著者
金崎 良三 徳永 幹雄 多々納 秀雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.205-215, 1987-03-28

ゲートボールの実施者および実施者のいる家族を調査することによって, ゲートボールをめぐる問題についてアプローチしてきたた。以下は, 研究結果の要約である。1. ルールの違いにより困ったという経験をもつ者は, 3割強とかなりみられ, 性別では男子, 経験年数別では年数の良い者, 地位・役割別では監督経験者, 審判有資格者に多い。したがって, 仮説(1)「ゲートボールの統括団体の乱立やルールの違いによる混乱がある」はある程度検証された。2. ルールや団体・組繊のあり方については, 全国統一ルールや全国組織としてまとまった方がよいとする意見が多い。この傾向は, 男子, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者に強い。3. 大会のあり方については, 全国大会を望む者が多いとはいえ全体的には多様な意見がみられた。したがって, 仮説(2)「ゲートボールの実施方法が勝敗を重視するようになり競技志向化してきた」は, 一部にはその傾向が認められるものの今回のデータからは検証されたとはいい難い。なお, 全国大会を望む者は, 男子は農村部, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者, 女子は監督経験者, 審判有資格者に多くみられた。4. 練習に対する不満, 対人関係や選手の選出で嫌になったことの経験, 審判やクラブ, リーダーに対する不満に関しては, ほとんどないという者が多い。しかし, それほど深刻というほど現実化しているとはいえないが, 嫌になった経験や不満を感じたことのある者が2割から最高4割近くみられ, クロス分析では男女経験年数の良い者と女子の審判有資格者に多かった。また, ゲートボールをやめたいと思ったことのある者は, 非常に少なかった。なお, 嫌になった経験や不満の内容, やめたいと思ったことの理由が具体的に明らかになったが, なかでも対人関係に関することが大きなウェイトを占めていることがわかった。5. ゲートボール継続のための条件としては, 健康であることと仲間との調和・親睦をはかることの2つが圧倒的に多かった。6. ゲートボール実施者のいる家族の調査から, 第1に大部分の家庭は実施者がゲートボールをしやすいように気を配り, 協力していること, 第2にゲートボールを実施するにあたり仕事がときどきおろそかになると評価される者が34%に達すること, 第3にゲートボール中心の生活を送っていると評価される者が2割を越えていること, 第4に家族の誰かがゲートボールを始めることによって迷惑に思ったり困ったりした経験があるという者が2割強いること, などが明らかになった。特に, ゲートボール実施による仕事への影響, 実施者の生活, 家庭への迷惑などについての調査結果から, 仮説(3)「家庭での役割遂行をめぐって問題がある」は, 検証された。7. 家族が指摘するゲートボール実施上の問題としては, 実施者の仕事や家庭での役割の問題に関係したものが多くみられた。最後に, 本調査研究において明らかになった傾向が, ゲートボール特有のものかどうかは他のスポーツの場合と比較しなければわからないが, 少なくともゲートボールをめぐる問題として従来指摘されてきたことのいくつかが実証的に示されたと思う。また, 自由記述式の調査によって多くの具体的で詳細な問題点が浮上してきた。これらの点についても, さらに仮説を構成し, 検証を加えていく必要があろう。この点は, 今後の課題としたい。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 高柳 茂美
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-73, 1994

第44回全日本大学準硬式野球大会の予選を兼ねたの九州選手権大会に参加した25チーム, 511名を対象にして, 特性としての心理的競技能力と状態としての心理的競技能力を調査した。その結果を要約すると次のとおりである。1.特性としての心理的競技能力は, 学年, 年令, 経験年数, 県や全国レベルの大会への参加回数, 競技成績, ポジションなどによって異なった。2.試合中の心理状態を大戦チームと比較すると, 勝ちチームほど高得点を示す場合が多かった。しかし, 負けチームが高得点を示す場合もみられた。また, 1回戦から決勝戦までの全選手の平均得点は, 1・2回戦では低く, 決勝戦になるほど高得点を示した。さらに, チームごとの平均値をみると, 1・2回戦での負けチームの得点は低く, 上位チームの得点は次第に高得点になることが示された。3.特性と状態の相関は, 1〜3回戦までは有意であった。しかし, 5〜8位決定戦と決勝戦での相関は低くなった。3回戦での試合中の心理状態に関与する特性としての心理的競技能力をみたが, 有意性のある尺度はみられなかった。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 磯貝 浩久 高柳 茂美
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.9-17, 1992-02-08
被引用文献数
2

運動やスポーツを行うことによって生ずる心理的効果として爽快感の体験とその観定要因を分析するために3つの実験を行った。実験1は炎天下に行われた大学におけるテニスの授業, 実験2は継続的授業の初期(2回目)と後期(12回目)の大学のサッカーの授業, 実験3は習慣的に実施されている高齢者のテニスの練習を対象とした。それぞれの主な結果は, 次のとおりである。1. 炎天下のテニスの授業では80.4%の多数の学生が「爽快」と答えた。爽快感の規定要因では気分のすっきり度, 運動欲求の強さ, 暑さに対する評価の3要因が最も関係していた。その他, 身体的状態, 心理的状態, 個人的特性, 環境的条件が輻輳して関与していることが推測された。2. サッカーの授業の進行と共に「爽快」と答えた学生は増加し, 後期では84.7%の多数となった。爽快感の評価の変化をみると上昇型は56.5%, 無変化型は25.9%, 下降型は17.7%であった。とくに上昇型では体力, 技術, 性格の自己評価の高まり, 熱中度, 達成感, 運動欲求といった心理的状態の変化, 発汗, 苦しさ, 疲労度の減少といった身体面の適応,向上が関係していることが明らかにされた。3. 高齢者のテニス前後の爽快感,感情得点,乳酸, ACTH, ベータ・エンドルフィンの平均値にはいずれも有意な変化は認められなかった。しかし,テニス後の相互関係をみると, 爽快感や感情得点と乳酸値にはマイナスの相関がみられ, ACTHやベータ・エンドルフィンの分泌にはプラスの相関がみられるという興味ある傾向が認められた。ただ, 高齢者の運動の爽快感をホルモン分泌からのみ考察するのは困難ではないかと思われた。
著者
大垣 哲朗 小室 史恵 宅島 章 吉水 浩 満園 良一
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.99-106, 1990-03-28
被引用文献数
3

中高年婦人を対象とした健康づくり運動教室に, 4年間継続して参加してきた主婦8名(継続群 : 49±6歳)と1年間参加しその後中断した主婦9名(中断群 : 48±8歳)について, この4年間の血清脂質の動態を検討した。健康づくり運動教室は, エアロビック・ダンスを主体とし, 一回あたり90分(主運動は35〜45分間)の割合で週2回実施してきた。その結果担, 以下のとおりである。1.総コレステロールは, 運動継続群・中断群ともに年月の経過とともに上昇傾向を示し, 運動教室巨開始から2年経過した時点以降は両群ともに有意な上昇であった(p<0.05〜P<0.01)。2.HDLコレステロールは, 運動継続群・中断群ともに年月の経過とともに減少傾向を示し, 運動開始から3年後以降に有意な低下であった(p<0・.05)。また, HDLと総コレステロールの比(HDL/T-ch)も, 両群ともに年月の経過とともに減少傾向を示し運動開始から2年後以降は有意な低下であった(p<0.05〜P<0.01)。3.トリグリセリドは, 両群とも大きな変動が認められなかった。総脂質は, 運動開始から4年後に有意な増加であった(p<0.05)。4.総コレステロール, HDLコレステロール, HDL/総コレステロール, トリグリセリドおよび総脂質のどの項目においても, またどの測定時点においても, 運動継続群と中断群で有意な差異は認められなかった。5.これらの結果は, 運動が血清脂質にマイナスの効果をもたらした, ということを示したものではないくそれは, 本健康づくり運動教室の血清脂質に及ぼす影響が顕著なものではなかったこと, 閉経期前後の中高年婦人の場合, 加齢あるいは閉経にともなうホルモンバランスなどの影響が大きいこと, を示すものであると考えられた。6.したがって, 若い被験者や短期間のトレーニング実験の結果を, そのまま中高年婦人や長期間の健康づくり運動教室の効果まで拡大解釈すると, 過大評価する可能性があり, 慎重な対応が必要であると言える。
著者
村山 正治 山田 裕章 峰松 修 冷川 昭子 田中 克江 田村 隆一
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.97-103, 1991-02-08

The authors revised Assertion Inventory (Murayama et al.,1989). The new version consists of Restriction Scale and Assertion-Aggression Scale. Restriction Scale, which has 30 items, measures the degree of restriction in assertive behaviors. Assertion-Aggression Scale has 35 items. It is for the measurement of the manner of assertive behaviors. Low Assertion?Aggression scores indicate the aggressive manner. The new inventory was administered to 498 people (ages 15-30 years). They were divided into 4 groups; normals, delinquents, neurotics, and psychotics. The mean Restriction scores of neurotics and psychotics were higher than those of normals and delinquents. The mean Assertion-Aggression scores of neurotics and psychotics were lower than those of normals and deliquents.
著者
橋本 公雄 徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.121-128, 2000-02-10

本研究はスポーツ競技のパフォーマンスを予測するための分析的枠組みを検討するため,筆者ら(1988a)のスポーツ競技不安モデルに準拠し,競技特性不安,競技状態不安,心理的競技能力,認知的評定,不安対応策などの主要な変数を用い,重回帰分析法によって検証したものである。調査対象は平成2年度第72回高校野球選手権地方大会決勝戦に出場した優秀な高校野球選手284名であった。主な結果を要約すると,つぎに示すとおりである。1) 10項目からなる心理的パフォーマンス尺度得点は実力発揮度と有意な関係がみられたことから,実力発揮度を測定していることが示唆された。2) 心理的パフォーマンスを予測するとき,競技状態不安独自に有意な説明力を持っていたが,これに不安対応策の実施数を加味すると,さらに説明力が高くなり12.2%を説明した。また,心理的パフォーマンスを心理的特性変数から予測するとき,競技特性不安の有効性は認められず,心理的競技能力のほうが高い説明力(24.9%)を持っていることが明らかにされた。3) 競技状態不安尺度得点はあがりの自己評価と有意な関係がみられ,いわゆる「あがり」の状態を測定していることが示唆された。また,その競技状態不安を予測するのに競技特性不安が極めて高い説明力(43.5%)を持っていることが分かった。しかし,認知的評価は期待に反してその有効性は確認されなかった。
著者
徳永 幹雄 川崎 晃一 上園 慶子 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.107-120, 1989-03-31

一般公募によって応募された軽症高血圧者11名を対象に, 講義と実技を組み合わせたテニス教室を3カ月間に26回(週2回, 1回90分)実施した。本教室の開始時と終了時に身体面, 医学面.心理面, 生活面から諸検査を実施し, その変化を分析した。得られたおもな結果は, 次のとおりである。1. 身体面では皮下脂肪厚(肩胛骨下部), 体脂肪率の減少と柔軟性の向上が認められた。その他筋力, 瞬発力, バランス, 全身持久性は顕著とはいえないが, 向上傾向がみられた。1日の平均歩行数から活動量をみると, 月別では1.20倍, 曜日別では本教室の実施日は他の曜日の1.41倍に増加し, 1日平均の活動量の増加が認められた。自転車エルゴメーターによる運動負荷時の血圧・脈拍はテニス教室の開始時と終了時で顕著な差は認められなかった。携帯型連続血圧測定装置で測定した運動中の血圧・脈拍の反応は, 高齢者では中年者に比べ血圧が上昇しやすく, また女性は男性より脈拍が早くなった。2. 医学面では血圧に対する作用は有意ではなかったが, 前報告と同様に, 腎機能・肝機能・糖・脂質代謝の指標となる血中変数は著明な改善を示した。また副腎皮質ホルモンであるコーチゾールも有意に増加した。3. 心理面では日常生活での不安, 血圧に対する不安, 競技に対する不安のいずれも減少し, 血圧の自己評価でも45.4%(5名)が下降したことを認め, 不安傾向が減少したものと思われる。健康度検査では身体的愁訴の減少が認められ, 全体的には精神的健康の評価が高くなった。スポーツ行動診断検査では肥満傾向の減少が認められたが, その他には顕著な差は認められなかった。4. 日常生活の変化の評価では便通, 睡眠, 食欲, 健康, 体力ヘの自信, からだの動きについて6〜7割がよくなったことを認めた。また, 精神的安定度, 生活の活気・楽しさでは8割がよくなったことを認め, 家族の励ましや協力のもとに教室への参加が継続されたことが認められた。5. テニス教室への評価では指導のしかた, グループ内の雰囲気や対話に好意的態度がみられ, 「楽しかった」と全員が回答した。ただ, 技術の進展と共に恥ずかしい思いや嫌な思いが若干みられ, 課題が残されるが, 全体的には好意的評価が得られた。