著者
佐藤慶浩
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-12, 2015-01-15

本稿は,企業において顧客情報を管理するデータベースを設計・構築して運用する際に,各国によって異なっていたり,国内であっても法改正を控え今とは異なることが想定される法令等や自主規制ルールを,データプライバシー対策として捉え,それらに対応するために配慮すべき設計と運用のプラクティスを紹介するものである.具体的な対策方法を示すために,連絡先情報をプロモーション連絡に利用する場面を例にしたが,そこで検討するアプローチは,他の利用場面でも参考になるプラクティスである.
著者
藤本真樹
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.291-299, 2014-10-15

IaaSという単語の普及が示す通り,インターネットサービスを支えるインフラストラクチャは,従来のラック,物理サーバを提供する形から,仮想化されたインスタンスをサービスとして提供されることが一般的になりつつある.一方で,2014年現在,IaaSにも課題はある状況であり,かつ,既存のオンプレミスなインスタンスを多数運用している環境では,単純にIaaSを利用すればよいわけではなく,それぞれの利点,課題を把握した上で,既存のインフラストラクチャを変化させていく必要がある.本論文では,GREEという実際に稼働しているサービスにおける,オンプレミスな環境をどのようにサービスとしてのインフラストラクチャへと変化させていくか,という事例を紹介する.
著者
松浦 智之 當仲 寛哲 大野 浩之
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.173-190, 2020-01-15

短文投稿SNS“Twitter”は今や多くの人々に認知され,NHKを始めとした日々のニュース番組等においても,もはやTwitterやツイート(Twitterに投稿される文章)が何かという説明が省略されながら,世論を反映した情報源として引用あるいは分析されている.しかしながら,社会現象のような膨大な量のツイートを発生させる話題を分析しようとなると,すでによく知られている方法では費用的にも技術的にも個人には敷居が高い.本稿では,一定の制約はある中でも,個人による大量ツイートデータの収集・分析を実現し得る手法を提案し,実際に,日本国内で社会現象を起こして大量のツイートを発生させた2つの話題に関するツイートの収集・分析を行うことで,提案手法の実用性を示している.
著者
関 治之
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.104-111, 2016-04-15

福島県浪江町では,東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故の影響で,長期および広範囲にわたる全町民の一時避難生活という前例のない状況におかれている.そのような状況の中で,町は町民にタブレット端末を配布することを決定した.それに伴い,自治体として提供すべき情報発信ツールの在り方を検討し,開発を行う必要があった.そもそも町民がどのような生活を営んでいて,どのようなニーズを持っているのかから把握するため,ユーザインタビューによるペルソナ作成や,アイデアソン/ハッカソンイベントの開催による住民参加型のプロトタイピングを実施した.プロトタイピング以降の調達仕様の作成や調達,プロジェクトマネジメントも行う必要があった.浪江町で行った「町民中心設計」のプロセスを元に,課題当事者と共に要求開発を行い,そこから実際のシステムの開発までを解説する.
著者
中田 康太 高木 健太郎 陶 亜玲
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.304-321, 2019-01-15

半導体製造における歩留解析では,製品の品質検査結果と各工程の処理履歴から不良の原因を特定し,対策に繋げることで生産性を向上している.半導体の製造プロセスから得られるデータは大量かつ複雑であるため,人手による歩留解析では作業に時間がかかることが問題となっている.本稿では,機械学習・データマイニングの技術を用いて不良の発生状況の可視化と不良原因装置の推定を網羅的に行う歩留解析支援システム「歩留新聞」について紹介する.歩留新聞はウェハ上の特徴的な不良の出現パターン(不良マップ)を自動で分類し,それぞれの原因装置候補を抽出する.不良マップの分類結果と原因装置候補を技術者に提示することで,不良1件あたりの解析時間を平均6時間から2時間に短縮した.ここでは,歩留新聞の概要とともに,コア技術となる深層学習技術について紹介し,製造現場における機械学習技術適用の課題とその解決方法について議論する.
著者
鳥羽 美奈子 櫻井 隆雄 森 靖英 恵木 正史
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.71-79, 2016-01-15

知的作業に従事するオフィスワーカの生産性向上が注目を集める昨今,オフィスワーカを対象としたライフログ研究が盛んである.一方,オフィスワーカの業務状況とストレスの関係もまた,社会的に注目を集めている.ストレスは生産性に高い影響を与えると考えられるにもかかわらず,業務を中断させずにストレスを評価することはこれまで困難だった.本研究では,ストレス量を示す既知指標である被験者の生理量(唾液アミラーゼ分泌量)を目的変数,PC 操作ログの特徴量を説明変数として重回帰分析を実施し,ストレス量とPC 操作の関係を明らかにする手法を提案する.被験者10人延べ300時間の実業務を対象に実験を行った結果,重相関係数が0.6を上回る被験者が67%となり,ストレス量とPC操作ログ特徴量に関係があることが明らかになった.また被験者ごとに,ストレス量に関係の深いPC操作や,PC 操作がストレス量に反映されやすい時間範囲があることが分かった.これより,オフィスワーカに負担をかけることなくPC操作ログからストレス量を推測するサービスを実現する見通しを得た.
著者
中野猛 下垣徹 橋本拓也 渡邉卓也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.130-138, 2014-04-15

本稿では,オンライン機械学習を実現するためのミドルウェアであるJubatusのユースケースとして,不動産賃貸物件を題材とし,利用者の嗜好を反映させながら絞り込みを行い最終的に物件を推薦するサービスを開発した.このサービスでは物件の属性情報を基にMDS(多次元尺度構成法)を用いて探索空間を構築する.利用者の操作に応じ,その空間上で二分探索を基本的発想とする幾何的絞り込み,およびJubatusの分類器を利用した絞り込みを行い,探索空間を狭めていく.さらに3次のBスプラインによるcurve fittingを行い,絞り込みの収束点を予測した上で,利用者の嗜好に合致する物件一覧を提示する.
著者
崎村夏彦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.21-28, 2015-01-15

新時代の経済を担う石油とも言われるパーソナルデータの流通であるが,あたかも石油が公害問題を克服せざるを得なかったように,プライバシー上の課題を克服しなければ大規模な実現は難しい.そのためには,プライバシー保護をプロトコルデザインの段階から埋め込むことが必要である一方,盛り込むべき項目は一般事業者が採用できるようなプラクティカルな配慮も不可欠である.本稿では,2014年2月に標準として承認されたOpenID Connectについて,どのようなプライバシー保護手段が盛り込まれたか,それがどのようにプライバシー・トラストフレームワークの実現に寄与するかについて概観する.
著者
牧野 友衛
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.280-283, 2014-10-15

• Twitterはサービス開始当初から自社サービスのAPIを提供することでTwitterの一部機能やツイートを活用したサービス開発が行われ,開発者コミュニティによるエコシステムが構築されてTwitterの成長につながった.• ユーザ・エクスペリエンスの向上を図り,またAPI利用したツールのクオリティコントロールを実施するために,エコシステム戦略を随時見直してきている.• さらに,APIを通じたエコシステムの構築を超えて,ツイート数データ等を活用した指標作成も行っている.
著者
伊藤 智 吉野 松樹 平林 元明
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.137-152, 2019-01-15

文字コード,電子出版の分野で永年標準化に携わってこられた小林龍生氏(本特集号「国際標準化活動の戦略と戦術」著者)と村田真氏のお二人に,国際標準化を有利に進めるためのストラテジーとタクティクスについて伺った.
著者
遠山緑生 田尻慎太郎 岩月基洋 岡本潤 木幡敬史 白鳥成彦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.129-138, 2015-04-15

本稿では,社会科学系の小規模大学である嘉悦大学において著者らが取り組んできた「デジタルネイティブ世代の学生が,正課の内外共に大学において積極的にICTを使いこなすようになること」を目標とした教育改善の取り組みについて,ICTリテラシー教育のカリキュラム設計とICT利用環境整備の双方の観点から紹介する.ICTリテラシー教育の内容を全面的にアクティブラーニングによる問題解決型のものに刷新するとともに,これを支えるインフラとしてのICT利用環境は,BYODとクラウドサービスの徹底活用を基本方針とし,従来型のPC教室やオンプレミス型サーバを廃止・縮小した環境を整備した.
著者
関堅吾 金子崇之 山下真一
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.110-119, 2014-04-15

2013年10月現在,Twitterはアクティブユーザ数が2億人以上,1日の投稿ツイート数は5億件以上[1]と,最も活発なWebサービスの1つである.(株)NTTデータが運営する「Twitterデータ提供サービス」は,そのような大量の公開ツイートをFirehose APIを通じて収集し,すべての日本語ツイートを,特性の異なる複数のWeb APIによりユーザに提供するサービスである.Firehoseを利用するシステムは,トラフィックの継続的な増加,ツイート数の瞬間的な急増,データの再取得の難しさなど,さまざまな課題に対処する必要がある.本論文では,OSSを全面的に活用し,これらの課題に対応したシステムの事例を紹介する.
著者
真鍋 大度 石橋 素
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.279-287, 2017-10-15

筆者らは2005年ごろよりアートパフォーマンス作品の制作に携わるようになり,2010年ごろからはエンタテインメントの領域でも活動を続けている.主にテクノロジーを用いた舞台・ステージ表現を開発,実践してきたが,それらは映像表現だけによらず,物理的なオブジェクトや装置を伴うところが大きな特徴の1つである.本稿では,過去に筆者らが実践した具体的な事例を,作品に用いた物理的なオブジェクト・装置に着目して「空中移動体」「飛翔体」「地上移動体」「発光体」という4つのカテゴリで総括し,その表現の狙いや,実装手法・制作手法とその工夫点などについて述べる.これらは技術を見せるためのものではなく,新しい演出や表現を支えるものである.そのためには高い安定性・確実性が必要であり,開発したハードウェアの検証,ソフトウェア・シミュレータの機能の充実,人と物・技術の融合した演出の制作環境の整備も積み重ねてきた.
著者
佐藤 彰洋 福田 豊 和田 数字郎 中村 豊
出版者
情報処理学会
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.624-635, 2020-07-15

国立大学法人において,サイバー攻撃によるセキュリティインシデントが多発している.その攻撃に抗するため,我々が属す九州工業大学情報基盤運用室では学外公開アドレス管理システムを構築した.本システムの特徴は,学外公開,すなわち学外から到達可能なIPアドレスを付与した機器に関する情報共有と,それに対する措置として脆弱性改善と通信制御を実現したことにある.その導入により,本学のネットワークにおいて高い堅牢性の実現を確認した.本稿では,学外公開アドレス管理システムの設計と,12カ月にわたるシステムの運用による有効性の評価,そこから得られた知見について報告する.
著者
鬼頭 武嗣
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.539-549, 2019-07-15

本稿は,不動産クラウドファンディングプラットフォームの設立・運営とそれにかかわる制度設計に事業者の立場で4年にわたって取り組んできた中での課題意識とソリューション,そして今後の展望について述べる.
著者
西潟 憲策 佐々木 裕之 安藤 寿之 野沢 善浩 中谷 貴子
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.275-283, 2016-07-15

アジャイル開発は,開発プロセスだけでなく,プロジェクト管理の考え方も従来の方法とは大きく異なる.ベンダとして,さまざまなプロジェクトにおいてアジャイル開発を適用し,成功に導くためには,アジャイル開発の経験と実績を積み重ねることが重要である.筆者らは,これまでにもNECグループ内のツール開発やクラウドサービス開発において,積極的にアジャイル開発を採用し,ノウハウを蓄積するようにしてきた.今回,当社の新規ビジネス領域のクラウドサービス開発において,アジャイル開発を適用した.本稿では,当事例について,要件の検討と変更への適用の取り組みを中心に紹介する.
著者
中井俊文 石田浩二 安浦寛人
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-178, 2015-04-15

東日本大震災以降,各自治体で防災計画の見直しが行われている.福岡県糸島市も緊急時防護措置準備区域を抱える自治体である.我々は,糸島市と協力し,有事の際の住民の円滑な広域避難体制の確立を目指し,ICTを利用した避難支援システムを開発し,避難訓練にて実証実験を実施した.その結果,ICTを用いることにより,過去に行ってきた避難訓練の結果を革新的に変え,住民の確認時間を1/4に削減することにより全体の避難時間を1/2とすることが可能となった.加えて,本システムを有効に利用するためには,今後検討しなければならない課題もあることが判明し,その解決法について検討を行った.