著者
鈴木 寿之 大迫 尚晴 山﨑 曜 木村 清志 渋川 浩一
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.9-34, 2022 (Released:2022-03-29)

琉球列島八重山諸島の河川渓流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類の2 新亜種(Rhinogobius aonumai aonumai とRhinogobius aonumai ishigakiensis)をふくむ1 新種 Rhinogobius aonumai (新標準和名パイヌキバラヨシノボリ)を記載した。Rhinogobius aonumai aonumai (新標準和名イリオモテパイヌキバラヨシノボリ)は西表島のみに分布し、背鰭前方鱗数9–15、縦列鱗数32–37、脊椎骨数11+15–17=26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第10 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に3 または4 分岐(ふつう4 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色の横点列かジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。Rhinogobius aonumai ishigakiensis (新標準和名イシガキパイヌキバラヨシノボリ)は石垣島のみに分布し、背鰭前方鱗数10–14、縦列鱗数33–38、脊椎骨数10+16–18==26–28(モードは27)、第2 背鰭前端の2 個の坦鰭骨は第9 脊椎骨の神経棘をまたぐ、腹鰭第5 軟条は最初に2 または3 分岐(ふつう2 分岐)する、頬の孔器列は縦列する、生鮮時の体の地色は黄色系である、第1 背鰭に暗色斑はない、尾鰭に暗色のジグザグ横線が並ぶ、雌の尾鰭基底に垂直に並ぶ1 対の暗色の短い棒状斑があるなどの特徴で同属の他種階級タクソン(種及び亜種)から区別できる。
著者
鈴木 寿之 大迫 尚晴 木村 清志 渋川 浩一
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.7-28, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

琉球列島の河川急流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類2 新種、Rhinogobius yaima と R. yonezawai を記載した。Rhinogobius yaima(ヤイマヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数40–43、脊椎骨数26、第1 背鰭棘数6、頭部はよく縦偏し、体と尾柄は細長い、雄の第1 背鰭低く後端は倒しても第2 背鰭起部に達しない、腹鰭第5 軟条は普通最初に5 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺は無鱗である、生時もしくは生鮮時に側頭部から第2 背鰭起部にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色の4 横点列がある、雌の尾鰭基底に垂直に並んだ1 対の長方形または円形の黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。Rhinogobius yonezawai(ケンムンヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数35–39、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は高く烏帽子形、その第2・3 棘が最長で糸状に伸長しないものの倒すと第2 背鰭第1 から第4 軟条基部に達する、腹鰭第5 軟条は最初に4 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺もしくは腹部腹中線前半周辺は無鱗である、胸鰭基底に黒色楕円形斑がある、生時もしくは生鮮時に側頭部から第1 背鰭下方にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色または赤色の6–8 垂線がある、雌の尾鰭基底に横Y 字形の1 黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。
著者
櫻井 博 苅部 治紀 加賀 玲子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.47, pp.67-71, 2018-02-28 (Released:2021-04-30)

近年国内に定着した侵略的外来種ムネアカハラビロカマキリHierodula sp. の導入経路は、これまで明らかにされていなかったが、筆者らは、今回本種のものと考えられる卵鞘を、市販の竹箒から確認し、それが正常に孵化すること、その形態・色彩が既知の本種幼虫のものと合致することを明らかにした。竹帚が導入経路の主要なものであれば、本種が通常の外来種の拡散パターンと異なり、同時多発的に各所で確認されたことの合理的な説明ができる。
著者
菅原 弘貴 藤谷 武史 瀬口 翔太 澤畠 拓夫 永野 昌博
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.47-59, 2022 (Released:2022-03-29)

サンショウウオ属の1 新種を、日本の愛知県西部から記載した。分子遺伝学的および形態学的解析の結果、ヤマトサンショウウオは愛知グループと近畿グループの二つに分けられることが示唆された。このため、ヤマトサンショウウオの愛知グループを、新種Hynobius owariensis sp. nov.(和名:オワリサンショウウオ)として記載した。形態比較の結果、調査した雄個体において、ヤマトサンショウウオが尾の上下縁に明瞭かつ鮮明な黄色線をもつのに対して、本新種ではこの形質が確認できなかった。さらに、雄個体において、体側に沿って前肢と後肢を伸ばした時、本新種は多くの個体が肋皺1 個分よりも離れるが、ヤマトサンショウウオでは多くの個体が肋皺1 個分以内(個体によっては重複する)に収まっていた。その他、両種間には有意に異なる形質が複数存在していることに加えて、判別分析の結果においても、雌雄共に形態的に区別可能であることが示唆された。本新種は愛知県の西部(知多半島から名古屋市周辺部)に固有であるが、既に絶滅したと考えられる集団も複数存在し、現在も開発や乾田化によって、絶滅の危機に瀕している。
著者
和田 英敏 瀬能 宏 森下 修
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.52, pp.59-71, 2023-03-28 (Released:2023-03-28)

これまで紅海とアラビア海を含むインド洋の固有種と考えられていたベラ科タキベラ属魚類Bodianus opercularis (Guichenot, 1847) に同定される2標本(標準体長20.2–44.5 mm)が小笠原諸島から得られた。これらは本種の標本に基づく太平洋における初記録となるため、詳細な記載とともにここに報告する。本研究ではこのうちの1標本(KPM-NI 7936、標準体長45.5 mm)に基づき、本種に対して新標準和名「アカシマタキベラ」を提唱する。 本研究ではアカシマタキベラと、本種と異所的に生息する近縁種と考えられていた西太平洋固有のタキベラ属魚類であるBodianus neopercularis Gomon, 2006の分布記録を再検討した。その結果、アカシマタキベラはインド-西太平洋の広域に分布し、インド洋においては紅海およびアラビア海、ケニア、コモロ諸島、マダガスカル、マスカレン諸島西部、クリスマス島、西太平洋においては日本とマーシャル諸島に分布することが明らかになった。その一方でB. neopercularisの正確な分布記録はマーシャル諸島に限られることが明らかとなった。
著者
波戸岡 清峰 瀬能 宏 矢野 幾維 鈴木 寿之
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.47-53, 2021 (Released:2021-03-30)

八重山諸島西表島のユチン川の淡水域から Gymnothorax polyuranodon (Bleeker, 1853) と同定される本邦初記録のウツボ科魚類の一種が採集され、コクハンカワウツボという新標準和名を付し、標本の詳細な記載を行った。今回の出現は偶発的なものと思われるが、今後、保全生物学的観点から本種の動態を注視していく必要がある。
著者
乾 直人 山川 宇宙 丸山 智朗 加藤 柊也 酒井 卓 佐藤 武宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.43-54, 2019 (Released:2019-09-01)

相模湾とその周辺地域において、9 種の分布が南偏するカニ類(ハシリイワガニモドキ、ヒメヤマトオサガニ、チゴイワガニ、サメハダヒメガザミ、アミメノコギリガザミおよびノコギリガザミ属の1 種、ヒメヒライソモドキ、タイワンヒライソモドキ、トゲアシヒライソガニモドキ、オオヒライソガニ)および2 種の稀少カニ類(ムツハアリアケガニ、トリウミアカイソモドキ)が採集された。いずれの種も既往研究による本地域での記録はごく少ない。採集されたカニ類のうち、一部の南方種については越冬状況や抱卵状況から本地域における定着や分布拡大が示唆され、地球温暖化による水温上昇の影響がこうした定着や分布拡大に寄与している可能性がある。
著者
川島 逸郎 渡辺 恭平
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.67-83, 2020 (Released:2020-03-31)

名古屋市博物館所蔵の「吉田翁虫譜(小塩五郎写本・四巻仕立て)」(原本は、尾張藩士で「嘗百社」の幹部でもあった吉田高憲(平九郎, 号雀巣庵, 1805–1869)の作)のうち、第一巻に含まれる「蜂(はち)譜」(二十二丁)について、現代の視点から詳細な解析および同定を行った。その結果、概して写実的に描かれてはいるものの、全形図133 個体(部分図や巣、巣材、獲物などを除く)のうち、種レベルでの同定が可能なものは33 個体30 種であった。各種の生活や習性については詳しい記述がなされている一方、その配列や呼称などには規則性はみられず、西洋での系統分類のような視点は存在していない点が窺えた。描かれた種構成からは、当時の尾張から三河地方における、平野から丘陵地にかけてのハチ相や生息環境(里山)の一端も読み取れる。
著者
矢頭 卓児 手良村 知功 瀬能 宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.1-7, 2022 (Released:2022-03-29)

ホウボウ科のミナミソコホウボウ(新称)Bovitrigla acanthomoplate Fowler, 1938 の1 標本が遠州灘から得られた。この種は日本初記録種であり、遠州灘における出現はこの種の北限記録となる。南シナ海産の10 個体と比較するとともに本種を詳細に再記載した。
著者
鈴木 聡 山本 冬馬 小山 夏晴海 広谷 浩子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.49, pp.101-105, 2020 (Released:2020-03-31)
被引用文献数
2

神奈川県周辺におけるタヌキ Nyctereutes procyonoides の体サイズの変異に疥癬が与える影響を調査した。体重には季節変異があり、冬は大きく、夏は小さい傾向が見られた。しかし、この傾向は疥癬症に罹患した個体には見られなかった。夏季には、疥癬非罹患個体の中にも罹患個体より体重の小さい個体が見られたことから、疥癬による削痩が直接的な死因になることは少ないと考えられる。一方で、冬季には疥癬罹患個体と非罹患個体の体重に差が見られた。このことから、罹患個体が冬の寒さに耐えられるだけの十分な脂肪を蓄積できていないことが、罹患個体の直接の死因と推測される。サイズを示す計測項目間の相関検定においては、全ての組み合わせで有意な相関がみられたが、いずれも相関性は弱かった。このような相関のパターンは、疥癬によってもたらされる形態的変化には影響されないと考えられた。サイズを示す計測項目間で相関が小さいことは、タヌキの形態的特徴の一つであると考えられる。
著者
渡辺 恭平
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.52, pp.7-44, 2023-03-28 (Released:2023-03-28)

日本産のハエヒメバチ亜科Orthocentrinaeの9 属22 種について、分類学的および動物地理学的研究をおこなった。Apoclima Förster, 1869と亜属Dicolus Förster, 1869をそれぞれ日本新産属および亜属として記録した。4 新種、エゾチビハエヒメバチApoclima brevicauda sp. nov.、オナガチビハエヒメバチApo. longicauda sp. nov.、ニッポンヒラタハエヒメバチHemiphanes japonicum sp. nov.、ムナコブオナガハエヒメバチProclitus tuberculatus sp. nov.を記載し、学名と標準和名を命名した。8日本新産種、バイカルハエヒメバチAniseres baikalensis Humala, 2007、クボミヒラタハエヒメバチH. gravator Förster, 1871、オオクシアシナガハエヒメバチMegastylus (Dicolus) excubitor (Förster, 1871)、フタヒダアシナガハエヒメバチM. (Dic.) impressor Schiødte, 1838、スネボソアシナガハエヒメバチM. (Dic.) pectoralis (Förster, 1871)、キョクトウアシナガハエヒメバチM. (Megastylus) kuslitzkii Humala, 2007、モトグロオナガハエヒメバチProclitus ganicus Sheng & Sun, 2013、ミヤマオナガハエヒメバチPr. praetor (Haliday, 1838)を記録し、標準和名を命名した。これらに加えて、既知の10種、タイリクツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Aperileptus albipalpus (Gravenhorst, 1829)、ムネヒダツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Ape. vanus Förster, 1871、クナシリハエヒメバチ(標準和名新称)Eusterinx (Divinatrix) kurilensis Humala, 2004、ジュズヒゲハエヒメバチE. (Holomeristus) tenuicincta (Förster, 1871)、トゲスジハエヒメバチ(標準和名新称)E. (Ischyracis) bispinosa (Strobl, 1901)、ムネツヤヒラタハエヒメバチ(標準和名新称)H. erratum Humala, 2007、モモボソアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) cruentator Schiødte, 1838、モモブトアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) orbitator Schiødte, 1838、ハラボソハエヒメバチNeurateles asiaticus Watanabe, 2016、ツヤハラコハエヒメバチ(標準和名新称)Pantisarthrus lubricus (Förster, 1871) についても新分布記録を報告した。旧北区東部産Apoclimaと全世界産のHemiphanesの種への検索表を提供した。
著者
ブレイクモア ロバート J. Shawn MILLER Shu Yong LIM
出版者
Kanagawa Prefectural Museum of Natural History (Kanagawa Prefectural Museum)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.51, pp.95-104, 2022 (Released:2022-03-29)

形態学的特徴およびmtDNA のCOI バーコーディングに基づき、沖縄県久米島産のアズマフトミミズ属の新種と、滋賀県琵琶湖産のフクロフトミミズ属の新種を記載した。また、2016 年に採集された標本に基づき、アメリカ原産のフクロナシツリミミズ Bimastos parvus (Eisen, 1874) と東南アジア原産のフィリピンミミズ Pithemera bicincta (Perrier, 1875) を沖縄県からの初記録として報告した。
著者
苅部 治紀 加賀 玲子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.137-141, 2021 (Released:2021-03-30)

キバネツノトンボは、良好な草地に生息するアミメカゲロウ目の大型の昆虫で、各地で激減している種である。神奈川県内では過去に 12 地点から記録があるが、近年の記録がごくわずかしかないことから、神奈川県レッドデータ生物調査報告書 2006 では絶滅危惧I類に選定されている。筆者らは 2017 年に本種を確認以降、県内各所で本種の現状について集中的に調査を行ってきた。その結果、県北部の相模原市緑区旧藤野町地域を中心に 20 か所で確認することができた。一方、類似の環境があっても確認できない地域がほとんどであり、その分布は局限されていた。本県における本種の現存環境は人為的な草刈りが継続されている草地で、その環境は多様であるが、産地の安定性は脆弱で、産地数は増えたものの、分布の局所性とともに、絶滅危惧度は依然高いものと判断された。
著者
泉 賢太郎 佐藤 武宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.46, pp.1-5, 2017-02-28 (Released:2021-04-30)

東京都狛江市に分布する上総層群飯室層から新たにエンコウガニ化石の追加標本を発見・採取したので、詳細な記載を行った。追加標本は、保存状態の良好な甲と胸脚の一部から構成される。甲には、眼窩、頬部、顎脚、胸部腹甲、及び腹節の一部が保存されている。また胸脚は、底節(もしくは基節)、座節、及び前節が保存されている。飯室層からエンコウガニ化石が産出したことによって、この地層が浅海環境で堆積したという従来の解釈がさらに裏付けられた。
著者
波戸岡 清峰 瀬能 宏 矢野 幾維 鈴木 寿之
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.47-53, 2021

八重山諸島西表島のユチン川の淡水域から <i>Gymnothorax polyuranodon</i> (Bleeker, 1853) と同定される本邦初記録のウツボ科魚類の一種が採集され、コクハンカワウツボという新標準和名を付し、標本の詳細な記載を行った。今回の出現は偶発的なものと思われるが、今後、保全生物学的観点から本種の動態を注視していく必要がある。
著者
渡辺 恭平
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.50, pp.55-136, 2021

日本産のチビトガリヒメバチ亜科の 28 属 61 種について、分類学的および動物地理学的研究をおこなった。7 日本新産属、<i>Diaglyptidea</i> Viereck, 1913、<i>Micraris</i> Townes, 1970、<i>Surculus</i> Townes, 1970、<i>Bentyra</i> Cameron, 1905、<i>Isadelphus</i> Förster, 1869、<i>Megacara</i> Townes, 1970、<i>Tropistes</i> Gravenhorst, 1829 を記録した。これらのうち、<i>Micraris</i> と <i>Surculus</i> は旧北区初記録でもある。17 新種、タテスジマメトガリヒメバチ <i>Acrolyta japonica</i> <b>sp. nov.</b>、リュウキュウマメトガリヒメバチ <i>Micraris ryukyuensis</i> <b>sp. nov.</b>、ホソミマメトガ リヒメバチ <i>Surculus japonicus</i> <b>sp. nov.</b>、キマダラマメトガリヒメバチ <i>Bentyra ryukyuana</i> <b>sp. nov.</b>、イシガキスジトガリヒメバチ <i>Paraphylax elegans</i> <b>sp. nov.</b>、イズミノガトガリヒメバチ <i>Pa. politus</i> <b>sp. nov.</b>、ヨコスジトガリヒメバチ <i>Pa. transstriatus</i> <b>sp. nov.</b>、ヤクシマスジトガリヒメバチ <i>Pa. yakushimensis</i> <b>sp. nov.</b>、オキナワスジトガリヒメバチ <i>Pa. yambarensis</i> <b>sp. nov.</b>、ニホンマメトガリヒメバチ <i>Hemiteles japonicus</i> <b>sp. nov.</b>、スミイロマメトガリヒメバチ <i>H. kuro</i> <b>sp. nov.</b>、ハネモンマメトガリヒメバチ <i>H. maculipterus</i> <b>sp. nov.</b>、ハラアカマメトガリヒメバチ <i>H. yamatonis</i> <b>sp. nov.</b>、オマガリチビトガリヒメバチ <i>Isadelphus nigrus</i> <b>sp. nov.</b>、サメハダチビトガリヒメバチ <i>Lochetica japonica</i> <b>sp. nov.</b>、タチチビトガリヒメバチ <i>Tropistes shimizui</i> <b>sp. nov.</b>、ウチダチビトガリヒメバチ <i>Uchidella toichii</i> <b>sp. nov.</b> を記載し、学名と標準和名を命名した。9 日本新参種、ヒゲブトマメトガリヒメバチ <i>A. flavicoxis</i> Sheng & Sun, 2014、キムラマメトガリヒメバチ <i>A. rufocincta</i> (Gravenhorst, 1829)、フサヒゲマメトガリヒメバチ <i>Diaglyptidea conformis</i> (Gmelin, 1790)、ヨリメマメトガリヒメバチ <i>Bathythrix margaretae</i> Sawoniewicz, 1980、トムソンマメトガリヒメバチ <i>Ba. thomsoni</i> (Kerrich, 1942)、シェンクサカゲロウトガリヒメバチ <i>Dichrogaster nitida</i> Sheng & Sun, 2014、オオズチビトガリヒメバチ <i>Megacara similis</i> Sheng, 1999、カミキリチビトガリヒメバチ <i>Orthizema semanotae</i> Sheng & Sun, 2014、フトヒゲハラアカオナシヒメバチ <i>Mesoleptus laevigatus</i> (Gravenhorst, 1829) を記録し、標準和名を命名した。イネマメトガリヒメバチ <i>Bathythrix narangae</i> Uchida, 1930 をクワナマメトガリヒメバチ <i>Ba. kuwanae</i> Viereck, 1912 の新参異名とした。ツヤアブトガリヒメバチ <i>Ethelurgus politus</i> Townes, 1983 をホソヒラタアブトガリヒメバチ <i>E. episyrphicola</i> Kusigemati, 1983 の新参異名とした。アブトガリヒメバチ <i>Ethelurgus sodalis fuscipes</i> Townes, 1983 をケヒラタアブトガリヒメバチ <i>E. kumatai</i> Kusigemati, 1983 の新参異名とし、さらにタイリクアブトガリヒメバチ <i>E. sodalis</i> (Taschenberg, 1865) の亜種とした。国内における新分布記録と、<i>Acrolyta</i>、<i>Bathythrix</i>、<i>Paraphylax</i>、<i>Ethelurgus</i>、<i>Rhembobius</i>、<i>Aclastus</i>、<i>Hemiteles</i>、<i>Isadelphus</i>、<i>Lochetica</i>、<i>Gnotus</i>、<i>Uchidella</i> の日本産種への検索表を提供した。
著者
手良村 知功 安田 慎 天野 雄一 三井 翔太 櫻井 風汰 平瀬 祥太朗 瀬能 宏
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館(旧神奈川県立博物館)
雑誌
神奈川県立博物館研究報告(自然科学) (ISSN:04531906)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.48, pp.13-20, 2019

ツマグロアオメエソ(ヒメ目アオメエソ科)およびイトヒキヒメ(ヒメ目ヒメ科)、ルソンベニテグリ(スズキ目ネズッポ科)の標本が駿河湾からそれぞれ1 個体ずつ得られた。これらはいずれも同湾における初記録であり、かつその種の分布の北限記録となる。日本近海ではこれら3 種は大陸棚の縁辺あるいは斜面上部に生息するが、南日本では黒潮流路に沿って連続的に分布することから、多くの浅海性魚類と同様に、その分散には黒潮が関係していることが示唆された。