著者
小畑 弘己 丑野 毅 高瀬 克範 山本 悦世 高宮 広土 宮ノ下 明大 百原 新 那須 浩郎 宇田津 徹朗 中沢 道彦 中山 誠二 川添 和暁 山崎 純男 安 承模 田中 聡一 VOSTETSOV YU. E. SERGUSHEVA E. A. 佐々木 由香 山田 悟郎 椿坂 恭代
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本の考古学において、縄文時代の農耕の存否問題は古くから議論され、今でも論争中の課題である。この混乱の根底には、確実な栽培植物が存在しなかったという研究上の制約があった。我々は、この問題を解決するために、土器中に残る植物種子や昆虫の痕跡(土器圧痕)を検出することで解決しようと考えた。研究期間内に、日本列島の縄文時代~弥生時代171遺跡、海外の新石器時代9遺跡において圧痕調査(約400, 000点の土器)を実施し、多種・多様な栽培植物種子や貯蔵食物害虫(総数552点)を検出した。また、圧痕法の学問的定立のための方法論的整備を行った。その結果、まだ問題点は残るものの、縄文時代の栽培植物の実態と問題点を明らかにすることができた。
著者
中山 誠二
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.33-42, 2015-02
著者
外山 秀一 中山 誠二
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.8, no.11, pp.27-60, 2001-05-18 (Released:2009-02-16)
参考文献数
64

山梨と新潟の11遺跡から出土した縄文時代晩期~弥生時代中期初頭の土器76点を整理して資料化し,このうちの55点を対象としてプラント・オパール分析を行った。土器胎土の定性分析と簡易定量分析の結果,8遺跡の14試料からイネの機動細胞プラント・オパールが検出された。このうちの4試料は弥生時代前期前葉に,5試料は前期中葉に並行する浮線文土器に比定される。また,山梨の宮ノ前遺跡では前期中~後葉の水田址が発掘されている。山梨と新潟では,かかる浮線文土器の段階にイネ資料が増加し水稲作が開始されている。中部日本の稲作の開始と波及を検討する上で,浮線文期は,稲情報の波及や水稲農耕技術の受容という生業の変換期となっており,その重要性が指摘される。当時は,地形や地層,標高などの地形環境に適応した多様な稲作形態であったとみられ,遺跡立地の多様化現象が認められる。さらに,地形分析に基づいて遺跡の時期的・地形的な動向を検討すると,両地域に遺跡立地の低地化傾向がみられ,弥生時代中期以降において水稲農耕の定着化が進む。また,山梨ではネザサ節型,新潟ではクマザサ属型のプラント・オパールが多数検出され,両地域間のササ類にみられる植生環境に違いがみられる。さらに,定性分析や簡易定量分析の結果は,胎土の供給源の違いとともに,土器製作時およびそれ以前の植生環境の違いや,植物質の混入または混和材の可能性を示唆している。
著者
中山 誠二
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.33-42, 2015 (Released:2021-03-17)

本稿では,レプリカ法によって確認された縄文時代のダイズ属種子圧痕を集成し,比較することによって,それらの大きさや形態の時間的変化を明らかにした。その結果,中部日本において縄文時代早期中葉(紀元前8 千年紀後半)から存在するダイズ属の種子が,縄文時代を通じて大型化し,特に紀元前4 千年紀後半の縄文時代中期以降,栽培型ダイズの種子が顕在化することが明らかとなった。この現象は,植物の栽培化に伴う一つの特徴である種子の大型化現象を示している。さらに,縄文時代のダイズ属種子は4 つの形態に分類され,野生種の利用から栽培化の過程で形態的な変化が生じ,複数の品種に分化した可能性を指摘した。
著者
外山 秀一 中山 誠二
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.09, pp.13-22, 1992 (Released:2021-07-28)

In this paper we categorized the ages of macroscopic and microscopic rice remains, e. g., fruit, stems, pollen grains and plant opal; stone and wood artifacts used for rice cultivation; and paddy fields and other facilities related to production. Then the history of rice cultivation and the relationship of culture and rice, from the Latest Jomon to the Early Yayoi periods in Japan. Significantly plant opal analysis of pottery composition was found to be an effective method for dating the rice cultivation in prehistory.
著者
中山 誠二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.372-375, 2018-08-20 (Released:2019-08-01)
参考文献数
9

レプリカ・セム法という新たな分析法を用いて,縄文土器の表面に刻まれた「圧痕」から,当時の人々が利用していた有用植物が数多く発見されるようになった。これらの植物種子の大きさや形態変化を分析した結果,エゴマやダイズ,アズキなどの特定植物が縄文人によって栽培され,日本列島独自に栽培化が進んでいたことが明らかになった。