著者
冨澤 かな 木村 拓 成田 健太郎 永井 正勝 中村 覚 福島 幸宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.129-134, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)

東京大学附属図書館U-PARL(アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)は,本学所蔵資料から選定した漢籍・碑帖拓本の資料画像をFlickr上で公開している。資料のデジタル化とアーカイブ構築のあり方を模索した結果,限られたリソースでも実現と持続が可能な,小さい構成でありながら,広域的な学術基盤整備と断絶せず,高度な研究利用にも展開しうる,デジタルアーカイブの「裾野のモデル」を実現しうる方策として選択したものである。その経緯と現状及び今後の展望について,特に漢籍・碑帖拓本資料の統合メタデータ策定,CCライセンス表示,OmekaとIIIFを利用した研究環境構築の試みに焦点をあてて論ずる。
著者
中村 覚 成田 健太郎 永井 正勝
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.297-302, 2018-11-24

法帖の研究において,版の異同を検討し,その系統を詳らかにすることは肝要である.本研究ではこのような法帖研究の支援を目的として,法帖における異版作品の比較を支援するシステムを開発した.典拠データのLinked Data 化と,複数機関が提供するIIIF 準拠画像に対するアノテーション付与による個別作品の識別により,異版関係にある個別作品を検出可能なシステムを構築した.国立国会図書館,国文学研究資料館,東京大学附属図書館が提供する法帖画像を対象としたケーススタディを通じ,版6 件,著者252 件,作品902 件,異版作品1403 件から構成される典拠データの作成,および213 件の個別作品に対して紐づけを行い,任意の異版作品の異なる個別資料における再現例を検出できることを確認した.
著者
成田 健太郎 中村 覚 水野 遊大
出版者
書学書道史学会
雑誌
書学書道史研究 (ISSN:18832784)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.71-82,158, 2020-10-31 (Released:2021-03-16)

In recent years, an increasing number of Hojo images have been made public in web data archives. This paper examines a method of, as described below, and its practicability in processing properly a group of archived image data using presently available techniques, thereby enhancing the efficiency of comparative research of Hojos, and thus contributing to the development of research into the history of calligraphy.  First, an identifier is given to each of the works listed in Hojos to create source data. The same identifier is given to images of the same work in different materials in order to achieve source control in detecting all the reproduced images of the same work in different materials in a single action.  Second, a mechanism is devised to recognize the line breaks in the images, line breaks are given to Hojo images semi-automatically, and an identifier is given to the respective lines. By relating these line identifiers to the above-mentioned work identifiers, it is possible to cut out the image of the target work from the overall image data and display it.  Third, an arbitrary string of letters is selected and the mechanism detects images of identical parts among different materials using image-processing technology. This makes it possible to reference different versions of the same work listed in different Hojos without adding text information to the images.  Despite the necessity of further technical improvement regarding the referencing of different versions as described in step three, a series of experiments conducted to establish the above-mentioned method suggested the possibility that image processing technology can be developed as a tool to examine more detailed differences found among different lines of Hojos.
著者
馬場 基 中川 正樹 久留島 典子 高田 智和 耒代 誠仁 山本 和明 山田 太造 笹原 宏之 大山 航 中村 覚 渡辺 晃宏 桑田 訓也 山本 祥隆 高田 祐一 星野 安治 上椙 英之 畑野 吉則
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

国際的な歴史的文字の連携検索実現のため、「IIIFに基づく歴史的文字研究資源情報と公開の指針」および「オープンデータに関する仕様」(第一版)を、連携各機関(奈良文化財研究所・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館・国立国語研究所・京都大学人文学研究所・台湾中央研究院歴史語言研究所)と共同で策定・公表し、機関間連携体制の中核を形成した。また、上記「指針」「仕様」に基づく、機関連携検索ポータルサイト「史的文字データベース連携システム」の実証試験版(奈文研・編纂所・国文研連携)を令和2年3月に公開。令和2年10月には、台湾中研院・国文研・京大人文研のデータを加えて、多言語(英語・繁体中国語・簡体中国語・韓国語)にて本公開を開始した(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)。なお、連携・サイト公開は、国内および台湾メディアで報道された。木簡情報の研究資源化として、既存の木簡文字画像(約10万文字)をIIIF形式に変換した。また、IIIF用の文字画像切出ツールを開発し、新規に約15,000文字(延べ)のデータを作成した。過年度と合わせて合計約115,000文字の研究資源化を実現した。文字に関する知識の集積作業として、木簡文字観察記録シートを約50,000文字(延べ)作成した。なお、同シートによる分析が、中国簡牘・韓国木簡にも有効であることが確認されたことを踏まえ、東アジア各地の簡牘・木簡文字の観察作業も実施した。国際共同研究・学際研究として、令和1年9月に、東アジア木簡に関する国際学会を共催した(北京)。当初、国際学会の開催は、研究計画後半での実施を予定していたが、本研究遂行にあたっての共同研究等の中で、学会共催の呼びかけを受け、予定を繰り上げて国際学会を共催した。また、人文情報学の国内シンポジウム等において、IIIF連携等本研究の成果を報告した。
著者
中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.155-158, 2019

<p>本研究では、『捃拾帖』の内容検索を可能とするシステムの開発事例について述べる。『捃拾帖』とは、明治時代の博物学者である田中芳男が収集した、幕末から大正時代にかけてのパンフレットや商品ラベルなどを貼り込んだ膨大なスクラップブックである。東京大学総合図書館はこれらの画像を冊単位で公開しているが、貼り込まれた資料単位での検索が望まれていた。この課題に対して、本研究ではIIIFのアノテーション機能を利用し、各頁の貼り込み資料単位で画像を切り出し、検索可能なシステムを開発した。また、東京大学史料編纂所の「摺物データベース」が提供する、貼り込み資料単位のメタデータと組み合わせることで、内容情報に基づく検索を可能としている。本研究はその他、複数の機関が提供する各種リソース(IIIF・オープンデータ)を組み合わせて利用している点に特徴があり、デジタルアーカイブの利活用を検討する上での一事例として機能することを期待する。</p>
著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河 鈴木 淳 吉田 ますみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.267-277, 2018-02-15

近年,デジタルアーカイブの普及にともない,インターネットを介した歴史資料(以下,史料)へのアクセスが容易となっている.一方,研究者が研究対象とする史料のすべてがインターネット上で公開されているとは限らず,また実証的な歴史研究が現存するすべての関係史料を検討することを基本にするため,実際に文書館や図書館に赴き,史料の収集を行う例も多い.本研究では史料収集や整理に多大な労力を要する歴史研究の支援を目的とし,複数の研究者の共同作業による史料収集・整理プロセスの効率化,および異なる専門知識を有する研究者の協調的な史料分析を支援するシステムを開発する.また,外交文書の送付先の決定過程に関する歴史研究を行い,開発したシステムの有用性を評価する.
著者
佐治 奈通子 中村 覚
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2019-CH-120, no.11, pp.1-7, 2019-05-04

本発表では,歴史学と情報学の協働による,史料画像データ整理の実践事例を示す.具体的には,歴史史料から得られる情報を整理・分析可能な史料研究支援システムを利用して,ボスニアのカトリック修道院所蔵の未整理のオスマン ・ トルコ語文書の画像データ 2,268 点を整理する.その作業を通じて,歴史学的な観点からのニーズを反映させたシステムの改良を試みた.また,個々のデータ詳述と,可視化による史料群の全体像の把握が可能となったことで,作業の効率化とバランスのよい史料理解に繋がった.
著者
中村 覚
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、オンライン上で複数のユーザが共同で史料を翻刻可能なシステムを開発することである。特に、IIIFやTEI等の国際標準規格に準拠することにより、汎用的・国際的に利用可能なシステムの構築を目指す。具体的には、IIIF準拠の画像を入力データとして、IIIF準拠で公開されている様々な史料を翻刻対象として登録可能とする。また、システムに登録されたテキストデータをTEI準拠の形式でエクスポートする機能を提供し、テキストデータの長期保存およびシステムに依存しない多様な利活用を支援する。さらに、東京大学柏図書館が所蔵する『平賀譲文書』を対象とした翻刻作業を実施し、システムの利用可能性を示す。
著者
中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.348-351, 2020-10-01 (Released:2020-11-16)
参考文献数
9

日本国内では、国の分野横断型統合ポータルである「ジャパンサーチ」が公開され、国内の多様なデジタルコンテンツに対するアクセスが容易となりつつある。一方、国外の機関が所蔵・公開する日本文化に関するデータの発見可能性は十分に高くない。そこで筆者らはIIIF/RDFなどのデータ相互運用技術を活用して、世界中の機関が公開する日本文化に関するデータを収集し、それらの発見可能性を高める仕組みである「Cultural Japan」の構築を行っている。本研究ではこの構築において、特に「ジャパンサーチ利活用スキーマ」の利用について述べる。本研究が、他のプロジェクト等での「ジャパンサーチ利活用スキーマ」の利用における参考事例となることを目指す。
著者
美馬 秀樹 中村 覚 中澤 敏明
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.127-130, 2022-08-01 (Released:2022-10-05)
参考文献数
5

本稿では、ビヨンドブック(以下、BBと略)機能を支える要素技術の設計と開発について述べる。BBのプロトタイプ制作にあたっては、必要な要素技術について検討を行い、実験、評価を目的として可能なものの実装を進めた。具体的には、1)コレクション機能、2)カテゴライズ機能、3)テーマ抽出機能、4)マイクロコンテンツの最適配置機能、5)コンテンツ間のリンク推定機能、6)インターネット情報の取り込み機能、7)翻訳/著者と読者の共同編集機能、及び8)ユーザーアクションからの自動知識獲得機能、が挙げられる。これらの技術はいずれもデジタルアーカイブ全体の機能向上に役立つことを念頭において設計し、開発を進めたものである。
著者
中村 覚 佐久間 淳 小林 重信 小野 功
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第22回全国大会(2008)
巻号頁・発行日
pp.83, 2008 (Released:2009-07-31)

本論文では,クォートドリブン市場におけるマーケットメーカー(MM)の戦略獲得問題を,MMの利益および約定率の観点から多目的最適化問題として定式化し,多目的遺伝的アルゴリズムにより戦略の最適化を行う手法を提案する.
著者
西田 友広 佐藤 雄基 守田 逸人 深川 大路 井上 聡 三輪 眞嗣 高橋 悠介 貫井 裕恵 山田 太造 堀川 康史 中村 覚 高田 智和
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

日本中世史学は、徹底的な史料批判を実践することで、歴史像の厳密な再構成につとめてきた。しかしながら厳密性を追究した結果、分析対象から漏れてしまう史料も生み出してしまった。それらは断簡・無年号文書・破損汚損文書といった、史料批判の構成要件を満たせなかったものである。本研究は、隣接諸科学を含めたあらゆる方法論を援用し、かつ情報化されたデータをあまねく参照できる環境を整えることで、こうした史料の可能性を徹底的に追究し、有効な研究資源とすることを目指している。併せて、かつて確かに存在していた文書の痕跡を伝来史料から丹念に抽出することで、現存史料の背景に広がる、浩瀚な史料世界の復元に取り組んでゆく。
著者
中村 覚
出版者
一般財団法人 日本国際政治学会
雑誌
国際政治 (ISSN:04542215)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.178, pp.178_58-178_72, 2014-11-10 (Released:2015-11-30)
参考文献数
56

This study aims to examine the real goal of the regional policy in Saudi Arabia, particularly whether it is designed to counter external threat (derived from the international system) or internal threat (aiming at regime change). A case study that delves into the Saudi Arabian policy toward the Syrian Crisis after 2011 is used. This research applies omnibalance theory, which explains the pattern by which the regimes of Third World states react to threats that arise both within and outside the state. Saudi Arabian policy is analyzed through a comparison of several security situations faced by the kingdom with the use of a method combining within-case analysis and process tracing. Omnibalance theory serves as the main research framework because it can provide a coherent explanation of the foreign policy and international security strategies adopted by the Saudi Arabian government. This study hypothesizes that the Saudi Arabian policy toward the Syrian crisis is strongly constrained by its primary security goal of countering any sign of linkage between internal and external threats. The Saudi Arabian commitment to the Syrian crisis cannot be explained simply in relation to an external threat: no foreign country has pressured Saudi Arabia to be involved, and the Assad regime is not a threat to Saudi Arabia. Rather, the Saudi Arabian government recognized the signs of a linkage developing between the internal and external threats it confronts. The government responded to the clamor of its people who advocate humanistic support to the oppressed in Syria, as well took precaution against the risk of a coalition by Iran, the Assad regime, and Hizbullah, which the Saudi Arabian government feared would penetrate the Shia activists in the Eastern region of the kingdom. The concern of the Saudi Arabian government over domestic security constrained its Syrian policy in the following ways: (1) prohibition of participation in both the conflict and in charity activities initiated by Saudi citizens, (2) necessity to maintain moral and humanistic legitimacy of Saudi foreign policies, (3) selection of its allies who will maintain non-intervention in Saudi internal affairs, (4) and prohibition on the Saudi government to provide support to terrorist groups. Therefore, omnibalance theory is a more appropriate concept to explain the Saudi Arabian policy toward the Syrian crisis than the theories of balance of power and balance of threat, both of which claim that the international involvement was the main motivation behind the foreign policy applied to the state.
著者
井関 貴博 谷川 智洋 中澤 敏明 中村 覚 野見山 真人 前沢 克俊 美馬 秀樹 柳 与志夫
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s1, pp.s122a-s123a, 2022 (Released:2022-02-28)

現在東京大学情報学環DNP寄付講座では、書籍・電子書籍のようなパッケージ型ではなく、デジタルコンテンツ本来の特性・メリットを生かしたネットワーク型・オープン型の知的構成物(「ビヨンドブック」略してBB)の研究開発に取り組んでおり、その最初の成果としてプロダクトデザインがまとまったところです。本セッションでは、その成果を披露し、パネリスト、会場からのご意見をいただき、今後の改善の参考にしたいと考えています。また、出版界が担ってきた書籍・電子書籍の制作・流通の中で、BBがどのような新たな役割を果たせるか、社会的側面の議論も行いたいと思います。
著者
中村 覚 高嶋 朋子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.56-60, 2021-01-12 (Released:2021-02-24)
参考文献数
11

日本社会においても、文化的資産としてのデジタルコンテンツを整備し共有することの意義が着実に認知されつつあるなかで、デジタルな研究資源を生かしたデータベース等の継続が立ち行かなくなるケースが散見される。そこで本研究では、デジタルアーカイブをいかに存続させるかという課題に対して、持続性と更には利活用性までを考慮したデジタルアーカイブ構築について、技術面に特化した手法を提案する。また実際にデジタルアーカイブを構築および活用を行うことで、提案手法の有用性を検証する。