著者
岡本 誠 瀬能 宏 山崎 哲也
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.1-6, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
1

本研究は、ヤセムツ科の1 種、イブシギンヤセムツEpigonus fragilis (Jordan & Jordan, 1922) の相模湾(定置網)から初めて採集された2 個体について、その記録と形態について報告した。これまで本種の日本における分布記録については、南鳥島北東方海域からしか知られておらず、本報告はそれに次ぐ記録となり、かつ沿岸域に出現した希少な知見となる。
著者
ブレクモア ロバート J
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.55-60, 2019 (Released:2019-09-01)

ヤマトミミズ Amynthas japonicus (Horst, 1883) は、1820 年代収集されたシーボルトのコレクションに基づき記載された日本在来のミミズ3 種のうちの1 種である。ヤマトミミズ以外の2種は比較的よく知られていて、現在の分布もよく判っているのに対して、ヤマトミミズは初出以降、全く記録されていない。タイプ産地と考えられる長崎で採集を試みたが、ヤマトミミズを採集することはできなかった。これに加えて既存の調査結果を精査した結果、ヤマトミミズはほぼ200 年もの間にわたって記録がなく、非常に珍しい種類であるかあるいはおそらく絶滅してしまったということが示唆された。現在、ヤマトミミズはIUCN レッドリストでは「DD データ不足」(“絶滅した可能性あり”)と位置づけられているが、これは「EX 絶滅」と再位置づけするべきと考えられる。本種は、記録に基づけば、日本からの最初のミミズの絶滅種であり、無脊椎動物としても2 番目の絶滅種と考えられる。本稿では、最新の情報に基づく現在の日本のミミズの分類のチェックリストを付記した。
著者
渡辺 恭平
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.29-66, 2020 (Released:2020-03-31)

日本産トガリヒメバチ亜科の12 属について、分類学的および動物地理学的記録を報告した。12 新種、ヤマトクロトガリヒメバチAritranis kuro sp. nov.、アナアキトガリヒメバチBuathra nipponica sp. nov.、ダイダイトガリヒメバチCryptus daidaigaster sp. nov.、オオツヤトガリヒメバチGlabridorsum japonicum sp. nov.、アマノトガリヒメバチGotra elegans sp. nov.、アショロトガリヒメバチHoplocryptus ashoroensis sp. nov.、キタトガリヒメバチH. ezoensis sp. nov.、セマルトガリヒメバチH. intermedius sp. nov.、ホクリクトガリヒメバチH. japonicus sp. nov.、ハネモントガリヒメバチH. maculatus sp. nov.、イズトガリヒメバチH. toshimensis sp. nov.、ヒゲジロマルムネトガリヒメバチTrychosis breviterebratus sp. nov. を記載し、学名と標準和名を命名した。ユウヤケトガリヒメバチHylophasma luica Sheng, Li & Wang, 2019 とツシマトガリヒメバチPicardiella melanoleuca (Gravenhorst, 1829) を日本から新たに記録した。前者は属レベルでも日本新産である。チャハマキトガリヒメバチIschnus homonae (Sonan, 1930) の属を記載時の所属であるGambrus に戻し、未知であったオスも含めて再記載を行い、本州と伊豆大島、八丈島、対馬から新たに記録した。九州からのみ知られていたミノウスバトガリヒメバチAgrothereutes minousubae Nakanishi, 1965 を本州と四国から新たに記録した。キスジトガリヒメバチCaenocryptoides convergens Momoi, 1966 のオスを新たに記載した。国内では北海道からのみ知られていたダイアナトガリヒメバチCr. dianae を本州から新たに記録した。ムネアカトガリヒメバチHo. pini の色彩変異を整理し、未知であったオスと併せて再記載を行い、三宅島、四国、九州および屋久島から新たに記録した。従来奄美大島で得られたホロタイプしか知られていなかったスミヨウトガリヒメバチHoplocryptus sumiyona Uchida, 1956 の2 個体目となる個体を徳之島から発見して報告した。Caenocryptoides、Cryptus、Gambrus、Gotra、Hoplocryptus、Picardiella、Trychosis の7 属について日本産種への検索表を提供した。
著者
澤井 悦郎 瀬能 宏 竹嶋 徹夫
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.37-42, 2019 (Released:2019-09-01)

世界最重量硬骨魚であるウシマンボウは、マンボウと混同されてきた長い歴史を持つ。神奈川県立生命の星・地球博物館で保管されていたマンボウ属魚類の標本の中にもウシマンボウが1 標本混在していたことが新たに判明した。本標本は1977 年10 月28 日に神奈川県の真鶴町沖(35˚10’N, 139˚08’E)の定置網によって漁獲され、江の島水族館を経由して、現在は剥製標本として本館で展示されている。本標本はウシマンボウにおける国内5 例目の全身標本であり、神奈川県2 例目の記録でもある。本標本の同定を困難にしていた要因は「剥製化による変形」と「舵鰭の形態異常」と示唆された。