著者
杉本 モニカ
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.323-332, 2006

2005年の日本におけるドイツ年の一つのイベントであった日本全国作文コンテストSchreib doch mal Deutschに向けて,2005年の春学期に3年次生,4年次生を対象として作文の授業を行なった。今まで習った作文作成方法から離れて,辞書に頼りすぎる癖を直して,ドイツ語らしい文書作成を習うのがこの授業の目標であった。最後まで頑張れば,学生は良い点数だけではなく,コンテストの賞品であった往復チケットを含めるドイツへの語学旅行が当たる見込みもあって,受講者はいつになく高いモティベーションを持って,この授業を履修した。そういう特別な事情のせいか,クラスの全体的な雰囲気は「授業」,というより「ワークショップっぽい」ところがあって,学生にとっては受けやすかったのではないかと思われる。実際,授業終了の時に行ったアンケートで非常に満足度の高いことに気づいて,学生を実験台に使った割りに結果が良かったと思った。また極めて参加者の多かったコンテストの8位を占めた学生がこの授業受講者の一人であったことは,担当者として一番嬉しいことである。授業で実施したFree Writing, Mind Mapping, Clusteringなどは学生にとって新鮮な勉強方法であった。この小論はそれらの教育法・学習法の内容と実践,および学生の反応と成果について報告している。
著者
ペルノ ジャック
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.77-95, 2006

聖ニコラへの崇敬はもともと11世紀に始まり,13世紀まで続いた。宗教改革が聖者崇拝に致命的な打撃を与えたのである。その結果,聖ニコラはサンタクロースに近い民間伝承の人物となった。だが,彼の祝祭は祭りとしての影響力を大いに保っている。真の崇拝は,信仰と無信仰が混じりあう楽しい伝統行事,冬至の娯楽に取って代わった。そして彼の祝祭は今日,冬の謝肉祭同様,過度で消費中心の宴を引き起こしている。それは食べ物に満ち溢れ,立派に飾られた家庭的な宴であるが,無駄で,消費を招く宴でもある。これが本論の主旨である。
著者
三木 一郎
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.67-75, 2006

中南米諸国と本国のスペイン語との違いは,用法,語彙,発音などをめぐって,さまざまな議論が展開されているが,本稿ではカリブ海諸国のスペイン語を例に考察を試みる。特に主語の省略と明示の関係,主語の位置,前置詞の欠落,関係詞の特殊用法,および,名詞句においては「数」の一致,「性」の意味的変化,動詞句においては時制と迂言法にスポットをあて,筆者が在外研修中に収集した資料をもとに近隣諸国と比較しながら検証することを主要関心とする。
著者
中山 智子
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.209-219, 2007

十七,十八世紀のフランスでは,古代ギリシャ以来のアマゾネスの神話が再び脚光を浴び,しばしば文学作品やスペクタクルのテーマとなった。「女性の衣服の下に男性の魂を持った」と称される「戦う女」の原型であるアマゾネスの例に倣えば,女性による異性装(男装)は「男性の衣服の下に女性の魂を持つ」と喩えることができるだろう。1727年にコメディ=フランセーズで初演されたMarc-Antoine Legrand(1673-1728)の喜劇Les Amazones Modernes(『現代のアマゾネスたち』)は,この二つのテーマを一つの作品に取り入れた演劇史的にも稀有な戯曲である。Legrandは何を狙い,作品の中に異性装を取り入れたのか。本論では,Legrandの劇作の手法を通して,作者の演劇的戦略を分析していく。当時のコメディ=フランセーズは,ライバルであるイタリア人劇団と縁日芝居の劇団との競争にさらされ,観客の人気を集める作品を必要としていた。Legrandは,すでにイタリア人劇団の作風に倣った作品で成功を収めていた。Les Amazones Modernesには,もう一方の競争相手である縁日芝居のオペラ・コミックであるLesage及びD`Orneval作のL'Ile des Amazones(『アマゾネスの島』)の影響が強く見られる。Legrandはアマゾネスと架空の島という舞台設定を真似たのみならず,L'Ile des Amazonesには取り入れられなかったが他の縁日芝居で多く用いられた異性装を使い,芝居の喜劇性をより強化している。一方で,Les Amazones Modernesに色濃く見られる女性の権利主張は,イタリア人劇団のレパートリーの伝統でもあった。Legrandはオペラ・コミックの手法であるヴォードヴィルの歌詞にフェミニスト的主張を盛り込み,娯楽性とテーマ性の両立を可能にしている。
著者
新田 増
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.139-154, 2007

旧ナバラ王国〈スペイン北部〉の中東部一地域の要求に応じ,国王が一連の特権の授与を認める1465年10月5日付けのナバラ王国国王勅令文書が,現在,ナバラ王立総合古文書館に保管されている。本稿は羊皮紙手書きの同勅令の古文書版を作成し,その使用言語であるナバラ固有のロマンス語と同方言のカステーリャ語化の進行状況を考察する。全4部から構成されている:第1部は古文書版の作成と書記法の解明,第2,第3部は言語研究,音声・音韻論及び形態・統語論,第4部は語彙研究である。今回発行される第3部は,形態・統語論にあたるが,その1として名詞・形容詞について究明する。
著者
新田 増
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.37-65, 2006

ナバラ王国(スペイン北部)の中東部一地域の要求に応じ,国王が一連の特権の授与を認める1465年10月5日付けのナバラ王国国王勅令文書がナバラ王立総合古文書館に保管されている。本稿は同羊皮紙手書きの同勅令の古文書版を作成し,その使用言語であるナバラ固有のロマンス語と同方言のカスティーリャ語化の進行状態を考察する。全4部から構成されている。第1部は古文書版の作成と書記法の解明,第2,第3部は言語研究,音声・音韻論及び形態・統語論,第4部は語彙研究である。
著者
Neuberger Bernhard 乙政 潤
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.379-401, 2007

本稿は三つの先行する紹介, Ein kleiner Fuhrer durch die japanische Literatur der Neuzeit (1)-(2) (Brucke 1 [1998年3月刊] -Brucke 2 [1999年3月刊]), Kommentierter Uberblick zu den Werken der japanischen Literatur der Neuzeit (1)-(7)(『研究論叢』 55[2000年9月刊]-『研究論叢』61 [2003年9月刊]),およびErganzungen zum kommentierter Uberblick zu den Werken der japanischen Literatur der Neuzeit (1)-(6) (『研究論叢』62 [2004年3月刊]-『研究論叢』67 [2006年7月刊],にさらに補足を加えようとするものである。筆者たちは,本来,上記3篇の連載を通じて,原則として,明治から昭和の敗戦までのあいだの各時期の現代日本文学を代表すると見なし得る作家の主たる作品を輝介することを目指した。戦後に発表された作品のなかにもすでに古典的名声を博している作品があるにもかかわらず,それらはほとんど採り上げなかった。それらは,戦後60年の日本文学作品が専門家によって総括され整理されたときはじめて「現代日本文学紹介」の対象となりうると考えたからである。そして,続編の(6)でもって所期の目的をひとまず達したと考えたのであったが,擱筆後ふりかえり通読してみて,上記の紹介になおも洩れている作品があるのを見い出した。本稿はこれらの作品の紹介を目指して,今号を含めて前後3回にわたって筆を進めるつもりである。今号では,まずKommentierter Uberblick (1)ですでに紹介した国木田独歩に『運命論者』,『酒中日記』,『竹の木戸』,『窮死』の4篇を,田山花袋に『田舎教師』を,島崎藤村に自伝的作品である『桜の実の熟する頃』,『春』,『家』,『新生』の4篇と短編の『旧主人』,『ある女の生涯』,『三人』を,劇作家である岡本綺堂に戯曲の『修善寺物語』と『小来楢の長兵衛』の2篇を加えた。またKommentierter Uberblick (2)で取り上げた有島武郎には長編『ある女』および童話『一房の葡萄』杏,志賀直哉に短編の『小僧の神様』,『赤西蠣太』,『清兵衛と瓢箪』,『城の崎にて』を加えた。これまでの紹介では原題や作者名を漢字で記していたが,すべてローマ字表記に改めた。また,作品の題もドイツ語訳で示し,原題はあとの( )内に記した。さらにそのあとにジャンルと発表年次を記した。原題がドイツ語訳からは想像しにくいと思われる場合に限って,原題のあとの[ ]内にドイツ語の直訳を記した。なお,作品単位で紹介する形式に統一することとし,紹介順は作品の発表された年次の順(同年の場合は月順)によることにした。そのため,同一の作者の作品が必ずしも連続して紹介されない。作品の梗概紹介のあとに,作品についての短いコメントを紹介した。コメントの出典は末尾に注としてまとめた。スペースをとることを恐れ,当該作品のドイツ語訳が存在するかどうかを紹介する記事は割愛した。ドイツ語訳が存在するか否かは, 1994年までに刊行された翻訳についてはStalph, Jurgen / Giesela Ogasa / Drote Puls: Moderne japanische Literatur in deutscher Ubersetzung. Eine Bibliographic der Jahre 1868-19941によって調べるのが便利である。
著者
松田 毅一
出版者
京都外国語大学
雑誌
研究論叢 (ISSN:03899152)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.211-230, 1991-09-30