著者
須長 史生 小倉 浩 堀川 浩之 倉田 知光 正木 啓子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.734-751, 2020 (Released:2020-05-12)
参考文献数
7

本研究は,2016年から3か年にわたって計画されている「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2年目にあたり,本稿はその調査結果を記した「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2017])の続編となる.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.目的を達成するために,首都圏の医療系A大学の一年生445名(男子129名,女子313名,その他3名)に対してアンケート調査を行った.本調査は昨年度同様に,プライバシーの確保と回収率の向上のために,インターネットを活用することとし,学生はスマートフォンもしくはタブレット端末を用いてアンケートに回答した(回収率76.6%).質問肢の作成およびデータの分析では前年度の調査をまとめた須長他[2017]を参考にし,その比較において若者,特に今回は18歳から20代前半まで大学生の,性的マイノリティに対する意識や行動の実情の把握を試みた.調査の結果,今年度の調査対象者の持つ特徴として,前年度に比べて性的マイノリティに関する客観的知識量が少ないこと,性的マイノリティとの接触機会はほぼ同程度であること,身近な同性愛者に対する嫌悪感情が低いこと,そして性的マイノリティに対する意識に,男女差がみられる項目が多いことが明らかになった.本調査は,前年度と異なり,差別や人権をテーマにした必修科目の授業の前に実施された.そのため調査実施のタイミングが回答傾向に影響を及ぼした可能性があり,考察にはその点も考慮に入れている.
著者
松坂 貫太郎 緒方 浩顕 山本 真寛 伊藤 英利 竹島 亜希子 加藤 雅典 坂下 暁子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.389-396, 2019 (Released:2019-11-08)
参考文献数
16

血液透析患者では,摂取不足,腎での生合成の減少や透析療法による除去などのためにカルニチンが極めて高頻度で欠乏すると報告されており,カルニチン欠乏がさまざまな腎不全合併症(エリスロポエチン抵抗性貧血,低左心機能や筋痙攣等)に関与することが想定されている.本研究ではカルニチン代謝障害の実態を検討するため,カルニチン静脈投与の有効性を検証する前向き観察研究(「透析患者の合併症に対するL-カルニチン静注製剤の有効性の検討」)に登録された昭和大学横浜市北部病院およびその関連施設の外来血液透析患者501名に対して,血中カルニチン分画を測定し,その関連因子を横断的に検討した.主要評価項目として遊離カルニチン(Free)濃度とアシルカルニチン濃度/Free濃度(A/F比)を解析した.Free濃度を3群間(充足群(36≦Free≦74µmol/l),不足群(20≦Free<36µmol/l),欠乏群(Free<20µmol/l))に分類したところ,充足群は全体のわずか8.4%であり,A/F比も>0.4が98.8%と,ほとんどの患者がカルニチン代謝障害を合併していた.Free濃度とA/F比それぞれに関連する因子を多変量解析で検討したところ,カルニチン代謝障害と血清尿素窒素濃度(SUN),透析歴,性別,アルブミン,リンや標準化タンパク異化率(nPCR)との間に有意な関連がみられた.一方,血液透析療法の差異(血液透析と血液ろ過透析)は,カルニチン代謝障害に関連していなかった.興味深いことに,ともに栄養状態,タンパク摂取状況の指標とされるSUNとnPCRがFree濃度との関連では全く反対の関連性を示したことである.透析患者におけるカルニチン代謝障害の病態生理について更なる検討が望まれる.
著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
9

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.
著者
石川 琢也 池田 裕一 布山 正貴 小川 玲 藤本 陽子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.564-570, 2022 (Released:2022-03-23)
参考文献数
22

ヒトの腸管内には多くの細菌が生息しており腸内細菌叢を形成している.近年,腸内細菌叢の変化とさまざまな疾患との関係性が報告されている.今回,われわれは機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児における腸内細菌叢の分布を調査することとした.機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児10名(男児8例女児2例,平均年齢8.1歳)と健常児10名(男児10名,平均年齢7.1歳)の腸内細菌を検索した.検索は培養法で行い,4菌種を評価項目とした.その結果,機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児ではClostridium属とLactobacillus属が有意に増加しており(p<0.05),その他の菌種や総菌数では有意差は認めなかった.腸内細菌叢の変化が排尿排便機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆され,プロバイオティクスによって基礎疾患とともに下部尿路障害の改善に期待がもたれる.
著者
龍 家圭 小口 勝司 三邉 武彦 天野 均 亀井 大輔 岩井 信市
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.333-339, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
25

炎症性サイトカインや機械的刺激により誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は,骨代謝に重要な役割を持つことが報告されている.COX-2により生成されるプロスタグランジンE2(PGE2)は,骨芽細胞を介して間接的に破骨細胞形成に作用するばかりでなく,その受容体を介して破骨細胞分化に直接影響するとされる.本研究は,選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブのin vitroでの破骨細胞分化抑制過程の機序を明らかにすることを目的として行った.マクロファージ株細胞であるRAW264.7細胞に,可溶型NF-κBリガンド(sRANKL;100ng/ml)を添加し6日間培養することによって,破骨細胞へ分化誘導する実験系を使用した.酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色陽性の核が3個以上の多核細胞を破骨細胞として,形成された破骨細胞数を測定した.セレコキシブ添加群(2.5~10µM)は,濃度依存的に破骨細胞形成数が減少した.活性化破骨細胞の指標となるアクチンリングを持つ破骨細胞数も顕著に濃度依存的に減少した.ハイドロキシアパタイトコーティングした培養皿を用いた実験系においても,セレコキシブは濃度依存的にマウス骨髄細胞由来破骨細胞による吸収窩形成を抑制した.本研究により,COX-2活性阻害を介して,マクロファージ系株細胞から破骨細胞への分化を抑制する経路が明らかにされた.
著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.