著者
中川 雅生
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.498-502, 2014-09-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
12

禁忌とされる医薬品が使用され社会問題にまで発展したことを受け,医薬品の適正使用と医師の裁量に基づく未承認薬や適応外薬の使用に対する考え方について述べた. 医療の場において,他に治療法がない場合には医師は裁量により薬事法や保険診療上認められていない医療行為であっても行うことがある.未承認や適応外の医薬品等の使用もその一つである.この場合,倫理委員会の承認とともに患者の同意や承諾を得たとしても,医療水準を基準にして事後的に注意義務違反が存在し,それに伴い患者の生命・身体に重大な損害が生じれば,医師の裁量権の逸脱として違法行為となると考えられる.医薬品の添付文書は薬事法で定められた唯一法的根拠に基づいた公的文書であり,医療の基準となっている.添付文書に禁忌とされた医薬品の使用法は健康被害のリスクが高いため避けられねばならない.医師は医薬品の使用にあたって,必ず添付文書に目を通しておくべきである.

4 0 0 0 OA 移行期医療

著者
山村 健一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.281-286, 2017-07-01 (Released:2017-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2

医学の進歩により小児慢性疾患患者の多くが成人期に達し,その多くは合併症や遺残症を伴い,引き続き医療が必要である.疾患を有する小児が生涯にわたり持てる機能と能力を最大限に発揮できるよう,小児期医療から成人期医療への円滑な橋渡しを行うのが移行期医療(transitional care)である.単なる転科(transfer)にとどまらず,年齢や理解度に応じた本人への説明や,チェックリストの活用などにより,セルフケアの確立に向けた患者教育を早期から開始することが大切である.医学的なことのみならず,進学・就職や社会保障制度の切り替えについても患者個人で解決するには苦労が大きく,必要に応じて専門的な支援が必要である.移行期医療については,先天性心疾患は他分野よりも一歩進んでおり,今後もその推進役となることが期待される.
著者
江原 英治 村上 洋介 佐々木 赳 藤野 光洋 平野 恭悠 小澤 有希 吉田 修一朗 吉田 葉子 鈴木 嗣敏 金谷 知潤 石丸 和彦 前畠 慶人 西垣 恭一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.39-46, 2014-01-01 (Released:2014-01-31)
参考文献数
15

背景:無脾症患者は細菌感染,特に肺炎球菌に罹患しやすく,時に致死的となる.わが国では2010年より7価肺炎球菌結合型ワクチンが使用可能となり小児での予防効果が期待されている. 目的:7価肺炎球菌結合型ワクチン導入前の時期での,無脾症患者における重症細菌感染症の臨床像を明らかにし,新しいワクチンを含めた今後の対策について検討すること. 対象と方法:1988~2009年までに出生し,当院で治療を受けた無脾症患者のうち,外来経過観察中に重症細菌感染症(髄膜炎・敗血症)を起こした7例の臨床像を後方視的に検討した. 結果:無脾症患者44例中7例(16%)で,重症細菌感染症を認めた.感染症発症時の年齢は3ヵ月~4歳で,7例中5例は2歳未満であった.初発症状は全例が発熱,不機嫌,哺乳不良など非特異的な症状であった.短時間に急速な悪化を呈し,入院時には心肺停止,ショック状態,意識障害などの重篤な症状を認め,死亡率は57%であった.起因菌は肺炎球菌が7例中5例(71%)を占めた.7価肺炎球菌結合型ワクチンが使用可能であれば,予防できた可能性がある例が存在した. 結論:無脾症患者における重症細菌感染症(髄膜炎・敗血症)は,短時間に急速な悪化を呈し,死亡率が高い.早期診断が困難な例が存在し,小児循環器医のみならず,救急外来を含め無脾症患者の診療に関わる全てのスタッフへの啓発と体制作り,および患者家族への教育が重要である.無脾症患者には7価肺炎球菌結合型ワクチン等のワクチンを早期より積極的に接種すべきである.7価肺炎球菌結合型ワクチンの普及により侵襲性肺炎球菌感染症の減少が期待されるものの,ワクチン株以外の血清型の感染が存在し,完全には予防できないことも認識すべきである.
著者
鈴木 博
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.249-263, 2019-11-01 (Released:2020-02-13)
参考文献数
64

遺伝性不整脈は,心筋活動電位を形成するイオンチャネルとこれに関連する蛋白などをコードする遺伝子変異によって発症する疾患の総称である.1957年にQT延長症候群が初めて報告され,現在ではカテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群,QT短縮症候群,早期再分極症候群,進行性心臓伝導障害も遺伝性不整脈とみなされている.若年突然死の主要な原因であるが,早期発見と介入により予防しうる.遺伝子解析の進歩により,原因不明であった失神,突然死に遺伝性不整脈の診断がつき,個々により適した管理,治療が行われるようになってきている.近年,日本循環器学会のガイドラインも改訂された.これも踏まえて本稿では,QT延長症候群,QT短縮症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍,Brugada症候群について述べる.
著者
山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.68-74, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1

房室中隔は右心房と左心室を隔て, 心房中隔と心室中隔に連なる組織である. 房室中隔は房室管の心内膜床から発生する. 原始心筒がloopingし, 心房・心室が形態的に明らかになる頃, 房室管部では心ゼリーが残存・増生する. 心内膜から上皮間葉転換により遊離して形質転換した間葉系細胞が, その心ゼリーの中に侵入し, 心内膜床が形成される. 心内膜床は, 主に上方(背側)および下方(腹側)から隆起して発達する. 上・下心内膜床の中央部での癒合により房室中隔が形成され, 房室管が右側と左側の房室弁口に分割される. 上・下心内膜床は房室管に対して垂直な方向にも伸展し, 心房中隔一次孔の閉鎖と膜様部心室中隔の形成にも関与する. 房室中隔, 心室中隔, 心房中隔の発生異常により, 多くの先天性心疾患が発症する.
著者
八木原 俊克
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.81-88, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
28

修正大血管転位は房室錯位を伴い, かつ解剖学的右室が体心室に, 解剖学的左室が肺心室になっている特徴がある. 最終目標になる外科手術は, 解剖学的右室を体心室としたまま種々の合併する形態異常を修復して血流動態を機能的に回復させる“機能的修復手術”と, 同時に解剖学的左室を体心室に変換する“double switch手術”とに分けられる. 前者は心室中隔欠損閉鎖, さらに肺動脈弁狭窄解除ないし左室-肺動脈流出路再建を加える手術, 三尖弁逆流に対する弁置換/形成, などが主なものであり, 後者は心房スイッチを行うことで, いわば修正大血管転位を完全大血管転位に変換したうえで, 同時に動脈スイッチ, または心室大血管スイッチ(Rastelli手術)を行う手術で, それぞれにさまざまなオプションがある. 近年, 両者の手術成績は著明に向上しているが, 特にdouble switch手術の長期遠隔予後にはまだ不明な点があり, その適応, 術式選択などには課題が残されている.
著者
田村 まどか 福嶌 教偉 白石 公
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.100-109, 2017-03-01 (Released:2017-05-13)
参考文献数
9

補助人工心臓(VAD)の開発と承認などにより,移植待機中の患者の状態が多様化している今日の小児心臓移植医療の現場において,移植待機期間中,そして移植後も子どもとその家族への心理社会的支援の提供は重要である.医療環境下にある子どもや家族に,心理社会的支援を提供する専門職であるChild Life Specialist(CLS)は,小児心臓移植医療の現場において,①治癒的遊びと環境の提供,②医療体験への心の準備のサポート,③検査・処置中の心理的サポート,④退院・復学支援,⑤きょうだい・家族へのサポート,⑥グリーフ・サポートなどを通して,子どもたちが主体的に医療に臨めるように医療チームの一員として活動している.CLSを含む移植医療に関わる多職種が,チームで連携し協働することにより,子ども一人ひとりのニーズに合った支援の提供と,その家族全体の包括的な支援が心臓移植待機中,そして移植後も継続して可能になると考える.
著者
落合 亮太 池田 幸恭 賀藤 均 白石 公 一般社団法人全国心臓病の子どもを守る会
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 = Acta cardiologica paediatrica Japonica (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.258-265, 2012-09-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

<B>目的</B>:本研究の目的は, 身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者を対象に,(1)社会的自立度と心理的側面との関連,(2)社会生活上の不安・困難・要望を明らかにすることである. <BR><B>方法</B>:全国心臓病の子どもを守る会が実施したアンケート調査結果のうち, 身体障害者手帳を有する15歳以上の患者143名分のデータを分析した. 社会的自立を表す指標として就労状況, 年収, 障害年金受給状況を尋ね, 心理的側面を表す指標として経済的苦痛, 精神的苦痛を尋ねた. さらに, 生活上の困難・不安・要望について自由記述にて回答を得た. <BR><B>結果</B>:対象者になった143名(年齢15~73歳, 中央値=24歳;男66名, 女71名, 不明6名)のうち, 身体障害者手帳1級を有する者は95名(66%), 就労者は59名(41%;このうち年収200万円以下が58%)であった. 患者の経済的苦痛には, 手術歴があること, 通院頻度の高さ, 世帯総収入の低さ, 本人の年収の低さ, 障害年金受給が, 精神的苦痛には, 通院頻度の高さ, 仕事への不満足がそれぞれ有意に関連していた. 自由記述では, 「周囲の理解が得られない(57名が言及)」「年金制度を充実させてほしい(38名)」「医療費に対する助成を充実させてほしい(37名)」「就労支援・雇用拡大が必要(25名)」といった意見が聞かれた. <BR><B>結論</B>:身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者の収入は総じて低く, 経済的問題と就労環境が, 患者に心理的苦痛を及ぼすと推察された. 就労支援体制の整備と所得保障を含めた福祉制度の充実が急務である.
著者
福田 あずさ 荒木 美樹 平田 裕香 福島 富美子 石井 陽一郎 田中 健佑 下山 伸哉 宮本 隆司 小林 富男
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.264-270, 2019-11-01 (Released:2020-02-13)
参考文献数
14

背景:出生前に先天性疾患と診断される機会の増加に伴い,診断後の家族支援の重要性が増加している.群馬県立小児医療センターでは,先天性心疾患と診断された家族の支援を行っており,活動の一つとしてPICUの看護師もパンフレットを用いた出生前訪問を行っている.出生前訪問後のアンケートにより,先天性心疾患と診断された家族が,出生前訪問に求めるニーズを明らかにし,その効果と改善点について検討した.方法:先天性心疾患を疑われ群馬県立小児医療センターへ紹介受診となり,児がPICUに入室した母親51名を対象とし調査を行った.結果:対象者のうち23人(45.1%)から研究の同意が得られた.PICU看護師の出生前訪問を記憶していた母親は19人(82.6%)で出生前訪問を全員が「必要」と回答した.その理由は「心配・不安の軽減につながる」「PICUの雰囲気を把握できる」が多かった.しかし現在の出生前訪問では家族が求める情報が網羅できていなかった.結論:現在の出生前訪問により,家族の不安を軽減する可能性が示唆された.出生前訪問の内容の見直しとパンフレットの改訂を行い,家族の思いに沿った看護を提供する必要がある.
著者
小山 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.73-80, 2012 (Released:2012-11-15)
参考文献数
32

本症は心房-心室関係と心室-大血管関係の両方が正常の逆を示す疾患である. 2段階の不一致によって血液循環は生理学的に修正されるが, 約90%の例に合併病変がみられる. 症状の出現時期は合併病変の種類と程度によって胎児期から高齢者までさまざまであるが, 加齢とともに体心室としての右室の機能低下や三尖弁閉鎖不全, 不整脈が認められるようになることから, 早期の評価と治療介入が求められる. 特有の解剖学的所見として, 心房中隔と流入部心室中隔が整列しない, 左室流出路が僧帽弁と三尖弁の間に深く嵌り込む, 心房位が正位の場合, 大動脈が肺動脈の左前方に位置する, 刺激伝導系が異常である等がある. これらの解剖学的特徴と合併病変とを理解したうえで, 診察と胸部X線, 心電図, 心エコー図, MRI, MDCT等の検査を組み合わせて診断する. 特に心エコー図は区分診断法によって基本形態を明らかにするとともに合併病変の評価が可能であることから本症の診断に最も大きな役割を担っている. 心エコー図による右室機能の定量評価が今後の課題である.
著者
中川 雅生
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.498-502, 2014

禁忌とされる医薬品が使用され社会問題にまで発展したことを受け,医薬品の適正使用と医師の裁量に基づく未承認薬や適応外薬の使用に対する考え方について述べた.<br> 医療の場において,他に治療法がない場合には医師は裁量により薬事法や保険診療上認められていない医療行為であっても行うことがある.未承認や適応外の医薬品等の使用もその一つである.この場合,倫理委員会の承認とともに患者の同意や承諾を得たとしても,医療水準を基準にして事後的に注意義務違反が存在し,それに伴い患者の生命・身体に重大な損害が生じれば,医師の裁量権の逸脱として違法行為となると考えられる.医薬品の添付文書は薬事法で定められた唯一法的根拠に基づいた公的文書であり,医療の基準となっている.添付文書に禁忌とされた医薬品の使用法は健康被害のリスクが高いため避けられねばならない.医師は医薬品の使用にあたって,必ず添付文書に目を通しておくべきである.
著者
岩本 眞理
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.534-542, 2014-09-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
10

ペースメーカは徐脈性不整脈に対する唯一の有効な治療法である.小児の適応例は成人と比べると頻度は少なく,小さい体格・成長・長期管理という小児特有の問題から植え込み法や合併症も成人とは異なる点がある.植え込みの適応は2011年日本循環器学会を中心とした研究班によりガイドラインが改訂された.ペースメーカの構成は電池とリードからなり,方法は一時的と永久的ペーシング,電極は心内膜電極と心筋電極がある.機能は3〜4文字コード表示で示される.心房心室興奮の順次性が維持されたペーシング様式を生理的ペーシングと呼び,循環動態の観点から有利である.植え込みは各症例に適した方法を選びパラメータを設定する.ペースメーカ外来では12誘導心電図・胸(腹)部X線写真・プログラマーによるパラメータ測定を行う.これによりパラメータ設定の適正化・電池交換時期の予測・トラブル回避を行ってペースメーカの適切な管理を維持する.
著者
河津 由紀子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.15-20, 2022-02-01 (Released:2022-08-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

近年,胎児心エコー検査の進歩と増加に伴い,本邦においても胎児期に多くの先天性心疾患が診断されるようになった.その一方で,出生直後に初めて診断される場合も依然,少なくない.今回,児の診断を受けた家族に対する「カウンセリング」について,それぞれの場合について説明する.1. 胎児診断の場合:家族の不安そして,診断が変わりうる不確定な要素にも注意が必要である.それらを理解したうえで行うカウンセリングの目的や実際,内容,家族支援について概説した.2. 出生直後の場合:胎児診断の場合と異なり,生後突然の診断かつ診断(児に心疾患があること)が確定している状況である.胎児診断と異なる部分について概説した.胎児期および出生後いずれの診断においても,小児循環器医は,心疾患の正確な診断ばかりでなく,家族に対して「カウンセリング」することも必要である.また,カウンセリングを自ら行い,チームを主導する立場にあるという自覚も重要である.
著者
松井 彦郎 太田 英仁 内田 要 林 健一郎 犬塚 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.232-238, 2020-10-01 (Released:2020-12-04)
参考文献数
10

背景:小児重症例の約半数を占めている小児循環器疾患の集中治療は歴史的に小児循環器医および小児心臓外科医が中心で診療してきた一方で,社会的に集中治療の専門性整備の必要性が増加している.目的:小児循環器診療における集中治療専門性に関する現状調査・解析を行うことで,集中治療専門性の整備状況を評価し,今後の重要な課題を明確にする.方法:本研究では2019年10月現在の公的ホームページに掲載されている利用可能の専門医・研修施設・厚生労働省保険算定・人口統計の情報を用いて,全国における①小児科医・小児循環器医の集中治療専門医取得状況・分布,②小児循環器診療施設の集中治療専門研修施設状況,③集中治療室管理料算定数と専門医数の比較を行い,小児循環器領域における集中治療専門性の課題を描出した.結果:集中治療専門医を有する医師は小児科専門医の0.6%(99/16,545名),小児循環器専門医の1.1% (6/538名)であり,地方21県においていずれも不在であった.小児循環器関連施設(170施設)中,集中治療専門医研修施設認定は56%(96/170名)と低値であり,大学病院・総合病院においては専門医取得困難な環境が推察された.都道府県別の小児年齢の特定集中治療室算定数と集中治療専門医を有する小児科専門医の医師数との比較では都市部に医師が多く,小児特定集中治療室管理料は全国の約20%の普及にとどまるのみであった.結語:日本の小児循環器領域の集中治療専門診療環境は,専門医診療と診療報酬算定において施設・地域間格差があり,集中治療体制の整備は小児循環器診療の重要な課題と考えられる.