著者
坂村 美奈 米澤 拓郎 伊藤 友隆 金子 義之 中澤 仁
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.550-572, 2018-04-15

地方自治体には,多種多様化する住民の要望に対して,迅速な把握・対応をする効率的なまちづくりの実現が期待される.しかし,現状の地方自治体の日常的な行政業務では,情報がデータ化・共有できておらず時間的・人的コストが高い部分が存在する.本研究では,地方自治体の日常的な行政業務において,職員の持つ携帯端末を通してリアルタイムな情報を取得可能とする参加型センシングを適用し,効率的な情報収集・共有を可能とすることを目的とする.本研究で開発した情報収集・共有システム,みなレポにより,地方自治体の日常的な行政業務の効率化だけでなく,地方自治体の職員による専門的知識に基づいた情報収集が実現される.みなレポは2016年10月から藤沢市において実運用されており,道路・ゴミの集積所の管理や,動物の死骸・落書き・不法投棄の発見に関するレポートがこれまで計1,740件以上収集された.本稿では,実運用により得られた知見および課題について報告する.
著者
鳩野 逸生
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.504-526, 2018-04-15

神戸大学では,2009年10月のネットワーク更新(KHAN2009)において全学無線LANシステムを導入した.本稿では,神戸大学全学無線LANシステムの構成を述べるとともに,次期のネットワーク更新に向けて,導入から2016年度までの利用状況を解析した結果を報告する.さらに,アクセスポイントの設置位置,接続時刻,および認証情報を組み合わせて,LC(Learning Commons)の利用状況を調査した事例についても述べる.
著者
中山 貴夫 宮下 健輔
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.527-549, 2018-04-15

大学における情報ネットワーク環境は,可用性の向上やコスト削減や災害対策等の観点から,物理サーバを学内のサーバルームに設置して運用する体制から,仮想化技術やクラウドを利用する形態に変化してきている.このような流れの中,京都女子大学では2012年以降数年間にわたってVMware vSphereによる仮想化基盤を構築した.その上に2005年度より運用していたMac OS Xサーバで提供していたメール,Web,DNSなど主要な学内サービスを提供しているサーバ群やアプライアンス機器で提供していたファイアウォールやロードバランサを仮想化して移行した.本稿では,大学におけるサーバシステム更改の方針を設置場所と提供形態の2つの観点で分類し,方針を決定するための検討事項を整理する.その実践例として本学における一連のシステム導入に関する経緯や構成,導入後の運用状況や現状の問題点などを説明する.このシステム導入によって,本学の情報システムの問題であった老朽化した物理サーバの更改,サーバルーム内のスペース確保,そしてサーバ監視や異常通知の一元化が可能となった.
著者
寺下 薫
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.454-476, 2018-04-15

問題解決力は,日々コンタクトセンタ内で起こる問題を解決するために重要なスキルである.毎日,センタ内で発生する問題と対峙しなければならないスーパーバイザ(SV)にとっては,問題解決力の習得は切実な課題である.にもかかわらず,問題解決力を有するSVは,全体の10%程度しかいない.SVが問題解決の手法について,センタ内で教えてもらえる機会は,ほとんどなく,SVはこれまでの経験のみで物事を判断してしまう傾向がある.このため,根本的な解決ができないで,日々悩んでいるSVは多い.本稿では,筆者が2013年にヤフー(株)で創設したSVの問題解決養成塾「SV研究会」により,多くのSVが問題解決力を身に付け,キャリアアップしていった点に着目する.問題解決力をどのように習得させることができたかについて,SV研究会での取り組みとともに,問題解決力の育て方の実践について述べる.

1 0 0 0 OA グロッサリ

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.502-503, 2018-04-15
著者
稲田 英樹 渡部 弘毅 神山 晃男 相楽 香織 宮﨑 義文
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.477-501, 2018-04-15

本特集号に投稿された方々にお集りいただき,投稿内容の言外にあるものを含めて,「価値を創造するコンタクトセンタに向けて」をテーマとし,主に下記について大いに語っていただきました.・コンタクトセンタにおける高い価値とは?・ユーザの側から見て,現在AIにできることは何か?・コンタクトセンタにおいてAIは,どこまで人に代われるのか?-人が得意とする領域,AIが得意とする領域-人とAIの協働と役割分担-AIチャットボットの失敗例と導入効果-AIは人の雇用を奪うのか?・高い価値を提供するには,どうしたらいいか?何に向かって努力すべきか?
著者
神山 晃男
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.437-453, 2018-04-15

一人暮らし高齢者向け会話サービス「つながりプラス」は,高齢者に対して世間話を電話で行い,離れて暮らすご家族にレポートするサービスである.当該サービスはじっくり話を聞く「聞き上手」を価値提供の軸とした新しいコミュニケーションサービスであり,顧客との信頼関係構築,顧客自身の行動変容を通じて,新たな価値創造が生じている.その方法論が,一般的なコールセンタ業務や対応業務に幅広く適応可能であることが分かってきた.さらに人間による対応を超えて,ロボティクス等を活用した自動対応においても,当該ノウハウが活用できることも確認されている.本稿では,つながりプラスの紹介および価値創造の根源となる「聞き上手」の構造的解説を行い,その具体的な効果を説明する.またそれら価値創造の仕組みを活用した,新たな取り組みを紹介したい.
著者
宮脇 一
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.414-436, 2018-04-15

「電話の向こうに顧客が並んでいた時代のKPI(Key Performance Indicator)を,顧客が並ばなくなくなった今も,そのまま使っている業界って,おかしくないか?」という多くのオペレータの疑問がきっかけとなり実証実験を始めた.できるだけ多く,長く,深く話すことが,企業の利益に貢献するという仮説の下,1つの結果を立証した.その要因は,外部・内部ともにコミュニケーションの総量を上げたことであった.本稿では,筆者が運営するコールセンタでのケーススタディを通じ,次世代のコールセンタの在り方の考察を行う.
著者
渡部 弘毅
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.367-387, 2018-04-15

顧客ロイヤリティ向上の価値は,継続意向や推奨意向の高い顧客の売上比率を向上させることである.このためには,サービスプロセスの顧客接点を磨き上げ,顧客の体験価値を高めることが重要である.本来,カスタマージャーニの設計はサービスプロセスを磨く手法として有効であるが,顧客体験の実態を効果的に見える化できず往々に絵に描いた餅に終わってしまうことが多い.本稿では,カスタマージャーニアセスメントを中核とした新しいアプローチを使った施策立案により,顧客・経営・現場がWin & Win & Winの関係になり,ビジネスが成功するための勘所を論じていく.
著者
田口 浩
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.388-413, 2018-04-15

日本国内のコンタクトセンタの現状の課題は,人材の採用である.人材の採用が難しい状況は国内全域にわたり,採用が厳しくなるなかで,コンタクトセンタは,AI(人工知能)やチャットを利用し生産性を向上する取り組みや,FAQやチャットボットなどのセルフサポートシステムを利用しコールの削減の取り組みを行っている.また,人材の採用が厳しいため,既存の社員の退職を防止する取り組みも行われている.退職防止のためには,社員のモチベーションを維持・向上させるマネージメントが重要である.社員モチベーションの低下は,社員の退職だけでなく,顧客満足度にも影響を与えることになる.本稿では,社員満足度と顧客満足度の関係性について明らかにし,コンタクトセンタでは,人材に対する投資も重要であることを解説する.
著者
野崎 善教
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.332-352, 2018-04-15

第3次AIブームといわれる近年,AIを使った新しいビジネスモデルが続々と登場して,各企業を取り巻くビジネス環境が大きく変化してきている.そして,コールセンタ業界も大きな変革の時を迎えており,ネスレ日本ではIBM Watsonを使って2016年にチャットサービスを開始した.本稿では,導入事例を中心にAIがもたらすコールセンタ業界の変化を考察した.まずAIの進化がコールセンタ業界ならびにCRM活動にどのような影響をあたえているのか整理する.そして,チャットサービスの導入計画から導入後の結果を担当者の気づきを含めて詳細に紹介する.最後に,将来AIが顧客体験にどのような変化をもたらすのか予測する.
著者
荻野 明仁 岩崎 圭介
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.353-366, 2018-04-15

従来よりAI,特に自然言語処理技術の活用領域としてコンタクトセンタが挙げられていたが,ここ数年で実際にコンタクトセンタでAIを活用する事例が出てきている.自然言語処理AIエンジンを開発する企業に勤務する筆者らは,複数の開発・導入プロジェクトを経験しているが,どのプロジェクトにおいても大小さまざまな課題に直面した.これらの経験を通じて,AIの効果的な活用のためには,AI利用を前提とした業務プロセスの最適化-具体的には学習用データの整備や継続的な学習プロセスとチューニング-が必要であることが判明した.
著者
宮﨑 義文
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.281-317, 2018-04-15

コンタクトセンタのお客様接点は,企業にとってお客様とのビジネスの最前線である.お客様接点は,お客様を知るだけでなく,企業改革の起点にもなる.ただし,これまでコンタクトセンタは経営から過小評価されてきており,十分には活用されてこなかった.その一因として,コンタクトセンタの経営への活用方法論が確立されていないことが挙げられる.本稿では,経営へのコンタクトセンタ活用方法論の確立を図ることを目指して,コンタクトセンタを経営に活用し成果を上げた先進事例を分析し抽出した,経営にコンタクトセンタを活用する10の基本モデルについて述べる.分析した先進事例は,これらの基本モデルの組合せによりできており,これらのモデルは,経営に貢献するコンタクトセンタを創る上での基本要素であるといえる.また,急速に進む人工知能(AI)の活用とこれらの基本モデルとの関係を考察した.現在実用化されているAIは,これら基本活用モデルの仕組みを変えるものではなく,これらのモデルを補強するツールであることを示す.
著者
稲田 英樹
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.318-331, 2018-04-15

昨今のAIの発展はすでに単なるブームにとどまらず,さまざまな実務に取り入れられ,その効果が出てきている.一方で,AIの発展により,近い将来に多くの職業がAIに取って代わられるとメディアは報じている.AIは人々の職を奪う技術なのか.それとも人々の生活を豊かにし,ビジネス領域においては生産性を飛躍的に高める技術となるのか.本稿では筆者が新たな顧客サポートチャネルとして導入したWEBチャットやLINE,AIチャットボットをいかにして従来のサポートチャネルと融合し,付加価値を創出しているかを紹介する.

1 0 0 0 OA 表紙・目次

雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, 2018-04-15
著者
上田浩 中村素典 古村隆明 神智也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.97-104, 2015-04-15

筆者らは大学の情報系センターでの経験から,大学等における情報倫理教育には次の3つの問題:(1)標準化と可視化がなされていない,(2)留学生への教育が困難,(3)持続可能性が低い,があり,これらの問題に対処し,大学等における情報倫理教育を充実させるため「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」に準拠し日英中韓の4カ国語に対応した情報倫理eラーニングコンテンツ「倫倫姫」を開発し運用してきた.2012年11月より「倫倫姫」は,学認連携Moodleにおいて,学認参加機関であれば無償で利用できるようになっている.本稿では「倫倫姫」開発・運用を総括するとともに,複数の大学等に本コンテンツを提供している学認連携Moodleの構築・運用事例とそこから得た知見を報告する.
著者
平本 健二 加藤 文彦 越塚 登 萩野 達也
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.54-72, 2018-01-15

2017年9月12日に行われたFIT2017,第16回情報科学技術フォーラムの「オープンデータ活用の最前線─デジタルプラクティスライブ─」におけるパネル討論の内容を記録したものです.
著者
田中 直也 湯 素華 小花 貞夫
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.198-217, 2018-01-15

スマートフォンの使用可能時間の短さが問題になっており,その原因の一つとしてWi-Fiの使用がある.最近ではSocial Networking Service(SNS)のように,データを受信するタイミングが不定期的なアプリケーションが増えており,その通信のためにWi-Fiを常に起動して電力を多く消費している.本稿では,モバイル端末の消費電力の改善を目的として,電力消費の少ないBluetooth Low Energy(BLE)を用いて必要なときにだけWi-Fiをウェイクアップさせることで,Wi-Fiの使用による消費電力の削減を行う方式を提案して,PC上にシステムを実装し,評価を行った.その結果,従来の省電力モード(PSM)と比較して,消費電力を約36%削減できることを確認した.
著者
白井 良成 岸野 泰恵 水谷 伸 納谷 太 柳沢 豊
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.253-265, 2017-07-15

安価なセンサやプログラマブルなIoT機器の出現により,多くの組織が環境センシングを行うことが可能となりつつある.我々は,試行錯誤的にセンシングを進めながら知見を得ようとする環境センシング行為を探索的環境センシングと定義し,さまざまなフィールドにおいて実証実験を行ってきた.本稿では,我々が取り組んでいる3つの環境センシングプロジェクトを紹介する.3つのプロジェクトを基に,探索的環境センシングのモデル化を行い,トラブル対応指針を策定する.また,探索的環境センシングを効率的に行うために筆者らが実践しているアジャイル環境センシングについて述べる.アジャイル環境センシングにより試行錯誤のサイクルを高速化することで,利用可能なリソースを考慮しながら,センシングプロジェクトのゴール修正や終了判断を柔軟に行うことができる.