出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.82-83, 1971-07-01

日本医師会(武見太郎会長・会員8万7000人)は,政府の医療行政を不満として7月1日から‘保険医総辞退’に突入した.医師会は今回の総辞退の理由としで,昭和36年に政府が約束した医療保険の抜本改正が実現されていないこと,政府の低医療費政策,関係審議会の無能力などをあげている. 一方,政府は7月の内閣改造で斎藤昇氏を新厚相にたて精力的に事態の収拾に努めているが,7月13,20,27日の斎藤・武見会談と,28日の佐藤首相・斎藤厚相・武見会長の三者会談で事態の収拾策がまとまり,保険医総辞退問題は解決した.今後は中医協の場などで日本の医療ビジョンの具体策が審譲され,国民の合意が求められることになる.
著者
岩﨑 公平
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.511, 2002-06-01

●母なる地球 宇宙の無数にある惑星の中で,地球のように水のある惑星は数少ない.誰かの恋心と違って,水はあらゆる物質の中でも一番熱しにくく冷めにくい.水は優れた温度調節機能を持っている.地球表面の最高温度は40℃,最低温度は−30℃程度で温度差は高々70℃だ.比べて,お隣の水のほとんどない火星は最高が25℃,最低が−120℃と温度差は地球の2倍の145℃もある.母なる地球の海・湖・川の水,水蒸気は,体液だ.
著者
小川 聡子 名田部 明子 中野 彩 鈴木 知子 倉林 志保 石野 啓子 岡村 紀宏 野口 百香 牧角 寛郎 丸山 泉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.348-351, 2021-04-01

公益社団法人全日本病院協会(以下,全日病)は,2013年に「全日本病院協会プライマリ・ケア宣言2013」を発表した.少子高齢化が進む社会で,病院医療におけるプライマリ・ケアの重要性を認識し,新たな行動目標として「在宅医療,在宅介護対応,認知症対応へ積極的に取り組むこと」を宣言したのである.この宣言の下,プライマリ・ケア委員会を立ち上げ,「病院医療ソーシャルワーカー研修会」(2014年から),「認知症研修会」(2014年から),「総合医育成プログラム研修」(2018年から)を主催している. 「病院医療ソーシャルワーカー研修会」(以下,本研修会)は,日本医療社会福祉協会と協働して年2回開催し,1回目は病院医療ソーシャルワーカー(以下,病院MSW)対象,2回目は同じ施設からMSWと多職種の同時参加を原則としている.全国から医療機関に勤める多職種が一堂に会し,MSWだけではなく,病院経営者,多職種も共に学び,前進してきた7年間であった.
著者
近藤 慶二 八木 保
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.112, 1994-02-01

浅野先生は昭和30年岡山大学医学部の卒業で,インターン修了後同第2内科(平木教授)に入局,33年からは米国スローン・ケタリング癌研究所に留学し約2年間腫瘍酵素学を学び教室に帰っている.もっぱらアイソザイムについて癌診断面の研究をし,また胃の血流や膵疾患とアミラーゼの関係などで後輩の指導にもあたっていた. 昭利42年岡山市民病院の内科部長,51年院長となり老朽化した病院を今のような立派な近代的な病院にした人でもある.
著者
堀 成美 大西 潤子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.956-959, 2020-12-01

新型コロナウイルスに限らず,市中で感染症が流行すると,医療機関に必ず持ち込まれることになり,それをゼロにすることはできない.それでも,持ち込まれても拡大させないようにする有効な方法はある.それは,持ち込まれたことに気づいてから何とかする特別な方法ではなく,知らず知らずに持ち込まれたとしても広げない環境や予防の手技が実践されているかどうかにかかっている.本連載第3・4回は,感染管理の専門スタッフがおらず,手指衛生やマスク着用といった感染対策への協力が難しい患者が多い精神科病棟で広がった新型コロナウイルス感染症の対策のリーダーとなった武蔵野中央病院・大西看護部長にお話を伺う.
著者
尾野 恭一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.122-125, 2021-02-01

■はじめに 筆者は現在,医学部長を務めているが,立場上地域の医療機関や行政の方々から日々支援を求められている.地方大学は,地域全体に医師を提供する役割をも担っており,その都度,医局に事情を聞きながら対応せざるを得ないのが現状である.また,秋田県の地域医療対策会議などを通じた地域医療構想の策定に関する種々の会議においても,地方においては「大学の役割=人材派遣」といった考え方が定着している.大学が,地方への医師派遣をその役割の一環として担っている以上,医局は必要不可欠である.本稿では,医局の役割,とりわけ地方において医局制度での医師派遣,医師偏在で果たす医局の役割について私見を述べる.
著者
寺本 民生
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.118-121, 2021-02-01

■はじめに わが国の医師には,医師免許取得後,2年間の臨床研修が義務化されている.しかし,その後は,各学会に所属して学会専門医を取得することは自助努力に任されていた.1962年に日本麻酔科学会により麻酔科の指導医制度が確立され,その後各学会がそれぞれの専門医を認定してきた.その結果,現在では100以上の学会認定専門医が存在し,その名称や診療内容が国民にとって分かりにくい(受診する判断材料となりにくい)制度となり,問題視されていた.この問題を解決すべく,1981年以降,学会としても第三者による専門医認定制度を創設する方向で協議会を立ち上げ,度重なる議論を重ねてきたが,学会から独立した組織にするということには,それぞれ意見の違いがあり,なかなか克服できない状態が続いた.厚生労働省もこの問題に取り組むべく「専門医の在り方に関する検討会」を2011年に立ち上げ,2013年に報告書をまとめた.一般社団法人日本専門医機構(以下,専門医機構)はその報告書に則り,2014年5月に発足した.その基本像は「①学会ではなく第三者機関として,制度の統一化・標準化を図る.②基本19領域を取得してからサブスペシャルティ領域を取得.③総合診療専門医を作り,基本領域に位置づける.④プロフェッショナルオートノミーを基本とする」とされた.
著者
古谷 伸之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.114-117, 2021-02-01

■2004年の新医師臨床研修制度前後の動向 2004年に新医師臨床研修制度が開始されるまでは,臨床研修の多くは出身大学で行われており,その後も大学医局に所属する形でキャリア形成がなされていた.地域病院の多くは大学からの派遣医師により人材の充足がなされ,地域の中核大学医学部が地方の人材供給源となっていた.確かに,安定した人材資源の配分に寄与する構造ではあった一方で,大学を中心としたいびつな社会構造であったとも考えられた.新医師臨床研修制度では,2年間の臨床研修が義務づけられ,研修先も大学病院から一般病院へと徐々に移行し,現在では大学病院研修よりも一般病院研修の方が多数を占めることとなった(図1). 一方,大都市圏以外の大学では,都市部の大学や病院への人材移動が活発化したこともあり,人材資源が減少傾向となり,かつて大学が担っていた人材資源の再配分が難しくなった.そのために人材不足となる地域が顕著となっている.厚生労働省では,研修医の募集倍率を低くとどめたり,都市部の大学や病院の研修定員を減少させることで,大都市以外への地域への研修医の再配分を実現しようとしており,研修内容の改善と相まって,わずかに大都市圏以外の病院での研修医数は増加傾向にあったが,ここ数年は変化に乏しい(図2).
著者
松田 晋哉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.162-166, 2021-02-01

■はじめに 筆者のように大学から給料をもらいながら安定した生活を送っている者が,日々の経営に心臓が締め付けられるような苦労をされている医療機関の経営者の方々に代わって経営を語る資格などないだろうことは十分自覚している.しかしながら,筆者のような制度(マクロ)研究を行っている者にとって,現場(ミクロ)を見学させていただき,マクロの政策がミクロの現場でどのような影響をもたらしているのか,そして現場で「すでに起こっている未来」を知ることは,制度研究の方向性を間違えないためにも重要であると考えている.また,訪問調査で得られた知見を整理して提示することは,現場の経営者の方々に何らかの役に立ちうるのではないかと思う.そこで,本稿ではこれまでの連載を通していろいろな組織を見学させていただいた経験をもとに,これからの病院の経営について私論を述べてみたい.
著者
伊関 友伸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.502-507, 2020-07-01

●新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の蔓延は,国が進めてきたこれまでの医療政策に対して大きな変更を迫る.●COVID-19の蔓延に対して,感染症指定医療機関が十分に配置できていない.●これまでの地域医療計画において,新興感染症への対応はほとんど考慮されていない.●感染症専門医の数や医師の集約化のメリットを考えれば,都市部の自治体・公的病院を統合・再編して機能向上を図る必要がある.
著者
毛利 好孝 三村 令児 森本 康路
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.520-525, 2020-07-01

●たつの市民病院は,平成25(2013)年4月に現地建て替えによって新病院が竣工したが,大幅な病床減によっても病床稼働率は回復せず,平成26(2014)年度の病床稼働率は53.1%,経常収支は7億1千8百万円を繰り入れながら8千5百万円の赤字であった.●平成27(2015)年度から地域の医療ニーズに合わせる形で医療機能が大幅に転換され,平成30(2018)年度の病床稼働率は84.5%,基準内繰入後の経常収支は1億1千3百万円の黒字となり経営再建が達成された.●令和2(2020)年4月からは地方独立行政法人化され,新たなスタートを切っている.
著者
小松 大介 大石 佳能子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.677-682, 2020-09-01

●経営資源が限られている中小病院にとっての経営戦略は,集中戦略が主体となる.●戦略の選択と集中においては,診療科や患者ステージ(急性期〜回復期〜慢性期)以外に,機能別の切り口も存在する.●選択と集中によって,病院同士が上手に棲み分けることで,経営的にも良い効果が得られる可能性が高い.
著者
福島 通子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.705-709, 2020-09-01

2020年4月1日(中小企業ⅰは2021年4月1日)より,「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(略して「パートタイム・有期雇用労働法」)において,同一労働・同一賃金に関する規制が施行された.同法は,同一の事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止している. 少子高齢化や価値観の多様化により増加iiしてきた非正規労働者(短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)は,これまで正職員とは別個のものとして処遇されてきた.しかし,非正規労働者も正職員と同じ評価体系に組み込み,公正な待遇を確保しなければならないというのが同一労働・同一賃金の考え方である.これには,不合理な待遇差の解消により,非正規労働者の勤労意欲を高め,生産性向上につなげる狙いがあるとされている.
著者
井部 俊子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.459-464, 2003-06-01

はじめに 医療機関において医療事故防止を推進し,安全な医療を提供していくためには,個々の医療従事者の患者安全確保に対する意識改革が求められる一方,医療事故防止における組織的な取り組みが不可欠である.医療は,複雑かつ高度化しており,さらに医療サービス提供プロセスには多くの医療従事者がかかわっているため,医療従事者個人の努力では対処できない問題があるからである. 医療機関における安全管理体制の構築は,部門や職種ごとの安全管理体制のみならず,組織横断的に安全管理を担う体制作りが重要であり,病院管理者の責務である.医療安全管理を機能させるために中心となって活動する役割をもつリスクマネジャーの配置が試みられ,その後,診療報酬制度にも反映されることになった. 米国では,アメリカ・ヘルスケア・リスクマネジメント学会(American Society for Healthcare Risk Management:ASHRM)がヘルスケア・リスクマネジャーの認定を行っている.ASHRMでは,ヘルスケア・リスクマネジャーの業務範囲を,①損失の防止と回復,②訴訟管理,③リスクファイナンシング,④規制と認定,⑤リスクマネジメント・オペレーション,⑥生命倫理,の6領域に分類している.これらの業務内容は,米国におけるリスクマネジメントが医療事故による訴訟対策が発端となっているとされ,「組織体」における損失予防という意味合いが強いものとなっている. 一方,わが国では,医療機関におけるリスクマネジャーの組織的位置づけは様々であり,その役割や機能について標準的なあり方が十分に検討されてこなかった. 本稿では,平成13(2001)年度に実施した医療技術評価総合研究事業「医療機関におけるリスクマネジャーの機能に関する研究」(主任研究者井部俊子)の結果を元に,医療安全に取り組む医療安全管理者の実態を報告し,わが国における医療安全管理体制のあり方について考察したい.
著者
厚生行政研究会
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.958-959, 1994-10-01

「クーラー事件」が問いかけたもの 記録破りの猛暑も終わりに近づいた頃,行政当局では,「クーラー事件」なる熱い問題が沸騰した.桶川市の生活保護受給者がクーラーを購入したことで生活保護受給資格が問われ,結果,クーラーは取り外され,当該受給者が脱水症に陥り入院に至った事件である.生活保護制度は,日本国憲法第25条1項にうたわれている「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という理念を直接的に実現するために設けられている制度であり,「最低限度」以下の生活を余儀なくされている約90万人(1か月平均)が制度の対象となっている.90万人は人口の約0.7%である. クーラー事件で議論されたのは,何をもって「最低限度」以下であると認定するかの行政的基準であった.普及率が70%以下の高額機器を保有している状態は「最低限度」以下の生活とはいえない,という判断に基づいてとられた処分が思わぬ波絞を呼んだわけであるが,この事件に対して,有力メディアの多くは,「現場の状況に応じて,担当者が自由に裁量できる制度にしておくべきだ.行政はお役所仕事で血も涙もない」という論調であった.桶川市におけるクーラーの普及率がたまたま70%という微妙な値であったことから担当者自由裁量論が主張されたのであろうが,国民の税金を使用するのに,本来,自由裁量論はなじまない.