著者
川端 晶子 澤山 茂 瓜生 恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-18, 1974-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

44種の果実類, 3種の果菜類および3種の種実類のべクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ペクチン含有量は, 次のようであった。1) かんきつ類4%以上: 温州みかん果皮3.00~3.99%: きんかんパルプ, ぶんたんパルプおよび果皮, ゆずパルプ。2.00~2.99%: ぶしゅかん, ゆず果皮。1.00~1.99%: きんかん果皮, 温州みかんパルプ。0.99%以下: きんかん果汁, 温州みかん果汁, ぶんたん果汁, ゆず果汁。2) その他の果実類2.00~2.99%: ポポー, アボカード。1.00~1.99%: かりん, いちじく, 赤すぐり。0.50~0.99%: りんご (紅玉, スターキング, デリシャス, ふじ, インド, 国光), すぐり, バナナ (エクアドル産, フィリピン産, 台湾産), かき, いちご, キィウィ, マンゴー, パパイア, まるめろ。0.49%以下: 和なし (二十世紀, 長十郎, 幸水), 洋なし, さくらんぼ, プラム, あんず, もも, うめ, クッキンダバナナ, りんご (むつ), びわ, レンブ, ぶどう (キャンベル, デラウェア, ネオ・マスカット, 巨峰), パイナップル。3) 果菜類0.50~0.99%: れいし。0.49%以下: トマト, 西瓜。4) 種実類5%以上: くるみ, らっかせい。1.00~1.99%: くり。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, かんきつ類の果汁では, きんかん以外, W-S区がもっとも高く, 果皮およびパルプでは, きんかん以外は, P-S区がもっとも高く, つづいてH-S区であった。その他の果実類, 果菜類および種実類45種のうち, 28種はH-S区がもっとも高く, W-S区のもっとも高いものは9種, P-S区のもっとも高いものは8種であった。総体的に, 熱帯果実にW-S区の高いのが目立つ。
著者
本田 佳代子 阿久澤 さゆり 澤山 茂 中村 重正 川端 晶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.226-231, 1997-08-20
被引用文献数
1

凍みいも2種を山梨県鳴沢村より,ブランコ,ニグロをボリビアより入手した。一般成分と糊化特性を検討し以下の結果を得た。1. 一般成分は,澱粉含量は56%であった。窒素含量も少なく生じゃがいもに比べて成分の変化がみられた。総食物繊維量は,生じゃがいもに比べて顕著に増加しており,中でもリグニンの含量が高かった。2. 示差走査熱量分析では,糊化開始温度が生じゃがいもに比べて凍みいもはわずかであるが高温側であった。また,ブランコ,ニグロでは低温側にあった。3. 澱粉の水可溶性区分の分子量を比較したところ,凍みいもとブランコ,ニグロは高分子側にピークがみられた。また,ヨウ素呈色反応によりFr I, II, III に分けたところ,生じゃがいもではFr III までみられたが,凍みいもではFr II までしか測定されず,凍結乾燥による組織成分の変化が示唆された。
著者
阿部 真紀 澤山 茂 秋田 修
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.142-150, 2018 (Released:2018-06-22)
参考文献数
20

本研究は,豚肉の塩麹漬け調理における塩麹中の酵素や食塩の効果を調査する目的で行った。組成の異なる塩麹で漬け込みした豚ロース肉を湿熱加熱した試料の食感についての官能評価では,塩麹にタンパク質分解酵素を1.2%添加したものが最もやわらかいと評価された。塩麹試料に漬けた肉では,すべての官能評価項目において漬け込みしない対照肉よりも高評価であった。やわらかさについての官能評価結果と機器測定結果には相関が認められた。肉の遊離アミノ酸総量は,塩麹と酵素1.2%添加した塩麹に漬けた試料で対照に比べて2~3倍増加し,グルタミン酸量は対照の2倍以上となった。アミノ酸の増加は,塩麹中のタンパク質分解酵素の効果によるものと考えられた。また,塩麹中の塩分には酵素の肉中への浸透を促進することで酵素作用を高め,さらに肉の保水性を高め加熱損失を低下させることなどの複合的な効果によって,塩麹が肉の食味性を向上させていることが示唆された。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
JAPAN SOCIETY OF NUTRITION AND FOOD SCIENCE
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.55-63, 1974

1) 標準的なババロアについて嗜好意欲尺度を用いて, 嗜好度検査を行ない, 男女2群の比較によるt検定の結果有意差は認められなかったが, 男子よりも女子のほうがやや高い平均値を示した。<BR>2) ババロアの基本的ゼリーについて, LMPゼリーは1%濃度, ゼラチンゼリーは, 2.0および2.5%濃度のものが好まれる結果を得た。レオロメーター特性値では, LMPゼリーは, ゼラチンゼリーにくらべて, 付着性が大きいところに特徴があり, 2点嗜好試験法の結果, LMPゼリーは若い人々に, ゼラチンゼリーは中年以上の人々に好まれる傾向が認められた。<BR>3) LMPのゲル形成には, 多価金属イオンが必要だとされているが, 牛乳中のカルシウムイオンの利用によって好ましいゲルが形成され, 牛乳濃度30~40%のものが適当であると考えられるが, LMPのゲル形成と金属イオンの関係については, 今後, 検討を加えたい。<BR>4) ババロアの甘味度については, 糖度20%ついで25%のものが好まれ, 蔗糖, 果糖およびマルチトールの3種の甘味剤については, LMPゼリーの甘味間には, 有意の差は認められなかったが, ゼラチンゼリーの甘味では, マルチトールを用いたゼリーの甘味に対する平均評点は低く, やや好ましくないことが示された。<BR>5) 4種のババロアのレオロメーター特性値のうち, LMPババロアは, ゼラチンババロアにくらべて, 硬さの値は小さいが, 付着性は大であり, 卵白を加えたものは, 卵黄のみ用いたものよりも, いずれも, 硬さの値は, やや小さいが付着性は大きい。しかし, 好みについては, 有意差は認められなかった。<BR>嗜好特性値間の相関行列を求めたところ, 総合評価とすべての嗜好特性値間に有意の相関が認められた。また, 総合評価に対する嗜好特性の相関の高いものから, 逐次, 重相関係数を求めてF検定の結果, いずれも, 有意の相関が認められた。さらに, 逐次, 回帰方程式を求めたところ, 総合評価に対し, 凝集性, ついで口あたり, 付着性といったテクスチャーの影響が大きいことが認められた。<BR>6) フルーツババロアと, ゼラチンフルーツババロアの間に, 前者は, 硬さの値は小さく, 付着性は大であるが, 官能検査の総合評価には有意差は認められなかった。
著者
池田 昌代 小根澤 遥 上坂 奈未 高橋 来実 望月 菜穂 平澤 マキ 関 千代子 澤山 茂
出版者
一般社団法人 日本食育学会
雑誌
日本食育学会誌 (ISSN:18824773)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-17, 2014-01-25 (Released:2015-05-09)
参考文献数
25
被引用文献数
3

The purpose of this study is to obtain basic data to develop a food education program for university students. We investigated the use of student cafeterias and analyzed the energy and nutrient intake of various dish combinations.The criteria for lunch items that university students gave priority to were preference, price, and nutrition balance. Gender differences were observed regarding the frequency of use of school cafeterias, criteria for lunch item selection, and purchase price. Energy and nutrient intake was different across dish combinations. Male students tended to select only “noodle bowl/dish”combinations, which led to greater salt intake; additionally, in such dishes, vitamins, dietary fiber, and iron were present in much fewer quantities than in other dish combinations. Female students tended to select “rice, main dish, and side dish” combinations, which had more calcium, dietary fiber, and iron than other combinations.For university students to put food education into practice in cafeterias, it is necessary to understand about appropriate energy and nutrient intake. Students should be educated about what dish combinations provide the right amount of energy and nutrient intake so that they can independently make decisions regarding this in the future. To facilitate this, the maintenance of a suitable (or “healthy”) meal environment is important.”
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.32-36, 1973-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 5

24種類の蔬菜類のペクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ベクチン含有量は, 次のようであった。1) 2.00%以上: えだまめの豆。2) 1.00~1.99%: オクラ, かぼちゃ, にんにく, ごぼう。3) 0.50~0.99%: エシャロット, ビート, くわい, じゃがいも, にんじん, やまといも, さやえんどう, ピーマン, さやいんげん。4) 0.10~0.49%: さといも, なす, ルバーブ, うど, たまねぎ, だいこん, かぶ, きゅうり, ししとうがらし, れんこん。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, W-Sはごく低く, H-Sがもっとも高いものが多く, つづいてP-Sが高い。H-Sが50%以上をしめるものは11試料, P-Sが50%以上をしめるものが7試料であった。これらのH-S, P-Sは, 細胞膜を形成し, 組織の硬さや水分保持に役立っている。全ペクチン含有量についてのみ考えるならば, 果実類と蔬菜類の間には, 総体的に大差はみとめられなかったが, 化学構造上かなりの相違点が推測できる。今後, これらの問題についても研究を展開して行きたいと考えている。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.555-562, 1976 (Released:2008-11-21)
参考文献数
25
被引用文献数
8 9

HMPゲルおよびLMPゲルの基礎的粘弾性を明らかにする目的で,圧縮型平行板粘弾性計を用いクリープ曲線を求め解析した結果,次のような結果を得た. 1. 1.5~2.5%のHMPゲルおよび, 2ならびに2.5%のLMP ゲルは,いずれもフックの弾性体. 2組のフォークトの粘弾性体および,ニュートン粘性体の6要素模型で示すことができた.弾性率(E0,E1, E2)は, 104~106dyn/cm2,粘性率(η1, η2, ηN)は, 107~109 poiseであった. 2.ペクチン濃度の増加に従い,いずれの弾性率,粘性率も漸増していた.また,温度上昇にともない,弾性率,粘性率の漸減が認められたが, LMPゲルでは, 30°C以上でゲルの弾性率および粘性率の低下が目立ち,ゲルの脆弱化が認められた. 3.未処理ならびに精製HMPゲル,および精製LMPゲルのマスター・カーブが合成され,シフトファクターが求められた.すなわち, HMPゲルでは,11.0~49.0°Cの温度範囲で,精製LMPゲルでは, 5.5~24.5°Cの温度範囲で,温度,時間の換算則が成立つことが認められた.シフトファクターと絶対温度の関係から,みかけの活性化エネルギーを求めたところ,両者のHMPゲルは約30Kcal/mol.,精製LMPゲルは約65 Kcal/mol.であった.また,遅延スペクトルが求められ,未処理HMPゲルは, 2つの極大値をもつ山型分布を,精製HMPゲルおよび精製LMPゲルは,遅延時間の大きい方に極大値をもつ山型分布を示した.
著者
鈴野 弘子 杉山 法子 三好 恵真子 澤山 茂 川戸 喜美枝 川端 晶子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.335-340, 1995-10-01
参考文献数
5
被引用文献数
1

全国3,420件の学校給食献立を解析し, 学校給食における野菜使用の現状について調査した。<br>緑黄色野菜の出現頻度は, にんじんが3,726回で最も多く, その他の野菜ではたまねぎ, いも類ではじゃがいも, きのこ類では生しいたけが第1位であった。1食当たりの野菜の平均使用量は, じゃがいも, にんじん, たまねぎが多かった。学校給食では限られた種類の野菜が繰り返し使用され, 量的には国民栄養調査結果の野菜摂取と比較して, にんじん, たまねぎの使用が非常に多いことが認められた。また, 1食当たりに使用される野菜数は, 全国平均で6.3種類であった。ビタミンA及びビタミンCの摂取は, 野菜が大きく寄与していた。
著者
玉木 有子 阿久澤 さゆり 澤山 茂 飯田 文子 山口 静子
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.25-36, 2003-04-15 (Released:2013-10-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

Consumers‘ quality perception and preference of tomatoes were measured during the whole process of eating. Words expressing the features of palatable and unpalatable tomatoes were collected and 91 pairs of words were selected to formulate the evaluation sheet for sensory evaluation. Fifteen kinds of tomatoes were chosen for test samples, at Tokyo Ohta Fruit and Vegetable Market, from those produced in various areas under the name of Momotarow, the most popular original kind in Japan. Panel was consisted of 307 university students. Each panelist was given a whole fresh tomato and evaluated the 91 items according to the process of eating, i.e., looking, holding, peeling, biting, tasting, and swallowing, using seven-point scales. Principal component analysis was applied both for mean average scores of 15 samples and individual scores of total 307 samples. Results in both cases showed that the total variance was mainly explained by two components. PC1 was related to taste (sweet, sour and umami), texture and flavor in the mouth. PC2 was related to ripeness. Multiple regression analysis showed that the total evaluation of tomatoes was mostly explained by the properties perceived in the mouth and only a small amount by those perceived through visual and tactile senses.
著者
大塚 洋子 澤山 茂 川端 晶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.177-184, 1995-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Jam was prepared from fresh rhubarb, and its properties and sensory characteristics were compared with fourteen kinds of manufactured jam.The pH value of the rhubarb jam was 3.55, a higher value than those of the other sample jams, its hardness was relatively low, and its cohesiveness and adhesiveness were about average.The sensory attributes of the jam samples were investigated by a factor analysis of the results of a sensory evaluation that was conducted by the semantic differential (SD) method.A profile of the sensory attributes was obtained by the SD method, using 20 parameters concerning appearance, flavor and texture. The factor analysis by the principal factor method of the intensity of sensory attributes ranked appearance first, taste and odor second.The factor analysis based on “like or dislike” of the sensory attributes, indicated that the first factor was taste and odor, and the second was appearance. The two-dimensional spatial diagram of the samples was made from the scores of these two factors as a correlation diagram, and the fifteen kinds of jams classified into two groups. The rhubarb jam was classified in the group of fruits and vegetables excepting table fruits.
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-25, 1974-02-28 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

1) 追熟によって, 澱粉から糖への成分転換が行なわれ, とくに7日目以後が顕著である。 試料間における糖含量の大きな差は認められなかったが, フィリピン産バナナの糖含量が比較的高かった。2) pHおよび酸度の変化では, 5日目ないし7日目にややpHが低く, 酸度を増す傾向にあり, climacteric riseの現象との一致の傾向を推測できる。3) バナナ果実の果肉と果皮の割合は, 平均して, 果肉60.7~62.2%, 果皮39.2~37.8%である。4) 追熟に伴い, 全ペクチン量は漸減し, とくに追熟後半で減少する傾向にあるが, 本追熟条件において適食期である9日目の全ペクチン含量は, エクアドル産バナナ果肉0.55%, フィリピン産バナナ果肉0.66%, 台湾産バナナ果肉0.68%であった。抽出区分の比率では, P-S区およびH-S区は, 追熟によって減少し, W-S区は増加するが, これは, 果肉が漸次軟化していくことを実証している。 バナナのペクチンを利用する調理加工には, 最も適した追熟条件を選定する必要があろう。5) 果皮中のペクチン含量は概して少なく, 追熟中の変化も顕著ではない。 抽出区分ではH-S区が最も多く, プロトペクチンの多いことを示している。
著者
足立 里美 阿久澤 さゆり 玉木 有子 松森 慎悟 中村 雅英 澤山 茂
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.136, 2004

【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
著者
川端 晶子 澤山 茂 Palomar Lutgarda S.
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.289-299, 1985

フィリピンのメニュー・カレンダー (Your Regional Menu Guide) を資料とし, 要素技術連関解析の手法を用いて, 献立における調理素材と調理法の相互関係の解析を行い, 以下のような結果を得た。<br>1) メニュー・カレンダーに記載されている料理数は3,414件であった。食品の出現頻度の合計は7,732回であったが, 大別して, エネルギー食品群29.1%, 身体構成食品群24.1%, 機能調整食品群41.1%, その他5.7%であった。出現頻度の最も高い食品は玉ねぎで, っづいて, トマト, 植物油, 生鮮魚, にんにく, うるち米の順であった。<br>2) 調理素材の共出現頻度は, 玉ねぎとトマトが470回であり, 連関度は0.6752が求められた。つづいて, 玉ねぎとにんにく, 玉ねぎと植物油, にんにくと植物油, トマトと植物油, トマトとにんにく, 砂糖とココナッツ, 玉ねぎと生鮮魚の組み合わせの順であった。<br>3) 調理法の出現頻度では"煮る"が最も高く, つづいて"生","炒める","揚げる","焼く","蒸す"の順であった。"煮る"と連関度の最も高い食品はうるち米で, つづいて, 玉ねぎ, 生鮮魚, トマト, 砂糖, ココナッツの順であった。"生"ではバナナ,"炒める"では植物油,"揚げる"では生鮮魚,"焼く"でも生鮮魚, "蒸す"ではもち米が最も高い連関度を示した。<br>4) 総括してみるならば, 食料栄養研究所 (FNRI) は, フィリピンの食生活の背景となっている自然, 社会, 文化の諸条件もふまえ, 国民栄養調査の結果をきめ細かく分析したうえで, おすすめメニュー集をカレンダーにまとめ, 誰にでも解りやすく, すぐ役立つ栄養改善の効果をねらったものであるということができる。
著者
足立 里美 阿久澤 さゆり 玉木 有子 松森 慎悟 中村 雅英 澤山 茂
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2004 (Released:2005-04-02)

【目的】 わらび澱粉はわらびの地下茎から抽出され「わらび粉」として流通しており、わらび餅などに珍重されている。しかし、生産量が少なく高価なため、さつまいも澱粉が代替品として使用されている。演者らは、数種類の澱粉の理化学的性質およびレオロジー的性質について報告してきたが、わらび澱粉に関する報告はあまり見られない。そこで本研究では、わらび澱粉の糊化特性と糊液のレオロジー的性質を検討した結果を報告する。【方法】 わらび澱粉は、広八堂(鹿児島県)で製造された粗澱粉を、常法に従って精製して試料澱粉として用いた。対照としてさつまいも澱粉およびくず澱粉を用いた。アミロペクチンの鎖長分布はHPAEC-PAD法 (Dionex社製DX-500) で測定し、DSCにより糊化特性を測定した。また、SEC-MALLS (昭和電工社製:Wyatt Tecnology社製) により重量平均分子量および慣性半径を測定した。糊液の動的粘弾性測定はRheoStress1 (Haake社製) を用いた。【結果】 DSCによる糊化終了温度は、わらび澱粉が70.8℃と最も低く、次いでくず澱粉78.5℃、さつまいも澱粉83.8℃であり、アミロペクチンのDP6-12の短鎖長の割合が多いほど糊化ピーク温度が低い傾向であった。また、糊液を遠心分離後、上澄み中に溶解した糖量を比較すると、わらび>さつまいも>くずの順で糖量が多く、さらに溶液中の重量平均分子量および慣性半径を測定したところ、わらび澱粉糊液は著しく大きかった。動的粘弾性からみたゲル化濃度はわらび澱粉が最も低く、貯蔵弾性率の濃度依存性より3種のゲル構造の違いが示唆された。
著者
川端 晶子 澤山 茂
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.241-244, 1976-07-10 (Released:2010-03-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

8種の果実ペクチン質および4種の市販ペクチンを試料とし, 臭化カリウム錠剤法による赤外線吸収スペクトル分析を行なうとともに, 中和滴定法によって, 試料中の遊離のカルボキシル基と, エステル形カルボキシル基を定量し, また, 原子吸光分析法によってカルシウムとマグネシウムを定量した結果, 赤外線吸収スペクトル特性が, エステル化度, 無機イオンおよび前報のメトキシル基の定量値とほぼ一致することが認められた。
著者
新井 貞子 永島 伸浩 澤山 茂 川端 晶子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.141-149, 1991-02-15
被引用文献数
1

The amylose content of each starch was approximately 20%, with the values for Nagaimo and Mukago being slightly higher. The X-ray diffractogram of the Ichoimo and Tsukuneimo starches indicated the C type, which is very similar to the B type, while Nagaimo and Mukago were of the C type. The granular size of the starches was from 15.5 to 19.5 μm. The starting temperature for gelatinization by photopastegraphy was 63.0℃ for Ichoimo, 63.2℃ for Tsukuneimo, 64.0℃ for Nagaimo and 63.5℃ for Mukago. The dissolution percentage of starch granules by pancreatin was generally low, being 13.5% in Ichoimo, 12.5% in Tsukuneimo, 10.0% in Nagaimo and 7.5% in Mukago. The dynamic viscoelasticity of each starch during the gelatinization process was measured for a 10% starch suspension, both the storage modulus (G') and loss modulus (G") increasing in proportion to the increase in temperature. The increase of temperature for both G' and G" was 10℃ higher than the starting temperature of gelatinization by photopastegraphy. The gelatinization process started rapidly in Ichoimo and slowly in Mukago. The tan δ (tan δ= G"/G')value in each starch decreased with increasing temperature, being lowest (0.11) for Ichoimo and highest for Mukago. The static viscoelasticity was measured for a 10% starch gel and showed a creep curve, most of which indicated progressive change that could reduced to a dynamic model of 4 elements. The elasticity and viscosity percentages in each starch gel tended to decrease in proportion to an increase of temperature, the elasticity percentage of the Mukago starch gel being approximately twice that of the Yam (Ichoimo, Tsukuneimo and Nagaimo) starch gel. The percentage recovery against the whole strain after eliminating the loading weight was 50% in the Yam starch gel and 88% in the Mukago starch gel at a temperature of 10℃.
著者
杉山 法子 鈴野 弘子 三好 恵真子 澤山 茂 川端 晶子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.315-326, 1993-11-20
被引用文献数
5

イメージ調査と官能検査を行い野菜の官能特性の評価について検討した。1.イメージ調査の料理に関する項目では、肉類あるいは他の野菜類との組み合わせが多くイメージされたが、野菜によっては特徴を示すものがあった。健康・栄養に関するイメージは、ビタミン類、食物繊維、低エネルギーという項目が多く、調査対象の学生はより確かな知識を持っていることが認められた。生野菜の嗜好特性におけるテクスチャーのイメージでは、「サクサク」、次いで「パリパリ」、味では「苦い」、香りでは「青くさい」、色では「白」が1位にイメージされたが、加熱するとテクスチャーでは「やわらかい」、味では「甘い」、香りでは「香りがない」、色では生と同様「白」であった。また、強くイメージする野菜の嗜好特性は、生および加熱野菜ともテクスチャーであり、野菜を感覚的に評価する基準となっていることが認められた。2.官能検査の結果、野菜は加熱することによりテクスチャーの項目が著しく変化することが認められた。因子分析の因子の意味づけでは、生野菜の第1因子は味、第2因子は色、第3因子はテクスチャーで第3因子までの累積寄与率は80.6%であった。同様に加熱野菜の第1因子はテクスチャー、第2因子は香り、第3因子は色で第3因子までの累積寄与率は85.1%であった。本報告の概要は1992年9月平成4年度日本調理科学大会において発表した。