著者
石原 龍雄 松本 涼子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川自然誌資料 (ISSN:03889009)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.39, pp.93-100, 2018-02-28 (Released:2021-12-03)

The endemic species Rhacophorus arboreus (Anura: Rhacophoridae) is widely distributed through main island of Japan, but it has always been considered as rare in Kanagawa Prefecture. The first records of this species of Kanagawa Prefecture, in a limited area, date from 1983. This study is the first report of Rhacophorus arboreus from Hakonetown, in the western part of the Prefecture. In Hakone-town this species was first recognized from the Kojiri area, Shirayuri-dai-enchi, near Lake Ashinoko in 2005, and it has expanded its distribution toward the Northwest, Sengoku-hara, from 2009 onwards. There are three possible centres of origin for the Hakone-town population: Nagao, Gotenba-city, Shizuoka Prefecture; Mt. Kintoki, Minamiashigara-city; and Yugawara-town. Of these three, Nagao, Gotenba-city is closest to Hakone-town and the species may have extended its range from Nagao to the Kojiri area of Hakone-town.
著者
櫻井 博 苅部 治紀 加賀 玲子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.47, pp.67-71, 2018-02-28 (Released:2021-04-30)

近年国内に定着した侵略的外来種ムネアカハラビロカマキリHierodula sp. の導入経路は、これまで明らかにされていなかったが、筆者らは、今回本種のものと考えられる卵鞘を、市販の竹箒から確認し、それが正常に孵化すること、その形態・色彩が既知の本種幼虫のものと合致することを明らかにした。竹帚が導入経路の主要なものであれば、本種が通常の外来種の拡散パターンと異なり、同時多発的に各所で確認されたことの合理的な説明ができる。
著者
山田 和彦 工藤 孝浩 瀬能 宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川自然誌資料 (ISSN:03889009)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.35, pp.41-44, 2014 (Released:2022-04-17)

The ichthyofauna of Sagami Bay was surveyed on the basis of landed fishes on Misaki Fish Market. Although 593 fish species had been recorded since 1986, we newly added seven species in this report. Among the above seven species, Minous pusillus of them is new to the bay.
著者
和田 英敏 瀬能 宏 森下 修
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.52, pp.59-71, 2023-03-28 (Released:2023-03-28)

これまで紅海とアラビア海を含むインド洋の固有種と考えられていたベラ科タキベラ属魚類Bodianus opercularis (Guichenot, 1847) に同定される2標本(標準体長20.2–44.5 mm)が小笠原諸島から得られた。これらは本種の標本に基づく太平洋における初記録となるため、詳細な記載とともにここに報告する。本研究ではこのうちの1標本(KPM-NI 7936、標準体長45.5 mm)に基づき、本種に対して新標準和名「アカシマタキベラ」を提唱する。 本研究ではアカシマタキベラと、本種と異所的に生息する近縁種と考えられていた西太平洋固有のタキベラ属魚類であるBodianus neopercularis Gomon, 2006の分布記録を再検討した。その結果、アカシマタキベラはインド-西太平洋の広域に分布し、インド洋においては紅海およびアラビア海、ケニア、コモロ諸島、マダガスカル、マスカレン諸島西部、クリスマス島、西太平洋においては日本とマーシャル諸島に分布することが明らかになった。その一方でB. neopercularisの正確な分布記録はマーシャル諸島に限られることが明らかとなった。
著者
波戸岡 清峰 瀬能 宏 矢野 幾維 鈴木 寿之
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.47-53, 2021 (Released:2021-03-30)

八重山諸島西表島のユチン川の淡水域から Gymnothorax polyuranodon (Bleeker, 1853) と同定される本邦初記録のウツボ科魚類の一種が採集され、コクハンカワウツボという新標準和名を付し、標本の詳細な記載を行った。今回の出現は偶発的なものと思われるが、今後、保全生物学的観点から本種の動態を注視していく必要がある。
著者
乾 直人 山川 宇宙 丸山 智朗 加藤 柊也 酒井 卓 佐藤 武宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.43-54, 2019 (Released:2019-09-01)

相模湾とその周辺地域において、9 種の分布が南偏するカニ類(ハシリイワガニモドキ、ヒメヤマトオサガニ、チゴイワガニ、サメハダヒメガザミ、アミメノコギリガザミおよびノコギリガザミ属の1 種、ヒメヒライソモドキ、タイワンヒライソモドキ、トゲアシヒライソガニモドキ、オオヒライソガニ)および2 種の稀少カニ類(ムツハアリアケガニ、トリウミアカイソモドキ)が採集された。いずれの種も既往研究による本地域での記録はごく少ない。採集されたカニ類のうち、一部の南方種については越冬状況や抱卵状況から本地域における定着や分布拡大が示唆され、地球温暖化による水温上昇の影響がこうした定着や分布拡大に寄与している可能性がある。
著者
川島 逸郎 渡辺 恭平
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.67-83, 2020 (Released:2020-03-31)

名古屋市博物館所蔵の「吉田翁虫譜(小塩五郎写本・四巻仕立て)」(原本は、尾張藩士で「嘗百社」の幹部でもあった吉田高憲(平九郎, 号雀巣庵, 1805–1869)の作)のうち、第一巻に含まれる「蜂(はち)譜」(二十二丁)について、現代の視点から詳細な解析および同定を行った。その結果、概して写実的に描かれてはいるものの、全形図133 個体(部分図や巣、巣材、獲物などを除く)のうち、種レベルでの同定が可能なものは33 個体30 種であった。各種の生活や習性については詳しい記述がなされている一方、その配列や呼称などには規則性はみられず、西洋での系統分類のような視点は存在していない点が窺えた。描かれた種構成からは、当時の尾張から三河地方における、平野から丘陵地にかけてのハチ相や生息環境(里山)の一端も読み取れる。
著者
矢頭 卓児 手良村 知功 瀬能 宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.1-7, 2022 (Released:2022-03-29)

ホウボウ科のミナミソコホウボウ(新称)Bovitrigla acanthomoplate Fowler, 1938 の1 標本が遠州灘から得られた。この種は日本初記録種であり、遠州灘における出現はこの種の北限記録となる。南シナ海産の10 個体と比較するとともに本種を詳細に再記載した。
著者
工藤 孝浩
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川自然誌資料 (ISSN:03889009)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.34, pp.41-42, 2013 (Released:2022-04-17)

A specimen of Homarus americanus H. Milne Edwards, 1837 was collected by beam trawl net at bottom off Yokohama, Tokyo Bay. This is the first record on the bases of specimen from the bay.
著者
鈴木 聡 山本 冬馬 小山 夏晴海 広谷 浩子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.101-105, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

神奈川県周辺におけるタヌキ Nyctereutes procyonoides の体サイズの変異に疥癬が与える影響を調査した。体重には季節変異があり、冬は大きく、夏は小さい傾向が見られた。しかし、この傾向は疥癬症に罹患した個体には見られなかった。夏季には、疥癬非罹患個体の中にも罹患個体より体重の小さい個体が見られたことから、疥癬による削痩が直接的な死因になることは少ないと考えられる。一方で、冬季には疥癬罹患個体と非罹患個体の体重に差が見られた。このことから、罹患個体が冬の寒さに耐えられるだけの十分な脂肪を蓄積できていないことが、罹患個体の直接の死因と推測される。サイズを示す計測項目間の相関検定においては、全ての組み合わせで有意な相関がみられたが、いずれも相関性は弱かった。このような相関のパターンは、疥癬によってもたらされる形態的変化には影響されないと考えられた。サイズを示す計測項目間で相関が小さいことは、タヌキの形態的特徴の一つであると考えられる。
著者
日置 尚之 来栖 可奈 島 瑞帆 増田 絢 松本 淳
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川自然誌資料 (ISSN:03889009)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.40, pp.1-4, 2019 (Released:2019-09-01)

Myxobolus nagaraensis (Myxozoa: Myxosporea) was first reported in 2007 in freshwater gobies (Rhinogobius sp.) from Nagara River in the Gifu Prefecture, Japan. Although freshwater gobies are common fish species found in rivers of the Kanagawa Prefecture, infection of these fishes with M. nagaraensis has not been reported. Therefore, this study surveyed for M. nagaraensis infection in freshwater gobies from Sakai River, which runs through the Kanagawa Prefecture. Freshwater gobies were captured using hand nets at different locations along the Sakai River in November 2017 and February 2018. Diseased fish displaying enlarged abdomens and nodules in the caudal peduncle were caught from 2 locations which were 20 km apart. Cysts excised from these diseased fish contained parasitic spores resembling the morphology of M. nagaraensis. DNA was extracted from the cysts and the small subunit ribosomal RNA gene was amplified (SSU rDNA). Based on homology search, the amplified partial product was 99.6% identical with M. nagaraensis SSU rDNA (Accession no. AB274267). This is the first report of M. nagaraensis infection in freshwater gobies from a river in Kanagawa. Since prevalence of the parasite and its pathogenicity to the goby populations are still unclear, continued examination of other rivers in the prefecture is crucial.