著者
大武 由之 片山 智博
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.447-451, 1970-09-20 (Released:2010-11-29)
参考文献数
15

馬肉の脂質の性質を明らかにする目的で, 食肉加工向けに輸入された馬肉について, その背最長筋, 上腕三頭筋および半膜様筋から抽出した遊離脂質と結合脂質の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーによって調査した。遊離脂質と結合脂質とは脂質成分が異なっていて, 遊離脂質は大部分が中性脂肪よりなり, 微量のリン脂質を含み, 一方, 結合脂質はほとんどがリン脂質よりなり, 少量の遊離脂肪酸, 遊離コレステロールを含んでいた。上腕三頭筋は背最長筋や半膜様筋よりも遊離脂質と全脂質含量が高かったが, リン脂質含量ではこれら筋肉間に有意差が見られなかった。一般に, 結合脂質は遊離脂質よりもC18: 2とC20: 4が多く, C16: 0, C16: 1およびC18: 1が少なかった。遊離脂質では背最長筋は上腕三頭筋や半膜様筋よりもC18: 0, C20: 4が多く, C14: 0, C16: 1が少なく, また上腕三頭筋は他の2筋よりもC16: 0が多く, C18: 0, C18: 2およびC20不飽和酸が少なかった。結合脂質にあっては, 背最長筋は上腕三頭筋や半膜様筋に比べてC16: 1が少なく, C20: 4が多かった。これらの結果, 上腕三頭筋は背最長筋や半膜様筋に比べて飽和酸含量が高かったし, 背最長筋の脂質は一番不飽和度が高かった。
著者
浜田 重遠 小林 和義
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-66, 1968 (Released:2009-11-16)
参考文献数
20

非芳香族化合物であるところのMethane arsonic acidのdisodium塩を飼料に混じてブロイラー雄雛の初生から微量を給与し, その量を順増して8週令まで飼育した。1) Methane arsonic acid disodium塩をAs2O5として5ppm添加の飼料を初生雛から与え数週間後に10ppm, 15ppmと順増して8週令まで飼育すると, 雛の発育がよく, その増体量は無添加の対照雛に比して有意的に大であった。2) このヒ素剤をAs2O5として10ppm添加して初生雛から与えたところ初期の成長に効果がなかった。3) このヒ素剤を添加して飼育した場合, 飼料要求率を改善した。4) このヒ素剤を添加して飼育した場合, 増体量の標準偏差が小さく, すなわちブロイラー雛のつぶがそろった。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.241-244, 1976-07-10 (Released:2010-03-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

8種の果実ペクチン質および4種の市販ペクチンを試料とし, 臭化カリウム錠剤法による赤外線吸収スペクトル分析を行なうとともに, 中和滴定法によって, 試料中の遊離のカルボキシル基と, エステル形カルボキシル基を定量し, また, 原子吸光分析法によってカルシウムとマグネシウムを定量した結果, 赤外線吸収スペクトル特性が, エステル化度, 無機イオンおよび前報のメトキシル基の定量値とほぼ一致することが認められた。
著者
須田 正巳
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.331-336, 1977-12-05 (Released:2009-11-16)
参考文献数
9
著者
岡村 保 松久 次雄 南部 朔郎 斎藤 利晴 芦田 憲義
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.356-361, 1970

米の理化学性に及ぼす外因の影響を知ろうとし, 本報では外因として, 機械脱穀において外部から与えられる"衝撃"をとりあげ, これと米の2~3の理化学性との関係を調べ, さらに発芽との関連についても検討し, これら理化学性や発芽に影響を及ぼす米粒の状態を, 可視的な胴割粒や損傷粒の面からだけでなく, 不可視的な組織的損壊としての"歪み (仮称) "なる考え方からも見ようとした。<BR>結果は下記のとおりである。<BR>1) 脱穀機の回転数を異にしたばあいの米の水溶性乾固物量を調べたところ, 回転数が高いものほど小となった。<BR>2) 全糖量についても同様に, 回転数が高いものほど小となった。<BR>3) pHは高速回転のものほど小となった。<BR>4) 米粉末の水浸出液の比電導度は, 高速回転のものほど大となった。<BR>5) 機械脱穀籾の発芽率が低下することは従来の知見のとおりであるが, 発芽速度は大となった。これは稔実度などの差異によるものとは説明し得ず, 米粒に外部から力が加わって起こる"歪み (仮称) ", 胴割れ, 籾殻のずれなどにより, 米粒の吸水性・酸素供給量などが増加し発芽速度が早まったものと推察された。<BR>6) 脱穀機の回転数が大の場合, 籾米粒浸漬水の比電導度 (および糖量) が大となった。
著者
田中 紀子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.175-180, 1982-06-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

正常時にはほとんど利用されないとされる尿素がたん白欠乏時にどのように利用されるか, そしてそのとき, 腸内細菌がどのように関与するかを低たん白食としてカゼイン食で飼育したラットについで検討し次の結果をえた。1) ラットを低たん白食で2週間以上飼育すれば小腸内ウレアーゼ活性の増加により多量の尿素をアンモニアに分解する能力を有する傾向のあることがわかった。2)15N尿素を投与すると投与後2時間目より48時間目に至るまで標準たん白食飼育ラット (対照) に比べ低たん白食飼育ラットの血漿たん白に尿素由来の15Nの高い取り込みが有意に見られ, たん白欠乏時には尿素が体たん白合成に利用されることが示唆された。また血漿たん白構成アミノ酸に取り込まれた15Nは低たん白食飼育ラットで著明に高かった。各アミノ酸の中で最も取り込みが高かったのはNEAAで次にEAA, Lysであった。3)15N尿素投与後1時間目の門脈血血漿遊離のLys, EAA, NEAAに15Nの高い取り込みが低たん白食飼育ラットで見られた。このアミノ酸への15Nの高い取り込みは抗生物質投与により強く抑制されたことから, 尿素からアミノ酸への合成には腸内細菌が大きく関与しでいると思われる。4) 以上のことから単胃動物のラットについてたん白欠乏時には多くの尿素がアンモニアに分解され, それは腸管から吸収される一方, 一部のアンモニアは腸内細菌によりアミノ酸に合成され肝臓に運ばれ, いずれも体内でたん白質に合成される経路のあることが示唆された。おわりに終始ご懇篤なご指導, ご鞭撻を賜わりました兵庫医科大学吉村寿人名誉教授ならびに堀清記教授に厚くお礼申しあげます。