著者
大久保 一郎 寺内 誠
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.46, pp.101-108, 1992-01-31

本研究は日本大学学術助成による総合研究(代表者、鈴木實)の一環としてなされ、鈴木教授に同行した寺内により採集された材料を大久保が固定したものである。約50のサンプル瓶のうち,1/3に介形類が見られた.新種2種をふくむ11種を同定した.淡水産介形類の大部分を占める匍匐型の種はこのサンプルには種数・個体数ともに少なく,遊泳型の種は個体数が多かった.これが南西諸島の介形類ファウナの特異性によるのか,採集法の違いによるのかは,今後の研究に待たねばならない.新種Ilyocypris haterumensisおよびPotamocypris sudzukiiは,沖縄本島や奄美諸島の淡水産介形類を調査し20種を採集したBROODBAKKER(1987)の報告にも載っていないので,南西諸島の中でも南の方に生息する種と考えられる.
著者
蛭田 眞一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.39, pp.29-36, 1989-06-25
被引用文献数
2

日本産間隙員形虫類の分類学的研究の第一報として,北海道東部太平洋岸の釧路付近の砂浜潮間帯より得られた間隙貝形虫1種を新種Microloxoconcha kushiroensisとして報告した.この属の種類の報告は,日本からは初めてであり,同時に亜寒帯からも初めてである.本種は左右に偏平で,雄の体長は約0.2mmで,雌(約0.18mm)よりもやや大きい.この種は主に付属肢の形態で同属の他の種と識別出来るが,ハワイ産のM.subterranea GOTTWALD,1983と殼及び付属肢両者の全般的な形態において非常に似ているのが特徴である.雌雄の生殖器官の形態においても両種は互いによく似ている.
著者
林 俊夫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.34, pp.32-38, 1986-12-25
被引用文献数
1

日本産フクログモ属(Clubiona)2新種をチクニフクログモClubiona chikuniとサッポロフクログモClubiona sapporensisとして記載した.C. chikuniiとC. sapporensisは,それぞれC. akagiensisとC. lenaに近似するが,両性の生殖器構造によって容易に区別できる.
著者
大澤 正幸
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.53, pp.62-70, 1995-06-25

Sympagurus chuni(BALSS,1911)に対して,新属Tsunogaipagurus(新称カワリオキヤドカリ属)を創設した.本属は,縦長の前甲,極端に大きい目,右鉗脚の掌部腹面に明瞭な顆粒を多く持つこと,ツノガイ類の貝殻を利用することによって他のオキヤドカリ科の属と識別される.また,Tsunogaipagurus chuni(新称カワリオキヤドカリ)の詳細な再記載を行った.
著者
工藤 巌
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.31, pp.50-55, 1985-12-25

新種Danothrips sakimoriを報告した.本種はタブの葉に生息し,触角第4節に微刺を備え,複眼後刺毛が一列をなし,前胸背板刺毛は10本未満であることなどの特徴によって同属の他種と区別される.Danothrips属は東洋区起源で旧北区からは未記録である.既知7種の標徴を表示し検索表を付した.
著者
今島 実 Ten Hove Harry A.
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-16, 1986-03-25
被引用文献数
1

昭和59年度文部省科学研究費補助金による海外学術調査(研究代表者今島実,課題番号59041066)が昭和59年7月10日〜9月2日間にナウール共和国,キリバス共和国のギルバート諸島とソロモン諸島で海産動物相を明らかにする目的で実施された.多くの多毛類が採集されたなかで,カンザシゴカイ科が研究され,2新種を含む9属24種が明らかにされた.すべての種類がソロモン諸島から見出され,うち18種(75%)が日本海域まで分布している.ギルバート諸島からは,9種のみが見出され,うち7種が日本まで分布している.ソロモン諸島のカンザシゴカイ類の種数は,ギルバート諸島より多く,また日本のカンザシゴカイ類相と近似性が高いことがわかった.
著者
沢田 勇 Mohammad Mohammad K.
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.39, pp.1-7, 1989-06-25
被引用文献数
2

1985年9月,イラクのハディサで捕獲されたコウモリに膜様条虫に属する2新種が寄生していた.Asellia tridens murraianaに寄生していたVampirolepis mesopotamiana sp.nov.は長さが0.018〜0.022mmで,22〜30本の額嘴鉤を有する既知種8種のいずれとも額嘴鉤の形態が異っている.Rhinopoma microphyllumに寄生していたHymenolepis rhinopomae sp.nov.は台湾産H. scotophiliに極めて類似しているが,頸部の長さ,生殖孔の位置,精巣の配列状態および卵巣の形態が異っている.さらに1985年5月にバグダッドで捕獲されたPipistrellum kuhli ikhwaniusには種の同定が不可能な微小条虫Raillietina(s.l.)sp.が寄生していた.
著者
廣崎 芳次
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1-2, 1994-07-25
著者
馬渡 静夫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.9, pp.41-44,図1枚, 1973-10

1972年10月4日富士五湖の一つである河口湖にPectinatella magnifica(LEIDY)の多数の寒天質群体が浮游し,汀にうち上げられていることを確認した。地元では9月初め頃より多数浮き出して「淡水水母」と誤認されていたものである。本種は日本産のカンテンコケムシPectinatella gelatinosa OKAに群体などは似ているが,その体芽の周辺に碇型の棘を10数本有することで容易に区別される。もともとアメリカ東部の特産として知られ,1900年初順に中部ヨーロッパに運ばれた歴史があるが,今回の日本での出現も,近年の日米間の交流の急増と関係が深いものと思われる。この記録は東洋地区では初めてのものであり,アメリカでの発見から約120年後の出来事である。(第9回動物分類学会大会にて講演)
著者
織田 秀実
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.10, pp.31-39c, 1974-12-14

1972年秋,富士川胡の一つ,河口湖に,従来,北アメリカ東部と中央ヨーロッパでしか記録されていなかった炭水産コケムシpectinatella magnifica(LEIDY)の群体塊が出現した(MAWATARI, 1973)。ところが1973年には富士五湖の他の一つ,精進湖にもこの群体塊が多数出現した。9月初め岸辺の水中の岩・に大小様々の群体塊が毬(まり)状に発達し,分泌した寒天質塊の表面を多数の群体が多角模様をなしておおっていた。大きな群体塊は岩から剥れて分厚い円盤状(直径約60 cm)となって水面に浮上していた。11月初めには岩に囲まれた静かな水面に畳一畳ほどもあるけ大な群体塊となって浮いていた。長さでは2.8mに達する細長いものもあった。個々のポリプ体は1.5mmほどで,(Cristatella mucedo CUVIER(アユミコケムシ)を思わせる。口上突起と目の周辺に赤い色素があるのはこの種の著しい特徴である。触手冠の両腕の先端部および包体の肛門側に乳白色の塊があるが,これらはKRAEPELIN(1887)がいう上皮線(epidermal gland)からの分泌物である。スタトブラストは丸味を帯びた角形で,長径は約1mm,川縁部から錨形をした軸が11〜22本伸びでている。群体から放出されたスタトブラストは必ず水面に浮上し,数週間は寒天質層に包されている。精進湖は冬期結氷するが,越冬し水面に浮遊するスタトブラストは,現地で,5月下旬に発芽していた。8月に幼生が出現した。幼生は卵形で直径1〜2mm, 1〜5個の芽を有するが,通常は4個。外分の表面にある繊毛の運動で,芽のある方を下にして,数時間浮遊した後,ものに付着して変態した。このコケムシの群体塊がボール状に発達し,しかも表面が個々の群体によって多角模様をなしていることから和名として"オオマリコケムジ"という名称を提案したい。 今まで日本にいなかったこのコケムシが河口湖や精進湖に突如出現するようになった原因はまだ判明していない。国際的に人や物資の交流が盛んになった今日,偶然の機会に,ものに付着したスタトブラストがこれらの湖に持たらされたのであろう。また渡り鳥によるスタトブラストの"空輸"も考慮されよう。1974年の夏には石川県の柴山潟にもこの群体塊が多量に出現した。今後,このコケムシの分布の推移に注目しておかなければならない。(第10回動物分類学今大会にて講演)
著者
篠宮 幸子 酒井 勝司
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.54, pp.38-43, 1995-12-25

徳島市の魚市場で得たMetapenaeopsis sinica LIU et ZHONG,1988の形態について検討した.本種は日本ではこれまでに高知県からの報告がある(CROSNIER,1994).LIU&ZHONGの記載とは雌の第3顎脚,雌雄の第3歩脚の長さ,およびペタズマの先端部の突起数にわずかな違いがあった.CROSNIERの記載とはペタズマの形態ではインドネシア産の標本とよく似ているが,Maldivesの標本とはわずかに違いがみられた.発音器の隆起数は高知県産のものと一致した.
著者
Ng Peter K.L. 武田 正倫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.47, pp.29-32, 1992-06-25

イワガニ科の中で,完全な淡水生活をするのはGeosesarma属のカニ類だけで,東南アジアを中心に,現在までおよそ32種が知られている.分布の北限にあたるフィリピンからはルソン島北部とパナイ島から1種ずつ記録されているが,1985年に国立科学博物館によって行われた学術調査の際にミンダナオ島で採集された3雄,4雌は両種とは明らかに異なっていた.これらの7個体の標本においては,第3顎脚外肢の鞭が完全に退化しており,この点に関してはG.malayanum NG et Limの種群に属す.しかし,甲と鋏脚の特徴が既知種とは異なることから,新種としてG,protosの学名を与えた.
著者
沢田 勇 久木 義一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-3, 1986-07-25

1985年4月16日大分県別府市内で捕獲されたイエバトの消化管を剖検した結果,多数の条虫が寄生していた.同定の結果,新種と認めたのでRaillieiina(Raillietina)bungoensisとして記載した.和名はブンゴハト条虫としたい.
著者
酒井 恒
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.8, pp.32-33, 1972-11

ひしがに科(Parthenopidae)に属する7稀種が沖縄を含む日本沿岸から採集され,これらの力二類はいずれも日本における最初の記録である。その中の1種は天皇陛下の御採集品で古く,戦前のもので紀州産と思われる。他の6種は三河一色(田中信一氏採集),紀伊南部(故尾崎光之助氏採集),石垣島(諸喜多茂充氏沖縄水試)からの採集品である。
著者
鈴木 実
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.12, pp.5-12c, 1976-12-20

昭和50年7月21日〜7月23日,9月18日〜9月20日,11月17日〜11月19日,12月19日〜21日と昭和51年2月16日〜2月19日の5回にわたり山口県笠戸島周辺に生息する海浜動物物の分類学的・生態学的な調査を行なった。その結果,見出された殼アメーバ類,太陽生類,腹毛生類,ナマコ類などはすべて日本未記録種であり,このほかヒドロ虫類,輪毛虫類,棘皮虫類などにも若干の日本未記録種が見出された。
著者
小黒 千足 笹山 雄一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.27, pp.101-106, 1984-03-25

文部省科学研究費(海外調査)によってなされたマーシャル群島の動物相調査において,1982年8月8日同群島マジュロ環礁より2個体のジュズベリヒトデに属するヒトデが採集された.これらはFromia nodosa A. M. CLARKと同定されたが,原記載は西インド洋で得られた1個体の固定標本によってなされたもので,既知の他の3個体もいずれもセイロン島以西産であり,この報告は太平洋における本種の最初の記録である.
著者
沢田 勇 原田 正史 織田 銃一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.54, pp.19-27, 1995-12-25

1994年7月24日から8月6日までの間,南中央シベリアの2箇所にて3属7種からなる29種のトガリネズミ類が採集された.消化管を剖検した結果,9属12種の条虫類が寄生していた.その条虫類はSoricinia longisegmentalis,Ditestolepis diaphana,D.secunda,D.sp.,Lineolepis skrjabini,Skrjabinacanthus jacutensis,Neoskrjabinolepis singularis,Staphylocystis(Staphylocystis)naganoensis,Vampirolepis novosibirskensis,Cucubilepis skrjabini,Choanotaenia crassiscolex及びC.baicalensisであった.これら条虫類の寄生率は29頭のトガリネズミ類の62%であった.今回は前調査で寄生がみられなかった4種の条虫類(Skrjabinacanthus jacutensis,Cucubilepis skrjabini,Ditestolepis secunda,Choanotaenia baicalensis)について記載した.
著者
川勝 正治 Rovasio Roberto A.
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.48, pp.7-23, 1992-12-25

Dugesia ancepsはBORELLI(1895)がパラグアイからPlanaria dubiaとして最初に報告し,続いてBOHMIG(1902)がアルゼンチン東部から報告した種類であるが,KENKによって上記の種名に修正された.最近,CAZZANTGA and CURINO(1987)が再記載したが,やや不完全な点もあり,本稿ではコルドバ産(アルゼンチン中部)の材料に基づいて詳細な分類学的再記載を与えた.生時の体長は15-18mm,体幅1.5-2.5mm.黒褐色,中等度に発達した耳葉を持つ.精巣は腹位で多数,陰茎基部は球形で,陰茎基部腔は分離,相称形の陰茎突起部は円錐形で,単一射精管が開く.交接のうは中等度の大きさで,交接のう柄の筋肉層は厚く,腔も発達している.卵殻は球形で,糸状の柄がある.南米産の近似種について,分類学的考察を加えた.