室」の語も散見される。本研究では,学校図書館の呼称の用いられ方の現状を,教育施設,図書館,及び建築の各視点から検討し,呼称と機能の認識について考察した。呼称の相違は,学校図書館の機能の捉え方・認識の差を反映している。「専門」の「人」がいる「図書館」として認識されその機能が強化されるよう,「学校図書館」の語を徹底することが必要である。
著者
塩崎 亮
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.2-14, 2021-05-01 (Released:2021-06-18)

ソーシャルメディアを歴史的記録して残すことは可能なのだろうか。本稿では,大学生と一般個人に対して,研究者,所属機関,国立国会図書館が公開ツイートをアーカイブするという架空のシナリオを複数提示し,その許容度を質問票で尋ねた集計結果について報告する。結果,シナリオ間,Twitter 利用経験の有無別,年代別で有意な差は確認できなかった。一方,一つ以上のシナリオを許容できないと回答したものが対象者の半数を超え,そのうち,プライバシーの観点から,あるいは特段の理由なく許容できないという反応が多数を占めた。
著者
前田 稔
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.154-163, 2006-09-01 (Released:2017-05-24)

船橋市西図書館の蔵書廃棄事件最高裁判所判決が示した「公的な場」,「公正」について考察した。「公的な場」の概念とパブリック・フォーラム論との関係,「思想,意見等を公衆に伝達する」機能からみた図書館職員の職務の「公正」,購入と除去の違いについて検討した。その結果,表現の自由と思想の自由の両者を基礎に職務の独立性を支える新たな概念として「公的な場」概念が示されたと評価するに至った。
著者
Tsuji Keita 辻 慶太
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, 2015-11

図書館の利用を増加させるラーニング・コモンズ(LC)像を調査分析した。具体的には,小山(2012)に示されている24のLCをサンプルとし,『日本の図書館:統計と名簿』に記されている入館者数,貸出数,参考受付総件数を利用量として取り上げ,これらを増加させるLCの要素を分析した。結果,プリンタ,コピー機,ノートPCがあり,学生一人当たりコンピュータ設置台数が多く,さらにTA・SAによる支援があって,1階に設置されているLCは,他のLCに比べて,入館者数や参考受付総件数を増加させる可能性があることが示された。