著者
本間 容子 岡田 みゆき
出版者
北海道教育大学釧路校
雑誌
釧路論集 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
no.37, pp.69-79, 2005

少子高齢化社会を家庭科教育から対応するために、映画、テレビ、雑誌等に現れた高齢者の生き方や実際の高齢者の観察訪問からの聴取を調査し、高齢者の生きがいについて検討した。その結果、高齢者の生きがいとして次のような例が挙げられた。高齢者にとっても、人を愛し、信じあい、支えあうことは重要であり、大きな生きがいのひとつになっていた。また、自分達の老後を自分たちで創っていくことは理想であり、必要とされている人間であることと実感することが、生きがいにつながっていた。また、「趣味」は、健康な高齢者だけではなく、痴呆などの病気の高齢者や、施設に入所している高齢者など、どんな人でも、持つことができる生きがいであり、高齢者が高齢者をボランティアすることも、これから必要である。高齢者の生きがいについては、さまざまな例を挙げることができた。各々の立場や環境によって、自分にあった生きがいを見つけていくことが重要で、高齢者になる以前から、生きがいについて考えたり、見つけたりすることが必要である。しかしながら、高等学校家庭科教科書においては、高齢者の生きがいについては全く触れられていないため、取り上げることが、高齢者教育では重要であり、生徒が、より自分の問題として考えることができるように、授業実践の検討が今後の課題である。
著者
酒井 多加志
出版者
北海道教育大学釧路校
雑誌
釧路論集 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
no.36, pp.49-56, 2004

江戸時代の北海道の港湾は西廻り航路により、大坂・江戸と結ばれていた。当時、港は船が安全に停泊できる静穏な海水面が得られる場所が選ばれることが多かった。北海道では"松前"と"江差"と"箱館"が蝦夷三湊として賑わった。このうち"松前"は天然の良港ではなかったが、東西蝦夷地の産物の集散場所として適していたこと、海上交易は藩経営と直接結びついていたこと等により、江戸時代を通じて港湾としての機能を果たしていた。日米和親条約締結後、箱館港は外国船の入港ばかりでなく、北海道開拓のゲートウェイとしてもますます発展し、箱館港を中心とする沿岸航路の輸送ネットワークが形成された。明治10年代に入ると、明治政府は殖産興業と富国強兵政策のもと、港湾整備に取りかかったが、北海道では函館港の整備が行われた。明治中頃からは北海道内陸部の開拓の進行とともに小樽港が、そして明治末からは石炭の積出港および工業港としての室蘭港が発展した。戦後、地方港湾の整備が進むとともに、地域開発と結びついた苫小牧港が建設された。苫小牧港は日本最初の本格的な掘込み港湾でもある。現在は北海道一の貨物取扱量を誇るとともに中長距離カーフェリーの航路数および輸送量は全国一となっている。1970年以降はコンテナリゼーションが進行したが、北海道はコンテナ貨物への対応が遅れている。しかし、北海道は東アジアと北アメリカを結ぶ主要国際コンテナルート上に位置しており、また今後の経済発展が期待されている北東アジア(ロシア極東・中国東北部)と地理的に近接している。従って、北海道の港湾はこれら位置的な優位性から北東アジア全体のゲートウェイとしての発展が期待されている。
著者
小川 隆章
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.119-127, 2003-11-30

野外教育の実践活動は、夏に行われるものが圧倒的に多いことが指摘されている。北海道においては児童・青年の夏休みは短く、各種のスポーツ大会や学校行事が行われることも多い。一方他地域よりも冬休みは長い。積雪期が長く、ともすれば、屋内での活動が多くなりやすい。北海道東部では同じ北海道でも日本海側に比べると冬の天候は恵まれている。筆者の印象では日本海側で雪が降ったり、風が強く、吹雪が多い時期に道東では穏やかな晴天が続き、積雪量も多くないように思われる。こういう地域では、もっと児童・青年を対象とした雪上ハイキングや歩くスキーなどの屋外活動の機会を多く設けてもいいのではないかと思う。そこで、積雪期のハイキングコースについて調べようとすると、意外にも文献になっているものがない。無雪期の、いわゆる「夏山登山」のガイドブックは何冊か出版され、各コースについて、執筆者が実際に調査して克明に記述がなされ、ハイカーは初めてのコースでも不安無く出かけることができる。ところが、積雪期のハイキングコースについては紹介されているものが見当たらない。低山といえども、山は無雪期と積雪期では様相が一変している。そこで、ここでは阿寒国立公園の地域の低山を主にとりあげ、網走・十勝・根室の各管内からも1ケ所ずつ取り上げ、積雪期のハイキングコースの実態を調査して報告することにした。(1)白湯山(標高824m)(2)阿寒湖畔のポッケ探勝路と森のこみち、および太郎湖・次郎湖(3)オンネトーと展望台(標高788m)(4)藻琴山(標高1000m)(5)和琴半島一周(6)摩周岳685mコブ(7)幌岩山(標高376m)(8)然別湖・東霊湖と天望山(標高1173.9m)(9)知床横断道から羅臼湖の9コースについて記述し、コース中の注意したい箇所などを指摘するとともに、積雪期のハイキングの楽しさを伝えるようこころがけた。
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.59-69, 2006

母親の養育態度と幼児の自己制御機能及び社会的行動との関係を検討することを目的に、幼稚園に通っている母親を対象に研究への協力を求め、176名(男児86名,女児90名)の母親から研究への参加協力を得た。質問紙は、幼稚園を通して母親に配布された。質問紙は50項目からなり、因子分析の結果、7因子が抽出された(受容/子ども中心主義、統制/専制的、一貫性のないしつけ、服従的、過保護、甘やかし、放任)。幼児の自己制御機能及び社会的行動に関しては、幼稚園の先生に評価してもらった。自己制御機能については、因子分析の結果、自己主張と自己抑制の2因子が抽出され、社会的行動については因子分析の結果、思いやり行動と攻撃的行動の2因子が抽出された。母親の養育態度と幼児の制御機能との関係では、自己主張と母親の養育態度、服従的、過保護、甘やかしに負の関係が認められた。又、思いやり行動と過保護と負の関係が認められた。さらに、幼児の制御機能や社会的行動に影響を及ぼす母親の養育態度について重回帰分析を行ったところ、幼児の自己主張にマイナスの影響を与えていたのは、母親の養育態度の中で、過保護と甘やかしであった。又、思いやり行動に影響を与えている養育態度は、過保護であった。これらの結果は、母親が幼児を育てる過程で、自己主張や思いやり行動を育てるには、過保護や甘やかしといった行き過ぎた母親の養育行動がマイナスの影響を及ぼしていることを示唆している。どのような育て方をすれば、幼児の自己主張や向社会的行動が育てられるのか、さらに継続して検討していくことが必要である。
著者
戸田 須恵子
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-64, 2004-11-30

母子相互作用における認知の発達(言語・遊び)を生後5ヶ月から2歳まで縦断的研究をするため、第1子を持つ母親へ研究協力を求め、27組の母子が参加した(男児16名,女児11名)。本研究は、5ヶ月児への母親の反応、乳児の注意、親の役割に関する自己意識に焦点を当てそれらの関係を検討した。乳児が5ヶ月に達した時、家庭訪問を行い1時間の日常生活場面と母子遊び、一人遊びを30分観察した。日常生活場面では乳児行動と母親の反応について頻度数を分析し、母子遊びでは乳児の注意を1秒単位でマイクロ分析を行った。さらに、質問紙によって親となる事や子育て観に関する情報を得た。結果は、乳児は観察中ネガティブな声を出すことが多く、母親の反応については、社会的反応や養育的反応が多く見られた。乳児の注意については、おもちやを見たり、母親の手元を見る時間が多かったが、周りを見る時間が最も多かった。男児はおもちゃを見ている時間が女児より長く、女児は母親との共同注意が男児より長かった。又、母親の反応との関係を見たところ、全体的には有意な関係は認められなかったが、男女差が見られた。男児においては、母親がネガティブな声に反応する事と乳児のおもちゃへの注意と正の相関が認められ、母親の声への模倣と母子遊びで母親に注意を向けることと正の相関が認められた。女児においては、ネガティブでない声への反応と母子遊びで母を見る事と負の相関が認められた。母親の役割に関する自己意識の結果は、親になる事において男女差が認められ、女児を持つ母親ほど親になった事に満足していた。又、男児において子育てについての自信・満足感と母親の養育的反応との間に負の相関が認められた。即ち、子育てに自信のない男児の母親ほど乳児行動に対して養育的行動で応えていることが明らかとなった。これらの結果はさらに、詳細な検討が必要である。