著者
永田 純子 後藤 優介 高木 俊人 兼子 伸吾 原田 正史
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-73, 2022 (Released:2023-02-15)
参考文献数
61

As the number of sightings of Japanese sika deer (Cervus nippon) increases in Ibaraki Prefecture, Japan, male sika deer have recently appeared in Tsukuba City (2015 and 2016) and Yuki City (2019), located in the southwestern part of the prefecture (ISW). We analyzed the mitochondrial DNA control region sequences of three individuals and compared them with those of sika deer in the neighboring areas to infer their areas of origin. The three individuals shared an identical haplotype 6TCG1 and repeat motif TD-2. Pairwise FST and Exact Test suggested significant genetic differentiation in the Nasu-Yaita/Boso Peninsula/Kanto Mountains and ISW. Based on these results, the most possible area of origin of these deer was Nikko in Tochigi Prefecture, which was the only area with the identical haplotype-repeat motif “6TCG1-TD-2”. The areas where we obtained the three deer are all very close to the Kokai River, which originates in the Nasu area, Tochigi Prefecture, and the Kinu River, which has its upper reaches in Nikko and northern Tochigi Prefecture. The sika deer in ISW may have migrated from Tochigi Prefecture using the green areas along these rivers as corridors.
著者
沢田 勇 原田 正史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.37, pp.20-23, 1988-06-25
被引用文献数
2

1986年10月1日,台湾新竹県関西鎮の石灰洞から採集されたヒナキクガシラコウモリにイセ条虫が寄生していた.イセ条虫は種子島を南限とする日本各地のコキクガシラコウモリに寄生する固有種である.南西請島の奄美大島・徳之島のオリイコキクガシラコウモリ,石垣島のイシガキコキクガシラコウモリ,西表島のイリオモテキクガシラコウモリなどにもイセ条虫の寄生がみられる.こうした条虫相からみて,台湾のヒナキクガシラコウモリは同じpusillusグループに属する前述の日本産小形Rhinolophus属のコウモリと分布上での関連性があるように思われる.
著者
沢田 勇 原田 正史 織田 銑一 子安 和弘
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
no.47, pp.26-28, 1992-06-25

1991年7月28日,中国吉林省長嶺県にある長嶺種馬場内で捕獲された1頭のニオイモグラScaptochirus moschatusの消化管を剖検した結果,1隻の成熟虫体が寄生していた.同定の結果,日本のヒメヒミズ及びヒミズに寄生していたヒメヒミズ膜様条虫Hymenolepis dimecodontis SAWADA et HARADA.1990であることが判明した.条虫の終宿主特異性の観点からして,中国吉林省に生息するニオイモグラと日本のヒメヒミズやヒミズとは地理的分布上関連性があるように考えられる.
著者
浅川 満彦 子安 和弘 原田 正史 クリシュナ シュレスタ C. 目加田 和之 織田 銑一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.81-85, 1997-09
被引用文献数
1

野生のネズミ科動物の内部寄生虫については, 比較的多くの報告があるが, ヒマラヤ地方に生息するヒマラヤアカネズミApodemus gurkhaおよびシッキムハタネズミMicrotus sikimensisを宿主とする寄生虫の報告は皆無である。そこで, 1994年11月および1996年3月, ネパール・ヒマラヤ地方Myagdi districtにおいて採集されたヒマラヤアカネズミ14個体およびシッキムマツネズミ9個体について内部寄生蠕虫類の検査をした。その結果, ヒマラヤアカネズミからはHeligmosomoides neopolygyrus, Heligmonoides sp., Syphacia agraria, Heterakis spumosa, Rictularia cristataおよびCatenotaenia sp.が, また, シッキムハタネズミからはCarolinensis minutus, Syphacia montana, Aonchotheca murissylvatici, Trichuris sp., Anoplocephalidae gen.sp.およびTaeniidae gen.sp.(嚢尾虫)が検出された。今回検出された寄生虫のうち, Heligmonoides sp.についてはヒマラヤアカネズミに宿主特異的な新種である可能性が高いが, 他の種はユーラシア大陸の他地域に産するアカネズミ属あるいはハタネズミ属の寄生虫と共通であることが判明した。
著者
浅川 満彦 織田 銑一 原田 正史 成田 裕一 子安 和弘 チェチューリン A. I. ドブロトボルスキー A. K. パノフ V. V. ボロデイン P. M. フェドロフ K. P.
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理學會會報 = Bulletin of the Bio-geographical Society of Japan (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.11-14, 1995-11-20
被引用文献数
1

As a part of the Science Exchange Program between Nagoya University and Russian Academy of Sciences, heligmosomid nematodes of the small mammals captured in the adjacent area of Akademgorodok City, West Siberia, Russia was investigated in summer, 1994. The host materilas of the survey were 27 individuals of the Soricidae and 60 individuals of the Muridae, and its specific names were shown below; Sorex araneus, S. caecutiens, S. isodon, S. minutus, S. tundrensis, Apodemus agrarius, A. peninsulae, Clethrionomys glareolus, C. rufocanus, C. rutilus, Microtus agrestis, M. arvalis, M. gregalis and M. oeconomus. Among them, Longistriata depressa was obtained from S. araneus, S. isodon, S. minutus and S. tundrensis, and Heligmosomoides neopolygyrus was obtained from A. agrarius and A. peninsulae, respectively. However, there was no heligmosomid obtained from the genera Clethrionomys or Microtus. This is the first host record of L. depressa from S. isodon and S. tundrensis, and the locality record of H. neopolygyrus from West Siberia.
著者
高橋 裕 松村 秋芳 新屋敷 文春 藤野 健 原田 正史 大舘 智志
出版者
防衛医科大学校
雑誌
防衛医科大学校進学課程研究紀要
巻号頁・発行日
vol.32, pp.109-116, 2009-03

アズマモグラ (Mogera wogura,imaizumi) は足の母指側に指様の [内側足根突起 ; Medial tarsal process] を持つ。突起に収まる [内側足根骨 ; Medial tarsal bone] の顕微解剖所見も既に報告している。今回は、内側足根突起が、他の国産食虫目動物でも認められるのか調べた。
著者
森脇 和郎 鈴木 仁 酒泉 満 松井 正文 米川 博通 土屋 公幸 原田 正史 若菜 茂晴 小原 良孝
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

日本産野生動物種には、日本列島の生物地理学的な位置づけを反映して独自の分化を遂げたものが少なくない。これらの起源を解明することは、日本の研究者が日本に生息する種を対象にするという「自国に目を向ける立場」を別にしても興味深い。従来、日本産野生物動種については形態的分析に基づく分類学的および生態学的な研究がおもに行われてきたが、この方法論だけではこれら野生種の起源を解明することは難しい。近年著しい進歩を遂げた分子遺伝学的解析法は、集団遺伝学的な種の捉え型と相まってこの問題の解決に大きな力を発揮することが期待される。一方、わが国における人口の増加、経済活動の増大に伴う国土の開発、自然環境の汚染などによって、自然界における野生動物種の分布が改変され、時にはそれらの生存する脅かされるに至った現状を注視すれば、日本産野生種の分布や起源を検討するタイミングは今をおいてない。本研究は、日本産野生動物種の中から各分類群に属する代表的な動物種を選び出し、種内変異や近緑グループとの関係を明らかにして従来の分類体系を再検討するとともに、系統分類学および生態的に異なる動物種の起源について総合的に比較検討することを目的としている。ハツカネズミ・イモリ・メダカ・ウニ・ホヤなど日本に古くから生息する動物種は生物実験材料としての実用性と将来性に富む素材であり、実験動物の開発・利用という観点からもその重要性は見過ごすことはできない。野生種の起源を遺伝学的な観点から解明する研究は、必然的に種分化の遺伝機構にも踏み込むことになろう。この機構の基盤にはHybrid dysgenesisという現象にみられるように、その根底には発生機構、生殖機構の遺伝的制御という問題も包含しており、今後の生物学の新しい展開への有効な基盤となる可能性を秘めている。
著者
角井 建 原田 正史 野津 大 三橋 れい子 鈴木 仁
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.63-68, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
27

隠岐諸島島後で2021年11月におこなわれたモグラ類の採集調査によって,アズマモグラMogera imaizumiiの雄と雌が1個体ずつ捕獲された.隠岐諸島で本種が確認されたのは本報告が初めてであり,西日本における新たなアズマモグラの遺存個体群の存在が明らかとなった.
著者
浅川 満彦 富倉 忠義 本川 雅治 原田 正史
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.29-33, 1998-12-01
参考文献数
11

The parasitic nematodes of Apodemus speciosus [As: Abbreviation of host name] and A. argenteus [Aa] (Murinae: Muridae: Rodentia) collected on Yaku-shima I., Tanega-shima I., and Kuchinoerabu-jima I., southern part of Japan, were investigated. Total number of the mice examined is 38 individuals of As and 36 individuals of Aa collected on Yaku-shima I., 27 individuals of As and 5 individuals of Aa collected on Tanega-shima I., and 2 individuals of As collected on Kuchinoerabu-jima I., respectively. Nine nematode species were obtained from Yaku-shima I., viz., Heligmonoides speciosus [Hosts: As, Aa], Syphacia emileromani [Aa], Syphacia sp. [larval form] [Aa], Heterakis spumosa [As], Subulura (Murisubulura) suzukii [As], Rictularia cristata [As, Aa], Mastophorus muris [Aa], Rhabditis (Pelodera) orbitalis [3rd larva] [As], and Capillariidae gen. sp.[Aa]. On the other hand, 6 nematode species were obtained from Tanega-shima I., viz., H. speciosus [As, Aa], S. emilerornani [Aa], S. (M.) suzukii [As, Aa], R. cristata [As, Aa], M. muris [As, Aa] and Gongylonema (Gongylonema) neoplasticum [As], and only 1 species, H. speciosus, was obtained from Kuchinoerabu-jima I. [As]. There are several studies on the parasitic nematodes of the genus Apodemus of Kyushu and its surrounding offshore islands. However, this is the first report of the nematodes from Yaku-shima I., Tanega-shima I. and Kuchinoerabu-jima I.. These nematodes are common with those of mainlands of Japanese Islands although Ohsumi Is. are thought to have been isolated from Kyushu between 100,000 and 130,000 years ago.
著者
原田 正史
出版者
染色体学会
雑誌
染色体 (ISSN:03711641)
巻号頁・発行日
no.91, pp.2885-2895, 1973-06
著者
北原 英治 原田 正史
出版者
森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
no.370, pp.21-30, 1996-03
被引用文献数
4

紀伊半島産ヤチネズミ個体群の分類学的位置を調べるため,その染色体を本州中部産ヤチネズミと比較した。その結果,紀伊半島産と本州中部産ヤチネズミの核型(2n=56,FN60)はほとんど同一であることが明らかとなった。すなわち,ヤチネズミ両個体群の染色体はとも2対のサブテロセントリック,1対のメタセントリック,24対のアクロセントリック,サブテロセントリックのX染色体とサブメタセントリックのY染色体からなっていた。また,供試ヤチネズミの染色体をClethrionomys rufocanus及びEothenomys smithiiと比較することにより,本ヤチネズミはC. rufocanusよりもE. smithiiに近縁であることが分かった。従って,ヤチネズミ両個体群は分類学的に同一種に属することが結論され,両者を一括してEothenomys andersoniとするAIMI(1980)の考えを一層強く支持した。
著者
沢田 勇 原田 正史 小林 恒明
出版者
日本寄生虫学会
雑誌
寄生虫学雑誌 (ISSN:00215171)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.p515-523, 1984-12
被引用文献数
2
著者
沢田 勇 原田 正史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.10-13, 1990

1989年8月25日,長野県南安曇郡安曇村鈴蘭で捕獲されたヒメヒミズ3頭巾,2頭に膜様条虫に属する1新種が寄生していた.この新種Hymenolepis dymecodontisは中国産モグラの1種Talpa sp.に寄生していたH. peipingensis HSU, 1935に極めて類似しているが,虫体が小形であり,卵巣の形態が異っている.