著者
矢島 愛子 小向 奈津美 小林 沙織 神志那 弘明 大石 明広 佐藤 れえ子 安田 準
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.79-86, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
17

ヒト用免疫阻害法CK-MB測定用試薬を用いて,犬血清CK-BBを測定できるかを検討した。犬血清をマウス抗ヒトCK-MMモノクローナル抗体(M抗体)と正常マウスIgG抗体(陰性コントロール)にそれぞれ感作させた後,無処理犬血清と共にアガロース電気泳動・CK酵素染色した。無処理血清および陰性コントロール血清では,CK-BBとCK-MMが認められた。M抗体処理血清ではCK-BBは出現したがCK-MMは消失して阻害効果を認めた。次に,犬血清とCK-MB活性値が既知のコントロール液の段階希釈検体を免疫阻害法で測定したところ,双方の検量線は良好な直線性が認められた。さらに28頭の犬を用いて,免疫阻害法と電気泳動法において,M抗体で阻害されない残存CKとCK-BBの間および両方の測定方法で得たCK-MMの間で良好な相関関係を認めた。犬でも免疫阻害法にてCK-BBを評価できることから,犬の神経疾患のスクリーニング検査に用いることができると考えられた。
著者
近澤 征史朗 小林 秀樹 堀 泰智 星 史雄 金井 一享 伊藤 直之 佐藤 淳 山本 祥大 立花 麻子 春原 瑠美 打出 毅 折野 宏一 渡辺 清隆 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.71-77, 2010-09-20 (Released:2011-12-16)
参考文献数
28

犬の多中心型リンパ腫(Multicentric Lymphoma: ML)における血清フェリチン濃度を指標とした病態モニタリングの有用性を評価した。ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay)法を用いて測定したMLの診断時血清フェリチン濃度は健常犬と比較して有意に高値を示し(平均値±標準偏差:1448±546および373±122 ng/ml,p<0.0001),化学療法の経過に伴って大きく変動した。また,完全寛解時の血清フェリチン濃度は健常犬と同等レベルまで低下し,再燃時には再び上昇する傾向を認めた。血清フェリチン濃度は他の悪性腫瘍,炎症など様々な疾患で高値を示すためMLの初期診断には適さないものの,MLの再燃予測あるいは抗がん剤治療中の病態モニタリングに有用な指標になり得る可能性が示唆された。
著者
船津 敏弘 前田 紀子 谷矢 隆介 山本 奈美絵
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.87-91, 2003 (Released:2007-11-02)
参考文献数
6

犬のボディ・コンディション・スコア(BCS)について、年齢、犬種、性別、飼育形態などの観点から検討を行った。さらに各種疾病におけるBCSの変化について調査した。子宮蓄膿症、皮膚病および跛行症例においてはBCS 5の症例が多かった。泌尿器疾患、消化器疾患においてはBCS 2の症例が多かった。循環器、肝臓疾患、腫瘍などではBCS 5およびBCS 1の両方が多い傾向が認められた。 死亡原因別にみると心不全はBCS 4のものとBCS 2の例が多かった。心不全で長期的な管理ができた例、および腎不全の症例ではBCS 2が多かった。肝障害ではBCS 5が多く、糖尿病ではBCS 5とBCS 1の症例に分かれた。犬のBCSの変化には十分注意することが重要であると思われた。
著者
深瀬 徹
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-6, 2007 (Released:2008-02-07)
参考文献数
18

1985年と1990年,1995年,2000年,2005年のそれぞれの年に,東京都およびそれに隣接する埼玉県,千葉県,神奈川県の諸地域,とくに市街地において,路上に放置されていた犬のものと考えられる糞便を50検体ずつ採取し,寄生虫の検査を行った。その結果,原虫ではコクシジウム類のオーシスト,条虫ではマンソン裂頭条虫の虫卵と瓜実条虫の片節,線虫では猫糞線虫と犬鉤虫,犬小回虫,犬回虫,犬鞭虫のそれぞれの虫卵が検出された。これらの寄生虫の検出率は年の経過とともに低下を示したが,瓜実条虫と犬回虫のように比較的高い検出率が保たれているものもあり,路上に犬の糞便を放置すると寄生虫の感染源となる可能性があることが示された。
著者
伊藤 直之 村岡 登 金井 一享 中尾 るり子 堀 泰智 星 史雄 樋口 誠一
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.19-23, 2008-03-20 (Released:2009-04-03)
参考文献数
29

一般家庭で飼育されている犬190頭および猫89頭から糞便を採取し,市販のELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)キットを用いてクリプトスポリジウム抗原を検出した。クリプトスポリジウム抗原は,犬では6.3%(12/190),猫では10.1%(9/89)の糞便から検出された。犬ではクリプトスポリジウム抗原の検出率は,糞便性状や年齢,性別,由来,生活環境のようなプロフィールと関連が認められなかった。同様に,猫においてもクリプトスポリジウム抗原検出とプロフィールとの間には,関連性が認められなかった。これらの成績から,一般家庭で飼育されている犬および猫において,クリプトスポリジウムの感染は,低率ではあるものの広く蔓延している可能性が示唆された。