著者
中川 隆之
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.357-361, 2013 (Released:2013-05-25)
参考文献数
6

内視鏡下経鼻頭蓋底手術では, 標的とする病変の拡がりに応じ, 鼻副鼻腔の処理を行い, 適切な術野を確保する. Mid-lineアプローチでは, 中鼻甲介を温存しても, 十分な術野を得ることができる. 内頚動脈隆起や視神経管周辺での手術操作が必要な場合, 経中鼻道的にも蝶形骨洞の操作が行えるよう, 篩骨洞開放が必要となる. 最後部篩骨洞のバリエーションであるOnodi cellに注意が必要である. 蝶形骨洞外側にアプローチする場合, 上顎洞後壁削除が必要となる. Vidian神経管と上顎神経管が有用な目印になる. また, 頭蓋底再建においては, 嗅上皮と蝶口蓋動脈鼻中隔枝の位置を考慮した有茎鼻中隔粘膜弁を作製する.
著者
長久 功 花北 順哉 高橋 敏行 南 学 北浜 義博 尾上 信二 紀 武志 伊藤 圭介
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.133-137, 2009-02-20

Cervical anginaは,何らかの頚椎近傍の病変に由来する狭心症様発作性前胸部痛と定義されている.今回われわれは,非特異的前胸部痛に対して頚椎手術で症状が改善した症例を経験したので,前胸部痛の発生機序と臨床症状の特徴,治療方法について報告する.症例は72歳女性,不安定性を伴った頚椎症性脊髄症で,経過観察中に前胸部痛が出現したが,心疾患由来のものが否定された.後方アプローチによる治療を行った結果,前胸部痛が改善した.前胸部痛の直接的原因は,C3-4間での不安定性に伴ってC3-7間で髄内への圧迫が増強し,頚椎症性脊髄症を引き起こしたためと考えた.頚椎症の症状を伴い前胸部痛が誘発される場合は,cervical anginaを念頭に置いた頚椎,頚髄の検査が重要である.
著者
中西 欣弥 花北 順哉 田宮 亜堂 吉田 守 瀧花 寿樹 井水 秀栄 平井 達夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.723-729, 2004-10-20
被引用文献数
2

脊椎血管腫は良性脊椎腫瘍の中で最も多いが,脊髄症を呈することは非常に稀である.今日われわれは,脊髄症を呈した2症例を経験したので報告した.症例1は45歳,女性,胸椎圧迫骨折による背部痛にて発症した.第12胸椎椎体腫瘍の診断で腫瘍摘出術を行ったが,術中にコントロール困難な出血に遭遇し腫瘍部分摘出となる.第2回目手術では,術前に腫瘍栄養血管塞栓術を行い腫瘍の全摘出が可能となった.症例2は47歳,男性で両下肢のしびれを主訴とした.第5胸椎脊椎血管腫の診断で術前に腫瘍栄養血管塞栓術を行い,その後手術にて腫瘍の全摘出を行った.脊椎血管腫は易出血性の腫瘍であり,術前検査として血管撮影は必須である,腫瘍摘出術を行うに際して術前の腫瘍栄養血管塞栓術が重要と考えられた.
著者
田中 聡 小林 郁夫 岡 秀宏 宇津木 聡 安井 美江 藤井 清孝 渡辺 高志 堀 智勝 竹内 正弘
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.694-700, 2004-10-20

難治性の悪性グリオーマに関しては高レベルの治療上のevidenceは少ない.1997年より,広義のグリオーマ90例(low grade glioma 12 例, GradeIII glioma 30 例, glioblastoma multiforme 42 例,medulloblastoma 6例)に対してACNU耐性遺伝子であるMGMTのRT-PCRによる検出に基づいた103回の個別化補助療法(individual adjuvant therapy ; IAT)を行った.手術により摘出した-70°C凍結検体よりtotal RNA を抽出し,最初の51回は通常のRT-PCR,最近の52回はreal-time RT-PCRに代表される定量的RT-PCRによるMGMTmRNAの検出・定量を行った.MGMTの発現量が少なかった68回はACNUを,MGMTが高発現であった35回は白金製剤を治療の中心に用いた.ACNUを用いた治療群と白金製剤を用いた治療群との問に治療成績の有意差は認められなかった.全体の有効率(partial response + complete response率)は53.3%, glioblastoma 42例の2年生存率は51.1%であった.2002年4月以降にreal-time RT-PCRの結果に基づいてACNU-vincristin-interferon-β-radiationまたはcis-platinum-etoposide-interferon-β-radiationによる補助療法を行ったGradeIIIとglioblastomaで,年齢3歳以上70歳未満, Karnofsky's performance scale が50以上の初発20症例の有効率は60.0%であった.IATが高レベルのevidenceを獲得するためには,症例を選択し,統一された治療法によるrandomized controlled trialを行う必要がある.
著者
柿野 俊介 長次 良雄 梶原 浩司 伊藤 治英
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.115-118, 1999
参考文献数
19
被引用文献数
2

頭蓋骨原発の類上皮腫は稀な腫瘍で, その画像的特徴をまとめた報告も少ない.われわれは, 23歳女性の頭蓋骨原発類上皮腫を経験したので, その画像的特徴について報告した.今回の報告と過去の報告を総じてみると以下のようになる.X線では, 骨欠損像とその周囲の硬化像が認められる.CTでは骨条件, およびhelical CTによる三次元構成像により腫瘍周囲の骨破壊像の把握が可能である.MRIでは嚢胞内内容物の割合によりさまざまなintensityをとるが, 一般的にはT1Wlでhypo-intensity, T2Wlでhyper-intensityである.シンチグラムでは, 骨シンチによる腫瘍周囲の集積像が認められる.以上の放射線学的特徴を把握していれば, 頭蓋骨原発の類上皮腫の術前診断が容易にできると考えた.
著者
平田 雅之 柳澤 琢史 松下 光次郎 Shayne Morris 神谷 之康 鈴木 隆文 吉田 毅 佐藤 文博 齋藤 洋一 貴島 晴彦 後藤 哲 影山 悠 川人 光男 吉峰 俊樹
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.541-549, 2012-07-20

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は脳信号から運動意図・内容を読み取って外部機器を制御する技術である.われわれは脳表電極を用いたBMIにより,筋萎縮性側索硬化症等の重症身体障害者に対する機能再建を目指して研究開発を行っている.これまでにγ帯域活動を用いた連続的な解読制御手法により,ロボットアームのリアルタイム制御システムを開発し,脳表電極留置患者による物体の把握・把握解除に成功した.感染リスク回避のためにはワイヤレス体内埋込化が必須であり,ワイヤレス埋込装置のプロトタイプを開発した.今後は,重症の筋萎縮性側索硬化症を対象として,有線・ワイヤレス埋込の2段階での臨床試験を経て実用化を目指す.
著者
山崎 麻美 埜中 正博
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.642-649, 2009
参考文献数
19
被引用文献数
1

2000年の「児童虐待の防止等に関する法律」の成立を契機に,わが国でも小児虐待に対する社会的関心が高まってきた.その中で,最も致命的で予後に大きく影響するのが,頭部外傷である.Shaken baby syndrome(SBS:揺さぶられっ子症候群)という言葉が有名になり,虐待による頭部外傷の総称として使われることもあるが,正しくは,non-accidenntal tramatic brain injury(nonaccidental TBI),あるいはinflicted traumatic brain injury(ITBI)である.すなわち,虐待による頭部外傷の受傷機転は,shaken(揺さぶり)だけでなく,直達衝撃(叩く,落とす,投げる),やそれらが複合したものと考えられている.虐待の診断には,打撲痕・熱傷・骨折など全身チェックに加え,頭部MRI検査は有用であり,眼底検査は必須である.半球間裂から円蓋部にかけて,あるいは小脳テントに沿って存在する急性硬膜下出血が最も多くみられる.ITBIの死亡率は15〜38%で,生存者の30〜50%が障害を持ち,正常に回復する率は30%といわれ,その転帰は非常に悪い.自宅に戻った時に繰り返される率は31〜43%である.従来から中村の血腫1型として報告されてきた家庭内の軽微な外傷による網膜出血を伴う急性硬膜下血腫が,虐待の範疇に入るのか,虐待とは別のclinical entityとして考えるのか,いまだ議論のあるところである.
著者
竹本 光一郎 岩朝 光利 西川 渉 安部 洋 福島 武雄 宇都宮 英綱 高野 浩一 黒岩 大三
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.11, pp.706-712, 2005-11-20

今回, 脳底動脈・persistent primitive trigeminal artery (PPTA)分岐部に発生した破裂動脈瘤に対し, コイル塞栓術を施行した症例を経験したので報告した.症例は, 72歳, 女性.突然の意識障害で発症し, 当院に入院となった(W.F.N.S grade V).頭部CTにてクモ膜下出血がみられた.頭部血管撮影にてPPTAがみられ, 脳底動脈・PPTA合流部に2こぶ状の動脈瘤を, 右内頸動脈海綿静脈洞部にも1つ動脈瘤を認めた.脳底動脈・PPTA合流部動脈瘤の内, 大きいほうの動脈瘤は, 4mm大でblebを伴っていた.神経原性肺水腫を呈しており, 患者のgradeが悪く, 動脈瘤の発生部位より, 手術的クリッピングは困難と考え, 第3病日目にPPTA経由でコイル塞栓術を施行した.塞栓術後, 正常圧水頭症に対しV-P shunt術を施行し, 継続リハビリテーション目的に転院した.本症例は, 脳底動脈・PPTA合流部に発生した破裂動脈瘤に対するコイル塞栓術としては初めての症例報告であり, 文献的考察を加え報告する.
著者
冨田 博之 山下 英行 中安 慎二 玉木 紀彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.7, pp.488-492, 1997-07-20

前頭蓋底に進展した嗅神経芽細胞腫の1例を報告した.症例は52歳の男性で,頭部MRIで右筋骨洞から右前頭蓋底に進展した6×4.5×4cmの腫瘤を認め,脳腫瘍部分摘出術を施行し嗅神経芽細胞腫と診断された.術後2カ目で残存腫瘍は急速に増大し,開頭脳腫瘍亜全摘術を施行後に60 Gyの放射線療法を行った.頭部,原発巣での腫瘍の再発は認めずに経過したが,2年後に左リンパ節転移を認め,化学療法および放射線療法を施行した.化学療法後のMRIで明らかな病巣の縮小が認められた.本症例のように頭蓋内進展した例に対しては,積極的な摘出術と放射線療法や化学療法との併用が推奨される.
著者
伊藤 圭介 花北 順哉 高橋 敏行 南 学 本多 文昭 森 正如
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.833-838, 2009-11-20

仙腸関節ブロックを施行した症例の臨床的検討を行った.【対象】2008年3〜10月に仙腸関節ブロックを施行した72例.【方法】保存的治療に抵抗性の腰痛を自覚し,理学的所見により仙腸関節由来の疼痛が疑われた症例に仙腸関節ブロックを施行した.【結果】仙腸関節ブロックは46例(63.9%)にて有効で,VAS平均改善率は52.4%であった.仙腸関節部痛は外来全腰痛患者の14.1%を占めていた.ブロック有効例の46例のうち36例(78.3%)に他の腰椎疾患を合併していた.【結語】仙腸関節部痛は日常診療で多数の患者が存在すると思われた.仙腸関節ブロックは仙腸関節由来の疼痛の診断,治療に効果があった.
著者
竹内 東太郎 笠原 英司 岩崎 光芳
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.9, pp.597-603, 1999
参考文献数
17

[目的]外傷性硬膜下水腫(SDFC)における手術適応と手術法選択の決定因子を検索するために, CT脳槽造影(C-CT)と硬膜外圧持続測定(EDPM)を行い, それらの結果を検討することである.[対象・方法]1993年1月〜1997年12月までの5年間に当科に入院し, CTにてSDFCと診断された75例全例にSDFC発現後1カ月間経過観察したあとrepeat CTを施行した.repeat CTでSDFCが不変または増大群21例と吸収値変化群10例の計31例(男:女=22:9, 年齢31〜82歳, 平均年齢62.4歳, 両側:片側=20:11)を対象とした.これら31例にC-CTとEDPMを施行し, (1)検査結果, (2)手術適応と手術法の選択, (3)手術成績と予後について検討した.[結果](1)C-CTはno filling(N)11例, delayed filling(D)18例, early filling(E)2例で, NとDが29例(93.5%)と多かった.EDPMは持続高圧型(CH)9例, 間欠高圧型(IH)17例, 持続低圧型(CL)5例で, CHとIHが26例(83.9%)と多かった.(2)repeat CTで吸収値変化群, C-CTのN・D, EDPMのCH・IH, C-CTがE, EDPMがCLで症候性の群29例に手術を施行した.手術法は吸収値変化群10例に洗浄+ドレナージ術, SDFC不変・増大群でC-CTがN, EDPMがCHの6例に洗浄+オマヤ貯留槽設置術, それ以外の13例に硬膜下-腹腔内短絡術(S-Pシャント術)を施行した.再発した4例にはS-Pシャント術を施行した.(3)術後2カ月〜4年4カ月の追跡期間中, 最終的に全例SDFCは消失した.手術を施行しなかった2例は6カ月, 2年4カ月の追跡期間でCT上SDFCの増大や症状の発現は認められなかった.[結語]C-CTとEDPMはSDFCの手術適応, 手術法選択の決定因子として有用であり, 治療指針のフローチャートを作成できた.
著者
梶原 基弘 花北 順哉 諏訪 英行 塩川 和彦 斉木 雅章 織田 雅
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.389-393, 2001-06-20

9年前に背部打撲の既往があり, Brown-Sequard症候群を呈した脊髄ヘルニアの症例を報告した。MRI上Th4/5レベルにおいて, 脊髄が腹側に偏位しており, その背側にクモ膜嚢胞と思われる領域を認めた.手術にて脊髄背側のクモ膜嚢胞と腹側硬膜欠損部への脊髄ヘルニアを確認し, これを整復, 硬膜形成術を行った.MRIの登場以後, 脊髄ヘルニアの報告例は増加してきており, 従来考えられてきたほど稀な疾患ではないと思われる.硬膜欠損の成因が病態の基本であるが, そのメカニズムについては推論の域をでていない.大きく, 特発性と外傷性に分類されるが, 文献的考察にてそれぞれの臨床的特徴を考察した.今回われわれが報告した症例は, 背部打撲の既往を有するものの, 特発性の範疇に入ると考えた.
著者
佐谷 秀行
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.10, pp.688-693, 2006-10-20

ゲノムの不安定性は悪性腫瘍の主たる特徴であり,細胞周期チェックポイントの異常はそれを誘導するきわめて重要な要因である.現在広く使用されている抗腫瘍薬として,DNA傷害性薬剤,微小管作動性薬剤があるが,これらの薬剤は腫瘍細胞のチェックポイントの異常を利用して選択的に癌に細胞死を引き起こすことが明らかにされてきた.タイムラブス顕微鏡とRNA干渉法を用いた解析により,これらの薬剤によって癌細胞に誘導される細胞死は,主として分裂中期から直接生じる分裂期崩壊であり,紡錘体チェックポイント機能など複数の要素によって制御されていることが明らかになった.本稿では現行の抗癌治療の分子論を整理したうえで,その特徴と問題点を議論する.
著者
小野田 恵介 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.669-673, 2004-09-20
被引用文献数
1

神経サルコイドーシスにおいて水頭症を呈することは比較的稀である.水頭症を呈し,急激な増悪後,死亡に至った症例を経験し剖検を施行したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は18歳男性(ブラジル国籍), 2003年9月10日より頭痛があり,9月12日近医入院となった.9月16日軽度意識障害,両側外転神経麻痺も加わり当科紹介となった.来院時,髄膜刺激症状を認め,髄液検査を行ったが,初圧9cmH_2Oで,細胞数160/3(リンパ球優位),蛋白(750 mg/dl)は上昇しており,さらにanaiotensin converting enzyme(ACE)活性は2.6 1U/l と高度上昇していた.細菌培養は陰性で,結核菌群もDNA/PCRにて陰性であることが示された.CT,MRIでは水頭症を呈し,造影される肉芽腫性病変は認めなかったが,神経サルコイドーシスを強く疑った.入院後ステロイド投与を開始するも効果なく,けいれん,運動障害の出現,意識障害の進行を認めた.9月22日右脳室-腹腔シャント施行,脳室内髄液ACE活性は3.1 1U/lであった.重症肺炎の合併も認め,敗血症にて10月2日死亡された.同日剖検を施行した.頭蓋底髄膜に多発性のサルコイドーシス結節が確認された.原因不明の髄膜炎,水頭症を呈する例においては神経サルコイドーシスも鑑別診断に挙げるべきであり,また本例のように急速な増悪を呈する例があることを念頭に置く必要があると思われた.
著者
岡 秀宏 川野 信之 諏訪 知也 矢田 賢三
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.324-328, 1994-07-20
被引用文献数
1

われわれは,稀な症候性ラトケ裂嚢胞を7例経験し,それらの罹病期間と神経症状,内分泌症状および画像所見について検討した.平均年齢は46.1歳で,性別は女性が4例,男性が3例であった.臨床症状は,頭痛6例,視力・視野障害4例,下垂体機能低下を認めたもの3例であった.視力・視野障害や下垂体機能低下症状は罹病期間の長い症例に認められる傾向にあった.術前の視力・視野検査では視力・視野の異常を認めたものが5例であった.術前の内分泌検査の基礎値は,高プロラクチン血症が4例,ADHの低下が1例,部分あるいは全般的に基礎値の低下したものは2例のみに認められ,罹病期間の長い症例ほど下垂体ホルモン異常をきたしやすい傾回にあった.画像所見は,CTで等〜高吸収域を示すものが多く,MRIでは嚢胞の大きい症例ほどT_1強調画像で高信号を呈する傾向にあった.以上の結果から,罹病期間が長い症例ほど視力・視野障害および下垂体機能低下症状をきたしやすい傾向にあったことを考えると,臨床症状を有し,画像上でラトケ裂嚢胞が考えられる場合は,早期に手術操作を加え,嚢胞の開放を施行することが必要と考える.
著者
今井 邦英
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.626-630, 2001-09-20
被引用文献数
3

クモ膜下出血で発症した右後交通動脈瘤の1例を報告した.症例は47歳, 男性で, 突然の頭痛, 意識障害で発症した.来院時のCTにて, クモ膜下出血と診断され, Hunt & Hessの分類ではGrade IVであり, 重篤な不整脈もみられたため, 腰椎ドレナージを留置後, 意図的晩期手術を予定した.その後, 意識レベルは徐々にアップし, 神経学的な改善を認めたものの, 発症後10日目に再出血を起こし, 19日目に死亡した.内頸動脈とは解剖学的関連のない, いわゆる真の後交通動脈瘤は稀であり, 渉猟し得るかぎり, 本例を含め19例であった.一方, 本例のように神経学的に重篤な症例においても, 血管内手術等の非侵襲的な治療を積極的に行ってゆくべきであると考えられた.
著者
竹内 東太郎 笠原 英司 岩崎 光芳 楠見 嘉晃
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.7, pp.471-477, 1997-07-20

症例は59歳男性で,1993年4月より発熱が続き,6月16日に視野障害,意識障害にて来院した.心臓カラードプラー検査で僧帽弁閉鎖不全症,頭部CTで右後頭葉脳内出血を認めた.6月22日に血腫摘出術を施行し,病理所見で血腫周囲の血管に炎症所見を認めた.7月2日にくも膜下出血を発症し,脳血管写で入院時に正常であった左M1-M2移行部に動脈瘤を認め,7月3日に頸部クリッピングを施行し退院した.10月28日に再びくも膜下出血で来院し,脳血管写で前回には正常であった右M1-M3部に狭小化とビーズ様所見を認め,11月11日に再出血により死亡した.全経過中,全身性炎症所見が認められたが,動脈血培養は陰性であった.剖検で右M3部に紡錘形動脈瘤を認めた.病理所見で内膜の炎症・破壊と血管内血液の内膜内への侵入が認められ,細菌性血管炎と細菌性動脈瘤による出血と考えられた.
著者
鈴木 議介 目黒 琴生 鶴島 英夫 和田 光功 長友 康 中井 啓 藤田 桂史 成島 浄 中田 義隆 小野 幸雄
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.316-321, 1997-05-20
被引用文献数
1

脳主幹動脈閉塞症は急性期の適切な治療により,その重篤な症状を軽快させることができる.われわれは70例に急性期血栓溶解療法を施行し,良好な結果を得ているが,その中で急性期の治療のみでは十分な結果が得られず,二期的に血行再建術を要したものが4例存在した.4例とも経過はきわめて良好であり,虚血の再発を予防するため,あるいはより完全な血行動態を得るために有効な方法と考えられた.二期的な血行再建法(staged revascularization)を必要とする症例が存在し,このことを念頭において検査および治療を選択するべきであると思われた.
著者
吉本 祐介 相原 寛 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.534-537, 2006-07-20
被引用文献数
1

稀ではあるものの,頸椎・頸髄疾患が片麻痺で発症することがある.今回われわれは,片麻痺にて発症した後縦靭帯骨化症および頸髄硬膜外血腫の2例を経験した.いずれの症例も,頸髄が片側優位に圧排されたため片麻痺をきたしたものと思われた.片麻痺をきたす疾患の鑑別診断として,頸椎レベルの病変も念頭に診療に当たるべきであり,頸部痛がある場合や外傷例,頭部MRlによっても片麻痺の責任病巣が明らかでない場合には,迅速に頸椎レベルまで検索範囲を広げて精査する必要がある.