著者
金子 幸裕
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.102-108, 2013-05-01 (Released:2013-06-03)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

低出生体重(LBW)は心臓手術成績を悪化させる因子である.わが国では先天性心疾患(CHD)を有する児の1/3 がLBW であり,LBW 児の治療成績はCHD 全体の治療成績を左右する.LBW 児の心疾患に対して,正常出生体重児と同じ時期に手術を施行するのが望ましいとされているが,実際には半数程度の例で手術を遅らせる判断がなされており,手術を遅らせない症例と成績はほぼ変らない.姑息術より心内修復術が望ましいとされているが,超低体重児や合併疾患を有する例ではハイブリッド手術や経皮的カテーテル介入なども行われている.LBW が治療成績に与える影響は心疾患の種類によって異なるので,体重,心疾患の種類,合併疾患などに応じて症例ごとに治療方針を立てることが望ましい.
著者
岩﨑 秀紀 廣野 恵一 市田 蕗子 畑崎 喜芳 藤田 修平 谷内 裕輔 久保 達哉 永田 義毅 臼田 和生 仲岡 英幸 伊吹 圭二郎 小澤 綾佳
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.237-243, 2016

<i>LMNA</i>遺伝子は,核膜の裏打ち蛋白であるLamin A/Cをコードし,心筋・骨格筋・末梢神経の障害,皮膚疾患など多彩な疾患の発症に関与する.<i>LMNA</i>変異には,拡張型心筋症や伝導障害,心室性不整脈の合併が多いとされ,これらの心不全・伝導障害に対して心臓再同期療法(Cardiac resyncronization therapy; CRT)の有用性の報告が散見される.本症例は乳幼児期発症の先天性筋ジストロフィーの女児で,遺伝子検査で<i>LMNA</i>変異を認めた.8歳以降,徐々に心機能が低下し,完全房室ブロックや非持続性心室頻拍を認め,13歳時より心房細動,徐脈および心不全が進行し,入退院を繰り返すようになった.14歳時に,伝導障害を伴う高度徐脈を合併した心不全に対して,経静脈的に両心室ペースメーカ植込み術を施行し,心不全症状の改善が得られた.<i>LMNA</i>関連心筋症は成人期以降に徐脈性不整脈・心不全や突然死を呈することが多く,成人例でのCRTの有用性が報告されているが,本症例のように小児期発症例においてもCRTの有用性が示唆される.
著者
大﨑 真樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.153-163, 2019-09-01 (Released:2019-11-27)
参考文献数
42
被引用文献数
1

急性期循環管理の基本は酸素消費に見合った酸素供給を行うことである.なかでも先天性心疾患は呼吸と循環が密接に結びついており,呼吸循環の相互作用と生理学の理解が必要不可欠である.また同じ病名であっても患者ごとに血行動態に差異があり,各個人に合わせた循環管理を行う必要がある.しかし酸素消費と供給のバランスを整えるという原則は同じであり,体温管理・鎮静鎮痛・人工呼吸などで酸素消費を,血管作動薬,肺体血流比制御,ペーシングなどで酸素供給をコントロールする.これらの評価・介入は手術前後であっても基本は同一である.また重症児の治療においては神経・感染・栄養などの全身管理も非常に重要であり,患者管理を担当する者はこれらにも精通していなければならない.「循環器集中治療」は小児循環器のなかの「急性期管理の専門分野」として認識すべきsubspecialtyである.
著者
芳村 直樹 池野 友基
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.156-162, 2017-03-01 (Released:2017-05-13)
参考文献数
20

先天性房室弁疾患の外科治療には未解決な問題が多く,challengingな領域である.【先天性僧帽弁膜症】形態異常が多岐にわたること,ほかの心疾患を合併する頻度が高いことから,治療に難渋する疾患群である.弁形成術が第一選択であるが,形成が不可能な高度の病変に対しては人工弁置換術が選択される.弁置換術後は,身体の発育に応じて人工弁のサイズアップが必要となる.【房室中隔欠損症】左側房室弁狭窄を招来することなくいかに逆流を防止するかが問題となる.房室中隔欠損の弁形成の成否は房室弁を左右に正しく分割できるか否かにかかっており,正しい分割が行われないと,弁形成は決して成功しない.【単心室症例に合併する房室弁疾患】房室弁逆流の存在は,Fontan型手術を目指す単心室症例の予後を著しく悪化させる.特に新生児や乳児早期から手術介入を要する高度の房室弁病変の治療は非常に困難である.弁形成術の成績は不良で,症例によっては人工弁置換を選択したほうが良好な結果が得られることもある.【Ebstein病】 2004年,da Silvaらにより報告されたCone reconstructionは術直後から遠隔期まで,三尖弁逆流が良好に制御され,今後,本疾患に対する標準術式となることが期待される.
著者
白石 公
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.88-98, 2018-09-01 (Released:2018-12-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

先天性心疾患は,胎生期における心臓形態形成の過程が,胎児の遺伝子異常もしくは母体の環境要因により発症する多因子遺伝疾患と考えられている.心臓発生学を理解することは,先天性心疾患の形態診断,心疾患の病態把握,合併病変の予測,内科的治療方針の決定,外科手術手技の決定,長期予後の予測において大変重要である.本稿では,先天性心疾患の発症のメカニズムを理解するための胎生期の心臓形態形成のアウトラインについて解説する.近年目覚ましく進歩した,分子細胞生物学的手法および遺伝子改変マウスを用いた発生工学による先天性心疾患の発症メカニズムの知見は成書に譲ることとし,臨床医にとって基礎となる古典的な心臓形態形成の流れを中心に,図示してわかりやすく示す.
著者
福嶌 教偉
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.403-414, 2014-07-01 (Released:2014-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

心臓移植は,すでに欧米では末期的心および呼吸不全患者の外科的治療として定着し,外科的治療として確立しつつある.1997年に施行された臓器移植法は,6歳未満の脳死判定基準がないこと,15歳以下の臓器提供の意思が認められないことから,小児は心臓移植を受けるチャンスは極めて低く,多くの小児が海外で心臓移植を受けていた.このような現状を打開するために,改正臓器移植法が2010年7月17日に施行され,脳死臓器提供者の年齢制限がなくなった.その結果,2013年末までに6名の児童(6歳未満1名,10〜16歳3名,15〜17歳2名)の脳死臓器提供があり,6名の児童が国内で心臓移植を受けることができたが,身体の小さな小児や,拘束型心筋症など医学的緊急度2の状態で,心臓移植を受ける必要のある小児は,いまだに海外に一縷の望みをかけて渡航しているのが現状である.ここでは,わが国の小児心臓移植の現状を紹介するとともに,小児心臓移植の適応,移植後の管理について概説する.
著者
板谷 慶一 山岸 正明 夜久 均
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.371-384, 2017

<p>近年のコンピュータ技術の進歩に伴い循環器画像診断は変容を遂げつつある.カラー3次元動画を自在に使えるよう今日,心臓血管の形態のみならず血流をわかりやすく可視化する技法である『血流解析』が台頭しつつある.血流解析では異常血流を可視化し,乱流がもたらす心筋や血管内皮への力学的なストレスを可視化し,心臓弁膜症,心筋症,冠動脈疾患,大動脈疾患など幅広い循環器疾患において病態生理の詳細に迫ることが可能になる.また,これらの力学的なストレスが心不全や血管イベントなどを予測できるのではないかという期待がある.特に,先天性心疾患は解剖も生理学も複雑で,複雑な修復を余儀なくされ,従来血流解析と最もなじみの深い領域であった.また昨今の周術期管理の向上により遠隔期を迎える患者も増多しており予測医療としての血流解析の担う役割は大きい.本稿では血流解析手法の詳細を説明すると同時に先天性心疾患での役割を議論する.</p>
著者
小泉 敬一 勝又 庸行 星合 美奈子 戸田 孝子 喜瀬 広亮 長谷部 洋平 森口 武史 松田 兼一 杉田 完爾
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.246-253, 2015-09-01 (Released:2015-12-04)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

背景:当施設で施行した重症川崎病に対する持続的血液濾過透析併用緩徐血漿交換療法(SPE+CHDF)の有用性と安全性について報告する.方法:当施設でIVIG不応性重症川崎病に対してSPE+CHDFを施行した12例を後方視的に検討する.結果:SPE+CHDFを12例13コース施行した.SPE+CHDF施行前の心機能検査所見は,ANP値,BNP値,心胸郭比がすべて高値であった.SPE+CHDF施行前と比較した施行1時間後,3時間後の心拍数の変化率,収縮期血圧の変化率は共に有意差はなかった.SPE+CHDFを施行中に,強心剤の使用例や血管内カテーテル感染,人工呼吸器関連肺炎合併例はなかった.全例でSPE+CHDF開始後1~4日(中央値1日)で解熱した.SPE+CHDF施行前に冠動脈病変を認めた7例は,1年以内に全例で退縮した.結論:重症川崎病には血漿交換療法(PE)が有効である.しかし,重症川崎病は循環動態不良例が多く含まれている.このため,重症川崎病に対して安全にPEを行うためには,SPE+CHDFが有用な方法の一つである.
著者
板谷 慶一 山岸 正明 夜久 均
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.371-384, 2017-09-01 (Released:2017-11-08)
参考文献数
75

近年のコンピュータ技術の進歩に伴い循環器画像診断は変容を遂げつつある.カラー3次元動画を自在に使えるよう今日,心臓血管の形態のみならず血流をわかりやすく可視化する技法である『血流解析』が台頭しつつある.血流解析では異常血流を可視化し,乱流がもたらす心筋や血管内皮への力学的なストレスを可視化し,心臓弁膜症,心筋症,冠動脈疾患,大動脈疾患など幅広い循環器疾患において病態生理の詳細に迫ることが可能になる.また,これらの力学的なストレスが心不全や血管イベントなどを予測できるのではないかという期待がある.特に,先天性心疾患は解剖も生理学も複雑で,複雑な修復を余儀なくされ,従来血流解析と最もなじみの深い領域であった.また昨今の周術期管理の向上により遠隔期を迎える患者も増多しており予測医療としての血流解析の担う役割は大きい.本稿では血流解析手法の詳細を説明すると同時に先天性心疾患での役割を議論する.
著者
田部 有香 安田 謙二 中嶋 滋記 藤本 欣史 山口 清次
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.347-351, 2015-11-30 (Released:2015-12-23)
参考文献数
12

左心耳瘤(left atrial appendage aneurysm, LAAA)は,1938年にSemansとTaussigにより初めて報告された非常に稀な疾患で,先天性のものの多くは原因不明である.小児期に無症状で発見されると,将来的な不整脈,胸痛,呼吸困難,血栓塞栓症などの合併症予防のために外科的切除を行う.今回我々は,急性気管支炎の際に胸部レントゲン写真で異常を指摘された2歳女児におけるLAAAの症例を経験した.経胸壁エコー,経食道エコー検査を行い,瘤内や心耳内血栓を否定した.また造影CTにて周囲に異常構造がないことを確認した.手術により切除した病理組織において,三層構造は保たれていたが,筋層の菲薄化と粘液性変化がみられた.恒常性を維持させられないほどの組織障害が生じたことが,瘤の原因となりえた可能性が示唆された.
著者
仁尾 かおり 石河 真紀 藤澤 盛樹
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.543-552, 2014-09-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1

背景:先天性心疾患をもつ学童期から青年期の患者の病気体験に関連したレジリエンスの構造を明らかにし,“病気体験に関連したレジリエンス”アセスメントツールを作成する.方法:学童期から青年期の患者を対象に,“病気体験に関連したレジリエンス”を調査し,因子分析により構造を明らかにした.また,背景要因による特徴を分析した.結果:有効回答178名,年齢10〜32歳(平均17.2±5.8歳)であった.因子分析の結果,「自分の病気を理解できる」,「前向きに考え行動する」,「無理をしないで生活する」の3つが明らかになった.背景要因による比較では,年齢の高い人が「自分の病気を理解できる」が高得点であり,重症度の高い人が「前向きに考え行動する」が低得点であった.「無理をしないで生活する」では,背景要因による差は認めなかった.考察:発達段階の早い段階から病気の理解を促す支援をすること,重症度が高い人の「前向きに考え行動する」ことへの支援,また,先天性心疾患をもつ人に特有な要素として見いだされた「無理をしないで生活する」ことを支えることが重要である.
著者
井本 浩
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.122-128, 2016
被引用文献数
2

冠動脈異常の発生率は1.3%程度と,まれではない.多くは偶然発見され自覚症状を伴わない場合も多い.しかし,なかには心筋梗塞,不整脈,突然死などの重篤な合併症を引き起こす場合がある.左冠動脈が右バルサルバ洞から起始する異常,なかでも大血管間を走行するものは若年運動選手での突然死の原因の一つとして知られており,自覚症状がなくても手術を行うべきである.負荷心電図で陰性のものも多く,疑った場合には必ず心エコー,造影CTなどの冠動脈形態の検査を行うことが重要である.左冠動脈肺動脈起始では生後早期より重症の心筋虚血,左室不全,僧帽弁閉鎖不全などを生じることが多く,しばしば心筋症や先天性の僧帽弁疾患と間違われる.乳児期早期のtwo-artery coronary systemの確立が必要である.冠動脈瘻は心筋虚血や短絡による心不全が問題となり,基本的には自覚症状で手術適応が決まる.症例によってカテーテル閉鎖も可能であり,あるいは冠動脈バイパス術が必要な場合もあるので,術前の形態診断が重要である.狭心痛,心筋虚血,不整脈,心不全などの症状の患者を診る際には冠動脈異常を鑑別診断に加えることが重要である.
著者
小野 博 香取 竜生 犬塚 亮 今井 靖 賀藤 均
出版者
Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.49-56, 2014

<b>背景:</b>Marfan症候群に対するGhent基準が2010年に改訂された.改訂基準では大動脈病変,水晶体脱臼,遺伝子変異に重点がおかれ,骨格所見はsystemicscoreに一括された.<br><b>方法:</b>2008年4月~2009年12月に東京大学医学部附属病院小児科マルファン外来を受診し,従来のGhent基準(旧基準)においてMarfan症候群と診断または疑いでフォローされている症例38例について,改訂Ghent基準(改訂基準)における診断の詳細を検討した.<br><b>結果:</b>旧基準を満たした症例は13例,改訂基準は22例であり有意な増加を認めた(p=0.0039).改訂基準を満たした22症例のうち17例(77%)に家族歴を認めた.改訂基準を満たした症例の内訳は,大動脈所見が10/22例(45%),水晶体脱臼が10/22例(45%),systemic score≧7が4/22例(18%),FBN1遺伝子変異が2/3例(67%)であった.<br><b>結論:</b>改訂Ghent基準は旧基準より簡易化され診断が容易になった.さらに<i>FBN1</i>遺伝子解析が普及すれば,診断精度の向上および診断数の増加が期待される.
著者
前田 潤 安田 幹 小柳 喬幸 柴田 映道 河野 一樹 古道 一樹 福島 裕之 山岸 敬幸
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.186-191, 2012 (Released:2012-11-26)
参考文献数
16

Fontan型手術後遠隔期の合併症である蛋白漏出性胃腸症(PLE)は予後不良であり, その治療はいまだに確立されていない. 近年, 肺血管拡張薬であるsildenafil(SIL)がPLEを改善させるという報告が散見される. 今回Fontan型手術(TCPC)後にPLEを発症し, SIL投与により症状の改善を得た3症例を経験した. 【症例1】単心室の21歳, 男性. TCPC6年後にPLE発症. SIL 30 mg/日内服を開始, 40 mg/日まで増量し, 浮腫が軽快. 【症例2】単心室, 左肺動静脈瘻の17歳, 男性. TCPC2年後にPLE発症. SIL 1 mg/kg/日内服を開始, 4 mg/kg/日まで増量し, 浮腫, チアノーゼが改善. 【症例3】両大血管右室起始の12歳, 女児. TCPC1年後にPLE発症. steroid不応性であり, SIL 0.5 mg/kg/日内服を開始, 8 mg/kg/日まで増量し, 腹水が改善. 3症例ともSILの副作用は認められなかった. SILはPLEに対する安全な治療薬で, 用量依存性に効果を示す症例もあることが示唆された.
著者
中澤 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
日本小児循環器学会雑誌 (ISSN:09111794)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.249-262, 2014-05-01 (Released:2014-06-03)
参考文献数
39

先天性心疾患(CHD)診療は死に直面する機会が多い分野である.死はかつては神仏の領域であったが,今や科学としての医学の領域に入っており,医療者は患者の死に際して最善の終末医療ないしケアを行うため,死生学修得の必要性が高じてきた.死のケアは死にゆく本人のみならず遺族の大きな精神心理的苦痛を理解することが前提である.本人にも遺族にも,死は,ショック,死の否認,怒りなどの「正常」の反応をもたらし,時間をかけて容認へと向かう.われわれにはそれぞれの心理状態に即して,患者の個々の「語り」に耳を傾けて,ヒトとして対応することが求められる.小児は小学生低学年ですでに死をかなり深く理解しているが,死に直面する時の苦痛の表現が大人とは異なる故に,大人がしっかりと見守って対応する必要がある.近年の成人CHD患者(ACHD)の増加は,死生学の面からも新たに深刻な問題が起りつつあり,今後はその対応にも腐心すべきである.