著者
近藤 尚知
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.9-24, 2013
参考文献数
10

カスタムメイドタイプのマウスガード(マウスピース,マウススプロテクター)は,ラグビーや空手,ボクシング,アメリカンフットボールアイスホッケーなどのコンタクトスポーツにおいて,競技者の外傷予防に有用である.上記のスポーツにおいては,ジュニア期においても成人同様のコンタクトをすることが少なくないため,口腔外傷の予防には,マウスガードの装着が推奨されている.現在までに,各種スポーツにおけるマウスガードの外傷予防効果については数多く報告されている.さらに,カスタムメイドタイプのマウスガードの製作については,加熱加圧形成法,吸引形成法,ロストワックス法などあらゆる種類の方法が詳細にわたる記述として報告されている.一方,混合歯列を有する若年者のためのマウスガード製作法については,その報告はあるが,必ずしもその数は多くなく,かつ製作過程の詳細までは記述されていない.本稿においては,混合歯列期のマウスガード製作法に焦点を絞り,これまでに培ってきた工夫と経験をもとに, 10歳の児童の口腔内を例として,そのマウスガード製作過程の詳細を記した.この時期におけるマウスガードの製作で最も重要な点は,装具であるマウスガードが,激変する口腔内環境の変化に,いかに追従していけるかである.数週間から数カ月先の口腔内の状態を予想して,外形線を設定し,模型上で永久歯の萌出位置を想定して石膏またはセメントで歯冠形態を形成後,模型調整までを行って製作したマウスガードは,混合歯列期においても良好な適合を得ることが可能となり,一定期間は安定した状態を期待することができる.
著者
味岡 均 鬼原 英道 大平 千之
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-13, 2015-04-23 (Released:2017-03-05)
参考文献数
33

本研究の目的は,デジタルスキャニングデバイスである口腔内スキャナーと歯科技工用スキャナーを用いてインプラントアバットメント間の距離の真度と精度を比較し,その有用性を評価検討することである.インプラント実習用顎歯模型に外側性六角構造を有する2本のインプラント体を埋入した.それぞれのインプラント体にボールアバットメントを装着し,ボールの中心間の距離の測定を行った.接触式三次元座標測定機による測定値と,口腔内スキャナーであるLava COSとTRIOS,歯科技工用スキャナーであるARCTICAの測定値を比較し,それぞれの距離の真度と精度を評価した.真度に関して,Lava COSはTRIOS,ARCTICAと比較して有意な差(p<0.05)を認めた.また精度に関しては,Lava COSとARCTICAの間に有意な差(p<0.05)を認めた,真度と精度の偏差はARCTICAが最も小さく,Lava COSが最も大きかった.さらに,口腔内スキャナーによる測定誤差は,術者によっても有意な差(p<0.05)が認められることがあった.本研究の結果より,歯科技工用スキャナーは一度に広範囲の撮影が可能なため,安定した真度と精度を有すると考えられる.一方,口腔内スキャナーは小さな三次元画像をつなぎ合わせることでデータの結合を行なうので誤差が蓄積しやすいと考えられる.そのため口腔内スキャナーは長い区間の撮影において誤差が増大する傾向がみられたが,口腔内スキャナーの中には歯科技工用スキャナーと同等の真度と精度を有するものも存在した.口腔内スキャナーは印象材の歪みや石膏膨張の影響を受けないという特徴より真の値に近い寸法再現性が期待されたが,上記結果から,口腔内スキャナーは従来の印象法に比較して,真度の点でわずかに劣る可能性が示唆された.
著者
小笠原 和志
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.197-206, 1997-12-30 (Released:2017-06-05)
参考文献数
35

An aim of this study was to clarify the relationship between the difference in facial types and the movements, and the morphology of the temporomandibular joint (TMJ). The subjects were 46 persons (32 males and 14 females) aged from 22 to 34 years, who had no particular abnormality about the masticatory system. Facial types were classified into three: Brachyfacial type (B), Mesofacial type (M), and Dolichofacial type (D), by tracing the lateral roentogenographic cephalograms. The movements of mandibular condyle were recorded by the condylar movements recording system (CADIAX®), Gamma CO. Ltd., Wien, Austria), and the movements of articular disc were analyzed by using a magnetic resonance imaging (MRI). Morphology of the TMJ was also measured by using a computed tomography (CT) and standardized radiographs of TMJ. The results obtained were as follows:1. No difference in quantity of condylar translation in protrusive movement at the most protruded position (QCTP) was shown between the three. But the inclination of sagittal condylar path (ISCP) was steeper in B than in D.2. Quantity of condylar translation in opening and closing movement at the maximum opening position (QCTO) and quantity of the maximum condylar rotation in opening and closing movement (QCRO) were larger in B than in D.3. B was larger than D in quantity of non-working side condylar translation in lateral movement (QCTL) at the eccentric position.4. Quantity of articular disc movement was larger in B than in D.5. Maximum cross-sectional area (MCSA), horizontal condylar angle (HCAN) and angle of posterior slope of the articular eminence (APSE) were larger in B than in D.6. Some significant TMJ correlation was found between items of movement and items of morphology.These results suggest that facial types will be related to TMJ movements and its morphology.
著者
阿部 晶子 千葉 舞美 熊谷 佑子 赤松 順子 岸 光男
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.109-119, 2018-02-09 (Released:2018-03-11)
参考文献数
15

背景岩手医科大学血液腫瘍内科では,造血幹細胞移植中における口腔粘膜障害の発症予防を目的に,造血幹細胞移植チームに歯科医師・歯科衛生士が加わり移植患者の口腔管理を行っている. 今回,移植後に白血病が再発し,再移植を行なった患者について,初回と再移植時の口腔管理を行う機会が得られたので,比較して報告する. 症例と臨床経過 症例は初回移植時41 歳の女性で,2013 年8 月に急性骨髄性白血病のため末梢血幹細胞移植を施行した. その後再発を認め,2014 年6 月に再移植で骨髄移植を施行した. 再移植後,生着が確認されたが,同年9 月,全身状態の悪化により死亡した. 口腔粘膜炎と介入 口腔管理の介入は,移植前処置の施行前から開始し,初回移植および再移植時には,口腔内の状態に応じて,保湿剤,含嗽剤おび軟膏の処方,P-AG 液の服用指導,セルフケアの支援を行った. 再移植では口腔粘膜障害のリスクが高いことを予測し,予防的管理を行ったが,粘膜障害は重症化し,生着し白血球数増加後も口腔粘膜障害が長期間残存した. 口腔粘膜障害が重症化した要因としては,第一に 前処置に全身放射線照射が加わったこと,第二に骨髄抑制時期が長期化したこと,第三に初回の移植による移植片対宿主病が残存していたことなどが考えられた. 結論 再移植では開口障害,粘膜炎による疼痛,全身状態の悪化などにより患者本人のみならず,我々医療スタッフの口腔管理への技術的・精神的負担も大きなものであった. 口腔管理が困難であった今回の症例において、介入を継続するうえで、初回移植時から構築した患者や多職種との信頼関係が大きな力となった。本症例より、患者を含むチーム医療の重要性を再認識することができた。
著者
亀谷 哲也 三浦 廣行 中野 廣一 八木 實 清野 幸男 猪股 恵美子
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.144-151, 1988-08-30 (Released:2017-11-19)
参考文献数
19

新しい診査基準を用いて, 岩手県紫波郡矢巾町の0歳から6歳までの咬合診査を行った。その結果, 不正咬合は, 1歳6カ月児から46.2%という高い頻度で認められ, とくに乳歯咬合の完成に近い2歳児では49.1%とさらに高い頻度でみられた。不正要因は, discrepancy要因のものが1型, 2型とも多く, 年齢群では, 1歳6カ月児, および2歳児が最も多かった。他の骨格型や機能型は各年齢群を通じて大きい変動はなく, 全体として出現頻度は低いが, 骨格型では6歳児で13.9%に認められた。重症度は, A, B, の段階までが約90%を占めていたが, Cと診断される不正咬合の保有者も少数ではあるが認められた。以上の結果に基づく保健指導は, とくに顎骨の発育を促進させるような食生活の指導を補強する必要があると考えられた。治療に関する指導では重症度を参考に骨格型, discrepancy型を中心に治療開始の適当な時期を見逃さないように指摘しておくことが重要であると思われた。
著者
佐藤 方信 及川 優子 古屋 出
出版者
岩手医科大学歯学会
雑誌
岩手医科大学歯学雑誌 (ISSN:03851311)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.53-64, 2005-04-25
被引用文献数
2

Autopsy cases of tongue cancer in Japan were statistically analyzed. Autopsy cases were collected from the Annual of Pathological Autopsy Cases in Japan over the past five years (1997-2001). Tongue cancer was reported in 321 autopsy cases(M:241, F:79, Unknown: 1). The autopsy rate was 6.0% of 5,320 patients who died of tongue cancer in Japan. 103 of the autopsied patients (32.2%) were in their seventh decade, 74 (23.1%) were in their eighth decade, and 54 (16.9%) were in their sixth. Histologically, almost all the cases showed squamous cell carcinoma (96.8%). The cancer arose most frequently in the lateral borders (66.1%) of the tongue. Multiple primary cancers, affecting both the tongue and other organs, were found in 113 cases. The mean ages of only the autopsied cases of squamous cell carcinoma excluding the cases of multiple primary cancers were 63.8±10.1 (1997), 57.7±12.3 (1998), 65.4±13.6 (1999), 61.7±15.4 (2000) and 62.1±14.9 (2001) years old. However, the mean ages of multiple primary cancers, affecting both the tongue and the other organs, were 69.2±9.9 (1997), 70.5±11.2 (1998), 66.6±10.2 (1999), 68.2±11.6 (2000) and 69.9±15.5 (2001) years old. In cases of double cancers including tongue cancer, commonly occurring cancers were lung, liver, esophagus, thyroid and adrenal. Metastasis to other organs was frequently found in the tracheobronchus and lungs, liver, heart and aorta, bones, adrenals and thyroid. Metastasis to the lymph node was found in the cervix, lung hilum, periesophagus and peritrachea, left supraclavicula, and axilla. The most common cause of death was pulmonary infection.