著者
中村 亘男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.438-440, 1995-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

量子化学に対する理解を深め, これを活用し, 更によいものに育てていくためには, 量子化学の生い立ちとその発展の歴史を多少とも知っておく必要があろう。そこで, ボーアによって出された原子模型から, ハイトラー-ロンドンによる量子論に基づいた最初の化学結合理論, 量子化学の誕生とその後の発展について概観する。その中で, 量子化学を現代の膨大な体系にまで育て上げてきた先駆者たちの努力の後を振返り, 量子化学の現状と将来についても触れる。
著者
加藤 逸郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.726-729, 1998-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

硫酸工業は歴史が古く, 当初の硝酸式硫酸製造方法は現在全て接触式に切り替わった。原料は環境問題等から硫化鉄鉱から回収硫黄および製錬ガスに変わった。触媒は圧力損失の減少および接触面積の拡大を図ったリング触媒が登場した。SO_3吸収工程の吸収熱は廃棄されていたが, 高濃度・高温度硫酸でSO_3を吸収し, 発電に利用する技術が開発された。硫酸冷却器は従来のイリゲーションタイプに代わってステンレス製電気防食式のシェル・チューブタイプのものが普及しつつある。
著者
岡本 眞實
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.158-162, 1995-03-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

人類の争いの源はすべてエネルギー争奪にあったことを受けて, 「地上に太陽を」がこれまでの核融合研究(高温核融合)のうたい文句であった。その意味するところは, 無限のエネルギーを人類にもたらすということである。そのために, これまでに膨大な研究開発投資が先進国を中心になされてきたが, いまだに実用化は見えていない。このような状況の中で登場したのが, 常温核融合である。あまりにも簡単な装置で実験がなされたこともあって, 世界的に多くの研究者が手を染め, 一種のフィーバーとなったが, ことの真偽はどうなっているのだろうか?に答えを求めてみる。
著者
羽田 樹人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.496-497, 2017-10-20 (Released:2018-04-01)

製薬企業における化学とつながる職業の一つとして,低分子医薬品(化学合成医薬品)の研究現場で活躍する創薬化学者(メディシナルケミスト)がある。本稿では,中学・高校で化学を学んだ筆者がなぜ大学で薬学を学び,企業研究者としてメディシナルケミストを選んだのか,また製薬企業で化学がどのように役立っているかについて自らの体験をもとに述べる。
著者
深野 哲也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.446-449, 2015-09-20 (Released:2017-06-16)

高等学校で学ぶ混合物の分離・分析法の中で,イオン・pHが関係するものがいくつかある。本稿ではその例として,電気泳動を取り上げる。そしてその有効な活用法の一つとして,タンパク質の電気泳動についての簡単な説明を試みる。また,タンパク質を構成するアミノ酸についても触れる。
著者
田嶋 和夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.390-391, 2009-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
7

セッケンの分子は水に親和性のある親水性の部位と油に親和性のある親油性の部位を一つの分子内に持つ両親媒性の構造をした分子で,界面活性剤という。界面活性剤を水に溶かすと,ある濃度以上で分子は60個から80個が集合した「ミセル」を作って溶ける。ミセルの溶液は透明なコロイド溶液である。ミセルはどうしてできるのであろうか。その形成メカニズムを考え,そして,ミセルの性質と働きについても考えてみよう。
著者
弓場 三彩子 荒牧 賢治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.130-133, 2007-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

界面活性剤は溶液中で様々な分子集合体を形成し,その構造を制御することで高機能材料として用いることができる。界面や分子集合体構造の制御技術は,生活の中の身近にあるもので馴染み深い洗浄剤・化粧品・食品・医薬品などの製剤技術をはじめ,メソポーラス無機材料の鋳型,ナノ粒子の合成などに利用される。本稿では,界面活性剤溶液系で形成されるミセル,リオトロピック液晶のミクロ構造について解説し,さらに界面活性剤溶液の代表的な諸機能のうち,本来混じり合わない液体同士を微細な液滴として分散させたエマルション,および界面活性剤の可溶化力を最大限発揮して多量の油および水を取り込んだマイクロエマルションについて述べる。
著者
田口 誠一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.292-295, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

高校の化学実験で電池作成を行うことは多い。電池とは酸化還元反応を利用し電気エネルギーを取り出す装置であり,高校の授業では酸化・還元の授業の延長線上で実験を行うことが考えられる。本稿では,電池作成の歴史や高校でよく行う電池の実験について記述し,授業や実験時の工夫や注意点を中心に説明する。また発展的な内容についても触れたい。高校でよく行う実験については,ダニエル電池やボルタ電池,鉛蓄電池,マンガン乾電池の作成時の工夫や注意点について触れる。発展的な内容については,燃料電池やリチウムイオン電池などについて触れる。
著者
宮地 輝光
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.128-131, 2011-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

低級アルカンの反応性は低い。そのため,低級アルカンを他の化合物に変換することは容易ではない。自然界には,常温常圧条件でアルカンから選択的にアルコールを生成する酵素が多種類存在する。これら酵素はアルカン水酸化酵素と総称され,それら酵素のうち数種類は,低級アルカンから低級アルコールを常温常圧条件で生成することができる。近年,遺伝子組換え技術によって低級アルカンを酸化できないアルカン水酸化酵素に低級アルカン酸化能を付与することができるようになった。さらに,進化分子工学的手法によってアルカン水酸化酵素の活性向上や,生成物選択性の改変も可能となってきた。このような酵素改良技術によってアルカン水酸化酵素を実用化できれば,反応性の乏しい低級アルカンを炭素資源として有効に活用できる。
著者
安戸 饒 田中 和明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.552-556, 1999-08-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

日本の工業用アルコールの原料は澱粉質から始まり, 糖蜜と変遷し, 最近では生産コスト低減と廃液処理の問題から原料転換が種々実施されている。最近の原料別生産量は輸入粗留アルコール58%, 合成法39%, その他国内発酵製品3%である。発酵法については世界的に農産物がまだ主原料である。ここでは生産性を改良するための種々の発酵法について紹介する。合成エタノールについては, 技術的に確立しているエチレンの直接水和法について紹介する。
著者
大坂 武男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.84-87, 1998-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

地球上の生態系は, 小分子の同素体である酸素とオゾンの自然のバランスの上に成り立つ。成層圏のオゾンは有害な紫外線から生物を守る"善玉"であるが, 対流圏では"悪玉"である。人工物質フロンに含まれる塩素によって善玉オゾンが分解され, オゾン層が破壊されつつある。と同時に, 人為起源による窒素酸化物, 一酸化炭素, 炭化水素などの大量放出によって悪玉オゾンの濃度が増加しつつある。
著者
則元 京
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.170-174, 1991
被引用文献数
1

木材は, 軽くて強いけれども, 比較的脆い材料であるとの印象をもつ者は, カットに示すような曲げ木を見ると, 驚くかもしれない。また同時に, どのようにすればこのように木材を曲げられるのか, 木材の微細構造はどのようになっていて, 曲げるとどのような構造の変化が起こるのか, この変形は永久的なものなのか, など多くの疑問がわいてくるかもしれない。本稿では, 細胞壁の微細構造と関連づけて, 木材の軟化, 曲げ変形とその固定, 変形の回復の仕組みを説明し, 曲げやすい木材と曲げにくい木材の構造上の違いに触れ, 最後に, 家庭用電子レンジを使って木材を曲げる方法について紹介する。