著者
小松 洋治 益子 良太 土田 幸広 柴田 智行 伊藤 政美 目黒 琴生 小林 栄喜 吉澤 卓 能勢 忠男
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10, pp.654-659, 2001-10-20
被引用文献数
6

ウイリス動脈輪前半部未破裂脳動脈瘤クリッピンク手術の認知機能への影響および予後因子を, 連続40症例についてprospectiveに検討した.術前, 術後3カ月にMMSE, 仮名拾いテストを行い, 各検査単独, および総合評価である浜松方式簡易痴呆診断スケールにより認知機能を評価した.認知機能は多くの症例で温存されたが, 継続的障害が2.5〜5.0%に, 一過性障害が7, 5%にみられた.継続的障害に関与する危険因子はみられなかった.一過性障害を含めた検討では, 70歳以上の高齢が有意な因子であった.術前の浜松式非正常, 仮名拾いテスト不合格, 虚血性脳血管障害合併の3因子は, 予後との関連が示唆された.未破裂脳動脈瘤手術成績は, 認知機能の観点からは良好であるるが, 高齢者, 虚血性脳血管障害合併症例, 前頭葉機能低下例では, より慎重な対応が必要である.
著者
片山 容一 笠井 正彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.395-401, 2003-06-20
被引用文献数
1

幻肢痛には,脊髄.視床あるいは大脳皮質などを対象とした神経刺激療法が劇的に奏効することがある.これらは,主としてゲート・コントロール理論を根拠にしているが,それだけでは説明のつかない現象か多い.近年,一次体性感覚領野の受容野分布の両構成が幻肢痛に高い相関を示すことから,これを元に戻すことができれば,幻肢痛を治療できるのではないかと考えられるようになった.視床でも,同様の受容野分布の再構成が起きており.受容野と投射野の不一致が観察される.これによって,興奮性入力と抑制性入力の均衡が崩れることが幻肢痛の機転である可能性がある.神経刺激療法は,幻肢に相当する部分からの失われた入力を人工的に作り出し.受容野分布の構成を元に戻すことによって効果を生むのかもしれない.このような視点から,幻肢痛に対する神経刺激療法について,現在までの報告を見直した.
著者
山根 冠児 島 健 岡田 芳和 西田 正博 沖田 進司 畠山 尚志 山中 千恵 丸石 正治 真辺 和文
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.9, pp.554-562, 1998-09-20
被引用文献数
15

140例, 151側の血栓内膜摘除術(CEA)術中に内頸動脈血流, 内頸動脈のstump pressure(ICASP), 体性感覚誘発電位(SEP), および脳酸素ヘモグロビン(HbO_2)の測定を行った.手術死亡例はなく, 12例で一過性の神経症状, 4例(2.6%)で恒久的な神経症状が出現した.内頸動脈血流は6例でCEA後の著明に増加し, そのうち3例でhyperperfusionによると思われる術後神経症状が出現した.ICASPが30mmHg以下の症例では25.0%に, SEPの振幅がflatになった症例では53.8%に, HbO_2がindexで0.04以上の低下を示した症例では10%に術後神経症状が出現した.以上の結果からSEPが最も術後の神経症状の発現と関連が強かった.
著者
宮本 享 山田 圭介 菊田 健一郎 片岡 大治 佐藤 徹 橋本 信夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.412-418, 2003-06-20
被引用文献数
1

脳動脈瘤の治療法はclipping, coil embolization, by pass+parent artery occlusionの3種類に大別されるが,困難な症例ほど単一の治療法のみにならない判断が必要になる.このためには治療チームとして上記3種類の治療技術を高いレベルでもち.柔軟性をもった治療計画を立てることが必要である.手術手技についても基本的な方法を大切にしたうえで.体位やアブローチ,剥離操作などを症例に応じてmodifyすべきであり,単一のやり方に偏りすぎるべきではない.安全に外科治療を行ううえには,術前・術中に次のステップで起こりうるリスクに備えそれを防ぐことと,手術器具について基本的知識をもつことが大切である,
著者
竹中 勝信 依藤 純子 山田 茂樹 山川 弘保 阿部 雅光 田渕 和雄 小泉 昭夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.837-845, 2004-12-20

家族性脳動静脈奇形の8家系による遺伝疫学調査と遺伝子解析を試みた.代表症例:家系7(兄妹例):II. 1) I. M.:51歳,男性.意識消失発作にて発症.右前頭葉に約5cmのnidusを認めた.Spetzler-Martin score(S-M score):III. 2) K.M.:58歳,女性.右運動障害にて発症.左頭頂葉皮質下に血腫を認め,脳血管撮影にて2.5cm大のnidusと右前大脳動脈に3mmの未破裂嚢状脳動脈瘤を認めた.S-M score:家系8(従兄弟例):1) K.I.:67歳,男性.頭痛にて発症.左前頭頭頂葉に血腫を認め,脳血管撮影では2.5cm大のnidusを認めた.S-M score :II .2) Y.M.:37歳,男性.歩行障害と左顔麻痺にて発症.CTで左小脳出血を認め.MRIにて海綿状血管腫(孤発)を認め,同側小脳半球に静脈性血管腫を合併.遺伝子解析方法:京都大学の医の倫理委員会,および高山赤十字病院の倫理委員会の承認を得た.兄弟,姉妹,従兄妹発症脳動静脈奇形である5家系の発病者10人について,全血由来ゲノムDNAを分離後,遺伝子解析に使用した.遺伝子タイピングは,常染色体382個とX染色体18個のmicrosatellite marker(ABI Prism Linkage Mapping Set Version 2)を用いて行った.連鎖解析には.Merlin softwareを用いて行った.遺伝子Ephrin B2について塩基配列決定で変異の存在を検索した.発症者以外の家族を対象として希望者全員にMRIおよびMRAを用いた画像診断を行った.結果:(1)6q24-6q27, 7p22-7p15, 13q21-13q31, 16p11.2-16p11.1, 20q12-20q13.1の5ヵ所の染色体の部位にて統計学的な優位(p<0.05)に連鎖部位を認めた,(2)13番染色体長腕に存在するEphB2遺伝子のexonl〜exon5の全シークエンスを行ったが,突然変異やSNP(single nucleotide polymorphism)は同定されなかった.(3)MRIおよびMRA検査を行った結果,今回の発病者以外には頭蓋内病変はみられなかった.結論:米国,チェコ共和国,本邦に存在する家族性脳動静脈奇形家系(8家族)のうち,5家系の末梢血ゲノムを用いた連鎖解析を行った.家族性脳動静脈奇形はなんらかのgenetic factorの存在が示唆された.5つの染色体で疾患連鎖遺伝子座が浮かび上がり,このうち第6染色体と第7染色体は最も疑わしい可能性を疑う連鎖解析結果を得た.