著者
沢田 勇
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.14, pp.5-9, 1978-06-26
被引用文献数
1

1.沖永良部島,沖縄本島,宮古島,石垣島および西表島の洞穴棲コウモリの条虫相を明らかにし,それらの条虫相を奄美大島以北の日本各地のそれと比較した。2.沖永良部島のユビナガコウモリMiniopterus schreibersiiは剖検した12頭中わずかに1頭に同定不能の幼弱虫体1条のみが寄生していたが,沖縄本島のオキナワコキクガシラコウモリRhinolophus cornutus pumilusには条虫の寄生は認められなかった。3.宮古島ではコウモリの生息が確認できなかった。4.石垣島および西表島のリュウキュウユビナガコウモリM. s. blepotisにはVampirolepis hidaensisが,西表島のヤエヤマコキクガシラコウモリR. c. pumilusにはV. isensisがそれぞれ寄生していた。5. V. hidaensisは西日本一帯に生息するユビナガコウモリおよびキクガシラコウモリに寄生する条虫と同一種であり,V. isensisは奄美大島以北の北海道を除く日本各地のコキクガシラコウモリに寄生する条虫と同一種である。こうしたことから八重山諸島のリュウキュウユビナガコウモリとヤエヤマコキクガシラコウモリは条虫相からみて奄美大島以北に生息するキクガシラコウモリおよびコキクガシラコウモリと何らかの関連性があると考えてよい。
著者
鈴木 博
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.18, pp.47-53, 1980-06-25

HOLTHUIS(1973)は,海岸から少し内陸に入ったところにあり,海水が地下から浸透し,潮汐によって水面が上下する潮溜りをanchialine Pool(陸封潮溜り)とよんでいる。このような環境に生息するエビ類は,現在5科10余種が知られ,そのほとんどのエビの体色は鮮かな赤色である。ここに報告したエビはAntecaridina lauensis(EDMONDSON)で,Fiji諸島(模式標本産地)・Europa諸島(マダガスカル西方)・Dahlak諸島(シナイ半島東部)・Hawaii諸島などで知られ,日本では南大東島からの記録(諸喜田,1975)があるのみであった。 このエビが発見された黒島の古井戸は,典型的なanchialine poolで,塩分は1979年12月7日の測定では13.22‰であった。このエビの第1・2・5胸脚はそれぞれヌマエビ科の特徴を示しているが,眼上棘を欠き,額角は短かくとがり無棘,眼柄は短かく,複眼は退化的,鰓は7対,外肢がすべての胸脚に存在することなどが種の特徴である。暗所では,多くの個体は鮮かな赤色であるが,明所では色素細胞の収縮により,体は黄赤色か半透明となるものがみられる。
著者
山西 良平
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.11-16a, 1983-06-25 (Released:2018-03-30)

1939年にペルー沖で発見され,以後記録の無かったPisionellaが,日本海の丹後半島の砂底から得られた.吟味の結果,これは唯一の既知種であるP. hancockiと固定されたが,剛毛の配列,形態等に地理的変異と思われる微細な差異が存在する.
著者
楊 定 永冨 昭
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.54-62, 1992-12-25 (Released:2018-03-30)

Suragina caerulescens(BRUNETTI,1912)はビルマ,ネパール,インド(W.Bengal),日本(北海道,本州,四国,九州)に広く分布し,従来Suragina属のatypicalな一員として知られていた.中国に近縁の別種が存在することがわかり,ここでyangiと命名するのを機会にしてAsuraginaという1新属を創設する.模式種はcaerulescensである.
著者
馬渡 静夫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.41-44a, 1973 (Released:2018-03-30)
被引用文献数
1

1972年10月4日富士五湖の一つである河口湖にPectinatella magnifica(LEIDY)の多数の寒天質群体が浮游し,汀にうち上げられていることを確認した。地元では9月初め頃より多数浮き出して「淡水水母」と誤認されていたものである。本種は日本産のカンテンコケムシPectinatella gelatinosa OKAに群体などは似ているが,その体芽の周辺に碇型の棘を10数本有することで容易に区別される。もともとアメリカ東部の特産として知られ,1900年初順に中部ヨーロッパに運ばれた歴史があるが,今回の日本での出現も,近年の日米間の交流の急増と関係が深いものと思われる。この記録は東洋地区では初めてのものであり,アメリカでの発見から約120年後の出来事である。(第9回動物分類学会大会にて講演)
著者
織田 秀実
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.31-39c, 1974-12-14 (Released:2018-03-30)

1972年秋,富士川胡の一つ,河口湖に,従来,北アメリカ東部と中央ヨーロッパでしか記録されていなかった炭水産コケムシpectinatella magnifica(LEIDY)の群体塊が出現した(MAWATARI, 1973)。ところが1973年には富士五湖の他の一つ,精進湖にもこの群体塊が多数出現した。9月初め岸辺の水中の岩・に大小様々の群体塊が毬(まり)状に発達し,分泌した寒天質塊の表面を多数の群体が多角模様をなしておおっていた。大きな群体塊は岩から剥れて分厚い円盤状(直径約60 cm)となって水面に浮上していた。11月初めには岩に囲まれた静かな水面に畳一畳ほどもあるけ大な群体塊となって浮いていた。長さでは2.8mに達する細長いものもあった。個々のポリプ体は1.5mmほどで,(Cristatella mucedo CUVIER(アユミコケムシ)を思わせる。口上突起と目の周辺に赤い色素があるのはこの種の著しい特徴である。触手冠の両腕の先端部および包体の肛門側に乳白色の塊があるが,これらはKRAEPELIN(1887)がいう上皮線(epidermal gland)からの分泌物である。スタトブラストは丸味を帯びた角形で,長径は約1mm,川縁部から錨形をした軸が11〜22本伸びでている。群体から放出されたスタトブラストは必ず水面に浮上し,数週間は寒天質層に包されている。精進湖は冬期結氷するが,越冬し水面に浮遊するスタトブラストは,現地で,5月下旬に発芽していた。8月に幼生が出現した。幼生は卵形で直径1〜2mm, 1〜5個の芽を有するが,通常は4個。外分の表面にある繊毛の運動で,芽のある方を下にして,数時間浮遊した後,ものに付着して変態した。このコケムシの群体塊がボール状に発達し,しかも表面が個々の群体によって多角模様をなしていることから和名として"オオマリコケムジ"という名称を提案したい。 今まで日本にいなかったこのコケムシが河口湖や精進湖に突如出現するようになった原因はまだ判明していない。国際的に人や物資の交流が盛んになった今日,偶然の機会に,ものに付着したスタトブラストがこれらの湖に持たらされたのであろう。また渡り鳥によるスタトブラストの"空輸"も考慮されよう。1974年の夏には石川県の柴山潟にもこの群体塊が多量に出現した。今後,このコケムシの分布の推移に注目しておかなければならない。(第10回動物分類学今大会にて講演)
著者
松浦 啓一
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.23, pp.80-89, 1982-06-25

文部省科学研究費補助金による海外学術調査が,昭和55年6月8日から7月20日まで,パラオ諸島とヤップ諸島で行われた.筆者は魚類相の調査を担当した。得られた魚類は,34科85属148種に分類された.このうちガーデンイールの1種チンアナゴが,当該海域から初めて発見された.また,モンガラカワハギ科のキヘリモンガラの産卵床と卵が,バベルダオブ島の西岸で発見され,親が卵を保護することが確認された.
著者
今立 源太良
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.42-50, 1994

本州北部および北海道で採集されたカマアシムシ属の2新種を記載した.これらは宮城県東北部でえられたワタナベカマアシムシ,アラスカから見出された2種,Eosentomon alaskaense, E. copelandiと近縁であるが,前肢付節の感覚毛の形状,体毛の配列などに特異な点があるので,新種とみとめ,ジュンカマアシムシ(新称,大西純氏に献名),コンセン(根釧)カマアシムシ(新称)と名づけた.
著者
関口 秀夫 大久保 修三
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.19-26, 1986
被引用文献数
1

従来イセエビ科のリョウマエビとワグエビはめったに採捕されない稀種とされていた.しかし,これまでの知見と三重県和具でイセエビ刺網に採捕された結果を整理したところ,リョウマエビは10個体以上,ワグエビは数個体が毎年採捕されていることが明らかになった.これら2種類のエビは,日本近海ではさほど稀れではなく,おそらくは他の国でも同様であろう.
著者
嶋津 武
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.1-18, 1995
参考文献数
41
被引用文献数
1

日本産淡水魚類から,二生虫の1属であるGenarchopsis OZAKI,1925(Derogenidae:Halipeginae)に属するG.goppo OZAKI,1925,G.anguillae YAMAGUTI,1938,G.fellicola sp.nov.および2群の未同定吸虫を記載した.これらについて,博物館標本,宿主,産地および生活史に関する資料を掲げた.新種のG fellicolaは,諏訪湖(基準産地)や潮来で,ハゼ科のウキゴリ(基準宿主),ヨシノボリおよびヌマチチブの胆嚢から得られたもので,G.goppoによく似てはいるが,胃ではなく胆嚢に寄生すること,吸盤比がより小さいこと,子宮末端部がより短いことなどで異なる.G.gigi YAMAGUTI,1939はG.goppoのシノニムと看做した.関連する科,亜科および属の標徴を改定した.
著者
沢田 勇 原田 正史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.10-13, 1990

1989年8月25日,長野県南安曇郡安曇村鈴蘭で捕獲されたヒメヒミズ3頭巾,2頭に膜様条虫に属する1新種が寄生していた.この新種Hymenolepis dymecodontisは中国産モグラの1種Talpa sp.に寄生していたH. peipingensis HSU, 1935に極めて類似しているが,虫体が小形であり,卵巣の形態が異っている.
著者
沢田 勇 原田 正史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.6-9, 1988
被引用文献数
1

1986年,台湾の南投県捕里鎮南村里にあるトンネル内で捕獲した14頭のタイワンカグラコウモリHipposideros armiger terasensisのうち,1頭から小形条虫の1種を2個体得た.同定の結果,Vampirolepis属の新種と認めたのでV. brachysomaとして記載した.和名はタイワンカグラ小形条虫としたい.
著者
小野寺 隆 本間 義治
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-77, 1976-12-20

Morphological and morphometrical studies were performed to elucidate the speciation and racial differentiation of the fish belonging to the genus Leuciscus (=Tribolodon), in addition to the revisional examination of the cephalic lateral-line system as an ideal character for the classification of this group of fish proposed by NAKAMURA (1963, 1969). The materials were collected from various rivers, streams and lakes, ranging from the southern part of Hokkaido to the north of Nagano Prefecture. The present investigation confirmed roughly the results of NAKAMURA (1963, 1969), and the Japanese dace were classified tentatively as follows: Leuciscus brandti (=L. jusanensis, very probably), superspecies, sea-run form. L. hakonensis, sea-run form and freshwater form. L. ezoe, freshwater form. L. taczanowskii ?, sea-run form, found probably in the Pacific side. L. sp. (Nom. Jap.: Ukekuchi-ugui. Uke-kuchi means the feature of the mouth part, showing the protruded lower jaw) freshwater form, found exclusively in the River Agano. It is of interest to know that the individuals with larger number of scales on the lateral line, such as L. jusanensis and L. sp., posses also the larger number of scales before dorsal fin. As stated previously (NAKAMURA, 1963, 1969), by the features of cephalic lateral-line system, the fish were classified into two major groups, such as the A and B types. In the A (L. jusanensis and L. taczanowskii) with larger number of scales on the lateral line, there is found a junction between the postocular commissure (POC) and preoperculomandibular canal (POM), while in the B (L. hakonensis, L. ezoe and L. sp.) no junction is detected between the POM and POC. When the pores of POM were counted, the number in L. hakonensis and L. ezoe is concentrated in 13, while that of the rest three races is in 20. In the case of the pores of supratemporal canal (ST), the number in L. hakonensis and L. ezoe is fewer than that of the rest (more than 9). However, there is a variation of the number of ST in some populations of the sea run form of L. hakonensis, 6 to 8. The secondary sexual characters, such as the features of nuptial coloration and pearl organ, differ among different races. Therefore, it is considered that these characters are intrinsic for each race and useful for classification of mature adult dace. L. sp. (Ukekuchiugui) found exclusively in the Agano River system is a peculiar race in having the mixture of morphometric characters of different races. Further studies including comparative endocrinology are now in progress to clarify the adaptability and evolution of the Japanese dace.
著者
朝比奈 正二郎
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-2, 1989-12-25
被引用文献数
1