著者
久間 英樹 高橋 勇作 福岡 久雄 玄行 照朗 皆尾 登志美
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.50-60, 2010-07-10 (Released:2017-07-21)

本研究の目的は、ホビーロボットを用いて人と人とのコミュニケーションのきっかけをつくり、その後のコミュニケーションの円滑化を図ることである。これまで、ホビーロボットに必要な要素として音声操作型で動きに「振る」動作が含まれる方が面白いと感じることがわかった。本報告ではこれらの要素を含むホビーロボットを実際の高齢者介護現場で、コミュニケーションのきっかけつくりに応用可能か検討をおこなった。その際「面白さ」の評価方法として、市販されている顔の表情から「笑顔度」を推定する非接触型リアルタイム笑顔度検出センサ「スマイルスキャン」を用いた。その結果、ロボット操作中の笑顔度検出センサ最大値の平均は約71%であった。また同時に実施した第3者による主観評価でも笑顔度は5段階で4.71であった。このことは、介護を必要としている高齢者に対しても本ホビーロボットは「笑いを誘い」その結果としてコミュニケーションが向上する可能性があることを示唆している。また「笑い」の定量的評価方法として笑顔度検出センサを用いることの有用性も確認できた。
著者
昇 幹夫
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.26-30, 1994-07-09 (Released:2017-07-21)
被引用文献数
1
著者
浦 和男
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.60-73, 2014-08-02 (Released:2017-07-21)

明治時代に、科学的な「笑い学」が本格的に始まる。文明開化は、「笑い」の研究にも影響した。最初に「滑稽」を扱うのは、自由民権運動の雄弁書の訳者黒岩大と、その影響を受けた真宗の加藤恵証であった。本格的な「笑い学」は、土子金四郎に始まる。実業家の土子は「洒落」を日常言語として分析し、哲学者の井上円了は詩的言語として分析する。発笑理論の嚆矢は、哲学者大西祝による。英文学者で女子教育の先駆者の松浦政泰は、「滑稽」と「笑い」を区別して扱った。哲学者桑木厳翼は、「滑稽」の要素を「詭弁」にあるとして「滑稽の論理」を考えた。二番目の発笑理論は、大西祝の弟子と思われる、哲学者川田繁太郎による。作家夏目漱石は、文学者、作家の立場から「滑稽」の本性を論じた。それぞれ、欧米の理論を利用せず、日本的な「笑い」を踏まえた独自の説を構築している。本稿では、以上の「笑い」論を通時的に考察し、研究黎明期を考証する。
著者
丸毛 美樹
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.98-112, 2014

プリーモ・レーヴィは、アウシュヴィッツ絶滅収容所から生還した化学者として作家となった。レーヴィは戦後語り手・証人としての活動を精力的にこなしながら、化学者としての仕事を続けつつ、作家としても高く評価される作品を生み出してきた。鉛のように重い現実に向き合いながらも、プリーモ・レーヴィはなぜか各所でユーモアを表現している。なぜそのようなことが可能なのか。どのような意味をもった行為なのか。それを探るのが本稿の目的である。本稿では、アウシュヴィッツに関する古典的名著である『アウシュヴィッツは終わらない』、アウシュヴィッツからの生還者が普通の生活を取り戻す過程を描いた『休戦』、初の創作短編集である『天使の蝶』、レーヴィの存在の多重性によって成立した『周期律』の四作品をとりあげて検討する。レーヴィは、ユーモアを活用することで絶滅収容所の世界を相対化し、ユーモアを介して失われた世界とのつながりを取り戻している。ユーモアは、特定の信仰や政治信念をもたない人間が極めて困難な状況に直面した際に頼れる、解放の強力な武器であると言えよう。
著者
遠藤 謙一郎
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-102, 2015

日本の文化・生活における「間(ま)」の重要性については、いろんな分野で研究されている。話芸においても、無言・沈黙の時間の「間」が述べられている。今回、落語の「間」を考えるときに、特に意図的に短縮された時間もしくは一切省略された「間合い」が多用されていることに着目し、これを「端折りの間合い」とよび検討を加えた。その「端折りの間合い」を具体例にて3つの類型に分けて提示し、イ.ながれ、ロ.かぶせ、ハ.いきなり、と分類してその演技上の効果について解説を試みた。
著者
新田 章子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-39, 1997-06-15 (Released:2017-07-21)
被引用文献数
1
著者
野村 亮太 ヒュース 由美
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.29-40, 2019 (Released:2019-11-30)

落語は手軽におもしろさを体験できる演芸だが、現在は多くの噺家(落語家)がおり、好みに合う噺家を探すのにも手間がかかるようになってきている。従来、芸人の印象の類似性が高いとき、観客がそれぞれの芸人に対して抱く好ましさ(好き・嫌い)には正の相関があることが知られている(野村, 2010)。このため、印象評定は多くの噺家から好みの噺家を見つけ出すために利用できる。この目的のために、本研究では、落語に限らず、人前で話す者としての演者について、より一般的に印象を評定できる評定尺度(Performer's Impression Scale, PIS)を作成した。古今亭文菊師(芸歴16年)の口演時の印象について評定を行ってもらった結果、いずれの下位尺度においても、印象評定値は、聞き手の年齢、性別、落語の視聴経験による差は、ほとんど見られず一貫していた。本研究の尺度は、その応用として、好みの噺家の候補を挙げるサービスの提供に加え、教師や政治家といった人前でパフォーマンスを行う者の印象評定と改善にも用いることができる。