著者
平山 恵造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.65, 1974-01-01

ArgyllはRobertsonの名で,Argyll-Robertsonと間にハイフンを入れるのは正しくない。 Argyll Robertson徴候は①対光反応の消失(直接性および同感性とも),②輻輳・調節反応の保持,並びに③縮瞳である。しかし,縮瞳をこの条件の中に入れるか,縮瞳は合併し得る徴候とするかは人により見解が異なる。Argyll Robertsonの原著(1869)に従えば,縮瞳はその条件の一つである。
著者
平山 恵造
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.291, 1976-03-01

末梢性顔面神経麻痺に伴つてみられる現象で,麻痺の直後からみられる場合もあるといわれるが,普通数週ないし数カ月おくれてみられるものが多い。患者が食事をはじめると顔面麻痺の側の眼から流涙が起こり,食事が終わると止む。流涙は上床覚の刺激が重要であつて,咀嚼運動のみでも,また舌などに機械的刺激を与えても起こらない。そして,感情的に泣くときには,むしろ流涙が起こらない。 鑑別上注意しなくてはならない流涙がある。すなわち,末梢性顔而神経麻痺では眼輪筋の涙管部にあるHorner筋も麻痺するために,涙管腔がつぶれて,自然の涙が鼻腔へ流れるのが妨げられて,目に涙が多く溜り,これがときとして顔面に流れ出る程のことがある。これは食事や,味覚に関係なく,空涙症候群では発作的な流涙であることが特徴的で,容易に区別されよう。
著者
平山 恵造
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.58, 1974-01-01

緊張性の瞳孔反応障害と腱反射消失からなつている。瞳孔は対光および幅輳に対し反応がおそく,光を当てると徐々に収縮し,暗室におくとき,ゆつくりと散瞳する。輻輳でも同様である。そのため一見して瞳孔反応が消失してみえることもある。瞳孔障害は両側性にもくるが,多くは一側性で,障害側の瞳孔が健側より大きいことが多い。すなわちArgyll Robertson徴候にみるような縮瞳はあまりみられない。しかも瞳孔は正円形を呈さず卵円形,楕円形をなす。 腱反射の消失は上肢よりは下肢において目立ち,Adie症候群の約2/3はこのような完全な形とされているが,1/3は腱反射消失を伴わない不完全な型である。
著者
服部 孝道 平山 恵造
出版者
千葉医学会
雑誌
千葉医学雑誌 = Chiba medical journal (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.289-292, 1991-12-01
被引用文献数
1

神経内科外来患者1193名に対し排尿症状についてのアンケート調査を行なった結果,日中頻尿は17.1%,夜間頻尿は20.2%,尿意切迫感は28.3%,閉塞症状は13.8%,切迫性尿失禁は6.5%,腹圧性尿失禁は9.1%,夜間遺尿は1.5%にみられ,患者の50.4%がなんらかの排尿症状を有していた。排尿症状全体の有病率は加齢と共に明らかな増加傾向を示し,日中頻尿と夜間頻尿,閉塞症状は男性に多く,腹圧性尿失禁は女性に多く,その他の症状には性差はなかった。従来報告されている尿失禁の頻度から推測すると,一般社会に生活する人もこの結果とほぼ同様な頻度に種々の排尿症状があるものの推測された。
著者
柿原 加代子 平山 恵美子 宮田 智子
出版者
日本国際情報学会
雑誌
国際情報研究 (ISSN:18842178)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.86-93, 2016-12-25 (Released:2016-12-30)
参考文献数
16

Abstract:The principal aims of the present study were to elucidate differences by life stage and comparatively examine the utility of the model by Holland et al. used for analysis of the psychological progress in patients with breast cancer during the fight against the disease following the notification of cancer. We comparatively examined the behavior of patients with breast cancer using phases 1–3 of the model by Holland et al. to classify and categorize each psychological state. The results revealed the following points:1) with regard to the psychological process following notification of breast cancer, there were cases in which the patients passed from phases 1 and 2 to reach the phase 3 of "adaption" and cases in which the patients shifted to phase 3 without going through phases 1 and 2. In addition, individual differences were remarkable during the periods of each phase. The model of Holland et al. is useful as a reference in understanding the psychological process of breast cancer patients following notification of cancer, thereby making it possible to elucidate the characteristics of the individual psychological processes of patients with breast cancer. 2) In the case of young women, especially single women with no spouse, the psychological impact of "anxiety" "shock," "fear concerning the future," etc. was great. In particular, patients specifically manifested complex psychological anxiety and fear concerning damage to femininity and motherliness.That is, the psychological process following notification had a significant effect on life stages. 3) The results show that support by nearby family members, health care practitioners, and other persons who have experienced breast cancer contributes to the amelioration of the various anxieties and fears that breast cancer patients feel after notification and promotes adaptation.
著者
平山 恵
出版者
明治学院大学国際学部
雑誌
国際学研究 (ISSN:0918984X)
巻号頁・発行日
no.49, pp.25-49, 2016-03

1994年のルワンダの虐殺後にHIV感染による多重苦にある人々は何を「拠り所」にし、何を求めているのかを明らかにして支援の内容を再考する研究である。2001年に23人、2010年に100人のHIV陽性者より聞き取りを行い、質的および統計的に分析した。①配偶者からの感染者は、2001年には「家族」を頼りにしていたが、2010年は「政府やNGOなどの援助団体」や「医療従事者」を頼りにしていた。面接時は虐殺で「怒りと悲しみ」の感情が見られる人と、援助に「満足」しているか「諦め」ているために黙っている人に二分された。②レイプ感染者は2001年は住居や薬をもとめていたが、2010年は自分自身の教育を強く求めるようになった。③売春による感染者は「家族」を頼りにしていて「残される子供のケア」を求める傾向があった。④母子感染は2010年に現れた新たな感染経路で特に子供の感染者から「親が感染者と分かっているのになぜ自分を産んだのか」という「怒り」の声も聴かれた。【論文/Articles】
著者
平山 恵津子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.437-442, 2004-07-01 (Released:2004-07-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

The influenza virus copies its genomic RNA in the nuclei of host cells, but the viral particles are formed at the plasma membrane. Thus the export of a new genome from the nucleus into the cytoplasm is essential for viral production. Several viral proteins, such as nucleoprotein (NP), RNA polymerases, and matrix protein 1 (M1), synthesized in the cytoplasm are imported into the nucleus and form a viral ribonucleoprotein complex (vRNP) with new genomic RNA. vRNP is then exported into the cytoplasm from the nucleus. It was found unexpectedly that the production of influenza virus was suppressed in Madin-Darby canine kidney cells at 41°C, although viral proteins were synthesized, because nuclear export of vRNP is blocked by the dissociation of M1 from vRNP. It was also suggested that a certain protein(s) synthesized only at 41°C inhibited the association of M1 with vRNP. The potential of heat-shock protein 70 (HSP70) as a candidate obstructive protein was investigated. Induction of HSP70 by prostaglandin A1 (PGA1) at 37°C caused the suppression of virus production. The nuclear export of viral proteins was inhibited by PGA1, and M1 was not associated with vRNP, indicating that HSP70 prevents M1 from binding to vRNP. An immunoprecipitation assay showed that HSP70 was bound to vRNP, suggesting that the interaction of HSP70 with vRNP is the reason for the dissociation of M1.
著者
平山 恵造
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.436, 1974-04-01

1937, 1938, 1939年にわたつてH.KlüverとP.C.Bucyが,猿の両側の側頭葉切除に際して現われた症状を記述した。すなわち,①生物,無生物,有害物,無害物を問わず,逡巡することなく接近する行動,すなわちLissauerの連合型精神盲,または視覚失認を思わせるような行動を呈する(psychic blindness)②物をやたら口にもって行き,口中に入れ,噛み,なめずり,唇でさわり,鼻先でにおいをかぐなどの動作がみられる(oral tendencies).食べられないものは捨て,食べられるものはのみ込む。③目にうつるものは生物,無生物を問わず,あちこちと視線を送り,それに反応する。周囲の事物,変化に対しあたかも強いられたかのごとくに反応する(hyper—metamorphosis)。④怒り・不安の反応が消失し,危険物をさけなくなり,無表情となることもあり,情動行為が変化する。ときには攻撃的反応をとることもある。(emotionalbehavior changes)⑤性行動が変化し,heterosexual,homosexual,autosexualなどの性行動がみられる(increased sexual activity)。 これら症状が,さらに一層基本的な障害によつて生じたものでないか,もつと根本的な機序が働いているのではないかということは人々の考えるところであるが,KlüverとBucyもその検討を加えたすえ,そのような型にまとめることは望み難いとしている。
著者
榊原 隆次 福武 敏夫 平山 恵造
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.161-166, 1992-08-01
被引用文献数
1

単純ヘルペス脳炎(HSE)自験30例を,臨床症候・画像検査により側頭葉型,側頭葉脳幹型,脳幹型に分けると,脳幹型(7例,23%)は他の2型に比し,発病早期には頭痛,発熱が少なく,GOT・GPT値の異常高値がみられず,初回腰椎穿刺時の髄液圧が平均85mmH_2Oと低く,病像完成期には意識障害が高度であったが,脳波上での周期性同期性放電がみられないなどの特色を示した。脳幹障害を示唆する症候として,corectopiaや対光反射消失などの瞳孔異常,眼頭反射の消失や緩徐・急速相のない自発眼振などの眼球運動異常,無呼吸や吃逆様呼吸などの呼吸異常を認めた。硬膜下水腫の合併が2例にみられたが非手術的に軽快し,死亡例・再発例がなく,自然軽快例もみられるなど予後良好であった。以上の脳幹型HSEの特徴はHSEの早期診断および治療にとって重要と考えられた。