著者
栗山 敏秀 青井 利一 前田 裕司 伊東 隆喜 上野 吉史 中家 利幸 松井 信近 奥村 浩行
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学 生物理工学部 紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.27, pp.39-46, 2011-03-01

[要旨] 冬季に、自動車のドアや玄関の金属製ノブに手が触れた瞬間、「パチッ」と火花が飛んで痛みを感じた、という事はよく経験する。これは、身体にたまった静電気が金属との間で放電したためで、この時、身体の電圧は10,000ボルト以上になっている。カミナリも、よく知られているように、雲が帯電(静電気を帯びること)し、雲と雲、雲と地面などの間で放電する現象である。 我々は、医療、福祉、そして生活の向上に貢献したいと願い、人体の帯電を含め、さまざまな静電気を測定する技術を開発している。とくに、最近のLSI(集積回路)や液晶パネルにおいて、静電気により壊れるという現象が頻繁に起こっており、人体だけではなくモノ同士の接触、剥離による静電気の発生にも取り組んでいる。静電気は目に見えないので対策が困難であるが、これを見ることができる装置ができれば、それを防ぐ設計や対策に役立つと考えられる。今回、シリコン・マイクロマシーニング技術(半導体製造技術などによりシリコンを微細加工する技術)を用いシリコン製マイクロミラーを製作し、これを光学的な手段と組み合わせて静電気を測定する装置を開発し、摩擦帯電装置を用いた人体の帯電モデルについて適用した。 [Abstract] A silicon micro-mirror array fabricated by MEMS (Micro Electro-Mechanical Systems) process has been made for an electrostatic field distribution measurement system. Each silicon micro-mirror is suspended by two thin torsion bars, which is made by semiconductor process. Deflection of each micro-mirror is measured optically by using an optical scanner and PSD(Position Sensitive Detector). The electrostatic field distribution measurement system is applied to a human body model.
著者
小林 邦雄
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.47-61, 2008-03

大学生の基本的学習観について,アイデンティティ,孤独感,及び映画鑑賞のあり方との関係において,検討することが,本研究の主要な目的である.1年生,上級学年の学生の2群からなる162名の大学生に,思春期・青年期をテーマとした映画を鑑賞させた.映画は2種類あり,各群は1種のみ鑑賞した.直後に映画鑑賞のあり方を評定する課題,基本的学習観,アイデンティティ,及び孤独感を査定する質問紙を実施した.回答に対する因子分析,及び項目分析の結果に基づき尺度構成を行い,尺度間の関係の分析には主として相関分析を用いた.基本的学習観の測定尺度は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」,「方略志向」,及び「意味理解志向」の4尺度で構成した.「アイデンティティの確立」の進んだ被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「意味理解志向」も強い傾向が見出されたが,「アイデンティティの基礎」は学習観に関わりがないことが示された.3尺度からなる「孤独感」尺度の中で人間どうしの「理解・共感の可能性」への期待・信頼を査定する尺度の得点が高い被検者において,「失敗に対する柔軟性」が高く,「方略志向」と「意味理解志向」も強いことが示されたが,「孤立感」については,1年生では「孤立感」の強い者が「方略志向」も強いが,上級学年では,「孤立感」の強い者は「方略志向」が弱いという学年によって全く反対の結果が示された.また,「自己の個別性の自覚」が強い被検者は「失敗に対する柔軟性」,「過程重視志向」が強く,「意味理解志向」も弱くはない傾向が見出された.1年生では「自己の個別性の自覚」が強い者は「方略志向」も強かった.上級学年群では,映画の「卓越性」に高い評定を与えた被検者ほど「方略志向」,「失敗に対する柔軟性」が強く,「過程重視志向」も弱くないこと,また「強靭」に高い評価を与えた被検者ほど「方略志向」が弱くはない可能性が示唆されたが,1年生では基本的学習観と映画鑑賞のあり方との間に有意な相関は見出されなかった.以上の結果は,アイデンティティ,孤独感において発達の進んだ被検者は,基本的学習観もポジティヴであり,映画鑑賞力も高いであろうという仮説を概ね支持するものであった.
著者
蘇 霆軒 江邉 正平 大池 達矢 岡南 政宏 阿野 貴司
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kindai University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.39, pp.27-38, 2017-02-28

[要旨] ミミズは土壌を摂食行動により団粒化し、さらに落ち葉などの植物リターを腸内で分解し土壌ヘ肥料成分を供給することで植物生長を促進すると考えられている。また、ミミズは多くの微生物と共生していることが知られており、ミミズ共生微生物も植物の生長に重要な役割を担っていると考えられている。本研究では、ミミズおよびミミズ共生微生物による植物生長促進効果の解明を目的として実験を行った。まず、近畿大学生物理工学部構内からミミズを採取し、土壌でのミミズ飼育試験およびミミズ飼育土壌を用いた植物栽培試験を行い、ミミズの種類と存在量が植物に与える影響を調査した。その結果、近畿大学構内に生息する4種類のミミズを同定し、植物栽培試験により一部のミミズが植物の生長を促進することが認められた。採取されたミミズの中でもへンイセイミミズは、飼育数が多いほど、植物生長を促進した。またミミズを2週間飼育した土壌の成分を分析したところ、飼育土壊における硝酸態イオン濃度の増加が認められ、ミミズは硝化能力を持つ微生物と共生していることが示唆された。そこで、ミミズ腸内において硝化に関わる微生物の存在を明らかにするため、ヘンイセイミミズから糞を回収し硝化菌検出用培地で培養したところ、アンモニウムイオンからの亜硝酸イオンと硝酸イオンの生成が認められた。[Abstract] Earthworms eat both plant litter and soil, and help plant growth by changing soil structure and increasing the nutrients of the soil. They also have a symbiotic relationship with various microorganisms, which led us to hypothesize if the microorganisms found in the earthworms play an important role in plant growth. In this study, we investigated the influence of earthworm type and quantity on plant growth using cultivated soils of the earthworms collected from the Kindai University campus (Faculty of Biology-Oriented Science and Technology in Wakayama). As a result, we identified 4 earthworm species, some of which showed growth promoting effect on plants. In additon, as the amount of earthworms Pheretima heteropoda increased, the growth promotion effect of earthworm-cultivating soil increased. Nitrate was increased in soils that cultivated earthworms for 2 weeks, suggesting that some of the microorganisms symbiotic in the earthworm may potentially have the ability of nitrification. To elucidate if there is nitrifying bacteria within the earthworms, we incubated the cast of earthworms. P.heteropoda in the medium for detecting nitrifying bacteria. As a result, we confirmed nitrite and nitrate production activity from ammonia in the earthworm cast.
著者
河本 敬子 西田 吉伯 一野 天利
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学 生物理工学部 紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.28, pp.53-60, 2011-09-01

[要旨] RoboCupサッカーシミュレーションはマルチエージェントシステムの研究における様々な知見が得られるものとして期待されている. マルチエージェントシステムにおける各工一ジェントの動作がシミュレーション結果に重要な影響を及ぼすことがあり, エージェント群における有効な協調行動を実現する適切なパラメータを獲得する方法として, 遺伝的アルゴリズムなどが知られている. 本研究では, RoboCup2Dサッカーシミュレーションにおけるチーム強化方法として, エージェントの動作を制御するパラメータを対象とした遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm: GA)の有効性を検討する. さらに, GAの交叉方法の比較として, 1点交叉と2点交叉の検討を行った. 本研究室では, 卒業研究のテーマとしてRoboCupシミュレーション(2Dサッカー, 3Dサッカー, レスキュー)を扱っており, 2007年から5年連続で, RoboCupジャパンオープン(国内最大規模の大会)に学生が出場し, 2011年には2Dサッカーシミュレーションリーグ部門で3位入賞した. [Abstract] RoboCup soccer simulation is expected to bring a variety of knowledge in research into multi-agent systems. The behavior of each agent in a multi-agent system has an important effect on the simulation results, and methods such as genetic algorithms are known as methods for obtaining suitable parameters for delivering effective cooperative behavior in a group of agents. In this paper, the effectiveness of strengthening teams using genetic algorithms in the RoboCup2D soccer simulation is investigated.
著者
長谷川 由美 服部 圭子 坂田 直樹
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.25-33, 2014-03

[要旨]ランゲージスペース(以下LSとする)の学生参加率の向上を目的とし、2つの調査を行った。 1つは学生を対象にしたLSに参加可能な曜日・時間帯に関するオンラインアンケート, もう1つは履修登録状況のデータによる空き時間の調査である。 両調査結果の相関係数がある程度高かったため, 今後は履修状況の調査を行うことで, 学生の参加可能な時間帯を割り出すことが可能であることがわかった。 また, 1限・5限を中心に学生がLSに参加可能であることが判明したが, 多くの学生が遠方より通学している現実を鑑みると, これらの時間帯にLSを実施することが本当に参加者の増加を促すかどうかという点においては, 今後さらに調査を重ねる必要がある。 今回の調査結果を踏まえて, 今後も様々な学生が参加しやすい時間帯にLSを設定しすることを検討して行くとともに, 平成26年4.月度からの1年生対象科目である「総合英語1、2」と「基礎英語1, 2」受講者へのLS参加必修化に備える必要がある。 [Abstract] To increase the number of students participating in "Language Space," two surveys were conducted to determine which periods they are more likely to come: a) an on-line questionnaire asking students which periods they can come; b) analysis of 15'- and 2nd- year students' registration data. The results show that the two surveys show the similar tendency, indicating that students' registration information is relatively useful data for grasping students' overall probability to participate in LS. However, the results showing that l'`- and 5t- periods are good for students should be carefully interpreted because these periods may be possible but may not be feasible for students to come to LS, since many students commute long distance. This is virtually the first attempt to grasp students' probability to participate in LS. Its activities have not been necessarily conducted now on the periods this study found students are likely to come, but in the future, we may have to arrange LS schedule based on students' weekly schedules.
著者
江邉 正平 大池 達矢 岡南 政宏 阿野 貴司
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.15-26, 2014-09

[要旨] 微生物燃料電池とは, 微生物が有機物を分解する過程で生じる電子を電気エネルギーとして回収する装置である. 微生物燃料電池は, 有機物から直接電気エネルギーを取り出すことが出来ることから, 廃水処理と組み合わせた利用が考えられている. 本研究では, モデル微生物であり, 数多くの食品にも利用されている酵母を用いた微生物燃料電池の開発を行った. そして酵母を用いた微生物燃料電池の発電効率を上げるため2つのアプローチを試みた. それらは酵母と乳酸菌を共培養した際に形成される複合バイオフィルムと微生物燃料電池を組み合わせたものと、燻炭による代謝促進と微生物燃料電池を組み合わせたものである. 本研究により, 強い複合バイオフィルム形成を行う酵母と乳酸菌の組み合わせを特定できた. この組み合わせを微生物燃料電池に組み込むことで, 酵母, 乳酸菌それぞれ単独で発電を行ったものよりも高い発電力が得られた. また, 酵母培養液に燻炭を添加することにより代謝が促進されることが示され, 燻炭を酵母微生物燃料電池へ組み込むことで高い発電力を得ることができた. [Abstract] Microbial fuel cells (MFCs) are devices that can use microorganisms as biocatalysts to directly convert chemical energy to electricity. Combining with wastewater treatment process with MFCs makes the electricity generation possible from organic waste. In this study, we used yeast and two approaches were attempted to enhance the performances of MFCs. One approach was a mixed-species biofilm in coculture of yeasts and lactic acid bacteria, and the other was addition of biocharwhich enhances microbial metabolic activity. We found the combination of yeast and lactic acid bacterium, which forms a strong mixed-species biofilm, produced more electricity than the monoculture of the microbe. Fermentation of yeasts was stimulated by the presence of biochar and the yeast-based MFCs with biochar produced more electricity than those without biochar.
著者
栗山 敏秀 青井 利一 前田 裕司 伊東 隆喜 上野 吉史 中家 利幸 松井 信近 奥村 浩行
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.27, pp.39-46, 2011-03

[要旨] 冬季に、自動車のドアや玄関の金属製ノブに手が触れた瞬間、「パチッ」と火花が飛んで痛みを感じた、という事はよく経験する。これは、身体にたまった静電気が金属との間で放電したためで、この時、身体の電圧は10,000ボルト以上になっている。カミナリも、よく知られているように、雲が帯電(静電気を帯びること)し、雲と雲、雲と地面などの間で放電する現象である。 我々は、医療、福祉、そして生活の向上に貢献したいと願い、人体の帯電を含め、さまざまな静電気を測定する技術を開発している。とくに、最近のLSI(集積回路)や液晶パネルにおいて、静電気により壊れるという現象が頻繁に起こっており、人体だけではなくモノ同士の接触、剥離による静電気の発生にも取り組んでいる。静電気は目に見えないので対策が困難であるが、これを見ることができる装置ができれば、それを防ぐ設計や対策に役立つと考えられる。今回、シリコン・マイクロマシーニング技術(半導体製造技術などによりシリコンを微細加工する技術)を用いシリコン製マイクロミラーを製作し、これを光学的な手段と組み合わせて静電気を測定する装置を開発し、摩擦帯電装置を用いた人体の帯電モデルについて適用した。 [Abstract] A silicon micro-mirror array fabricated by MEMS (Micro Electro-Mechanical Systems) process has been made for an electrostatic field distribution measurement system. Each silicon micro-mirror is suspended by two thin torsion bars, which is made by semiconductor process. Deflection of each micro-mirror is measured optically by using an optical scanner and PSD(Position Sensitive Detector). The electrostatic field distribution measurement system is applied to a human body model.
著者
向井 真也 岩山 順 森永 真二 武部 聡
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.19, pp.51-56, 2007-03-01

Bacillus thuringiensis (Bt)が産生する結晶性殺虫タンパク質(クリスタル)の精製法を、双翅目特異的殺虫クリスタル生産菌Bt. subsp. israelensis HD522株およびその変異株を用いて検討した。クリスタル、胞子および細胞破砕物を含む粗抽出液を30-40%NaBr連続密度勾配遠心法を用いて分離したところ、クリスタルは33%NaBr付近に層を形成した。この濃度における密度の理論値は1.318g/cm^3で、Ang & Nickersonの報告にあるBtクリスタルの密度1.32g/cm^3と合致している。SEMを用いた観察では、クリスタル層に胞子の混入はほとんど認められず、SDS-PAGEによる構成タンパク質の確認では、殺虫タンパク質(Cry)の分子量である130kDaタンパク質がメインバンドとして検出された。また、ネッタイシマカ幼生を用いた生物検定では、精製による殺虫活性の低下は認められなかった。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.26, pp.93-116, 2010-09

2009年8月30日の衆議院議員選挙の結果、政権交代が起こり、翌9月16日、民主党と社会民主党および国民新党の3党連立からなる鳩山由紀夫政権が成立した。その鳩山首相は「新しい政治」を提唱した。しかし、鳩山政権は、普天間基地移設問題で立ち往生し、わずか8ヶ月余りの短命に終わった。但し、鳩山が提唱した「新しい政治」は、その後継である菅直人政権に継承された。本稿では、政権交代により民主党政権から提起された「新しい政治」の政治的意義について、冷戦以降の20年間におけるく新しい政治〉およびその第2局面という文脈の中で捉え返しながら、政治学による学理的省察を行うものである。 (英文) As a result of Japanese Parliament of Representatives election of August 30, 2009, made the change of government. September 16, HATOYAMA Yukio government was formed a cabinet as the three-party coalition government consisting of the Democratic Party, the Social Democratic Party and the People's New Party. The Prime Minister HATOYAMA advocated "new politics". However, HATOYAMA government came to a deadlock by the issue of Futenma military base in Okinawa, and collapsed in only more than 8 months. But, KAN Naoto new government succeeded to "new politics" that advocated by HATOYAMA government. Then, the purpose of this study is to analyze the political signification of "new politics" advocated the Democratic Party government, HATOYAMA and KAN, in the context of the New Politics of twenty years after the cold war, and the second situation of New Politics.
著者
小林 邦雄
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-78, 2006-03-31

79名の大学1年生に,「同一性混乱尺度」と「孤独感類型判別尺度」の2種類の質問紙を施行した。孤独感類型判別尺度により全被検者は4つのタイプに類型化された。孤独感類型判別尺度は「自己の個別性の自覚」と「理解・共感の可能性」への信頼・期待を測定する2つの下位尺度で構成される。最も「自己の個別性の自覚」の低いA型と最も「自己の個別性の自覚」の高いD型において,被検者の度数が統計的に等しかった。この結果は,大学生においては殆んど例外なくD型がA型の度数を上回るという先行研究と合致しなかった。一方,「自己の個別性の自覚」尺度全7項目のうち6項目でD型がA型より有意に得点平均が高かった。「理解・共感の可能性」尺度全9項目のうち6項目で,A型はD型より得点平均が高く,前者の依存性の強さを示唆するとも考えられた。またD型はA型より同一性混乱(悩み)の程度が高く,前者では自己に関わる多様な「悩み」がA型より強く意識されていることが示唆された。以上の結果は,中学生を対象とした先行研究において示された,発達的に最も進んでいると考えられ争D型が最も未熟と考えられるA型よりストレス(悩み)が多いという結果と符節を合わせ,発達と悩みの不可分の関係を示唆するものと考えられた。
著者
新田 和宏
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.33-46, 2008-03

政治の世界において、政治の言葉というもののしめる重みが増している。政権担当者や政治指導者から発せられる政治の言葉が大きい意味をもつようになった。とりわけ、5年5ヶ月に及んだ小泉政権と連動するかたちで顕在化した「新しい政治(new politics)」の一つの側面として、「ワンフレーズ・ポリティクス」とも言われる、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治の重要性を指摘することができる。本稿は、そのような「新しい政治」としてのアイディアの政治について着目し、その省察を試みる。これまで、政治学は、「政治は何によって決定されるのか?」という問いにこだわってきた。政治的フレーズを用いるアイディアの政治について検討することは、こうした政治学の問いに対して、一定程度の返答を提示することにもなるであろう。本稿は、アイディアの政治に関連する諸概念の定義を踏まえ、小泉政治が問題提起したというべき、「不利益政治」とアイディアの政治、テレポリティクスと「劇場型政治」、インターネット・ポリティクスと「新しい右翼」、並びにアイディアの政治の政治的学習、というアイディアの政治に関する諸論点について検討を行う。こうして、本稿は、政治的フレーズを駆使するアイディアの政治が、一体、どこまで政治を決定することができるか、この点についても確定したいと思う。
著者
熊倉 靖
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-13, 2000-02-25

機械工業は産業革命以来工業の指導的役割を果たして来た。第2次世界大戦後はエレクトロニクスと結びついてメカトロニクスを生み出した。更なる発展のために発想の転換を迫られ、生物に目が注がれるようになった。ここで誕生したのがバイオメカニクスとバイオミメテイクスである。前者は生態の機能を分析し、生体の一部を人工的に作成して医療や福祉に貢献している。後者は生物の形態、機能、行動を観察し、優れた点を機械工業に取り入れてこれを発展向上させようとする技術である。バイオミメテイクスの歴史は古いが技術として認知されたのは最近のことで、次の4点を目標として適用されている。1.新しい材料を開発する。2.新しい機構、構造を開発する。3.新しいシステムやアルゴリズムを設計する。4.熟練者の技能や人間の感性を分析し具体化する。本稿ではこの目的に沿った適用例を紹介し、今後の参考に供するするものであるが,いずれの場合でも生物側にシーズが、また適用側にニーズがあり、この仲介役とて工学があるというバイオミメテイクスの特徴を備えている。バイオミメテイクスの具体化の方法としては名案はないが、次の3方法が考えられる。第1案運良く思いつく。第2案過去の適用例をニーズとシーズ、仲介の工学で分類しておく。第3案シーズとニーズのそれぞれの側から開発を進める。今後、バイオミメテイクスは従来解決が困難であると考えられて来た環境保全や人間の感性や勘、コツといった分野にも深く立ち入って行くことが期待される。
著者
高木 良介 宮下 知幸
出版者
近畿大学生物理工学部
雑誌
Memoirs of the Faculty of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
no.25, pp.17-24, 2010-03

Departmental Bulletin Paper貝殻形成に関与するタンパク質の多くはカルシウム結合能を持ち、加えて様々な結合様式を呈する。その中で、翻訳後修飾が関与する機構は重要であり、主に2つの機構が考えられる。1つは糖鎖に結合した硫酸基を介するもので、もう1つはリン酸基を介するものである。これらの修飾を受けた部位は負電荷を持つためにカルシウムイオンを引き寄せる。本研究では、カルシウム結合部位と予想されるリン酸基に注目し、パーリンのリン酸化修飾について検証した。パーリンはアコヤ貝の真珠層に含まれる分子量約16KDaのタンパク質で、カルシウム結合能があり、炭酸カルシウムの結晶形成を抑制的に制御する機能を持つ。ウェブ上のリン酸化修飾を予測するプログラムを用いてパーリンのリン酸化部位を予測し、パーリンは7ヶ所のリン酸化修飾される可能性がある部位を持つと予測された。リン酸化タンパク質検出試薬で解析した結果、パーリンはリン酸化タンパク質であることが証明された。また、アルカリホスファターゼを用いてパーリンの脱リン酸化を行った。その結果、パーリンは1分子当たり1個から2個のリン酸化修飾を受けていることを示唆した。
著者
松井 和幸 堀端 章
出版者
近畿大学
雑誌
Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University = 近畿大学生物理工学部紀要 (ISSN:13427202)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.7-12, 2005-09-30

筆者らは、イネに内在するトランスポゾンmPingの転移を利用して挿入突然変異体を作成し、これを用いたイネの遺伝子機能解析を進めている。トランスポゾンディスプレイはmPingの挿入位置に関する多型を網羅的に検出する優れた方法であるが、ゲノム内に散在するmPingのコピー数が著しく多い場合には増幅される断片を減らす必要がある。そこで、本研究では、mPingによるトランスポゾンディスプレイにおいて、アダプタープライマーの3'末端に付加した選択塩基が増幅産物の数を減らす効果を検証した。その結果、1塩基を付加した場合には増幅産物の選択が正常に行われるが、2塩基を付加した場合には擬陽性シグナルが生じるため、正常な選択が行われないことが明らかとなった。