著者
鳴海 史生 Fumio NARUMI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.27, pp.29-36, 2017-10

アメリカのチェンバリスト、ブレドリ・リーマンが2005 年に『アーリー・ミュージック』誌で発表した論文は、斯界に大きなセンセーションを巻き起こした。バッハがいかなるやり方で鍵盤楽器を調律していたのかは長らく不明であったが、われわれが頻繁に目にする《平均律クラヴィーア曲集》第1 巻の序文に記された渦巻模様こそ、その方法を示すものだ、というのである。加えてリーマンは、三種類の渦巻が5度の調整の度合いを具体的に表わすとし、「バッハ調律」の姿をきわめて鮮明に描き出した。こんにち、いわゆる古楽の世界では、それが定説となっている感がある。しかし、実際に「バッハ/ リーマン調律」で演奏してみると、多少なりとも違和感を覚えない人はいないであろう。本論は、それを再検討し、三種類の渦巻が示すであろう5度の調整の度合いを修正することによって、より快適な「バッハ調律」を提案するものである。Bradley Lehman's article in the "Early Music" (2005) made huge waves internationally in the world of music, especially of harpsichord and pipe organ. The exact temperament used by J. S. Bach has been unclear for a long time. Lehman claims that the key to the mystery has been hidden in the spiral diagram at the title page of "Das wohltemperierte Clavier" manuscript (1722). He regards three different kinds of spiral diagrams as intervals of narrowed 5ths: it could clear the tuning system used by Bach. Sadly, Bach/Lehman temperament is not comfortable. This paper aims to reconsider the temperament, and to propose the more comfortable keybord tuning for Bach's music.
著者
八木 慶太郎 KEITARO YAGI 尚美学園大学総合政策学部総合政策学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.28, pp.47-52, 2018-03

筆者は2015年度から主に音楽応用学科と情報表現学科の英語教育を担当しているが、音楽応用学科では音楽ビジネス、情報表現学科ではゲームビジネスに関わる世界的に著名な人物をそれぞれ1人取り上げ、これまでの人生や仕事、リアルタイムの活動状況について、1年間じっくり英語で学ぶ機会を提供することを試みている。本稿では、音楽応用学科における英語教育について述べる。音楽ビジネスに関わる人物としてテイラー・スウィフトを取り上げることの意義について考究した。学生と年齢が近く、また日本人のファンも数多く存在するテイラー・スウィフトを題材とすることで、学生の動機付けに資することが期待できるだけでなく、音楽応用学科での教育・研究の一領域である音楽ビジネスについて英語で学ぶ機会も同時に提供できるのではないだろうか。このような考えから、テイラー・スウィフトを通して、音楽応用学科ならではの英語教育をどのように構想・展開できるかということについての私見を提示した。I have considered the significance of using Taylor Swift as a subject for English-language education at the Department of Music Business Development. Because of her proximity in age to students, and her large number of Japanese fans, studying the music of Taylor Swift could increase students'motivation. It would also offer the opportunity for them to learn,in English, about the music business, one of the education and research areas covered at the Department of Music Business Development. Based on this idea, I have offered some observations on how Taylor Swift could be used as a subject to conceive and develop English-language education in a way that is unique to the Department of Music Business Development.
著者
茂出木 敏雄 Toshio MODEGI 尚美学園大学芸術情報学部情報表現学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.26, pp.85-104, 2017-03

既開発の音響信号からMIDI 符号に自動変換するツール「オート符」は、一般化調和解析に基づく周波数解析を採用することにより倍音を含む和音を高精度に解析できるという特徴があり、楽器音に限らずボーカルなど、標準的なMIDI 音源で近似的に原音響信号を再現可能なMIDI データを生成できる。このソフトウェアは、1996 年にWin32 アプリケーションとしてWindows NT/95 上で開発に着手し、2001 年より一般財団法人デジタルコンテンツ協会のホームページより約14 年間無償配布を行いながら、改良を重ねてきた。その間、Microsoft のWindows OS は数々のアップグレードがなされてきたが、本ツールはそれらの影響を受けず、最新OS のWindows 10/64bits 版まで問題無く稼働し続けてきた。しかし、2016 年夏に行われた"Windows10 Anniversary Update" により、MIDI 再生系に不具合が生じるようになった。これに対し、アプリケーション側に改良を加え、従来通り安定に稼働するように復旧させることができた。本稿では、本問題の調査結果と回避策について報告する。Our previously developed audio to MIDI-event converter tool "Auto-F" has a feature of highprecision harmonic tone analysis functions based on the Generalized Harmonic Analysis algorithm. Applying this tool, from given vocal acoustic signals we can create MIDI data, which enable to playback voice-like signals with a standard MIDI synthesizer. We began developing this software as a Win32 application on the Windows NT/95 platform in 1996. Since 2001, we have distributed this software tool for free at the Website of the Digital Content Association Japan for about 14 years, with several improvements added. In these years, Microsoft has released several upgraded Windows Operating Systems, and our developed tool could catch up with these updates and continue running on newer platforms until the latest Windows 10/64bits. However, the "Windows 10 Anniversary Update" released in the last summer, has influenced on the MIDI sequencer function of this tool. Then, we have improved this tool and we could successfully make its execution stable on this newest platform. In this report, we present results of our tracking of this software defect and our adopted technique for avoiding it.
著者
久保田 葉子 Yoko KUBOTA 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-44, 2008-11-01

Johannes Brahms(1833-1897)は自作の交響曲、ピアノ協奏曲、声楽を含むオーケストラ作品、セレナーデ、序曲、ほとんどの室内楽作品をピアノ・デュオの編成にアレンジして残している。また、同時代の他の作曲家も次々とブラームスの作品を編曲し、彼の作品は当時、様々な編成で世に広まっていった。ここでは19世紀の編曲のあり方、作曲家と出版社の関係、ブラームスの作品がどのように市民に享受されたかを考えたい。Johannes Brahms (1833-1897) arranged most of his orchestral- and chamber music for piano duo. Many contemporaries of Brahms also arranged his works in various instrumental combination. The common practice in 19th century realized, that more people would have opportunity to play and know his music. In this report, I study arrangements not by Brahms, about arrangers who worked with piano music of Brahms, and how the publishers dealt with works of Brahms.
著者
石橋 透
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-21, 2014-03-31

プロオーディオの世界で使用されているワイヤレスマイクの歴史は50年以上にも前にさかのぼる。 今やワイヤレスマイクなくして映画作品、 テレビ番組制作はできないと言っても過言ではない。 また、 ライブ・コンサートをはじめとする各種イベント、 選挙の街頭演説、カラオケ、 教育機関の授業と枚挙にいとまないほどに、 ワイヤレスマイクは我々日常生活に深く入り込んでいる。 また、 携帯電話などの電波需要の増加に対応するため、 2011年6月1日の電波法改正で、 A型ワイヤレスマイクで使用していた周波数帯域が携帯電話専用となった。 そして、 2019年4月1日以降は、 全てのA型ワイヤレスマイクが一切使用できなくなる。 これに伴い、 全国の放送局はじめ劇場・ホール等で使用されている約27,000本(2014年2月推定)にも上るワイヤレスマイクは全てこれに則した製品への更新が発生する。 本学、 情報表現学科においても、 「映像ドラマ演習」 はじめ、 様々な演習系授業で、 映像実践においてのワイヤレスマイクの使用は避けられない。 しかし、 使用する場所によって電波がデッドポイント入り受信感度が極端に落ち、 音声がミュートすることがある。 この問題の解消を含め、 筆者の実践を踏まえ、 考察する。
著者
鳴海 史生
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.23-36, 2007-11-30

本論は、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》の通奏低音チェンバロにもっとも適した調律法を探る試みである。モーツァルトの鍵盤楽曲全般がそうであるように、《フィガロ》の通奏低音チェンバロにもまた、平均律はふさわしくない。なぜなら、モーツァルトが作曲の際に使用する調と転調の可能性をみずから制限し、それとの引き換えに鍵盤楽器の美しい響きを求めていたことは明らかだからである。したがって、われわれは歴史的な不等分律のなかから、このオペラのレチタティーヴォ伴奏に最適な調律法を探り出さなくてはならない。しかし、ラモー、ヴェルクマイスターIII、ヤングII、ヴァロッティといった、よく知られる歴史的調律法を採用することには、いくつかの難点がある。鳴り響きの美しさや演奏効果、および演奏上のさまざまな条件を勘案すると、ピタゴラス・コンマをF-C-G-D-A-E-B-F♯の7つの5度に割り振る「1/7調律法」が、《フィガロ》にもっとも適した方法として推奨できる。
著者
小池 保
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-26, 2010-03

マスメディアの経営が、極めて苦しい。不況による打撃だけではない。「マス」広告によるコミュニケーションが、以前のようには効かなくなったことが大きい。論考ではまず、その背景となっている、意識と行動を激変させた「賢い生活者」のあり方に注目し、「クチコミ」というコミュニケーションが表舞台に登場してくる必然性について論じる。続いて、新たな状況に適合すべく、広告ビジネスの先端的クリエイターたちが始めた「コミュニケーション・デザイン」という最新の取り組みが、どんな有効性を持つか検証する。賢い生活者との、最高レベルのコミュニケーションを実現するために、例えば全国の郵便局までをも「メディア」に変えてしまうなど、自由かつキメ細やかにデザインされたコミュニケーションの創出が、どのような新たな時代を拓いてゆくのかについて展望する。
著者
定平 誠 斎藤 忍 松浦 克樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-16, 2012-03

埼玉県には他県に引けを取らない魅力あるコンテンツ(歴史遺産、文化、工芸、自然など)が数多く点在する。しかし、これらのコンテンツの魅力を十分に情報発信しきれていないため、埼玉県の全国的な認知度は低いという現状がある。そこで、本研究は埼玉県の魅力あるコンテンツの認知度を高めるべく、コンテンツの演出効果の向上をめざした新たなネットワーク連動型のプラットフォームとなるウェブサイトを構築する。このサイト上で紹介されるコンテンツ情報はYouTubeを始め、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルメディアとの連携を図り、バズマーケッティングへと発展させる。そして、これらの結果を踏まえ、埼玉県のコンテンツの発信能力をいかに強化していけるか、埼玉県のブランド創出につなげていけるか、また、地域能力の向上に貢献することができるかについて考究する。