著者
坂井 信之
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, 2006-11-25

においやかおりが漂ってくると,我々はそのにおいの元を目で探してしまう.そこでにおいの元が何であるか理解できたときには安心するし,においの元を探し出せないときには,しばらく不安な気持ちになってしまう.このように,人では,においやかおりは単独で機能するのではなく,絶えず他の感覚と同時に使用されることによって外界の認知に役立っている.<BR>これまで,本学会誌はにおいやかおりの受容機構に関する総説特集や研究論文を多く掲載してきた.しかしながら上述したような事例から,においはそれ単独で感じられるだけではなく,味覚や三叉神経覚などと統合され,風味や化学環境の知覚を形成していると考えられる.そこで本特集では,においやかおりと関連が深い他の感覚の受容機構とそれらと嗅覚との相互作用に関する総説論文を掲載し,読者の方々がにおい・かおりの受容機構をより広く深く理解する助けとしたい.<BR>最初に味覚の受容機構について長年にわたって生理学の観点から味覚を研究されてきた小川氏(熊本機能病院神経内科・熊本大学名誉教授)と脳磁場計測の手法により現在精力的に味覚の脳機構について研究を進められている小早川氏((独)産業技術総合研究所)にまとめていただいた.口腔内での味覚の末梢性受容機構から,味覚情報の脳内情報伝達系,サルやヒトの大脳での味覚情報処理など,最低限知っておくべき知識から最新の知見までを盛り沢山に紹介していただいており,大変読み応えのある総説になっている.<BR>次に三叉神経系の化学感覚の受容機構を駒井氏(東北大学)を中心として井上氏(日本たばこ産業(株)),長田氏(北海道医療大学)らにまとめていただいた.しばしば味覚や嗅覚と混同される炭酸の刺激感,カプサイシンによる辛味,メントールの刺激感などについて,末梢の受容機構を中心に解説していただいた.<BR>続いて,化学感覚ではないが,食物を摂取するときには必ず生じている口腔内の物理的感覚(温度やテクスチャーなど)の受容機構ならびに,それらと口腔内の化学感覚との関係について硲氏(朝日大学)にまとめていただいた.歯痛のときにしか生じないと思われている歯の「感覚」が,実は通常の食事時にも生じており,それが食物の固さの感覚や異物の検出に重要な役割を果たしていることは,ここで初めて目にされる読者の方も多いかもしれない.<BR>これまでの三論文が比較的単純な感覚の話であったのに対して,あとの二論文は,単一の感覚というよりも,複数の感覚が統合された結果生じる,より複雑な知覚の仕組みについてまとめている.いずれの論文も,におい(嗅覚)を中心にまとめられているため,読者の方の興味を引き,また実際の業務などへの応用も期待できるのではないだろうか.庄司氏((株)資生堂)の論文は嗅覚が他の感覚・知覚(視覚や体性感覚など)に及ぼす影響を,反対に,坂井の論文は他の感覚(視覚や味覚など)が嗅覚の質の識別や強度評定,快不快判断などに及ぼす影響について紹介している.<BR>このように,一言でにおいと言ってもそれが必ずしも嗅覚の単一の感覚からなるというわけではない.我々が「においがする」と思っているときには,ここに述べたような他の感覚や知覚によって修飾され(歪められ)た結果生じたにおい体験(嗅覚知覚)を感じていることが多い.これらのことに加えて,においに対する嗅ぐ人の経験や知識などの要因も絡んでくるため,結果として,においの感じ方には個人差が大きくなるのである.今回の特集を機に,多くの読者がにおいの奥深さについて認識を深めていただければ幸いである.
著者
中台 忠信
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.21-27, 2013-01-15 (Released:2017-10-11)
参考文献数
36

醤油はかおりが命の醸造食品であるので,異臭は大きな欠点となる.醤油の異臭の代表であるn-酪酸は醤油麹の製麹中にBacillus属細菌により生成されるので,この菌の汚染を防止することにより,n-酪酸の生成を低減できる.そのためには,盛込みライン,製麹装置の洗浄・殺菌・乾燥により,盛込み時の初発汚染芽胞細菌数を低減することが重要である.次に,仕込み,開栓中の産膜性酵母の生育により,イソ酪酸,イソ吉草酸の異臭が生成される.産膜性酵母の仕込み中の生育抑制のためには,諸味中のアルコール発酵を旺盛化することである.開栓中の産膜性酵母の生育抑制のためには,詰め前殺菌することである.
著者
東原 和成
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.123-125, 2005

平成13年, 環境省は, 全国のなかから「かおり風景100選」を選定した. 豊かなかおりとその源となる自然や文化・生活を一体として, 将来に残し伝えていくためであるという. 興味深いことに, 特に「かおり」についての選定基準はなく, 自然的, 歴史的, 文化的な景観のなかにかおりの存在が浮かび上がるような風景であるということが選定のポイントとなっている.<br> 感性の歴史家アラン・コルバンは著書「風景と人間」 (小倉考誠訳, 藤原書店) でいう. 「風景の保護はある風景解釈を選択することである」. 自然環境・景観保護運動のありかたに対する問題提起のなかに, 周辺環境との調和のなかで地域が育んできた文脈を読み解くために, 人間が親しめる無意識下の記憶, すなわち, 嗅覚を含めた五感を重視する姿勢に共感できる. <br> かおりの風景とは, そこに住む人間達が創り出す表徴であり, 人間の存在意義にもつながる風景である. 畑の肥溜めも, 焼き魚も, 古本も, 社寺も, すべて, 人間の人間たるゆえんの風景であり, その存在を否定しては, 人間自体を否定することになる. ランドスケープとともに最近少しずつ注目されてきているスメルスケープといわれる景観は, 人間が「住める空間」なのである.<br> 人間以外の生物にとってもにおいの風景は生存に関わる必須なものだ. 多くの哺乳動物は, 自分のにおいと他人のにおいを正確に識別し, 自分達の生活空間・個体空間の大きさを作り出すだけでなく, 交尾時期を的確に把握して種の保存に努めている. 植物は動けないからこそ, 独自なにおい空間を設計し, 生存に必要な情報交換をしている (細川聡子の項参照) . もちろん陸棲生物だけでない. 魚は自分の生まれた川にもどるためにも嗅覚は必須であり, また, 放精誘起なども水溶性の「におい」物質によって引き起こされる (佐藤幸治の項参照). そこに居住する人間達が, 自然的, 歴史的, 文化的な「かおりの風景」を創成しているように, それぞれの生物のまわりには, 我々が見えない, 本能的, 進化的, 生態的なにおいの風景が構築されているのである.<br> におい物質とは, 分子量30~300の低分子揮発性物質である. ただし, 揮発性であれば必ずしもにおうというわけではない. 例えば, 二酸化炭素や一酸化窒素はわれわれ人間には感知できない. では, 二酸化炭素は「におい」ではないかというと, ショウジョウバエや蚊などの昆虫にとっては, 二酸化炭素も立派なにおいなのである. そういう意味では, 広義でいう「におい」とは, 「揮発性の分子で, 空間を飛んできて, 生物によって受容される物質」と定義できるかもしれない. 最近問題になっているVOCもその部類に入るかもしれない. 中世においては「にほひ」という言葉を光の意味でつかっている. 空間からの情報という共通の意味があったのだろう.<br> におい分子は嗅覚受容体によって認識される. 信号は脳に伝わるとともに, しばらくするとそのにおいに対しては順応して信号はオフになる. 近年, 分子レベルでのにおい認識とその後の受容体の脱感作・順応のメカニズムはかなり明らかになっている (堅田明子, 加藤綾の項参照). 一方, 受容体による認識という立体構造説に対峙するものとして, 「匂いの帝王」 (早川書房) で有名になったルカ・テューリンが主張する分子振動説がある. 分子振動説によると, 普通のにおい分子と重水素化されたにおい分子とでは同じ物質でもにおいの質が異なることになる. 最近, ヒトの官能試験では「No」という結果になった一方で, 犬は区別できると主張する研究者もいるのでまだ決着はみていない. 私個人的には, どっちかだけですべてを説明できるとは思わない.<br> 嗅覚における分子認識は, ある意味, 究極の識別センサーかもしれない. 複雑な混合臭は, 特有のにおいを呈し, その複雑さが, 芸術ともいえる香水の存在を可能にしている. 混合臭が織りなすにおいの創成メカニズムもそのベールがはがれつつある (岡勇輝の項参照). また, 嗅覚受容体は, 鼻のなかでにおいセンサーとして機能しているが, 鼻以外の組織でも機能していることが明らかになってきている (福田七穂の項参照). 広義でいえば, 嗅覚受容体は, 一般的な化学物質センサーと考えてもよいだろう. 将来, 嗅覚受容体の化学センサーとしての機能をいかして, バイオセンサーの開発も夢ではない. 特に, 昆虫の性フェロモン受容体の解析で明らかになった, 高感度・高選択性をうみだすメカニズムは, 応用面に期待がかかる知見である (仲川喬雄の項参照).<br>(以降全文はPDFをご覧ください)
著者
深谷 渉
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.188-194, 2011
被引用文献数
1 1

ビルピット排水は,ピットの構造や維持管理等の問題により,高濃度の硫化水素を含む場合がある.硫化水素は,下水道施設排出後,空気中に放散され悪臭の元となり,生活環境悪化や都市イメージ低下,下水道施設の劣化を引き起こすため,下水道管理上の大きな問題となっている.ここでは,下水道管理担当者が効率的かつ効果的に悪臭対策を実施するための手法として,下水道施設である汚水桝に硫化水素計を設置し悪臭防止法による規制基準値超過を判定するとともにビル管理者に指導する手法と,ビルピットからのポンプ排水時に汚水桝内の気圧および湿度が急激に変化する現象を活用し悪臭発生源を特定する手法を紹介する.
著者
岩橋 尊嗣
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, 2010-05-25

巻頭に掲載したさまざまなバラの写真,印象はいかがですか? 印刷インクにバラの香りのマイクロカプセルを使用すれば,臨場感は増したのですが,それは次の機会に取っておきます.<BR>2009年11月,「青いバラ」が満を持して市場に出され,クリスマス商戦に花を添えた.開発に着手してから,およそ20年の歳月が流れたという.2004年,青いバラが出来たというプレス発表を記憶されている方も多いのではないでしょうか.同年4月から10月に静岡県浜松市で開催された"浜名湖花博"に,この青いバラは展示された.私事で恐縮であるが「百聞は一見に如かず」生来の野次馬根性も手伝って,さっそく花博会場を訪れた.「青いバラ」はガラス製のケースに収められており,風で揺らぐこともなく,勿論香りは全く伝わってこない.言葉は悪いが,一瞬目の前に造花が現れたように感じたことを記憶している.青いバラの開発については,開発中のさまざまな苦労話も含めて,中村氏ら(サントリーホールディング(株)他)に執筆していただいた.研究開発は粘り強く,そして継続性が大切であることを思い知らされる.<BR>"花の女王(香りの女王)"とも呼ばれるバラ,古代エジプトの女王クレオパトラは,バラを浮かべた湯船につかっていたとか.当時もバラは最高級の花の一つであったに違いない.日本の有史以前,ギリシャ,エジプト,ローマ時代に,すでにバラは珍重されていたのである.上田氏(岐阜県立国際園芸アカデミー)には人類とバラとのかかわりを歴史的な背景を織り交ぜて執筆していただいた.<BR>紀元前の時代から親しまれてきたバラは,品種も膨大で,系譜図もかなり複雑である.バラの香りは花弁から発散される.しかし,バラの長い歴史の中で,香りは勿論であるが,それよりも視覚にうったえる品種の開発が優先されてきた経緯がある.蓬田氏ら((株)蓬田バラの香り研究所)は,バラの香りを詳細に解析し,香気特徴を9つのノートに分類することを試みている.執筆内容から並々ならぬ努力の結実であることがうかがえる.そして今,より芳香の優れたバラの開発に傾注されている.<BR>バラの香りの主成分として重要なフェニルエチルアルコールは,嗅覚検査に使用されるT & Tオルファクトメーターのにおい物質の一つである.臭気分野に携わっている者にとって,ある意味最も身近な香りの一つであるかもしれない.それともう一つ,バラの香りで重要な成分がダマセノンである.現在最高級の精油といわれる "ブルガリアローズ油",その主成分の一つがダマセノンで,バラ様の強い芳香を有している.小林氏ら(メルシャン(株)他)は,このバラ様香気であるダマセノン成分量を促進させた甲州ワインの醸造法を確立した.本論では,醸造の実用化に至る研究過程の詳細について執筆していただいた.<BR>前述したとおり,バラの花は香りよりも視覚にうったえる華やかさが優先されてきた.事実,市場に出回るバラの内,香りの良いバラは2割程度に過ぎないという.理由は,長時間の流通に耐え,花持ち・花色が良いこと,生産性が良いことなどを必須条件に,数多くの品種が作り出された結果であるといわれる.花き業界で活躍されている宍戸氏((株)大田花き)は,バラを含めて花の香りの重要性を主張されている.本論では,それらの活動の一端を紹介していただいた.<BR>以上,5編の組み立てで"バラの香り"を特集した.是非,本論をご熟読願いたい.ご多忙中にもかかわらず,ご執筆を快諾していただいた著者の方々には,本紙面を借りて厚く御礼申し上げる次第です.最後に一提案です.次の休日に一度バラ園(植物園)などに足を運んでみてはいかがでしょうか.にわか知識になるかもしれませんが,本誌からの若干のバラ情報を詰め込み,華やかさを観るだけではなく,鼻を近づけて香りのするバラ,しないバラ,そしてさまざまなバラの香りと歴史にふれてみて下さい.
著者
江嵜 和子
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.330-334, 2008

京都市掃除に学ぶ便きょう会(通称 : 便きょう会)は京都市教育研究団体の一つである.主な活動は,毎月第2土曜日に行う学校のトイレ掃除(月例会)である.小学校2校において,「月例会」実施後にアンケート調査を行ったところ,「月例会」に参加した子どもたちと参加しなった子どもたちでは,2校とも「挨拶を自分からする」「学校のトイレをきれいに使うようにしている」という項目に有意な差が見られた.また,実施後の子どもたちの感想を分析すると,外発的動機で参加(消極的な参加)した45名の子どもたちでも,実施後は42名(93.3%)がトイレ掃除に肯定的な感想をもち,満足感や達成感をもったことが推測された.このような結果から,「月例会」における学校のトイレ掃除の実践は,子どもたちの心身における成長に繋がるのではないかということが示唆された.
著者
小田切 敬子 片平 彩香 安江 健 鈴木 綾子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.28-32, 2010-11-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
14

三点比較式臭袋法を用いたイヌの体臭測定について検討した.シャンプー後経過日数19日から105日までの5匹のイヌの匂いサンプルを用いて臭気指数,臭気強度および快・不快度について測定した.その結果,シャンプー後の経過日数と臭気指数の間に強い正の相関関係が認められた(r=0.89,p<0.05)が,臭気指数と臭気強度の間には統計学的に有意な相関関係(r=0.39,NS)は認められなかった.一方,臭気指数が高くなると快・不快度は低くなる傾向がみられたが,両者間には,有意な負の相関関係は認められなかった(r=−0.06,NS).以上より,三点比較式臭袋法を用いてイヌのにおいを測定および評価できることがわかった.
著者
服部 麻友子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.94-101, 2008-03-25 (Released:2010-10-13)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

水道により供給される水が備えるべき要件は,水道法に基づく水質基準として規定されており,このほか,水質管理目標設定項目等を定め,各項目の検査を実施することにより適切な状態を確保している.水道水の水質基準等への適合状況は総体的には極めて良好であるが,鉛,臭素酸等において基準に適合しない場合もあり,改善のための施策が講じられている.カビ臭の原因物質であるジェオスミン,2-メチルイソボルネオールは,快適性についても十分な考慮が払われるべきという考えから,平成15年改正により水質基準項目に追加された.湖沼の富栄養化等の水道水源状況の悪化により,水道原水がカビ臭等による異臭味被害を受けた場合には,水道事業者が応急的な対応を行っているが,依然として,給水栓まで異臭味の被害を受ける事例がみられる.異臭味被害人口は平成2年度のピーク時に2000万人台まで増加したが,近年は300万人前後で推移している.水道事業者によっては活性炭やオゾンを活用した高度浄水処理の導入が進められている.
著者
細見 正明
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.323-330, 2005 (Released:2005-12-29)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

八王子市の小学校で起こったPCB含有蛍光灯安定器の破裂事故を契機にPCBの「におい」を認識した.実際に30年程度使用されてきた蛍光灯安定器から,PCBのにおいを感じた.そこで,劣化したPCB含有安定器からPCBが揮発する可能性を明らかにするため,PCB含有安定器を使用している室内と使用していない室内に含まれるPCBを測定し,比較するとともに,PCB含有安定器をチャンバーに入れて通気し,PCB揮発の有無を確かめた.その結果,PCB含有安定器を使用していない室内の空気ではPCBは検出されなかったのに対し,PCB含有安定器を使用している室内では26~110ng/m3のPCBが検出された.これより,PCB含有安定器からのPCBの漏洩の可能性が確認された.一方,チャンバー実験からは,PCB含有安定器からのPCBの揮発が認められ,さらに検出されたPCBの組成は安定器を使用していた室内のPCBの組成と類似していた.これより,PCB含有安定器が室内PCB汚染の原因の1つである事が推定された.
著者
硲 哲崇
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.417-423, 2006 (Released:2007-09-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

摂食行動は,化学感覚である嗅覚・味覚の他に,食物の温度や硬さ,さらにはテクスチャーといった物理的な刺激を受容する体性感覚が存在しなければ円滑に行われることができない.本論文では,摂食行動に関与する口腔体性感覚の役割を概説し,さらにこれら体性感覚と化学感覚に優先性をもたせて動物が摂食行動を調節している様子について,筆者らの研究知見も踏まえて概説する.
著者
藤倉 まなみ
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.408-414, 2012

環境政策の進展に必要な要素にはa)社会の要請,b)他法令で未対応,c)原因と被害の因果関係の科学的な解明,d)対策の技術的・経済的実行可能性がある.悪臭防止法施行40年をふり返り,悪臭ではこれらの要素に関連してどのような判断や対応がとられてきたかを示した.
著者
藤倉 まなみ
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.408-414, 2012

環境政策の進展に必要な要素にはa)社会の要請,b)他法令で未対応,c)原因と被害の因果関係の科学的な解明,d)対策の技術的・経済的実行可能性がある.悪臭防止法施行40年をふり返り,悪臭ではこれらの要素に関連してどのような判断や対応がとられてきたかを示した.
著者
永田 好男
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.401-407, 2012
被引用文献数
4

本協会ホームページで掲載している嗅覚閾値は,主に永田好男氏(元財団法人日本環境衛生センター,現株式会社アクアパルス)の測定によるものである.本稿は,永田好男氏に質問に答えていただく形で臭気物質の嗅覚閾値の測定に関してその背景をはじめ,測定の詳細について説明をいただいた.<BR>永田氏の嗅覚閾値データは,大変貴重なものであり,広く活用されている.今回説明いただいた内容は,今後の臭気測定の分野で広く活用できるのではないかと考える.<BR>なお,元となった「三点比較式臭袋法による臭気物質の閾値測定結果」(日環セ所報No.17.1990)は,一般財団法人日本環境衛生センターのホームページで閲覧することができるのでそちらを参考にされたい.
著者
永田 好男
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.401-407, 2012
被引用文献数
4

本協会ホームページで掲載している嗅覚閾値は,主に永田好男氏(元財団法人日本環境衛生センター,現株式会社アクアパルス)の測定によるものである.本稿は,永田好男氏に質問に答えていただく形で臭気物質の嗅覚閾値の測定に関してその背景をはじめ,測定の詳細について説明をいただいた.<BR>永田氏の嗅覚閾値データは,大変貴重なものであり,広く活用されている.今回説明いただいた内容は,今後の臭気測定の分野で広く活用できるのではないかと考える.<BR>なお,元となった「三点比較式臭袋法による臭気物質の閾値測定結果」(日環セ所報No.17.1990)は,一般財団法人日本環境衛生センターのホームページで閲覧することができるのでそちらを参考にされたい.
著者
斉藤 幸子 飯尾 心 小早川 達 後藤 なおみ
出版者
Japan Association on Odor Environment
雑誌
におい・かおり環境学会誌 = Journal of Japan Association on Odor Environment (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-21, 2004-01-25
被引用文献数
14 8

嗅覚順応の時間依存性については、感覚的強度は指数関数的に減少すると報告されてきた。しかし、最近、持続した臭気に対する感覚的強度の評定が認知的な影響を受けることが報告された。そこで、我々は一定濃度のトリエチルアミンを10分間提示し、その時の感覚的強度の時間依存性について検討した。その結果、感覚的強度の時間依存性は5つの型に分類され、最も多いのは一度減じてまた強く感じる変動型で、指数関数型は全観測データ数の約30%だった。