- 著者
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河本 英夫
- 出版者
- ゲーテ自然科学の集い
- 雑誌
- モルフォロギア: ゲーテと自然科学 (ISSN:0286133X)
- 巻号頁・発行日
- vol.1994, no.16, pp.20-29, 1994-11-03 (Released:2010-02-26)
- 参考文献数
- 10
三木成夫の提示する形態の比較には, 独自のまなざしと息づかいがある. 叙述される事柄は, 多くの感心と半ばの躊躇で理解してしまうものが多い. にもかかわらず他の選択肢を思い浮かべにくいという必然さをもっている. それは否応のない迫力である. こまごまとした経験を飛び超えて, 一挙に原型を開示してしまうという方法のもつ, はるかな直接性にも一因がある. あるいは生命の誕生の現場を記す官能の緊迫感にも一因がある. だがこうした叙情には解消されない生命の難題をめぐって, おそらく三木成夫は一歩踏み出していたのである. この一点にしぼることにしたい.