著者
小林 茂 水野 祐
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.128-135, 2016-04-15

多様なスキルや視点,経験を持つ人々が新しい製品やサービスを短期間で共創するイベント「ハッカソン」や「メイカソン」における民族誌調査を基に,主催者側および参加者側の双方にとって適切に知的財産を取り扱うことを盛り込んだ参加同意書を作成し,同様のイベントにおいて活用できるよう2014年2月にテンプレートとして公開した.さらに,公開後に行った調査で新たに見つかった課題に対し,イベントの期間中における知的財産の定義および権利化の意思確認を行う終了後の確認書を追加して2015年2月に更新した.2015年9月から12月までに行ったイベント主催者に対する調査結果から,この参加同意書は日本国内のイベント主催者に広く認知され,多くの場合において派生物が利用,または参考にされていることが確認できた.
著者
遠山緑生 田尻慎太郎 岩月基洋 岡本潤 木幡敬史 白鳥成彦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.129-138, 2015-04-15

本稿では,社会科学系の小規模大学である嘉悦大学において著者らが取り組んできた「デジタルネイティブ世代の学生が,正課の内外共に大学において積極的にICTを使いこなすようになること」を目標とした教育改善の取り組みについて,ICTリテラシー教育のカリキュラム設計とICT利用環境整備の双方の観点から紹介する.ICTリテラシー教育の内容を全面的にアクティブラーニングによる問題解決型のものに刷新するとともに,これを支えるインフラとしてのICT利用環境は,BYODとクラウドサービスの徹底活用を基本方針とし,従来型のPC教室やオンプレミス型サーバを廃止・縮小した環境を整備した.
著者
上田浩 中村素典 古村隆明 神智也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.97-104, 2015-04-15

筆者らは大学の情報系センターでの経験から,大学等における情報倫理教育には次の3つの問題:(1)標準化と可視化がなされていない,(2)留学生への教育が困難,(3)持続可能性が低い,があり,これらの問題に対処し,大学等における情報倫理教育を充実させるため「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」に準拠し日英中韓の4カ国語に対応した情報倫理eラーニングコンテンツ「倫倫姫」を開発し運用してきた.2012年11月より「倫倫姫」は,学認連携Moodleにおいて,学認参加機関であれば無償で利用できるようになっている.本稿では「倫倫姫」開発・運用を総括するとともに,複数の大学等に本コンテンツを提供している学認連携Moodleの構築・運用事例とそこから得た知見を報告する.

2 0 0 0 OA 表紙・目次

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, 2015-04-15
著者
中村徹 渡辺龍 清本晋作 高崎晴夫 三宅優
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.13-20, 2015-01-15

筆者らは2011年より,データ対象者のプライバシーを適切に保護できるパーソナルデータ流通基盤として,Privacy Policy Manager(PPM)の設計と開発を行ってきた.本稿では特にプライバシー保護の観点から必要となる要件定義を中心として,PPMの設計について説明する.次に筆者らがこれまで進めてきたPPMのプロトタイプ開発について紹介する.さらに,2013年に行ったPPMの実証実験,および経産省ベストプラクティス認定について紹介する.

2 0 0 0 OA 表紙・目次

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, 2015-01-15
著者
樋渡仁 吉川美奈子 岩村相哲
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.325-332, 2014-10-15

遠隔拠点にあるクラウドコンピューティング環境(以下,単にクラウド環境)を構築・運用していく上で,装置の故障・障害にどのように対処するかは,運用コストの最小化において重要である.特に,遠隔拠点に作業員が常駐せず定期的に現地を訪問し保守作業する前提では,構築時に系全体に冗長性を持たせ,装置の故障・障害が発生した場合には,遠隔から現用系より待機系に切り替えることで,当該装置の修理・復旧は現地での定期保守時に行う運用が典型的である.このような遠隔クラウド環境の設計では,構築時に系全体が保持する信頼度に対し,定期保守回数を最小化する必要があり,本論文は,クラウド環境の信頼性モデルにより,運用コストが最小化された設計を実現できることを示す.特に,クラウド環境の立ち上げ時には,サーバの故障率が,故障率曲線における初期故障期から偶発故障期へ至る過程で大きく変動するため,本手法の適用においては,定期保守の間隔を初期故障期と偶発故障期で使い分けることが有用であることを示す.
著者
中島康之
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.271-279, 2014-10-15

携帯電話を取りまくネットワーク環境や携帯電話の処理性能,蓄積容量はこの10年で目覚ましい進化を遂げている.また,携帯電話自体も比較的限られたサービスや操作を提供していたフィーチャーフォンから,より直感的な操作と,パソコンと同じようにオープンなサービス・アプリケーション環境のスマートフォンへと大きく変貌してきている.音楽サービスについては,携帯電話の登場初期は着信メロディなど比較的シンプルなサービスでスタートしたが,このような環境変化の中でどのような変化や進化があったか,また今後どのようなことが予想できるのかについて,音楽サービスとして提供している,「LISMO」の例を用いて述べる.
著者
英 繁雄 高月 裕二 東 大介
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.252-259, 2016-07-15

日本では,エンタープライズ型のシステム開発は,ITサービス企業へ委託する場合が多い.欧米で多く適用されている迅速な開発手法であるアジャイルプロセスは,委託開発が主流の日本では普及しづらいのが現状である.本稿では,エンタープライズ型のシステム開発にハイブリッドアジャイルを適用し,アジャイルプロセスで採用されるいくつかのプラクティスから適用効果を評価する.適用したプラクティスは,反復,イテレーション計画,テスト駆動開発,継続的インテグレーション,コードレビュー,イテレーションレビュー,バーンダウンチャートである.
著者
鈴木 雄介
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.229-244, 2020-04-15

エンタープライズ領域においてデジタルトランスフォーメーション(以下DX)と言われるようなビジネスモデルの変化に合わせ,システム開発にアジャイル開発プロセスを導入する取り組みが増えている.しかし,実際に導入しても高いビジネス成果を上げることは容易ではない.本稿ではシステム開発手法を組織の意思決定プロセスと捉え,エンタープライズ領域におけるアジャイル開発の課題を論じる.また事例を挙げて,この解決に向けた取り組みを紹介する.
著者
本橋 智光 平野 友信 奥村 恒介 樫山 真紀子 市川 太祐 上野 太郎
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.576-587, 2019-07-15

ブロックチェーン技術は非金融領域を含む幅広い分野への応用が期待され,データ駆動型社会を実現するための基盤技術となりうるものである.医療分野においては,社会保障費の急増や超高齢社会といった社会課題とともに,臨床試験データの改ざんや高額医薬品の問題が顕在化している.我々は,これまでにソフトウェア医療機器の承認を目指した不眠症治療用デジタル医療の開発を行い,規制当局の監督の下,臨床試験と治験を進めてきた.その中で,ブロックチェーン技術を活用した治験プラットフォームを開発することで上記課題を解決することに取り組み,実証試験と技術開発を重ねてきた.本稿では,医療分野における課題とブロックチェーン技術の医療応用の現状について概観するとともに,我々の取り組み事例を紹介する.
著者
河本 敏孝 高木 敏伸 國武 祐一郎
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.524-538, 2019-07-15

近年,「API(Application Programming Interface)」を通じて,外部企業との連携や協業を図ろうとする取組みが増えている.外部のサービスとシステムを連携するためのプログラムやインタフェースを公開することによってデータのやりとりを可能にするオープンAPIという仕組みにより,オープンAPI公開元の企業は自社製品の付加価値が向上するような拡張機能や新サービスの開発を促進することができ,ビジネスチャンスを増やすことが可能である.特に,FinTechの台頭により金融機関では,さまざまな金融サービス創出に向けた取組みが始まっている.銀行口座と連携した「家計簿アプリ」のようなヒット作が生まれ,今後も新たなサービスの創出が期待される.本稿はこうしたオープンAPIが世の中に根付いてきた現在までの経緯と課題,および今後のオープンAPI拡充へ向けた<みずほ>の取組みについて記載する.
著者
櫻橋 淳 神武 直彦 石谷 伊左奈 三鍋 洋司 西山 浩平 石寺 敏 後藤 浩幸
出版者
情報処理学会
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.189-195, 2014-07-15

2011年,東日本大震災およびそれに伴って大規模に進められた計画停電を経て,東京電力管内では電力供給の低下により広く節電を行うことが求められた.電力総需要の約30%を占める家庭部門は,業務部門および産業部門と比較し,電力需要の抑制の呼びかけにどのくらいの電力利用者が対応し,節電を行うのかが未知数であるという課題があった.それに対し,筆者らは,スマートフォンなどの情報端末を通じて参加者の節電の取り組み情報を収集し,収集した情報を分析し,各電力管内での電力使用率などの情報とともにスマートフォンやWebサイトで可視化するシステムを構築した.そして,そのシステムを用いて,ソーシャル・キャピタルと節電行動の関係を実際の節電履歴データを取得して分析すること,およびソーシャル・キャピタルが強くない中でも節電を行う仕組みの実現に寄与することを目的とした実証実験「停電回避プロジェクト」を夏の電力需要が増加する2011年7月1日から100 日間実施した.結果として,①身近なコミュニティにおける節電行動の可視化,②身近なコミュニティでのランキング表示など自身のポジションの可視化,③他の利用者との接続が常時されているというリアルタイム性,の3つを実現し,ソーシャル・キャピタルの度合いが高くない電力利用者に対しても節電行動を促せることが分かった.
著者
山内 翔 尾形 晃基 鈴木 恵二 川嶋 稔夫
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.768-782, 2018-07-15

近年,ドローンならではの山,海岸,湖沼など自然地形を対象とした映像を用いたプロモーションが積極的に行われている.こうした自然地形を対象としたドローン撮影では,人手での映像撮影が主流で,操作主の技量が必要とされている.しかし,広範囲にわたる撮影を計画的に,意図通りに,トラブルなく実施しようとする場合,人手では限界があり,ドローンの特性を活かした自動飛行による撮影を行うことが望ましい.そこで本稿では,自然地形を対象としたドローンの自動飛行による精密な映像撮影を行うため,安全に対象をモデリングし,そのモデルを用いた映像撮影用の飛行経路計画手法を提案する.その際,複数台のドローンを同時運用することを前提とし,機体間での性能のばらつきを吸収するための誤差検証方法を構築する.最後に,北海道道南地区の恵山道立自然公園で実際に本稿で提案する手法を用いた精密飛行による映像撮影を行い,本手法の有効性を検証した事例を示す.
著者
成迫 剛志
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.298-306, 2020-04-15

日本企業におけるDX推進に関しては,東京証券取引所による「攻めのIT経営銘柄」や経済産業省が作成し公表したDX推進ガイドラインおよびDX推進指標,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によるITスキル標準(ITSS)およびDX領域に向けた学び直しの指針であるITSS+など,大企業がDXを推進するための指針となるものが策定・公表されている.しかしながら,それらは,組織論や人材育成論,プロジェクト推進手法など個々の領域に対するガイドとなっているものの,実際の企業活動におけるプロジェクトに当てはめての検証までは至っていないのが現状である.本稿では,日本の伝統的大企業におけるDXプロジェクト推進を実践した経験から,DX推進のための人材,組織,プロジェクト体制に関する課題と対処法について考察する
著者
石黒 浩 岸 英輔 吉無田 剛
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.5-10, 2017-01-15

2015年の4月から半年間にわたって放送された日本テレビの番組「マツコとマツコ」は,テレビ史上発の,アンドロイドがホスト役を務めるアンドロイドの可能性検証番組であった.この番組は視聴率や評判として成功しただけでなく,ギャラクシー賞なども獲得し,テレビ史上にその名を残した.この番組の主な目的は,アンドロイドやロボットがテレビの世界や実世界でどのような役割を果たすかを検証することであったが,本稿ではその監修を務めた石黒と,製作に携わった岸と吉無田がその検証の結果を議論する.
著者
中村 嘉志 瀬川 典久 丸山 一貴
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.407-416, 2016-10-15

学術会議において参加者にインターネット接続サービスを提供することは必須の要件となりつつある.しかし中小規模の会議の運営は,人的および資金的に余裕があるとは言えないため,ネットワークインフラストラクチャの設計と敷設,運用,撤去をネットワーク技術者という観点においてアマチュアである運営委員が行わなければならないことがしばしばである.しかしそれを実践することは必ずしも容易ではない.本稿は,参加者数200人規模,接続機器数400台規模で,ホテルなど一般の宿泊施設を利用して2泊3日の合宿形式で毎年一回開催されるIT系学術ワークショップ,通称WISSでの5年間の運用経験を基に,会議用の一時的なネットワークインフラストラクチャの構築と運用がなぜ容易ではないのかの背景と理由を学術会議運営の側面から示し,問題点を明らかにした上でその解決法の1つとしてソフトウェアルータを用いた方法論と実践結果について述べる.
著者
高橋 秀典
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.8-31, 2020-01-15

「ITスキル標準(ITSS)」は,IT技術者向けのスキル評価指標として2002年12月に経済産業省より公表された.以降,組込み技術者向けの「組込みスキル標準(ETSS)」,ユーザ企業向けの「情報システムユーザスキル標準(UISS)」と範囲を広げ,UISSをベースにそれらを束ねた「共通キャリア・スキルフレームワーク(CCSF)」,さらに主要なBOK(Body Of Knowledge)などを取り込んだ「iコンピテンシディクショナリ(iCD)」と発展を続けてきた.最近ではDX推進に向けた「ITSS+」もiCDとリンクする形で公表された(以後,各スキル標準をまとめてスキル標準と呼ぶ).しかしながら,すべての基本になっているのは最初に公表されたITスキル標準であり,その考え方やアーキテクチャを深く理解して初めてスキル標準の有効活用が可能となる.一方で,最新のスキル標準を有効活用する上では,発展の過程で改善された内容の意義も理解しておくと,活用の方針や方向性を明確にできる.筆者はスキル標準の改訂や開発に委員として深くかかわってきたが,その観点からITスキル標準の基本思想と発展の過程で採用されてきた新たな考え方や構造を解説する.また,今後のDX推進を踏まえたスキル標準活用のためのアプローチに関しても,その考え方を述べる.
著者
平山 敏弘
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.685-699, 2018-07-15

2014年の情報処理推進機構(IPA)調査「情報セキュリティ人材育成に関する基礎調査」の試算によれば,国内企業において,情報セキュリティ人材は約8万人と大幅に不足しており,さらに約16万人がスキル不足との調査結果が出ている.情報セキュリティ人材の育成は急務であると多方面で叫ばれているが,不足の8万人はすべて共通のスキルを求められているわけではなく,CISO(最高情報セキュリティ責任者)からホワイトハッカーや現場担当者までさまざまである.新聞やインターネット上の報道などでは,東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年までの情報セキュリティ人材不足が指摘され,経済産業省の調査では,東京オリンピック・パラリンピック終了後の2030年においても情報セキュリティ人材不足の問題は引き続き深刻化が予測される.今後も産業界全体において情報セキュリティ人材が非常に重要な役割を担うことが強く期待されている.本稿では情報セキュリティ人材像とはいかにあるべきかについての考察と多様性を求められるその育成方法について述べる.
著者
渋谷 恵 荒井 観 吉田 万貴子
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.687-704, 2019-10-15

本稿では,Well-beingという概念で働き方を捉え,NECグループ企業で実施中の働き方改革の施策「テレワーク」の効果について分析する.まず,働き方を構成している,あるいは働き方に影響している要素はWell-beingに関連することを明らかにした.次にアンケート調査とウェアラブルセンサ(Silmee☆1)を用いた感情推定を行い,テレワークの実施により動機づけの向上と感情の安定が得られ,より仕事に没頭しやすくなるとの示唆を得た.また,テレワークデイズの社内アンケート結果からも集中力が高まることが分かった.これらの分析から,さらなるWell-being向上に向けた施策の観点が明らかになった.