著者
宇都宮 浄人
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.91-98, 2013 (Released:2019-05-27)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本稿では、地方圏の乗合バスについて、1985年度から2009年度までの県別のパネルデータを整備し、需要関数を推計する。この結果、バスの需要は、運賃や所得、バスのサービス水準などが影響していること、乗用車がバスの代替手段として影響を与えていることなどが明らかになる。バス需要の価格弾力性は、絶対値が1より小さく、規制緩和前後からの運賃引下げ局面では弾力性が低下する傾向にあるが、今後、バスという公共交通利用を促進すると言う観点からは、バス事業単体として増収が見込めるものではなくとも、公的な助成も活用した運賃の引下げ、バスのサービス水準の向上が政策課題となる。
著者
宇都宮 浄人
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.15-22, 2017 (Released:2019-05-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

地域鉄道にはバスにない存在価値があるとされるが、その定量化は必ずしも進んでいない。本稿では、性格の異なる3つの鉄道を対象に、バスを基準にした鉄道の相対的な割増価値(プレミアム)をCVMにより測定した。その結果、沿線住民は、直接的な利用者以外も含め、富山ライトレール、近江鉄道ではバスよりも2割程度、若桜鉄道では1割程度の鉄道のプレミアムを見出しており、鉄道の存在価値が相当程度あることを示唆する結果となった。また、運行頻度が高まった場合についても、直接的な利用者以外の人も含め、沿線住民は相応の運賃の割増支払いの意思があるとの結果が得られた。
著者
渡邉 亮 遠藤 俊太郎 曽我 治夫
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.39-46, 2017

鉄道の廃線敷は、土地利用の転換・活用が難しく、特に地方部で有効に活用されている事例は少ない。しかし、一部では観光施設として有効活用されている事例もある。本研究では、国内3事例、海外1事例について、誕生の背景や施設の保有・運営形態、採算性等をヒアリング調査した。その結果、鉄道時代を上回る集客力を有し、一定の収支を確保している事例が確認でき、廃線敷を活用した施設が新たな観光資源として都市と地域の交流を生む可能性を秘めていることが明らかとなった。
著者
藤井 大輔
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.143-152, 2012

2008年に着工した長崎新幹線の並行在来線である長崎線は、これまでの整備新幹線の並行在来線の措置と異なり、JRが新幹線開業後も並行在来線での列車運行を担うことになった。この「長崎方式」とも呼ばれる方式を考察した。また、既に開業した整備新幹線の並行在来線転換第三セクター鉄道事業者を旅客輸送量と経営状況の面から横断的に分析した。いずれの事業者でも旅客輸送量の減少は続き、軌道1kmあたりで算出した鉄軌道事業営業損益も赤字決算が続いていることが明らかとなった。
著者
板谷 和也
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.105-114, 2011

鉄道路線の廃止が届出制となった2000年以降、各地で鉄道廃線事例が増加しているが、これらの廃線事例を主体的に取り上げてその動向を論じた研究は限られている。そこで本研究では2000年以降の廃線事例における存廃問題に関わった主体を明らかにし、その活動の方向性を類型化した。その結果、2000年代前半は陳情主体の従来型の廃線プロセスが多かったが、近年では市町村が主に関わり、自力での存続可能性を検討した事例が多くなってきていることが分かった。
著者
中村 彰宏 加藤 一誠 眞中 今日子
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.167-174, 2017 (Released:2019-05-27)
参考文献数
4

本研究では、交通事故につながる違反運転を繰り返す運転者には、構造的に違反運転をしてしまう理由があるのではないかという仮説を立て、2014年に実施したアンケート個票データをもとに繰り返し違反運転者の違反運転理由について分析した。分析の結果、繰り返し違反運転者の半数が、「自分自身(運転者)以外にも、仕事など、違反の理由がある」と考えている点が明らかとなった。この分析結果から、彼らの違反を削減するためには、運転者個人への指導以外の方法も合わせて講じることも必要である点、「運転者個人を対象とした指導施策」の効果を評価する際には、仕事など、運転者個人の意識改善以外の要因を考慮して、その効果を測定する必要がある点などの政策含意が導かれる。
著者
湯川 創太郎
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.59-68, 2008 (Released:2019-05-27)
参考文献数
28

本研究は、アメリカ合衆国(アメリカ)における公共交通の公的介入の変遷史から、介入の形成条件と、形成過程についての考察を行うものである。分析にあたっては、第一次世界大戦以前とそれ以降の時期に時代区分を行い、それぞれのケーススタディを行った。その結果、アメリカの都市公共交通では20世紀初頭以降、公益事業型の規制と交通調整が行われ、また、後に限界が生じたものの、都市政府や州政府が発生した都市交通の諸問題に対応させながらそれを適用した過程が見出された。
著者
山口 勝弘 山崎 清
出版者
日本交通学会
雑誌
交通学研究 (ISSN:03873137)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.45-54, 2010 (Released:2019-05-27)
参考文献数
9

次世代の都市間高速交通網の一翼を担うことが期待される超電導磁気浮上式鉄道 の東京、名古屋及び大阪間への導入(中央リニア新幹線)について、分析モデルを用いて我が国の経済と環境に及ぼす影響を定量的に分析した結果、リニア導入の利用者便益は、今後の都市間交通需要の伸び、即ち、我が国の経済成長レベルに左右され、2005年度から70年間の年平均経済成長率が2.0-2.5%程度でなければ費用便益比率が1を超えないとの推定結果が得られた。また、リニア導入のCO₂排出量への影響については、新幹線からリニアへの需要のシフトが航空からのシフトよりも大きいため、東京=名古屋開通で2.7%、東京=大阪開通で4.9%増加することが判明した。さらに、中央リニア新幹線は、単体では採算が見込めるが、東海道新幹線には巨額の減収をもたらす。従って、JR東海がリニアを導入した場合、東海道新幹線からの需要シフトにより増収効果が小さいために中央リニア新幹線の事業収支は大幅な赤字となる。しかし、JR東海としては、他からの新規参入があった場合に比べ、自らリニアに参入した方が赤字幅を小さく抑えることができるため、次善の選択としてリニアに参入することをゲームの理論をもとに考察した。