著者
鷲尾 圭司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.202-203, 2015-04-20 (Released:2017-06-16)

和食がユネスコの世界文化遺産に登録されたが,わが国の風土と文化を基礎として育まれてきた食文化が健康面や環境との調和の観点から評価されたものである。米を主食として野菜や魚を副菜とした献立は地域性や季節性を織り込み,芸術性も備えた知恵と洗練の結晶ともいえるだろう。その中でも,魚など水産物の利用はわが国ならではの特徴を発揮している。本稿では,料理の基礎となる出汁,健康面とかかわりの深い脂肪,鮮度にかかわる技法を取り上げ,水産物利用にかかわる化学の役割について述べる。
著者
野平 博之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.686-690, 1995-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

19世紀初頭, 酒石酸や乳酸などの研究から光学異性体の歴史が始まった。光学異性体は有機化合物における立体異性体の一種であり, 光学活性を示す化合物のことである。今日では, 有機化合物の旋光性はその分子の不斉構造に起因していることがわかっている。そして, 光学異性体が関係する医薬・農薬などの生理活性物質や液晶などの機能性化合物においては, 光学異性という性質が重要な意味をもっている。ここでは, 光学異性体の歴史とその基礎化学について述べる。
著者
松浦 一雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.584-589, 1993

ハーバーとボッシュによるアンモニア合成触媒の発見のように, 昔から画期的な触媒の誕生は社会に大きな影響を与えてきた。とくに, 今世紀最大の発見のひとつともいえるチーグラー触媒の誕生により, ポリエチレンのようなプラスチック類が金属や木材など天然素材に代わって登場し, 我々の生活様式は一変した。しかし, 触媒のはたらきは長い間プラックボックスとされてきたのであり, 新触媒の誕生は偶然や意外性に支配されることが多かった。一体, 新触媒はどのような背景で生れ, 育っていったのだろうか?また, それとともに, 工業プロセスはどう移り変わったのだろうか?
著者
早川 典子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.60-63, 2007-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

文化財の修復では,古くから使われ,使用方法や使用後の変化について多くの経験が重ねられている材料が「伝統的な材料」として多くの場面で使用されている。このような材料は,勘や経験に基づいて安定して使用されているため,意外にもその化学組成が明確になっていない場合もある。中でも,古糊(ふるのり)と言われる糊は,甕に入れたデンプン糊を十年ほど保存して作られるもので,汎用性の高い他の糊とは異なり,書画の修復においてのみ用いられる特殊な材料である。この古糊の特徴について,近年明らかにできた化学的知見と,それをもとにした類似材料の調製について報告する。
著者
三澤 勝已
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.564-567, 2011-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

硫酸は工業薬品の中で重要な酸の一つであり,大量に生産されている。どの学校の実験室にも必ずあり身近な存在である。また,化学実験では何らかの形で登場してくる。それにも関わらず,授業では単に硫黄化合物の一種という程度の扱いでしかない。本稿では化学史上の硫酸を取り上げながら硫酸に対する認識を新たにし,硫酸の重要性や化学実験での役割をより深く考えていきたい。
著者
荘司 隆一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.604-605, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
2
著者
木村 健二郎 林 良重
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.243-246, 1976-06-20
著者
大西 敦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.34-37, 2004-01-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7

HPLCによる光学異性体分離,中でもキラル固定相を用いる光学異性体の直接分離技術は光学純度分析の主流であり,キラル化合物を扱う多くの研究者や技術者に役立っている。本稿では,光学異性体及び光学異性体の分析方法について説明した後,HPLCキラル固定相による光学異性体分離の概要と多様な構造を有する不斉識別剤とその特徴について概説する。最後に多糖誘導体系キラル固定相について簡単に紹介する。
著者
米沢 剛至
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.337, 2000-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
1

生徒は実験に飲食物がでてくるとたいへん喜び, 後々までよく覚えているので, 筆者としては, コロイドの生徒実験にも取り入れたいと考えている。水酸化鉄のコロイドと色合いが似ているので, 間違わないように注意しなければならない。
著者
竹内 健
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.172, 2016-04-20 (Released:2016-12-14)
参考文献数
1
著者
中山 誠二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.372-375, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
9

レプリカ・セム法という新たな分析法を用いて,縄文土器の表面に刻まれた「圧痕」から,当時の人々が利用していた有用植物が数多く発見されるようになった。これらの植物種子の大きさや形態変化を分析した結果,エゴマやダイズ,アズキなどの特定植物が縄文人によって栽培され,日本列島独自に栽培化が進んでいたことが明らかになった。
著者
神谷 信行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.740-744, 1994-11-20 (Released:2017-07-11)

氷に塩を混ぜると温度が下がることは知っているが, どうしてだろうか。道路が凍結したときに道路に撤く融雪剤としての塩化カルシウムの働きは何だろうか。どちらも氷の融解現象をうまく利用したものである。保冷剤の中身はほとんどが水で, 水, 氷の熱容量が大きなこと, 大きな融解熱が使われている。ドライアイスは本当にドライなのか。その生成の秘密は。木枯らしが吹く寒い冬の戸外は絶対零度からすれば灼熱地獄。家の外からエネルギーを取り込むことはたやすいものさ。
著者
足立 吟也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.386-390, 1990-08-20 (Released:2017-07-13)

名画「風と共に去りぬ」といっても, もはや映画ではなくビデオの世界で, テレビと組み合わせたセットで楽しめる。衛星を使って世界の事件やスポーツ中継が私たちの目の前にテレビの画像として届けられてくる。我が国でカラーテレビの放送が始められたのは1960年であるが, それから30年, 今や世界第1位のテレビ受像機の生産国となった。このテレビの仕組み, 特にどのようにして"色"を出しているのかを中心に学んでみよう。
著者
平松 茂樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.136-139, 2015

高等学校段階において,アミノ酸およびタンパク質の検出反応として広く使われているニンヒドリン反応,ビウレット反応,キサントプロテイン反応について,その反応の原理を解説し,高校化学の授業で扱う際の留意点や実験における材料の例などを紹介する。加えて,キサントプロテイン反応において,ペプチド鎖のどのアミノ酸と反応しているのか,という点で,教科書の記載に差が見られた。このことについて検証を行ったところ,多くの高校教科書の説明には疑問があるのではないか,という結果が導かれた。
著者
小野 寿久 長沢 博貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.170-171, 2007-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

糖類の学習について,発展的な内容の生徒実験として未知糖類の判別試験を実施した。フェーリング液の還元など定番の反応のほか,バーフォード反応,セリワノフ反応といった,高等学校で扱わない定性反応を利用したが,生徒自身がいろいろと考えて実験に取り組むことができ,また糖類に関する理解も深まるなど利点も大きいことが分かった。
著者
松浦 紀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.298-301, 2015-06-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
2

酸化還元反応は,基本的な化学反応の一つであり,この反応を利用した酸化還元滴定は,古くから過マンガン酸カリウム水溶液による鉄(II)化合物の定量などに利用されてきた。高価な装置が不要であり,測定精度が優れているため,現在,様々な化学物質の分析法として広く用いられている。高等学校においても,反応の量的関係を扱う実験として多くの学校で行われている。本稿では,高等学校での「酸化還元反応」の教科書での取扱いや,酸化還元滴定を実施する上での工夫を紹介する。
著者
齋藤 努
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.300-303, 2000-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

考古遺物の原料産地の推定は, その生産地とあわせて考えることによって原料の供給と生産, ものや人の移動や交流, 技術や文化の伝播などの状況を解析するのに役立つ。自然科学的な産地推定法の一つとして鉛同位体比法があり, 古代青銅器などの分析に適用されている。ここではその方法の原理とこれまでの成果, 古代銭貨である皇朝十二銭の分析結果について紹介する。
著者
朽津 耕三 田中 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.636-640, 1998
参考文献数
10
被引用文献数
1

アボガドロ定数は, 19世紀後半からマクロの物理現象に現れる分子の大きさと単位時間の衝突回数などを用いて推定された。定量的な測定はおもに20世紀に入ってから行われ, 1910年代に, ファラデー定数と電子の電荷の比などに基づいて, およそ6.0×10^<23>mol^<-1>であることがわかった。1940年代には3桁目まで, 最近では6桁目まで正確な数値が得られている。現在の値はおもにケイ素単結晶の格子定数・密度・モル質量の測定に基づくもので, 国際協力のもとにさらに測定の信頼度を向上させる努力が続けられている。もし将来8桁目まで信頼のおける測定値が得られたら, キログラムの国際標準は原子質量で定義され, kg原器は博物館に移される日が来るかも知れない。