著者
渡辺 佳代 山本 和子 岡田 美保子 高上 僚一
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.249-255, 2005 (Released:2015-07-17)
参考文献数
11

川崎医療福祉大学医療情報学科では,医療現場の実情に対応し得る教育を目指し,平成13年から「電子カルテ・ラボ」システムの開発を進めてきた.本システムは,電子カルテシステムが導入された場合に,これを支援する人材に必要と考えられる知識・技能を,学生が演習を通じて習得することを目的としている.システムの機能は大きく1)電子カルテシステムを中心とした機能,2)学習支援機能,3)教材作成支援機能からなる.学習支援機能は,患者の動線に沿った画面から構成される.画面ごとに,学習目標,理解を助ける解説,各部門で行う業務システムによる入力演習,確認のための試験問題を用意している.本システムを演習で使用し,学生にアンケートを実施した結果,電子カルテシステムや病院の仕組みを学ぶ上で有用であることが示された.
著者
佐野 友美 赤羽 学 八巻 心太郎 菅野 健太郎 今村 知明
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.293-300, 2008 (Released:2015-03-20)
参考文献数
19

【目的】国際疾病分類(ICD)は,現在ICD–10が広く世界で活用されている.しかし,医学の進歩や社会変化に伴い改訂の必要性が高まってきたため,WHOはICD–11への改訂に着手した.わが国は内科領域の議長国となり,改訂に強く関与することとなった.そこで本論文では,改訂へ向けた進展状況を報告するとともに,今後の課題に対して考察を加える.【現状】WHOは既に改訂に向け,内科や精神等の12個の領域で専門部会(TAG)を設立した.わが国も積極的に改訂にかかわるべく,国内内科TAG検討会を立ち上げ,各専門学会や行政等が連携し,問題点の抽出や課題の整理,改善案の提示,国際会議参加およびWHO動向の把握等を行っている.【考察】現在までに,多くの問題点が指摘されている.問題点の代表的なものとして,言語の問題,インフォメーションモデルの改良や「分類」として利用されているICDにどのようにして「オントロジー」の概念を組み込んでいくか等が挙げられる.【まとめ】今後,国内に加え世界的な意見集約・調整を行う作業は想像以上に困難であろう.現在はICD–10+を作成する作業段階であり,オントロジーまで含めた国際的合意が得られるようにするには多くの困難があると考えられる.
著者
田中 勝弥 山本 隆一 渡辺 宏樹 星本 弘之 土屋 文人 秋山 昌範 大江 和彦
出版者
一般社団法人 日本医療情報学会
雑誌
医療情報学 (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.183-194, 2010 (Released:2015-02-20)
参考文献数
10

本稿では,地域医療連携を促進すべく,PKIを使用した診療情報交換のためのシステムを開発したので報告する.開発したセンター中継方式の送受信システムを使用して,医療機関等の間で暗号化された診療情報をS/MIME形式でやりとりすることとし,受信先機関のみが対象情報を復号可能な機構を持たせた.診療情報の暗号化に必要な公開鍵は,医療機関を対象とした組織向け公開鍵ディレクトリを開発しこれを利用した.さらに,救急診療向けの患者基礎情報を対象として本システムを活用すべく,一定期間の蓄積可能な機能を構築した.いずれの場合も,伝送システムでの診療情報の授受や蓄積は患者の同意を得て行われなければならず,患者自らが中継システム上の自身の診療情報の登録状態を直接参照し,制御する機能も持たせた.特にPKIをベースとした広域での医療機関間の情報連携を促進するためには,本研究で開発した公開鍵ディレクトリが有用であると考える.
著者
高橋 由光 宮木 幸一 新保 卓郎 中山 健夫
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.83-89, 2007-05-30
被引用文献数
2

[背景]アスベスト問題に関する新聞報道を定量的に分析するため,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行い有用性を検討した.<br/> [方法]アスベストまたは石綿を含む 1945 ~ 2005 年朝日新聞見出しを対象とし,ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングを行った.<br/> [結果]1987 年頃と 2005 年に多かった.1987 年は 36 記事あり,汚染(40%)が高く出現し,除去と運動(26%)や除去と学校(11%)は同時に出現する単語であった.2005 年は 293 記事あり,人と死亡(9%),危険と人(8%)が多く同時に出現した.1987 年は厚生省や環境庁が関わる環境汚染に関する部分と,文部省が関わる学校からのアスベスト除去運動に関する部分があるのに対し,2005 年は人々の死亡が中心となり厚労省が関わり補償など対応策がとられた.<br/> [結論]ネットワーク分析を利用したテキスト・マイニングは情報を定量的に把握し,視覚化することを可能とした.